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第03話 王女の婚約者
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オリビアが王女として城に迎え入れられて半年後。
それまでの生活とはまるで違う世界にまるで天下を取ったかのような振る舞いをするようになった。但し、ライエンの前以外で。
表裏が激しく、ライエンのいない場所でのオリビアに周囲は手を焼いていた。
ただ、そんな言動が顕著になったのはオリビアの最終的な引受先、つまりオリビアの婚約者が選定をされてからのことだったが、クリスタとしては悪いご縁ではないと考えていてオリビアが嫌がる意味が判らなかった。
正直な気持ちとして、そこまで嫌ならライエンと交換して欲しいと切実に思ったくらいだ。
オリビアの婚約者として選出された男性は王都から離れたルベルス領を持つマリンシー伯爵家。
先代は5年前に亡くなっており若くして当主となったウォルスが当主。
伯爵家と言っても侮るなかれ。
表向きは南の辺境伯サウスレッド家の分家扱いだが、実際はマリンシー家の分家がサウスレッド家と言っても過言ではない。
陸上を守るサウスレッド家と海上を守るマリンシー家は1つの家なのだが、力を1つの家が持てば謀反を疑われると言う理由で2つの家に分けただけなのである。
南の辺境伯を次男が選び、長男のウォルスは両親と共に海を守るマリンシー伯爵家を選んだ。
騎士の家系らしく質素倹約。堅実な経営をしていて、派閥としては中立派。
ルベルス領は王都のような華やかさはないものの、自然が豊かで金で買えない財産がある。
先王の落とし胤であることは誰も公に口にしなくても知れ渡っている今、オリビアの身を守るには絶好の相手だった。
マリンシー伯爵を王都に呼び、顔合わせをした時だった。
単に王家と伯爵家の婚約の場、そんな軽いものではない。
マリンシー家の存在が如何に王家にとって懐刀でもあり脅威なのかを目の当たりしたクリスタは父のエクルドール侯爵の隣で成り行きを見守った。
多くの貴族も見守る中、堂々と従者を従えて部屋に入ってきたマリンシー伯爵が国王に挨拶を終え、国王からオリビアを紹介された後、自己紹介を始めた。
「初めてお目にかかります。オリビア王女。私はマリ――」
「何よっ!こんな男に会わせて何をしようって言うの!?」
自己紹介の途中でこれが婚約の顔合わせと悟ったオリビアは場を弁える事も無く部屋を出て行こうとした。国王の従者に出口を塞がれると、怒りの矛先は国王に向かった。
「こんな男と!婚約しろなんて言わないわよね!?」
「オ、オリビア、席に戻るんだ」
「嫌よ!どうして?なんで伯爵家なんかに!!絶対に嫌!」
「そうは言ってもだな」
「嫌ったら嫌!どうせ私は要らない王女だもの!だから適当な伯爵家なんか押し付けるのね!」
王女とは思えない発言に同席した貴族は呆れてしまった。
その場には伯爵家の当主も伯爵家よりも爵位が下の当主もいる、何よりマリンシー伯爵の目の前なのにまるで伯爵家に王女が嫁ぐ事が恥だとでもいってるかのよう。
とうのオリビアがそこまで考えているか、いないかなど関係ない。この発言は当然問題視された。
解って言っているよりも、無意識にそう思っているほうがより質が悪いと判断をされ、王家の信頼は更に落ちた。
このまま暴言が続けば国防上の大問題になるとマリンシー伯爵とその従者は先に部屋を出され、控室に通された。
★~★
マリンシー伯爵家の一行、と言っても当主のウォルス、そして従者の3人の合わせて4人は控室に通された。
「なんだあれ?兄貴が挨拶してんのによ!」
「まさかと思うけど、アレを押し付けられるんじゃねぇよな?」
「無理だろ。あんなのくるぶしまでの浅瀬で溺れるぞ?な。兄貴‥‥兄貴??」
従者の3人は当主であるウォルスの事を兄貴と呼ぶ。
あまりの言動に憤慨していたのだが…。
「兄貴?どうしたんだ?」
ポワワァン♡
ウォルスは頬を赤くし、いつもは冗談半分で吊り目を真似て目尻を上げ「兄貴の真似~」と揶揄われる細長い吊り目なのにダラ~ンと目尻を下げて夢心地になっていた。
「超絶…可愛いが過ぎるだろ…」
「どうしたんだよ。兄貴っ!」
「俺はもう死んでもいい。本望だ」
「まさか兄貴!あんな阿婆擦れに惚れた?!」
あり得ない事が控室で起こっていたのだった。
それまでの生活とはまるで違う世界にまるで天下を取ったかのような振る舞いをするようになった。但し、ライエンの前以外で。
表裏が激しく、ライエンのいない場所でのオリビアに周囲は手を焼いていた。
ただ、そんな言動が顕著になったのはオリビアの最終的な引受先、つまりオリビアの婚約者が選定をされてからのことだったが、クリスタとしては悪いご縁ではないと考えていてオリビアが嫌がる意味が判らなかった。
正直な気持ちとして、そこまで嫌ならライエンと交換して欲しいと切実に思ったくらいだ。
オリビアの婚約者として選出された男性は王都から離れたルベルス領を持つマリンシー伯爵家。
先代は5年前に亡くなっており若くして当主となったウォルスが当主。
伯爵家と言っても侮るなかれ。
表向きは南の辺境伯サウスレッド家の分家扱いだが、実際はマリンシー家の分家がサウスレッド家と言っても過言ではない。
陸上を守るサウスレッド家と海上を守るマリンシー家は1つの家なのだが、力を1つの家が持てば謀反を疑われると言う理由で2つの家に分けただけなのである。
南の辺境伯を次男が選び、長男のウォルスは両親と共に海を守るマリンシー伯爵家を選んだ。
騎士の家系らしく質素倹約。堅実な経営をしていて、派閥としては中立派。
ルベルス領は王都のような華やかさはないものの、自然が豊かで金で買えない財産がある。
先王の落とし胤であることは誰も公に口にしなくても知れ渡っている今、オリビアの身を守るには絶好の相手だった。
マリンシー伯爵を王都に呼び、顔合わせをした時だった。
単に王家と伯爵家の婚約の場、そんな軽いものではない。
マリンシー家の存在が如何に王家にとって懐刀でもあり脅威なのかを目の当たりしたクリスタは父のエクルドール侯爵の隣で成り行きを見守った。
多くの貴族も見守る中、堂々と従者を従えて部屋に入ってきたマリンシー伯爵が国王に挨拶を終え、国王からオリビアを紹介された後、自己紹介を始めた。
「初めてお目にかかります。オリビア王女。私はマリ――」
「何よっ!こんな男に会わせて何をしようって言うの!?」
自己紹介の途中でこれが婚約の顔合わせと悟ったオリビアは場を弁える事も無く部屋を出て行こうとした。国王の従者に出口を塞がれると、怒りの矛先は国王に向かった。
「こんな男と!婚約しろなんて言わないわよね!?」
「オ、オリビア、席に戻るんだ」
「嫌よ!どうして?なんで伯爵家なんかに!!絶対に嫌!」
「そうは言ってもだな」
「嫌ったら嫌!どうせ私は要らない王女だもの!だから適当な伯爵家なんか押し付けるのね!」
王女とは思えない発言に同席した貴族は呆れてしまった。
その場には伯爵家の当主も伯爵家よりも爵位が下の当主もいる、何よりマリンシー伯爵の目の前なのにまるで伯爵家に王女が嫁ぐ事が恥だとでもいってるかのよう。
とうのオリビアがそこまで考えているか、いないかなど関係ない。この発言は当然問題視された。
解って言っているよりも、無意識にそう思っているほうがより質が悪いと判断をされ、王家の信頼は更に落ちた。
このまま暴言が続けば国防上の大問題になるとマリンシー伯爵とその従者は先に部屋を出され、控室に通された。
★~★
マリンシー伯爵家の一行、と言っても当主のウォルス、そして従者の3人の合わせて4人は控室に通された。
「なんだあれ?兄貴が挨拶してんのによ!」
「まさかと思うけど、アレを押し付けられるんじゃねぇよな?」
「無理だろ。あんなのくるぶしまでの浅瀬で溺れるぞ?な。兄貴‥‥兄貴??」
従者の3人は当主であるウォルスの事を兄貴と呼ぶ。
あまりの言動に憤慨していたのだが…。
「兄貴?どうしたんだ?」
ポワワァン♡
ウォルスは頬を赤くし、いつもは冗談半分で吊り目を真似て目尻を上げ「兄貴の真似~」と揶揄われる細長い吊り目なのにダラ~ンと目尻を下げて夢心地になっていた。
「超絶…可愛いが過ぎるだろ…」
「どうしたんだよ。兄貴っ!」
「俺はもう死んでもいい。本望だ」
「まさか兄貴!あんな阿婆擦れに惚れた?!」
あり得ない事が控室で起こっていたのだった。
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