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第04話 叱責は責任転嫁で
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国王は冷めきった目を向ける貴族に対し「まだ教育も途中だから」と言い訳をして場を取り繕ったが、会がお開きになった後、ライエンは国王に呼ばれ叱責をされた。
「お前は貴族間の礼儀を教えていないのか!」
「申し訳ございません。講師の手配はまだ行っ――」
「馬鹿者!何のための世話役だ!それも含めてだ!」
扉の向こうから漏れ聞こえる声に廊下を歩く従者もビックリだ。
どう考えても子供の躾の部分に該当するのにそれを世話役の責任だと言う国王にも驚いたが、続くライエンの言葉にも従者は顔を見合わせた。
「講師の件は陛下に進言をするので問題と思えばピックアップするように伝えるようにとクリスタに言ってあったのです。クリスタからは問題ないと言われておりましたので」
「抜かせ!世話役はライエン!お前だ!エクルドール侯爵令嬢ではないわ!」
「違うのです。私がこの役を仰せつかった際、クリスタは自分もと言ったのです。確かに!確かに任せきりな面はありましたが12年も婚約をしているのだから任せて欲しいとクリスタに強く言われて…任せてしまっていたのです」
ライエンとクリスタが婚約の関係にあることを知らない人間は城には居ない。
しかし、あのクリスタが何も報告をしていないなんて事の方が声が聞こえた従者には考えられなかった。
クリスタは父親のエクルドール侯爵の仕事を良く手伝っていた。
城にも大臣という重責を担っている父親は執務室をあてがわれていて、次期侯爵の兄と共に補佐をしていたし纏める書類に付け足す部分はあっても抜かりがあった事は一度もなかった。
その上、ライエンがやらせてくれと手を挙げたはずのオリビア王女の世話役として日中、城でオリビア王女と一緒にいるのを見られていたのはクリスタで、帰り間際にも使用人から聞き取りを行っていた。
クリスタは使用人に指示をする立場になく「ゼルバ公爵子息に報告をするので指示を待ってほしい」と頼んでいた。クリスタが任されている訳ではないのでライエンを通してでないと茶葉や菓子を選ぶのとは訳が違う。大事な事は決定できなかったのである。
項目を纏めたものであろう書類をライエンに手渡している場を目撃した者もいる。
「ゼルバ氏はあぁいうところ、あるよな」
「あぁ。手柄だけはって奴だし」
「都合が悪くなると誰かの名前だすの、定番じゃん」
「でもさ、陛下も陛下だよな」
「あぁ。自分の子の躾を丸投げだもんな」
「なら引き取らなきゃ良かったんだよ」
「いやいや、王妃殿下以外の女に手を出した時点で人として終わってんだよ」
先王の行いが原因だとは知らない従者は国王のご乱心が原因だと糾弾する。
国王への畏敬もないに等しいがそれ以上に王宮の従者の間でライエンの評価は低空飛行。
次期公爵だから嫌々でも頭を下げて敬語を使わねばならなかったが、立場がもっと低い爵位だったり、公爵家の子息であっても次男、三男であれば従者は挨拶すらしたくないと思われている存在だった。
国王から叱責を受けたライエンが国王の部屋から出て来た時、従者はライエンを見て目を合わせる事がないように下を向き、頭を下げた。
頭の天辺から湯気が見えそうなほどに激昂し、怒りで見目麗しい顔は歪んでいた。
城の使用人たちはクリスタよりもオリビアと接する時間が長い分クリスタ以上に迷惑を被っていた。国王に改善を申し入れるも必要以上にオリビアに関わりたくない国王は我関せず。
仕方なく王妃が応急手段として使用人は単独でオリビアの世話を行わないように指示をした。
男性の従者なり護衛騎士を含んで最低4人で洗顔をするだけの場を確認するし、着替えは王妃が遣わした女性騎士が立ち会うようになっていた。
一方的なオリビアの被害者妄想を証言の数で論破する為でもある。
この異常性はライエンにも王妃や国王の筆頭執事から報告をされているが、何故かライエンは「クリスタの嫌がらせ」でこうなったのだと思い込んでしまっているようでクリスタを責める事が多くなった。
勿論クリスタはノータッチ。
王宮の中での私生活とも言える寝起きの時や着替え、食事などに対しクリスタが「こうしたらどうか」などクリスタの口出しできる範疇ではない。
――難癖は王女殿下の十八番だものね――
必要以上に関わらないでおきたいけれど、ライエンの婚約者である以上それも叶わず。
クリスタの我慢もそろそろ限界に近づいていた。
「お前は貴族間の礼儀を教えていないのか!」
「申し訳ございません。講師の手配はまだ行っ――」
「馬鹿者!何のための世話役だ!それも含めてだ!」
扉の向こうから漏れ聞こえる声に廊下を歩く従者もビックリだ。
どう考えても子供の躾の部分に該当するのにそれを世話役の責任だと言う国王にも驚いたが、続くライエンの言葉にも従者は顔を見合わせた。
「講師の件は陛下に進言をするので問題と思えばピックアップするように伝えるようにとクリスタに言ってあったのです。クリスタからは問題ないと言われておりましたので」
「抜かせ!世話役はライエン!お前だ!エクルドール侯爵令嬢ではないわ!」
「違うのです。私がこの役を仰せつかった際、クリスタは自分もと言ったのです。確かに!確かに任せきりな面はありましたが12年も婚約をしているのだから任せて欲しいとクリスタに強く言われて…任せてしまっていたのです」
ライエンとクリスタが婚約の関係にあることを知らない人間は城には居ない。
しかし、あのクリスタが何も報告をしていないなんて事の方が声が聞こえた従者には考えられなかった。
クリスタは父親のエクルドール侯爵の仕事を良く手伝っていた。
城にも大臣という重責を担っている父親は執務室をあてがわれていて、次期侯爵の兄と共に補佐をしていたし纏める書類に付け足す部分はあっても抜かりがあった事は一度もなかった。
その上、ライエンがやらせてくれと手を挙げたはずのオリビア王女の世話役として日中、城でオリビア王女と一緒にいるのを見られていたのはクリスタで、帰り間際にも使用人から聞き取りを行っていた。
クリスタは使用人に指示をする立場になく「ゼルバ公爵子息に報告をするので指示を待ってほしい」と頼んでいた。クリスタが任されている訳ではないのでライエンを通してでないと茶葉や菓子を選ぶのとは訳が違う。大事な事は決定できなかったのである。
項目を纏めたものであろう書類をライエンに手渡している場を目撃した者もいる。
「ゼルバ氏はあぁいうところ、あるよな」
「あぁ。手柄だけはって奴だし」
「都合が悪くなると誰かの名前だすの、定番じゃん」
「でもさ、陛下も陛下だよな」
「あぁ。自分の子の躾を丸投げだもんな」
「なら引き取らなきゃ良かったんだよ」
「いやいや、王妃殿下以外の女に手を出した時点で人として終わってんだよ」
先王の行いが原因だとは知らない従者は国王のご乱心が原因だと糾弾する。
国王への畏敬もないに等しいがそれ以上に王宮の従者の間でライエンの評価は低空飛行。
次期公爵だから嫌々でも頭を下げて敬語を使わねばならなかったが、立場がもっと低い爵位だったり、公爵家の子息であっても次男、三男であれば従者は挨拶すらしたくないと思われている存在だった。
国王から叱責を受けたライエンが国王の部屋から出て来た時、従者はライエンを見て目を合わせる事がないように下を向き、頭を下げた。
頭の天辺から湯気が見えそうなほどに激昂し、怒りで見目麗しい顔は歪んでいた。
城の使用人たちはクリスタよりもオリビアと接する時間が長い分クリスタ以上に迷惑を被っていた。国王に改善を申し入れるも必要以上にオリビアに関わりたくない国王は我関せず。
仕方なく王妃が応急手段として使用人は単独でオリビアの世話を行わないように指示をした。
男性の従者なり護衛騎士を含んで最低4人で洗顔をするだけの場を確認するし、着替えは王妃が遣わした女性騎士が立ち会うようになっていた。
一方的なオリビアの被害者妄想を証言の数で論破する為でもある。
この異常性はライエンにも王妃や国王の筆頭執事から報告をされているが、何故かライエンは「クリスタの嫌がらせ」でこうなったのだと思い込んでしまっているようでクリスタを責める事が多くなった。
勿論クリスタはノータッチ。
王宮の中での私生活とも言える寝起きの時や着替え、食事などに対しクリスタが「こうしたらどうか」などクリスタの口出しできる範疇ではない。
――難癖は王女殿下の十八番だものね――
必要以上に関わらないでおきたいけれど、ライエンの婚約者である以上それも叶わず。
クリスタの我慢もそろそろ限界に近づいていた。
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