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第17話 手続きは速やかに
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王太子が部屋に入ると3人かと思ったら4人いた。
王妃も従者を連れて参戦していたのである。
すこぶる顔色の悪い国王とは反対に血色の良い父のエクルドール侯爵、何故かゼルバ公爵も生き生きとしている。その後ろに控えし王妃は満面の笑みだった。
「どこまで詰められましたか?」
「ふふっ。もう詰んでおる。のぅ。陛下?」
「・・・・」
国王の縋る目を見るに、王太子が「私に玉座はまだ早い」とでも言ってもらえると思ったのだろうか。言葉を発せずとも王太子の目が王妃と同じだと悟ると国王はガックリと肩を落とした。
王太子は笑みを浮かべて書類を国王の前に差し出した。
「もうご自身の行うべきことはお判りでしょう」
「あぁ」
抗う気力もないのか国王は弱弱しい返事を返した。
「先ずは婚約を白紙。父上、署名を」
「婚約の白紙?」
「えぇ。手続きはもう終わっています。あとは国王である父上が出された届けの手続きが全て終わったと確認の署名をするだけです」
王太子に書面を差し出されると国王は観念したかのように署名を済ませ、従者から自身の印を手渡されると印肉をたっぷりつけて押印した。
抗う素振りが無かったのは白紙になる婚約がゼルバ公爵家とエクルドール侯爵家のモノでオリビアとは関係がないと思ったからだった。
国王は署名を終えると「クリスタは今後どうするのだ?」とエクルドール侯爵に問う。
わざわざ問わずとも、次期公爵予定の子息と婚約が白紙になったのだから通常なら今後の行き先は修道院の1択しかない。問うこと自体が神経を逆撫でする行為であることも国王は気が付いていなかった。
「御心配は無用で御座います」
短くエクルドール侯爵が返事を返せば「あ、あぁ要らぬ心配だったな」と視線を逸らした。
「白紙と申しましても実際は破棄に等しい内容です。当家としましてはライエンの私財全てをエクルドール侯爵家に慰謝料ではなく迷惑料として払う準備が御座いますが、無粋な金の話などは陛下にこの後諸々の書面に署名を頂いてからに致しましょう」
「どういう事だ?2家の事だ。王家には関係ないだろう」
不安げに王太子、王妃の顔を順にみた国王だったが王太子も王妃も涼しい顔を向けるだけで関係があるかどうかの明言はしなかった。
続いて王家とゼルバ公爵家が婚約を締結する書面がテーブルに出された。
ライエンの要望通り、妻となる人をクリスタからオリビアにするのだ。
オリビアの保護監督責任者は国王。ライエンはゼルバ公爵。
両家を代表する者が取り決めれば話が早い。
婚姻が出来る年齢は16歳なのでライエンもオリビアも年齢の条件は満たしているがライエンもオリビアも年齢は関係なく親の保護下にあるからである。
「ま、まて。これはオリビアの?!」
「えぇ、そうですよ。良かったですね。オリビアを生涯かけて守ってくれる男に託せて」
「公爵家に?オリビアに公爵夫人が務まるのか?」
「それを危惧するのは父上ではありません。この婚約を結ぶ署名をするのが父上の仕事です」
国王がゼルバ公爵を伺うように見やるが、ゼルバ公爵は笑みを絶やさない。
ゼルバ公爵家が全面的に受け入れてくれる、それならば遠くの田舎領にオリビアをやらなくてもいいし、オリビア自身が伯爵家は嫌だと言っていたのだからと国王はすらすらと署名を済ませた。
「これでオリビア王女はゼルバ公爵家に臣籍降嫁となるのだな?」
国王の声は既に安堵を感じさせたが、その問いには誰も答えなかった。
王妃も従者を連れて参戦していたのである。
すこぶる顔色の悪い国王とは反対に血色の良い父のエクルドール侯爵、何故かゼルバ公爵も生き生きとしている。その後ろに控えし王妃は満面の笑みだった。
「どこまで詰められましたか?」
「ふふっ。もう詰んでおる。のぅ。陛下?」
「・・・・」
国王の縋る目を見るに、王太子が「私に玉座はまだ早い」とでも言ってもらえると思ったのだろうか。言葉を発せずとも王太子の目が王妃と同じだと悟ると国王はガックリと肩を落とした。
王太子は笑みを浮かべて書類を国王の前に差し出した。
「もうご自身の行うべきことはお判りでしょう」
「あぁ」
抗う気力もないのか国王は弱弱しい返事を返した。
「先ずは婚約を白紙。父上、署名を」
「婚約の白紙?」
「えぇ。手続きはもう終わっています。あとは国王である父上が出された届けの手続きが全て終わったと確認の署名をするだけです」
王太子に書面を差し出されると国王は観念したかのように署名を済ませ、従者から自身の印を手渡されると印肉をたっぷりつけて押印した。
抗う素振りが無かったのは白紙になる婚約がゼルバ公爵家とエクルドール侯爵家のモノでオリビアとは関係がないと思ったからだった。
国王は署名を終えると「クリスタは今後どうするのだ?」とエクルドール侯爵に問う。
わざわざ問わずとも、次期公爵予定の子息と婚約が白紙になったのだから通常なら今後の行き先は修道院の1択しかない。問うこと自体が神経を逆撫でする行為であることも国王は気が付いていなかった。
「御心配は無用で御座います」
短くエクルドール侯爵が返事を返せば「あ、あぁ要らぬ心配だったな」と視線を逸らした。
「白紙と申しましても実際は破棄に等しい内容です。当家としましてはライエンの私財全てをエクルドール侯爵家に慰謝料ではなく迷惑料として払う準備が御座いますが、無粋な金の話などは陛下にこの後諸々の書面に署名を頂いてからに致しましょう」
「どういう事だ?2家の事だ。王家には関係ないだろう」
不安げに王太子、王妃の顔を順にみた国王だったが王太子も王妃も涼しい顔を向けるだけで関係があるかどうかの明言はしなかった。
続いて王家とゼルバ公爵家が婚約を締結する書面がテーブルに出された。
ライエンの要望通り、妻となる人をクリスタからオリビアにするのだ。
オリビアの保護監督責任者は国王。ライエンはゼルバ公爵。
両家を代表する者が取り決めれば話が早い。
婚姻が出来る年齢は16歳なのでライエンもオリビアも年齢の条件は満たしているがライエンもオリビアも年齢は関係なく親の保護下にあるからである。
「ま、まて。これはオリビアの?!」
「えぇ、そうですよ。良かったですね。オリビアを生涯かけて守ってくれる男に託せて」
「公爵家に?オリビアに公爵夫人が務まるのか?」
「それを危惧するのは父上ではありません。この婚約を結ぶ署名をするのが父上の仕事です」
国王がゼルバ公爵を伺うように見やるが、ゼルバ公爵は笑みを絶やさない。
ゼルバ公爵家が全面的に受け入れてくれる、それならば遠くの田舎領にオリビアをやらなくてもいいし、オリビア自身が伯爵家は嫌だと言っていたのだからと国王はすらすらと署名を済ませた。
「これでオリビア王女はゼルバ公爵家に臣籍降嫁となるのだな?」
国王の声は既に安堵を感じさせたが、その問いには誰も答えなかった。
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