貴方の望んだ愛は本物ですか

cyaru

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第21話  計画にないこと

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オリビアから解放されたライエンはそのまま屋敷には戻らず、高級娼館で2晩を過ごした。苛立ちを娼婦にぶつけるように精を吐き出したが、スッキリしないまま屋敷に戻ると様子がおかしい。

父の部屋に飛び込むとまるで引っ越しだ。そこかしこに書類が積まれ、父のお気に入り書棚も執務机も部屋にはなかった。

そこでライエンは「やっとお戻りか。暢気なものだ」と前置きをされ衝撃の事実を突きつけられた。

クリスタとの婚約が白紙になり、オリビアが直ぐに次の婚約者に決まった。日を置かず早々に結婚となる事などどうでもいい問題は他にあった。

――私が男爵だと?――

ライエンには屈辱でしかなかった。

「何故です?何故私が男爵なんかに!!」
「ライエン。言葉を慎め。男爵位も立派な爵位だ。何よりお前は元王女を妻にするんだから」
「王女が男爵家に臣籍降嫁などあり得ません!過去にそんな前例はないんです」

ゼルバ公爵に詰め寄ったライエンだったが、間に執事と家令が体を割り込ませてゼルバ公爵に届くのは声だけ。

「前例がないなら作ればいい。元王女の夫となるのだ。しっかりな」
「しっかりって!父上は何をしてくれるんですか!」
「慰謝料の一部を払ってやる。それでいいだろう」
「慰謝料?!白紙なのになぜそんなも‥‥あ…」
「解ったか」


ライエンは自分の計画には自信を持っていたのだが、第三者にその計画を語ることはなかった。だからこそ綻びがあった事に今、気がついてしまった。

相手が王女とは言え、自分は婚約者のある身。
ならば相手の家が存在する。
クリスタが良いと言ってもエクルドール侯爵が婚約に関しては決定権を持っているし、自分は独立した家があるわけでもなく、まだ監督下にある。

――あの時に父上に。くっ!早まってしまった――

オリビアを妻に迎えたいとゼルバ公爵に言う時期が不味かった。
先にクリスタとの婚約を片付けておけば慰謝料など…と考えはと、気がついた。

「父上、先ほど慰謝料の一部と?」
「当然だろう。何故お前の犯した事、全てを肩代わりせねばならんのだ」
「ま、待ってください、だったら私が払う慰謝料は…」
「お前の私財の全てだ。だが元王女が残る。王妃殿下からは男爵という爵位がお前達をされた。住む家もある。何の問題もないだろう」

問題しかない。

夫婦に譲渡であれば離縁をすれば爵位は半分に分ける事は出来ないのだから平民落ちとなってしまう。その上自分の私財全てが慰謝料なら何か事業を始めようとしても元手がない。

住まう家も建っている場所が問題で担保に入れて金を借りようにも生活費がせいぜいで事業資金に到底足らない。

どうしようかと慌てるライエンにゼルバ公爵は非情な言葉を告げた。

「荷を纏め早々に出て行くように。私たちもここには居られるのは今週いっぱいだ」
「ど、どういう意味です?」
「お前の不始末だからとお前だけの罰で済む事ではない。私は当主を降りる事になった」
「なんで!なんでですかっ!どうして父上が?そんな事をしたら私は誰を頼ればいいんです?」
「もうすぐ25だろう。いい加減に親の脛を齧るのはやめろ」

ここでもライエンの計画になかった事が起きた。
まさか父親が公爵家の当主を辞するなんて夢にも考えていなかった。

ライエンがごねようと荷物の片づけは進んでいく。

「手伝いに来ましたわ」
「あぁ、すまないな。書籍はもう纏めてあるんだ。母さんを手伝ってやってくれないか」
「お母様を?全部は持って行けないわよ?」
「ほとんどは寄付するか売ると言っていた。終わったら買い物に付き合ってやってくれないか。各家に詫びの品を贈ると言っていたんだ」

手伝いにやってきたのはオリビア王女が国に戻って来ると聞いた婚約者の家から頼まれて予定を繰り上げ伯爵家に嫁いだライエンの妹だった。

ゼルバ公爵の言葉から品を売らねば金が作れない状況だとも取れる。

――公爵家だぞ。あり得ないだろ――

しかし、あり得ない事は目の前の荷を買い取っていく業者もいるし、その金を家令と執事が使用人の名が書かれた封筒に分配しているのを見れば理解するしかなかった。


ライエンは妹の姿を見ると、今後の支援を頼もうと駆け寄ったが言葉を発する前に睨まれた。が、怯んではいられない。これからの生活がかかっているのだからこの際、頭の1つでも軽く下げて妹の夫に面会を頼もうとした。

「久しぶりだな。夫君も元気か?」
「おかげ様で新婚早々から謂れのないクレーム処理に朝から出張ってるわ」
「謂れの…?どういう事だ?」
「判らないなら王宮の御用学者にでも問えば?」
「そ、そうか。それでだな。夫君に会いたいんだが」

ライエンの妹は荷を纏める手を止めた。
後姿に話しかけていたライエンに顔は見えなかったが、妹は荷をバンッ!1つ叩いて振り返った。

「さっき言ったよね?クレーム処理に朝から出ていると。クレームはね、昨日今日じゃないの。しかも事業とは全く無関係。何故だか解る?どこかの馬鹿王女の世話役が仕事をしないからこっちに矛先が向いてるのよッ!」


オリビアが「伯爵家なんて」と叫んだあの場にも夫婦で参加をしていて大恥をかいた。「妹なんだからこの商会も似たり寄ったり」と難癖をつけて来る者も現れた。

常識のないオリビアの言動に世話役は何をしているんだ?と関係のない嫁ぎ先の商会までわざわざ叱責をするために来る者もいたし、ライエンとオリビアが護衛も連れずに出歩いている場を目撃した者から世話役の仕事内容を間違っていないかと店先で見解を問われたり。

貴族に反感を持っている者だっている。嫌味を言ってやりたくても公爵家に言える度胸はないが、伯爵家や事業所ならと考える者は多い。

激昂する妹にライエンはとても支援は頼めないと部屋に引き上げたのだった。
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