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第36話 あっという間
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ライエンの言った言葉は、言葉を吐くのがライエンか頼まれ屋の男かの違いだけで内容は一致していた。
クリスタがルベルス領に住まいを移したのはオリビアも頼まれ屋の男から聞いた。
そして見張りの料金が倍の1千万ルクルになることも。
問題は、ライエンは支払いが遅延しないように支払いは済ませていた。
しかもオリビアが聞く10日前にライエンは情報を買っていたのだ。
オリビアは頼まれ屋の男に騙された事を悟った。騙された挙句に、ライエンも1億払って仕入れた情報をオリビアも1億で買ってしまった。
――ごめんなさい。ライ――
クリスタとヨリを戻したんじゃないかとライエンを疑った自分を恥じた。
ライエンはオリビアを裏切ってはいなかった。
かなりの額が引き出しされていたけれど、留守にしている間ライエンは自分で動き、情報を買っていたのだ。
――やっぱり私、愛されてるんだわ――
オリビアはそう思い、払いが重複したことは墓まで持って行く事に決め二度とライエンを疑ったりしないと心に決めたがライエンは違う。
プライドの高いライエンは自分を蔑ろにしたクリスタを許せず、絶対に復讐をする。その執念だけで動いていた。
「宿を引き払う。早くしたくしろよ!愚図いな」
「怒らないでよ。すぐするから」
しかし宿を清算する時になってまた問題が起きた。
残り2か月の間はライエンとオリビアが借りる事になっていたので、泊まりたい、予約したいという客を断ってshまった事もあるが、その間は宿泊していた部屋は借りられないと宿屋が広報に掲載してしまっていた。
「当方も困ります。他の客様はこの部屋に泊まれないと認識したはずです」
「そんなの判らないだろう?兎に角今日で引き払う!代金は今日までの分しか払えない」
「こちらも困ります。では宿泊料は結構ですので周知にかかった費用だけお支払いください」
安い宿屋なら1週間分ほど上乗せをすれば終わる話でも王家や他国の王族、皇族も利用する高級宿は勝手が違う。ライエンも「キャンセルすると痛い目に合う」とは過去に聞いたことはあったので、広報代だけならと了承してしまった。
「な、なんだ?この額?!500万って嘘だろ」
「広報への掲載料です。当宿の利用者はこの国の方に限りません。3つ向こうの国ならまだ掲載はされていないでしょうけど、差し止めをするのに早馬を出しても間に合いません」
11か国の広報に掲載する料金を請求されてしまったのだ。
しかも契約は年間契約になっていて、一部の部屋の利用は出来ないと個別の掲載はライエン達が泊まると告げていた期間になっていたので支払うしかなかった。
金があると思うと金銭感覚も狂ってしまう。
宿屋に支払うのとルベルス領に向かうための路銀など引き出そうと宝飾品を売った店に行くと残りは700万もなかった。
「おかしいだろう!」
ここでも詰め寄ったが、ライエンはハッと思い出した。
店が1日で現金として用意出来る分は少ない。なので手形を発行してもらい金融商会で割って現金にしたのだ。
その額は履歴には掲載されていないが、半月後には金融商会から店に請求が来るので別途で計算されていた。
ライエンはルベルス領でクリスタを捕まえるのに素人である自分では無理だと私兵を雇ったのだ。
もしもを考えると30人、50人では一瞬で返り討ちにあってしまう。
街の破落戸も力自慢をいろんな頼まれ屋を使い、人間を集めた。
その数は300人。報酬もだがルベルスへの路銀も負担せねばならず手形しか方法がなかった。
「どうするの?宿屋に払ったら幾らも残らないわ」
が、ライエンは出金が記録されている台帳を見て気がついた。
「私は…この日は引き出してないが?1日に2回も来てないだろう?」
オリビアはビクッとして、店員に「言わないで」と目くばせをしたが通じるわけがない。店員だってネコババしたなんて疑いを掛けられるのはごめんだ。
「お隣にいらっしゃる方が引き出しをされましたが?」
「ごめんなさい!私、ライのため――」
「もういい。今更だ」
ライエンはつくづくオリビアには呆れた。どうせ男娼館にでも行って遊んでいたのだろうとオリビアが伸ばしてきた手を払った。
既にルベルス領に向かった雇われ兵を追うようにライエンとオリビアも幌馬車に乗り込んだ。
ウォルスはルベルス領に戻るのに船を使ったが、ライエンもオリビアも旅をすると言えば陸路しか考えがなく、2カ月かけてゆっくり進む幌馬車に揺られたのだった。
クリスタがルベルス領に住まいを移したのはオリビアも頼まれ屋の男から聞いた。
そして見張りの料金が倍の1千万ルクルになることも。
問題は、ライエンは支払いが遅延しないように支払いは済ませていた。
しかもオリビアが聞く10日前にライエンは情報を買っていたのだ。
オリビアは頼まれ屋の男に騙された事を悟った。騙された挙句に、ライエンも1億払って仕入れた情報をオリビアも1億で買ってしまった。
――ごめんなさい。ライ――
クリスタとヨリを戻したんじゃないかとライエンを疑った自分を恥じた。
ライエンはオリビアを裏切ってはいなかった。
かなりの額が引き出しされていたけれど、留守にしている間ライエンは自分で動き、情報を買っていたのだ。
――やっぱり私、愛されてるんだわ――
オリビアはそう思い、払いが重複したことは墓まで持って行く事に決め二度とライエンを疑ったりしないと心に決めたがライエンは違う。
プライドの高いライエンは自分を蔑ろにしたクリスタを許せず、絶対に復讐をする。その執念だけで動いていた。
「宿を引き払う。早くしたくしろよ!愚図いな」
「怒らないでよ。すぐするから」
しかし宿を清算する時になってまた問題が起きた。
残り2か月の間はライエンとオリビアが借りる事になっていたので、泊まりたい、予約したいという客を断ってshまった事もあるが、その間は宿泊していた部屋は借りられないと宿屋が広報に掲載してしまっていた。
「当方も困ります。他の客様はこの部屋に泊まれないと認識したはずです」
「そんなの判らないだろう?兎に角今日で引き払う!代金は今日までの分しか払えない」
「こちらも困ります。では宿泊料は結構ですので周知にかかった費用だけお支払いください」
安い宿屋なら1週間分ほど上乗せをすれば終わる話でも王家や他国の王族、皇族も利用する高級宿は勝手が違う。ライエンも「キャンセルすると痛い目に合う」とは過去に聞いたことはあったので、広報代だけならと了承してしまった。
「な、なんだ?この額?!500万って嘘だろ」
「広報への掲載料です。当宿の利用者はこの国の方に限りません。3つ向こうの国ならまだ掲載はされていないでしょうけど、差し止めをするのに早馬を出しても間に合いません」
11か国の広報に掲載する料金を請求されてしまったのだ。
しかも契約は年間契約になっていて、一部の部屋の利用は出来ないと個別の掲載はライエン達が泊まると告げていた期間になっていたので支払うしかなかった。
金があると思うと金銭感覚も狂ってしまう。
宿屋に支払うのとルベルス領に向かうための路銀など引き出そうと宝飾品を売った店に行くと残りは700万もなかった。
「おかしいだろう!」
ここでも詰め寄ったが、ライエンはハッと思い出した。
店が1日で現金として用意出来る分は少ない。なので手形を発行してもらい金融商会で割って現金にしたのだ。
その額は履歴には掲載されていないが、半月後には金融商会から店に請求が来るので別途で計算されていた。
ライエンはルベルス領でクリスタを捕まえるのに素人である自分では無理だと私兵を雇ったのだ。
もしもを考えると30人、50人では一瞬で返り討ちにあってしまう。
街の破落戸も力自慢をいろんな頼まれ屋を使い、人間を集めた。
その数は300人。報酬もだがルベルスへの路銀も負担せねばならず手形しか方法がなかった。
「どうするの?宿屋に払ったら幾らも残らないわ」
が、ライエンは出金が記録されている台帳を見て気がついた。
「私は…この日は引き出してないが?1日に2回も来てないだろう?」
オリビアはビクッとして、店員に「言わないで」と目くばせをしたが通じるわけがない。店員だってネコババしたなんて疑いを掛けられるのはごめんだ。
「お隣にいらっしゃる方が引き出しをされましたが?」
「ごめんなさい!私、ライのため――」
「もういい。今更だ」
ライエンはつくづくオリビアには呆れた。どうせ男娼館にでも行って遊んでいたのだろうとオリビアが伸ばしてきた手を払った。
既にルベルス領に向かった雇われ兵を追うようにライエンとオリビアも幌馬車に乗り込んだ。
ウォルスはルベルス領に戻るのに船を使ったが、ライエンもオリビアも旅をすると言えば陸路しか考えがなく、2カ月かけてゆっくり進む幌馬車に揺られたのだった。
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