王子妃だった記憶はもう消えました。

cyaru

文字の大きさ
14 / 36

婚約解消③ー⓪

しおりを挟む
「なかなかいいんじゃないか?これなら医療学院も検討しようじゃないか」


セレスタンが半年の成果を認めた。

炊き出しだけでは何の解決にもならないと、王妃の力添えもあり立ち上げた雇用側と労働者側のニーズに応えた求人制度は反響を呼んだ。

半年ではまだ結果と言うほどの物ではないけれど、短時間でも雇ってもらえたり、労働をする前から賃金が明確になっているのも良い方向に転がった。不当に安い賃金で人を雇っていた所は退職希望者が出て、引き留めをするため賃金の他に待遇改善も始まったのだ。

そのうち雇用側は他よりも目立つ位置に求人を貼り出して欲しいと料金を支払うようになった。有料で掲載する場合は目立つ位置になり、音読してくれる者がサービスでつくが、無料の場合は束になった物から探さねばならない。
文字が読めない労働者も多く、束になった無料掲載を手に取る者は少ない。
呼んでもらうのに料金を支払わねばならないからだ。

そうなれば医療学院を新設するのに合わせて識字率を向上させるために、セレスタンとシルヴェーヌは空き家や人の集まる教会などに講師を送り平民に文字を教えた。

文字に対する貪欲さは老若男女問わず。読み書きが出来るとなれば給料の良いところに就業できるとあって教室を開けば満員御礼。中に入れないものは窓の外から受講するに至った。

「なるほどね。良い連鎖をんでいると言えるよ」


セレスタンとシルヴェーヌの仲にも進展があったように見えた。
以前よりもセレスタンがシルヴェーヌに問い掛ける事が増えたのだ。


「クロヴィス様、お願いしますわ」
「承知致しました」

クロヴィスを含めた騎士たちの周りに人が集まり、剣の持ち方や振り方を学んでいく。
剣を持つにはいきなりは持たせてもらえず、体力つくりから始まるのだが生活に直結するものは真剣そのものだった。

半年間でクロヴィスの声掛けもあり、防犯も含めた講習会も開催し同時に子供たちに剣術を教える騎士も増えた。近衛隊、第一、第二騎士団は花形でなりても多かったが、市井や王都周辺、郊外地域を警護する第四、第五騎士団、警備隊は募集しても人が集まらなかった。

興味はあっても拳で戦うか、木切れを振り回すしか手段がなかったのだ。
戦うだけでなく、受け身で流すという体術を教える講座も大盛況で、初級をマスターすれば見習いで警備隊に入隊出来るのも成果を見せた。


一期生は全員が貴族の子女。学園には授業料が払えない事から通えなかった次男以降の子息や低位貴族の令嬢だった。二期生になると1年の間に平民で文字が読めなかったけれど教会で講義を聞いて文字を覚え、特待生で入学した者もいた。三期生の募集はもう定員に達していて増員を求める声もあがった。


炊き出しは週に1回が2週間に1回、月に1、2回となり、2年経てば何かの催しの時に行われるだけとなったが、それまで炊き出しに組んでいた予算は本当に貧しい者に支給されるチケットに代わった。
チケットは申請に応じて王宮の役人が実際に家を見て、生活困窮者にのみ与えられた。

利用店舗も限定し、チケットを発給してもらった者と使用した者が同一でなければ次回からの発給がないとあって不正も激減した。一番の効果はそれまで賭博や飲酒で怠けたいだけというものに対しての目が厳しくなり自制するようにもなった事かも知れない。


セレスタンとシルヴェーヌの賛辞は民衆の中でも高まっていく。

「あ、殿下だぁ!」「殿下ぁ!」

教会に行けば子供たちがセレスタンに集まって来る。

「僕ね、名前が書けるようになったんだよ」
「それ、わたしが先!わたしが先に書けるようになったの!」

「良かったじゃないか。じゃぁそろそろ本でもこの戸棚一杯に贈る事にしよう」

微笑んで子供たちに笑いかけるセレスタンを見てシルヴェーヌも微笑んだ。

数日後、王宮の書庫で廃棄処分を待つだけだった大量の蔵書が教会の棚に並んだ。
司書たちが捨てるには惜しいと補修をした本を人々は列を成して借りていった。

セレスタンはその様子を見て、小さく笑った。


☆彡☆彡
9:10  婚約解消③ー①
10:10 婚約解消③ー②
11:10 婚約解消③ー③ 

予約投稿済みです。クールダウン宜しくお願いします<(_ _)>
しおりを挟む
感想 144

あなたにおすすめの小説

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。

MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。 記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。 旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。 屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。 旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。 記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ? それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…? 小説家になろう様に掲載済みです。

壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~

志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。 政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。 社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。 ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。 ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。 一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。 リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。 ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。 そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。 王家までも巻き込んだその作戦とは……。 他サイトでも掲載中です。 コメントありがとうございます。 タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。 必ず完結させますので、よろしくお願いします。

この罰は永遠に

豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」 「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」 「……ふうん」 その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。 なろう様でも公開中です。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

【完結】どうか私を思い出さないで

miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。 一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。 ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。 コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。 「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」 それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。 「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

あなたへの愛を捨てた日

柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。 しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。 レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。 「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」 エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。

処理中です...