23 / 36
記憶が消えた日③ー③
クロヴィスは遠くに見える時計塔を振り返った。
時計の針は18時を少し過ぎていた。
馬車なら1時間もかからないし、馬なら飛ばせば30分ほどの距離だが途中破れてバカになった靴を脱ぎ捨てたクロヴィスは足が血だらけになりながらもトラント公爵家の正門に転がり込んだ。
「坊ちゃん!坊ちゃんじゃありませんか!」
「どうされたんです?襲われたのですか?!」
門番が駆け寄ってきた。養子縁組は解消をされたが勝手知ったるトラント公爵家だ。
ここならば夜会に出席できるような身支度も出来る上に、新人の兵士ならば王太子の側近時代に賜ったブローチを身につけていれば入場させてくれる可能性もある。
なんなら【トラント公爵家】と偽ってでも構わないと考えた。
家名詐称は重罪だが、シルヴェーヌにもしもがあっては何にもならない。
何もないのに越した事はないが、もしもを考えた時に何も出来なかったとまた後悔するのは嫌だった。
「もうこの家からは追い出されてるんだが、どうしても夜会に行かねばならないんだ」
15年以上、幼い頃からクロヴィスを知る門番は直ぐに【話の分かる】執事を呼んでくれた。公爵夫妻に気分次第の折檻をされた時も庇ってくれた執事はクロヴィスに手を差し出した。
「クロヴィス様…こんなになって。さぁお入りください。全責任は私が持ちます」
公爵夫妻はもう夜会に出発していて不在だったのも好都合だった。
気心の知れた使用人達は手早くクロヴィスに湯あみをさせて、髪を切り、髭を剃って身支度を整えていく。馬車では間に合わないと言えば騎乗しても問題ない装いで仕上げてくれた。
「もう19時を少し回りました。馬なら15分ほどで行けるでしょう」
「ありがとう。恩にきる」
「どういたしまして。我らは幾ばくもしないうちに定年。立派なお姿を最後に見られた事がなによりの誉で御座います」
トラント公爵家の使用人に見送られて痛む足を鐙にかけ、クロヴィスは馬を走らせた。
〇●〇●〇
「本当に上手くいんでしょうね。貴方のイチオシは首を縦に振らなかったのでしょう?」
「問題ない。同等の腕前ならもう1人予備がいる」
「なら良いけれど…。生き残られると面倒だからしっかり殺って頂戴」
「ククク‥‥女は怖いな」
「あら?失礼ね。男だって十分に怖いわ。昨夜も何度啼かされた事か」
セレスタンと深く口付けを交わし、移ってしまった紅を人差し指でなぞる女は一足先に夜会の会場に消えていった。柱の影から出番を待っていた第二王子ディオンは「趣味を疑う」とホマスタール伯爵家のヘルベルトを従えて現れた。
「いいか?1人でバルコニーでも花摘みでも出た時がチャンスだ。侍女を連れているだろうが構わない。侍女と共に殺れ」
「それは良いんですが、本当に伯爵家を要職に取り込んでくれるんですよね」
「ヘルベルト。何度も言わせるな」
「躊躇うなよ。必ず仕留めるんだ。安定した役職は用意してある」
「頼みますよ。妹も2人年内に結婚するんで」
「目印は道化のような羽根のついた帽子だ。バカの死装束にはお誂え向きだ」
3人の中で会場に入らねばならないディオンは特徴を言い残し扉の向こうに消えていく。セレスタンはヘルベルトの肩を叩き鼓舞した。
〇●〇●〇
「あら?珍しい人を見つけちゃった♡」
視線を声の主に移せばアデライドがシルヴェーヌに微笑んでいた。
真っ赤な口紅は幼い顔にはあまりにあっていないがそのミスマッチが淫靡さを出していた。
シルヴェーヌとディオンが夫婦であって夫婦でない事は参加している者は皆知っている。それでも第二王子の妃ともなれば王家主催の夜会には出席をせざるを得ない。
ディオンとは距離を敢えて取っているが、自由気ままなアデライドまでは制御は出来なかった。
挨拶も終わり歓談の場となっている会場内は多くの貴族でごった返している。
ダンスを踊る者を眺める者達と飲酒を愉しむ者達。窓は開け放たれているものの今夜は風もなく涼しさを感じない。
「可愛いでしょう?ディオンが買ってくれたのぉ。あら?ごめんなさぁい。妃殿下にはなぁんにもないのね。びっくりしちゃうぅ♡」
「お似合いで何よりですわ」
「って、言うかぁ、暑くないですかぁ?崩れないくらい塗ってる妃殿下には判らないかもぉですけどぉ。もうぉぉ暑ぅい!ちょっと涼みません??」
「結構ですわ。お一人でどうぞ」
「そんなに妬かなくてもいいのにぃ。ディオン取られて悔しい~っての。解るのぉ。でもね?仲良くしましょうよぅ。王妃様も側妃様と仲良しでしょぉ?仲良しっていい事ばぁっかりなんですよぉ?」
アデライドはシルヴェーヌの腕を引き、中庭にある噴水まで引っ張って行った。
パタパタと扇で風を送っていたが、手元が滑って扇は噴水の中に飛んで行ってしまった。
「扇、貸してくださいよぉ。もう暑くってやってらんなぁい。あ、代わりに帽子貸してあげるねっ」
「結構ですわ。もう戻りますから」
固辞するシルヴェーヌの手から扇を取り上げるとアデライドは被っていた帽子のピンを外し、シルヴェーヌの頭にのせた。
「まぁまぁ似合ってる感じぃ?でも私の方が似合ってたかもぉ?」
「そうでしょうね」
シルヴェーヌは被せられた帽子を両手でツバを持った時だった。
目の前のアデライドの目が、カっと見開き驚きの表情になっていた。なんだろう?と思うと同時。
背中に熱いような冷たいような感覚が走った。
「キャァァッ!!」
視界が揺らぐ。アデライドは悲鳴をあげながらシルヴェーヌの胸を思い切り両手でついた。
被せられた帽子が弾みで飛んで噴水の中にパシャンと落ちると同時に少し斜めに振り向いていたシルヴェーヌは噴水の縁に頭をぶつけ、仰向けに倒れた。
アデライドは足がもつれ何度も転びながら会場の方に走って行った。
正門をそのまま馬で駆け抜け、厩舎で馬を預けたクロヴィスは庭園を抜けて庭園側のテラスから会場に入ろうと庭木の間を走っていた時だった。
――もうすぐ噴水が見えるはずだ――
その時、叫び声が聞こえた。声の主は女だと解るがシルヴェーヌの叫び声は聞いた事がないため、本人かどうかはわからない。解るのは叫び声をあげる何かがあったと言う事だった。
植え込みから噴水の前に飛び出すと、血痕が付いた剣を鞘に収め、走り出そうとする男の目の前に現れた。
「貴様っ!!……まさか!ヘルベルトっ?!」
「チッ…面倒なヤツが来やがった」
その背後に女性が1人倒れている。暗がりでも一目でわかった。
「シルヴェーヌっ!」
「えっ?!」
ヘルベルトはクロヴィスの声に反応して驚いた声をあげた。
「貴様‥‥何という事を!」
鞘から剣を抜き、斬りかかればヘルベルトも咄嗟に剣を抜きガキンと受け止めた。
剣技の腕前は互角。だがいつもと違うのはお互いが真剣で一太刀浴びれば命が消える。
打ち合っている所にアデライドが会場に戻った事により、人が走ってくる気配がした。ヘルベルトが一瞬そちらに気を取られたのをクロヴィスは見逃さず利き腕に向かって剣を振った。
「ウワグッ!!」 ガシャン
ヘルベルトが腕を押さえて剣を落とした。
その首元にクロヴィスは剣を突きつけた。
「誰を狙った。誰に頼まれた。言わねばその腕を落とす」
「・・・・」
ヘルベルトは何も答えなかった。いや答えられなかった。
答えてしまえば全てが終わる。年内には妹が2人格下の子爵家だが嫁ぐのだ。
その為に金が必要だったし、自分も妹の夫も要職につけてくれるとの約束があった。
失敗した以上、ヘルベルト自身は罪に問われる。
間違って斬ったのがシルヴェーヌだったのは大誤算だった。
何も喋らなければディオンもセレスタンも慈悲をかけてくれるだろうと考えたのだ。
クロヴィスが振り被ったのを見てヘルベルトは叫んだ。
「言われたんだ!目印は帽子だと!」
ヘルベルトの言葉にクロヴィスはやはりセレスタンの企みだと悟った。
誘拐があると自分をおびき出し、斬らせる。
シルヴェーヌに思慕していた元側近なら辻褄を合わせやすかったのだろう。
だが、どうして?そう考えた時、小さく呻く声がした。
「うぅぅ…」
「シルヴェーヌっ」
駆け寄ってシルヴェーヌを抱き起した。手に感じるのはざっくりと切れた背から流れ出る血液。剣を握っていれば斬った感触で見当はつくが、かなり傷は深いのが解る。
「大丈夫だ。シルヴェーヌっ。大丈夫だから…ごめん‥間に合わなかった」
シルヴェーヌを抱きしめていた手を救護係が運んできた担架に乗せるまで離せなかった。そんなクロヴィスを遠巻きに見て舌打ちする女がセレスタンを肘でついた。
「失敗したじゃないのよ。どうするの」
「参ったね…作戦の練り直しだ」
「しっかりしてよ。泥船に乗ったんじゃないんだから」
中止となった夜会。
招待されていた貴族が帰っていく中、クロヴィスは一人の従者に肩を叩かれた。
「王妃殿下がお呼びで御座います」
シルヴェーヌの血で染まった衣装のままクロヴィスは従者の後ろを歩いた。
時計の針は18時を少し過ぎていた。
馬車なら1時間もかからないし、馬なら飛ばせば30分ほどの距離だが途中破れてバカになった靴を脱ぎ捨てたクロヴィスは足が血だらけになりながらもトラント公爵家の正門に転がり込んだ。
「坊ちゃん!坊ちゃんじゃありませんか!」
「どうされたんです?襲われたのですか?!」
門番が駆け寄ってきた。養子縁組は解消をされたが勝手知ったるトラント公爵家だ。
ここならば夜会に出席できるような身支度も出来る上に、新人の兵士ならば王太子の側近時代に賜ったブローチを身につけていれば入場させてくれる可能性もある。
なんなら【トラント公爵家】と偽ってでも構わないと考えた。
家名詐称は重罪だが、シルヴェーヌにもしもがあっては何にもならない。
何もないのに越した事はないが、もしもを考えた時に何も出来なかったとまた後悔するのは嫌だった。
「もうこの家からは追い出されてるんだが、どうしても夜会に行かねばならないんだ」
15年以上、幼い頃からクロヴィスを知る門番は直ぐに【話の分かる】執事を呼んでくれた。公爵夫妻に気分次第の折檻をされた時も庇ってくれた執事はクロヴィスに手を差し出した。
「クロヴィス様…こんなになって。さぁお入りください。全責任は私が持ちます」
公爵夫妻はもう夜会に出発していて不在だったのも好都合だった。
気心の知れた使用人達は手早くクロヴィスに湯あみをさせて、髪を切り、髭を剃って身支度を整えていく。馬車では間に合わないと言えば騎乗しても問題ない装いで仕上げてくれた。
「もう19時を少し回りました。馬なら15分ほどで行けるでしょう」
「ありがとう。恩にきる」
「どういたしまして。我らは幾ばくもしないうちに定年。立派なお姿を最後に見られた事がなによりの誉で御座います」
トラント公爵家の使用人に見送られて痛む足を鐙にかけ、クロヴィスは馬を走らせた。
〇●〇●〇
「本当に上手くいんでしょうね。貴方のイチオシは首を縦に振らなかったのでしょう?」
「問題ない。同等の腕前ならもう1人予備がいる」
「なら良いけれど…。生き残られると面倒だからしっかり殺って頂戴」
「ククク‥‥女は怖いな」
「あら?失礼ね。男だって十分に怖いわ。昨夜も何度啼かされた事か」
セレスタンと深く口付けを交わし、移ってしまった紅を人差し指でなぞる女は一足先に夜会の会場に消えていった。柱の影から出番を待っていた第二王子ディオンは「趣味を疑う」とホマスタール伯爵家のヘルベルトを従えて現れた。
「いいか?1人でバルコニーでも花摘みでも出た時がチャンスだ。侍女を連れているだろうが構わない。侍女と共に殺れ」
「それは良いんですが、本当に伯爵家を要職に取り込んでくれるんですよね」
「ヘルベルト。何度も言わせるな」
「躊躇うなよ。必ず仕留めるんだ。安定した役職は用意してある」
「頼みますよ。妹も2人年内に結婚するんで」
「目印は道化のような羽根のついた帽子だ。バカの死装束にはお誂え向きだ」
3人の中で会場に入らねばならないディオンは特徴を言い残し扉の向こうに消えていく。セレスタンはヘルベルトの肩を叩き鼓舞した。
〇●〇●〇
「あら?珍しい人を見つけちゃった♡」
視線を声の主に移せばアデライドがシルヴェーヌに微笑んでいた。
真っ赤な口紅は幼い顔にはあまりにあっていないがそのミスマッチが淫靡さを出していた。
シルヴェーヌとディオンが夫婦であって夫婦でない事は参加している者は皆知っている。それでも第二王子の妃ともなれば王家主催の夜会には出席をせざるを得ない。
ディオンとは距離を敢えて取っているが、自由気ままなアデライドまでは制御は出来なかった。
挨拶も終わり歓談の場となっている会場内は多くの貴族でごった返している。
ダンスを踊る者を眺める者達と飲酒を愉しむ者達。窓は開け放たれているものの今夜は風もなく涼しさを感じない。
「可愛いでしょう?ディオンが買ってくれたのぉ。あら?ごめんなさぁい。妃殿下にはなぁんにもないのね。びっくりしちゃうぅ♡」
「お似合いで何よりですわ」
「って、言うかぁ、暑くないですかぁ?崩れないくらい塗ってる妃殿下には判らないかもぉですけどぉ。もうぉぉ暑ぅい!ちょっと涼みません??」
「結構ですわ。お一人でどうぞ」
「そんなに妬かなくてもいいのにぃ。ディオン取られて悔しい~っての。解るのぉ。でもね?仲良くしましょうよぅ。王妃様も側妃様と仲良しでしょぉ?仲良しっていい事ばぁっかりなんですよぉ?」
アデライドはシルヴェーヌの腕を引き、中庭にある噴水まで引っ張って行った。
パタパタと扇で風を送っていたが、手元が滑って扇は噴水の中に飛んで行ってしまった。
「扇、貸してくださいよぉ。もう暑くってやってらんなぁい。あ、代わりに帽子貸してあげるねっ」
「結構ですわ。もう戻りますから」
固辞するシルヴェーヌの手から扇を取り上げるとアデライドは被っていた帽子のピンを外し、シルヴェーヌの頭にのせた。
「まぁまぁ似合ってる感じぃ?でも私の方が似合ってたかもぉ?」
「そうでしょうね」
シルヴェーヌは被せられた帽子を両手でツバを持った時だった。
目の前のアデライドの目が、カっと見開き驚きの表情になっていた。なんだろう?と思うと同時。
背中に熱いような冷たいような感覚が走った。
「キャァァッ!!」
視界が揺らぐ。アデライドは悲鳴をあげながらシルヴェーヌの胸を思い切り両手でついた。
被せられた帽子が弾みで飛んで噴水の中にパシャンと落ちると同時に少し斜めに振り向いていたシルヴェーヌは噴水の縁に頭をぶつけ、仰向けに倒れた。
アデライドは足がもつれ何度も転びながら会場の方に走って行った。
正門をそのまま馬で駆け抜け、厩舎で馬を預けたクロヴィスは庭園を抜けて庭園側のテラスから会場に入ろうと庭木の間を走っていた時だった。
――もうすぐ噴水が見えるはずだ――
その時、叫び声が聞こえた。声の主は女だと解るがシルヴェーヌの叫び声は聞いた事がないため、本人かどうかはわからない。解るのは叫び声をあげる何かがあったと言う事だった。
植え込みから噴水の前に飛び出すと、血痕が付いた剣を鞘に収め、走り出そうとする男の目の前に現れた。
「貴様っ!!……まさか!ヘルベルトっ?!」
「チッ…面倒なヤツが来やがった」
その背後に女性が1人倒れている。暗がりでも一目でわかった。
「シルヴェーヌっ!」
「えっ?!」
ヘルベルトはクロヴィスの声に反応して驚いた声をあげた。
「貴様‥‥何という事を!」
鞘から剣を抜き、斬りかかればヘルベルトも咄嗟に剣を抜きガキンと受け止めた。
剣技の腕前は互角。だがいつもと違うのはお互いが真剣で一太刀浴びれば命が消える。
打ち合っている所にアデライドが会場に戻った事により、人が走ってくる気配がした。ヘルベルトが一瞬そちらに気を取られたのをクロヴィスは見逃さず利き腕に向かって剣を振った。
「ウワグッ!!」 ガシャン
ヘルベルトが腕を押さえて剣を落とした。
その首元にクロヴィスは剣を突きつけた。
「誰を狙った。誰に頼まれた。言わねばその腕を落とす」
「・・・・」
ヘルベルトは何も答えなかった。いや答えられなかった。
答えてしまえば全てが終わる。年内には妹が2人格下の子爵家だが嫁ぐのだ。
その為に金が必要だったし、自分も妹の夫も要職につけてくれるとの約束があった。
失敗した以上、ヘルベルト自身は罪に問われる。
間違って斬ったのがシルヴェーヌだったのは大誤算だった。
何も喋らなければディオンもセレスタンも慈悲をかけてくれるだろうと考えたのだ。
クロヴィスが振り被ったのを見てヘルベルトは叫んだ。
「言われたんだ!目印は帽子だと!」
ヘルベルトの言葉にクロヴィスはやはりセレスタンの企みだと悟った。
誘拐があると自分をおびき出し、斬らせる。
シルヴェーヌに思慕していた元側近なら辻褄を合わせやすかったのだろう。
だが、どうして?そう考えた時、小さく呻く声がした。
「うぅぅ…」
「シルヴェーヌっ」
駆け寄ってシルヴェーヌを抱き起した。手に感じるのはざっくりと切れた背から流れ出る血液。剣を握っていれば斬った感触で見当はつくが、かなり傷は深いのが解る。
「大丈夫だ。シルヴェーヌっ。大丈夫だから…ごめん‥間に合わなかった」
シルヴェーヌを抱きしめていた手を救護係が運んできた担架に乗せるまで離せなかった。そんなクロヴィスを遠巻きに見て舌打ちする女がセレスタンを肘でついた。
「失敗したじゃないのよ。どうするの」
「参ったね…作戦の練り直しだ」
「しっかりしてよ。泥船に乗ったんじゃないんだから」
中止となった夜会。
招待されていた貴族が帰っていく中、クロヴィスは一人の従者に肩を叩かれた。
「王妃殿下がお呼びで御座います」
シルヴェーヌの血で染まった衣装のままクロヴィスは従者の後ろを歩いた。
あなたにおすすめの小説
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
死ぬまでに叶えたい十の願い
木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」
三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。
離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する——
二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。
彼女の離縁とその波紋
豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
記憶が戻ったのは婚約が解消された後でした。
しゃーりん
恋愛
王太子殿下と婚約している公爵令嬢ダイアナは目を覚ますと自分がどこにいるのかわからなかった。
眠る前と部屋の雰囲気が違ったからだ。
侍女とも話が噛み合わず、どうやら丸一年間の記憶がダイアナにはなかった。
ダイアナが記憶にないその一年の間に、王太子殿下との婚約は解消されており、別の男性と先日婚約したばかりだった。
彼が好きになったのは記憶のないダイアナであるため、ダイアナは婚約を解消しようとするお話です。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
彼女の微笑み
豆狸
恋愛
それでも、どんなに美しいとしても、私は彼女のように邪心のない清らかな微笑みを浮かべるよりも、穢れて苦しんで傷ついてあがいて生きることを選びます。
私以外のだれかを愛しながら──