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側妃ダリアの転落②
「執事に?どういう事?」
どちらがこの宮の主なのか判らないほどに落ち着き払ったセレスタンは茶を一口飲んだ。
「マクスウェルが国王でなければダリア、君はどうなると思う?」
「それはっ…だけど失敗したのは貴方でしょう?!」
「失敗?まさか。結果的に上手くいかなかっただけであれは失敗とは言わない。成功して初めてあれは失敗だったと言えるんだよ」
「詭弁だわ。それと貴方が執事になる事と何の関係があるのよ」
「物事を成すに必要なのは意欲、時間、そして金だ。クディエ公爵家の金は240億にしかならなかった。だが私がプールした金は倍はある。それを手にするに必要なパーツが足らないのだ」
「そ…そんな大金、いったいどうやって」
「簡単な事だ。婚約者用の支度金というのは便利でね。私がゼロを一つ、二つ付け加えるだけで金が沸くんだ。それを大事に取り置きしていただけの事だ」
クディエ公爵家から抜き取ってきた金貨、大金貨をじゃらじゃらと掴んでは落としながらセレスタンは笑った。
「おいで」
両手を広げたセレスタンはダリアを呼び、強く抱きしめるとそのまま寝台に転がった。
散々に喘がされた後、ダリアに腕枕をしながらセレスタンは静かに言葉を発した。
「ダリア、大事な仕事をしてもらうよ」
「なぁに…仕事って」
「父上に食事会を進言するんだ。参加者は6人。父上、母上、ベラ、ディオン。そしてダリアとマクスウェル」
「そんなの息が詰まるわ。嫌よ」
「それが胸元を飾る宝飾品が毎日取り換えれられる生活と引き換えだとしても?」
「食事会をするだけでいいの?」
「そう。とっておきのデザートだけは口にするな。二度ともの言えぬようになる」
「毒…ってこと?どうやって」
「そんな事はこちらがやる。ダリアはマクスウェルと食べるのを少し止めておけばいい」
「それをして、どうなるのよ」
「少しの間混沌とするだろうが、カールストンが導く。彼は有能な伝道師でね」
「なによそれ…気持ち悪いわ」
「暫定的にダリアは王妃にしてやる。どうしても王妃の署名が必要なんだ」
「今の側妃での署名じゃダメなの?」
「王妃でなくてはならない。離宮に入り込み失せ物を探すには王妃の署名が必要だ。失せ物が見つかればエンドロールを迎える」
「本当にデザートだけを食べなければいいのね?」
「あぁ、それだけで王妃になれる簡単な仕事だ。ただ金は使うな。いいな」
セレスタンは途方もないほどのケチだとダリアは思っていた。ダリアの宮にはセレスタンが運んできた莫大な財の他にダリアの支度金、増額されたマクスウェルの支度金があるにも関わらず、シルヴェーヌの致傷事件以来転がり込んできて金の管理を徹底して行っていた。
そして、夕食会の日。
ダリアは不安感に襲われていた。もしもセレスタンが自分を【不要】だと思っていれば他の食材にも毒が混ぜられているかも知れない。
不安に押しつぶされそうになったダリアは準備を進めている調理室に向かった。
徹底して管理をされた食材に怪しいところは見られない。
「今回は陛下のご指示ですので毒味役がいない事になっておりますが、盛り付ける際に任意で少しだけこうやって抜き取り、ここにいるものが食しますので安心してください」
ボウルからサラダを抓んだ調理見習いがダリアに微笑んだ。
そして気が付いたのだ。デザートは【保冷】がかなり必要なバニラアイスだった。
皿まで冷たくなる程に既に盛りつけられて冷やされていたのだ。
開け閉めをすると冷気が逃げて溶けてしまうからと氷室から持ってきた氷を敷き詰めた箱に入っているのだろう。蓋の隙間から白い冷気がうっすらと棚引いていた。
その冷気以上にダリアの背筋は凍りついた。
「側妃ダリア様、どうされたのです?」
給仕のメイドがダリアに声をかけてきた。
ダリアは迷った。セレスタンは有言実行する人間である。アデライドを襲った時も少々のイレギュラーには目もくれず作戦を実行した。今回も間違いなく毒は仕込まれている。
自分だけ違うデザートにしてくれというのは、怪しんでくれというようなものだ。
「急で悪いのだけれどマクスウェルは朝食にもバニラアイスを食べたの。別の物にできるかしら」
「朝と同じでは殿下も楽しむ事が出来ませんよね。解りました。伝えておきます」
調理室から戻ろうとしていて、思わず足を止めた。
――さっきのはリーネ?――
セレスタンと共に宮に転がり込んできたリーネ。
給仕のお仕着せを来たリーネとすれ違ったのだ。
何十人もいる給仕。その中には王妃の宮からの者、ばらばらになったが元々ベラの元にいた者、そしてダリアの宮からの給仕も混じっている。入れ替わり立ち代わりになるため途中で1人増えても抜けても気が付かれない。
――だからこの面々での食事会なのね――
このためにリーネも連れてきたのかと思うとダリアはセレスタンの用意周到ぶりに身震いした。
リーネのセレスタンに対する傾倒ぶりは見ていてゾッとした。
足を舐めろと言われれば無表情で足を舐め、夜伽をしろと言われれば夜伽をする。
人間扱いをされていないリーネにはシーツも不要だとセレスタンがいえば、リーネはお仕着せを着たまま床に転がって寝ていた。
ある時、スープの温かさが気に入らないと言ったセレスタンは何をするかと思えば床に皿を置き、リーネに獣のように食べろと言った。四つん這いになったリーネは皿を舐めてスープを飲んだのだ。
「あんな事をして、貴女には矜持がないの?!」
ダリアの問いにリーネは胸に手を当て、目を閉じて恍惚とした表情になった。
「セレスタン様が望まれるなら、応えるのが喜びなのです」
「変よ!貴女おかしいわ。変態じゃない!」
「そうでしょうか?セレスタン様の言動には全て深い意味と愛があるのです」
「不快!の間違いじゃないの?!信じられないわ」
「ダリア様に信じて頂かなくとも、私が信じるのはセレスタン様、ただお1人です」
そんなリーネとすれ違ったダリアはリーネなら毒を盛るだろうと確信した。
狂信的にセレスタンを崇拝すらしているリーネはなんだってするだろうと思ったのだ。
デザートが運ばれてきた時、給仕がダリアに告げた。
別メニューとなったマクスウェルへのデザートは、王都で流行の菓子店に行き購入してきたとの言葉にダリアは安心してせがむマクスウェルに少しだけデザートスプーンで食べさせた。
マクスウェルの【おいち!】という言葉に心から安堵した。
そして予想通りデザートで国王と王妃、ベラは倒れた。
ふと見るとディオンは放心状態だった。
――知らされてなかったの?――
ダリアはセレスタンの恐ろしさを感じ、デザートスプーンを床に落とした。
不要となれば簡単に切り捨てるだけじゃなく、殺されるんだと思うと足が震えた。
――離れなきゃ!――
セレスタンを匿っている今の状況を何とかしないと大変な事になるとやっとダリアは目が覚めた。恐ろしいのはセレスタンが語ったように、王宮は暫くの間、混乱に見舞われた。
その中でカールストンが言ったのだ。
「マクスウェル殿下を一時的に王位に!」
セレスタンの書いたシナリオ通りに物事が進んでいく。
暫定でも王妃という肩書を手に入れたダリアは【王妃の離宮】へセレスタンを赴任させるという命令書に署名をした。
セレスタンが王妃の離宮にリーネと共に出立した日、ダリアは全身の力が抜けて3日寝込んでしまった。しかし見張り役なのかアレンス侯爵家のカールストンが頻繁に出入りするようになった。
2カ月、3カ月と日は過ぎても、目の前にいないセレスタンの影に怯える日々。
だが、カールストンは見張りであって見張りではなかった。
「はぁ~こっちは落ち着くよ。向こうにいると生きた心地がしない」
「ですよねぇ。あんな田舎で食い物がどうだ、ワインがどうだって言われてもね」
「全くだ。それにあのリーネって女。薄気味悪いったらねぇな」
「それ、思ってました。行きも帰りも女に櫓を漕がすなんて何考えてんだか。それに従う女も女ですけどね。大きい事を言ってますけど、リーネって女と側妃様しか味方いないんじゃないですかね」
カールストンが気の置けない従者との会話をしていたのを偶然耳にしたのだ。
思わずダリアはその場に飛び出してしまった。
「違うわ!一緒にしないで!」
カールストンがこちら側だと解ったダリアはカールストンと共に豪遊を始めた。
どうせするような執務も無いと連日商人を読んでセレスタンが【使うな】と言った金で目についたものを買いまくり、時に酒の席を設けて使用人たちに銀貨をバラまいた。
放り投げた銀貨に群がる使用人にダリアもカールストンも腹が捩じれるほど笑った。
私費を使っている間は誰も何も言わない。ダリアは気が付かなかった。
この世の全てを謳歌していたダリアとカールストンを冷めた目で見つめるものがいた事に。
〇●堕落の終焉●〇
入って来る以上に使えば減るのが金。
今日も大量の宝飾品や絵画などを購入したダリアはカールストンと祝杯をあげていた。
祝杯も寝台で汗を掻いた後なら、体の中に浸潤していくのも早く感じる。
セレスタンが離宮に行ってもうすぐ1年。使いまくったクディエ公爵家からもたらされた箱の中に大金貨や金貨はもうなかった。銀貨が少々とあとは銅貨。
「あ~あ。次の買い物は支度金の支給日まで出来そうにないわね」
「金ねぇ…隠し財産とかあればなぁ」
「あっ!」
「どうしたんだ?」
「殿下が言ってたの。クディエ公爵家から巻き上げた金の倍以上の金があるって。だから離宮に行くのに王妃の署名が必要だからと言ったのよ」
ガチャリ
ダリアの言葉と同時に寝室の扉が開くと同時に、数人の衛兵がテーブルに向き合ってワインを飲む2人を取り囲んだ。
「何…ここは私の宮よ!出ていきなさい!」
「出ていくのはどっちかしら?」
衛兵が割れるように体を寄せ動くと、そこに現れたのは扇で口元を隠した王妃だった。
どちらがこの宮の主なのか判らないほどに落ち着き払ったセレスタンは茶を一口飲んだ。
「マクスウェルが国王でなければダリア、君はどうなると思う?」
「それはっ…だけど失敗したのは貴方でしょう?!」
「失敗?まさか。結果的に上手くいかなかっただけであれは失敗とは言わない。成功して初めてあれは失敗だったと言えるんだよ」
「詭弁だわ。それと貴方が執事になる事と何の関係があるのよ」
「物事を成すに必要なのは意欲、時間、そして金だ。クディエ公爵家の金は240億にしかならなかった。だが私がプールした金は倍はある。それを手にするに必要なパーツが足らないのだ」
「そ…そんな大金、いったいどうやって」
「簡単な事だ。婚約者用の支度金というのは便利でね。私がゼロを一つ、二つ付け加えるだけで金が沸くんだ。それを大事に取り置きしていただけの事だ」
クディエ公爵家から抜き取ってきた金貨、大金貨をじゃらじゃらと掴んでは落としながらセレスタンは笑った。
「おいで」
両手を広げたセレスタンはダリアを呼び、強く抱きしめるとそのまま寝台に転がった。
散々に喘がされた後、ダリアに腕枕をしながらセレスタンは静かに言葉を発した。
「ダリア、大事な仕事をしてもらうよ」
「なぁに…仕事って」
「父上に食事会を進言するんだ。参加者は6人。父上、母上、ベラ、ディオン。そしてダリアとマクスウェル」
「そんなの息が詰まるわ。嫌よ」
「それが胸元を飾る宝飾品が毎日取り換えれられる生活と引き換えだとしても?」
「食事会をするだけでいいの?」
「そう。とっておきのデザートだけは口にするな。二度ともの言えぬようになる」
「毒…ってこと?どうやって」
「そんな事はこちらがやる。ダリアはマクスウェルと食べるのを少し止めておけばいい」
「それをして、どうなるのよ」
「少しの間混沌とするだろうが、カールストンが導く。彼は有能な伝道師でね」
「なによそれ…気持ち悪いわ」
「暫定的にダリアは王妃にしてやる。どうしても王妃の署名が必要なんだ」
「今の側妃での署名じゃダメなの?」
「王妃でなくてはならない。離宮に入り込み失せ物を探すには王妃の署名が必要だ。失せ物が見つかればエンドロールを迎える」
「本当にデザートだけを食べなければいいのね?」
「あぁ、それだけで王妃になれる簡単な仕事だ。ただ金は使うな。いいな」
セレスタンは途方もないほどのケチだとダリアは思っていた。ダリアの宮にはセレスタンが運んできた莫大な財の他にダリアの支度金、増額されたマクスウェルの支度金があるにも関わらず、シルヴェーヌの致傷事件以来転がり込んできて金の管理を徹底して行っていた。
そして、夕食会の日。
ダリアは不安感に襲われていた。もしもセレスタンが自分を【不要】だと思っていれば他の食材にも毒が混ぜられているかも知れない。
不安に押しつぶされそうになったダリアは準備を進めている調理室に向かった。
徹底して管理をされた食材に怪しいところは見られない。
「今回は陛下のご指示ですので毒味役がいない事になっておりますが、盛り付ける際に任意で少しだけこうやって抜き取り、ここにいるものが食しますので安心してください」
ボウルからサラダを抓んだ調理見習いがダリアに微笑んだ。
そして気が付いたのだ。デザートは【保冷】がかなり必要なバニラアイスだった。
皿まで冷たくなる程に既に盛りつけられて冷やされていたのだ。
開け閉めをすると冷気が逃げて溶けてしまうからと氷室から持ってきた氷を敷き詰めた箱に入っているのだろう。蓋の隙間から白い冷気がうっすらと棚引いていた。
その冷気以上にダリアの背筋は凍りついた。
「側妃ダリア様、どうされたのです?」
給仕のメイドがダリアに声をかけてきた。
ダリアは迷った。セレスタンは有言実行する人間である。アデライドを襲った時も少々のイレギュラーには目もくれず作戦を実行した。今回も間違いなく毒は仕込まれている。
自分だけ違うデザートにしてくれというのは、怪しんでくれというようなものだ。
「急で悪いのだけれどマクスウェルは朝食にもバニラアイスを食べたの。別の物にできるかしら」
「朝と同じでは殿下も楽しむ事が出来ませんよね。解りました。伝えておきます」
調理室から戻ろうとしていて、思わず足を止めた。
――さっきのはリーネ?――
セレスタンと共に宮に転がり込んできたリーネ。
給仕のお仕着せを来たリーネとすれ違ったのだ。
何十人もいる給仕。その中には王妃の宮からの者、ばらばらになったが元々ベラの元にいた者、そしてダリアの宮からの給仕も混じっている。入れ替わり立ち代わりになるため途中で1人増えても抜けても気が付かれない。
――だからこの面々での食事会なのね――
このためにリーネも連れてきたのかと思うとダリアはセレスタンの用意周到ぶりに身震いした。
リーネのセレスタンに対する傾倒ぶりは見ていてゾッとした。
足を舐めろと言われれば無表情で足を舐め、夜伽をしろと言われれば夜伽をする。
人間扱いをされていないリーネにはシーツも不要だとセレスタンがいえば、リーネはお仕着せを着たまま床に転がって寝ていた。
ある時、スープの温かさが気に入らないと言ったセレスタンは何をするかと思えば床に皿を置き、リーネに獣のように食べろと言った。四つん這いになったリーネは皿を舐めてスープを飲んだのだ。
「あんな事をして、貴女には矜持がないの?!」
ダリアの問いにリーネは胸に手を当て、目を閉じて恍惚とした表情になった。
「セレスタン様が望まれるなら、応えるのが喜びなのです」
「変よ!貴女おかしいわ。変態じゃない!」
「そうでしょうか?セレスタン様の言動には全て深い意味と愛があるのです」
「不快!の間違いじゃないの?!信じられないわ」
「ダリア様に信じて頂かなくとも、私が信じるのはセレスタン様、ただお1人です」
そんなリーネとすれ違ったダリアはリーネなら毒を盛るだろうと確信した。
狂信的にセレスタンを崇拝すらしているリーネはなんだってするだろうと思ったのだ。
デザートが運ばれてきた時、給仕がダリアに告げた。
別メニューとなったマクスウェルへのデザートは、王都で流行の菓子店に行き購入してきたとの言葉にダリアは安心してせがむマクスウェルに少しだけデザートスプーンで食べさせた。
マクスウェルの【おいち!】という言葉に心から安堵した。
そして予想通りデザートで国王と王妃、ベラは倒れた。
ふと見るとディオンは放心状態だった。
――知らされてなかったの?――
ダリアはセレスタンの恐ろしさを感じ、デザートスプーンを床に落とした。
不要となれば簡単に切り捨てるだけじゃなく、殺されるんだと思うと足が震えた。
――離れなきゃ!――
セレスタンを匿っている今の状況を何とかしないと大変な事になるとやっとダリアは目が覚めた。恐ろしいのはセレスタンが語ったように、王宮は暫くの間、混乱に見舞われた。
その中でカールストンが言ったのだ。
「マクスウェル殿下を一時的に王位に!」
セレスタンの書いたシナリオ通りに物事が進んでいく。
暫定でも王妃という肩書を手に入れたダリアは【王妃の離宮】へセレスタンを赴任させるという命令書に署名をした。
セレスタンが王妃の離宮にリーネと共に出立した日、ダリアは全身の力が抜けて3日寝込んでしまった。しかし見張り役なのかアレンス侯爵家のカールストンが頻繁に出入りするようになった。
2カ月、3カ月と日は過ぎても、目の前にいないセレスタンの影に怯える日々。
だが、カールストンは見張りであって見張りではなかった。
「はぁ~こっちは落ち着くよ。向こうにいると生きた心地がしない」
「ですよねぇ。あんな田舎で食い物がどうだ、ワインがどうだって言われてもね」
「全くだ。それにあのリーネって女。薄気味悪いったらねぇな」
「それ、思ってました。行きも帰りも女に櫓を漕がすなんて何考えてんだか。それに従う女も女ですけどね。大きい事を言ってますけど、リーネって女と側妃様しか味方いないんじゃないですかね」
カールストンが気の置けない従者との会話をしていたのを偶然耳にしたのだ。
思わずダリアはその場に飛び出してしまった。
「違うわ!一緒にしないで!」
カールストンがこちら側だと解ったダリアはカールストンと共に豪遊を始めた。
どうせするような執務も無いと連日商人を読んでセレスタンが【使うな】と言った金で目についたものを買いまくり、時に酒の席を設けて使用人たちに銀貨をバラまいた。
放り投げた銀貨に群がる使用人にダリアもカールストンも腹が捩じれるほど笑った。
私費を使っている間は誰も何も言わない。ダリアは気が付かなかった。
この世の全てを謳歌していたダリアとカールストンを冷めた目で見つめるものがいた事に。
〇●堕落の終焉●〇
入って来る以上に使えば減るのが金。
今日も大量の宝飾品や絵画などを購入したダリアはカールストンと祝杯をあげていた。
祝杯も寝台で汗を掻いた後なら、体の中に浸潤していくのも早く感じる。
セレスタンが離宮に行ってもうすぐ1年。使いまくったクディエ公爵家からもたらされた箱の中に大金貨や金貨はもうなかった。銀貨が少々とあとは銅貨。
「あ~あ。次の買い物は支度金の支給日まで出来そうにないわね」
「金ねぇ…隠し財産とかあればなぁ」
「あっ!」
「どうしたんだ?」
「殿下が言ってたの。クディエ公爵家から巻き上げた金の倍以上の金があるって。だから離宮に行くのに王妃の署名が必要だからと言ったのよ」
ガチャリ
ダリアの言葉と同時に寝室の扉が開くと同時に、数人の衛兵がテーブルに向き合ってワインを飲む2人を取り囲んだ。
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