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第04話 そういう事よね
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「なんでお前がいるんだよ」
「いいじゃない。ね?いたっていいわよね?」
「私はどちらでも」
「ほら、良いって言ってるじゃないの。お茶はね、人数が多ければ多いほど楽しいのよ」
コーディリアとロベルトだけの茶会に何故かレティシアも参加をするようになった。
しかも四角いテーブルで1:2で向かい合わせ。
並んで腰かけているのはロベルトとレティシアだ。
ふと周囲の従者を見るとそっと顔を逸らせたり、俯いたり。
誰もこの状況を「おかしい」と言ってくれる者は居ない。
――ふむ。つまりは ”そういうこと” ってこと?――
コーディリアが添え物状態であることに異を唱えるものがいないのだからコーディリアが自分の事を「お邪魔虫」と捉えても不思議はない。
ロベルトに乳母は必要なかったけれど、王妃の側付きとしてレティシアの母親が王宮に上がっている。レティシアは母親と共に登城しロベルトの元を頻繁に訪れ、遂にはコーディリアとの時間にまで割り入ってくるようになった。
従者たちはレティシアの参加を良くは考えていないようだったが、それまでがそれまで。ロベルトは余りにも長い時間レティシアと行動を共にしてきたので、市井に出る時などに注意をすればロベルトに「口を出すな」と言われてきたことも相まって誰も注意が出来なかった。
第2王子が「ボロム子爵令嬢には帰って貰え」と言ったのもロベルトには逆効果。兄には強い劣等感のあるロベルトは素直に忠告を受けることが出来なかったのである。
レティシアの参加を拒まない上に、慣れもあってか愛称呼び。
ロベルトが自身の間違いにも気が付くことが無かったのもコーディリアの心を遠ざけた。
「次は散策に行こう。山百合が見頃だそうだ」
「じゃぁ次は動きやすい恰好で来るわね」
「レティに言ってるんじゃない。リアを誘ってるんだ」
「みんなで行った方が楽しいわ。今までもそうだったじゃない。最近、集まりに来ないって皆ボヤいてたわよ?」
「来なくてもあいつらはあいつらで楽しんでるさ」
「それがねぇ。あのダーツバー!営業が少し変わっちゃったの。隣がワンスロー終えるまで投げちゃダメとか。へんなハウスルール出来ちゃって。だって、ほら!隣のチームと競い合ったりするのも醍醐味じゃない?」
「店がそういうルールにしたんだろ。あの店は自由過ぎたしな」
「そこが良かったのよ。だから遊べたのに。ねぇ、偶には行かない?」
次の予定を告げられる場面でコーディリアは返事をするチャンスを失っただけでなく、レティシアとロベルトしか解らない会話を始めてしまうので、コーディリアは段々と必要以上の答えを返すことも無くなった。
山百合を見る散策もロベルトが迎えに来たと思えばレティシアも馬車に同乗していて、コーディリアが乗りこめばコーディリアの向かいにロベルトとレティシア。
観劇に行けば第3王子という立場からBOX席なので「席に余裕あるでしょ?」当たり前のようにレティシアもやってくる。
出先で馬車から降りる時は先にロベルトが下りて次にレティシアが下りる。
コーディリアが下車しようとすると手を貸すロベルトをレティシアが「早く、早く」と引っ張るのでコーディリアは結局御者に手を貸してもらって下車をする羽目になる。
傍から見ればコーディリアは女性の付き人にしか見えないし、夜会などはエスコートされて入場はしてもロベルトは先に入場していたレティシアに掴まり1時間以上コーディリアは壁の華。
コーディリアが「私っている意味あるのかな?」と考えてしまうのも仕方がない。
そしてコーディリアの誕生日にロベルトは宝飾品を贈ってくれたのだが…。
「ほらぁ!やっぱり似合ってる!絶対にリアに似合うと思ったのよ。見て?お揃いっ」
「おい。バラすなよ。レティはなんでそんなに自分の手柄にしたがるんだよ」
「欲張りなんですぅ~だ」
「なんだそれ。アハハ」
コーディリアはケースに入ったピアスを見て「これをどうしろと?」悩んでしまう。
なんせピアス穴は空けていないのでピアスを貰っても身に付けることは出来ないし、ロベルトが贈り物に迷って誰かに相談は結構だが隠して欲しいと思うのだ。
特にレティシアは王女でもないし侍女やメイド、女官でもない。
――これ、モヤるわぁ――
コーディリアとしてはいい気はしない。
かと言って隠されても気分の良いものではない。
この流れでロベルトが違和感を覚えていない事が違和感にしか感じない。
マージカル王国ではピアスは単に宝飾品と言う意味があるだけではなく、身に付けることで「関係を持ちました」という事を周囲に知らせる意味もある。
貞操観念が無い訳ではないが、婚約をしていれば関係を持っていても咎められる事はないので未婚であっても婚約者から贈られたピアスをしている令嬢もいるが、コーディリアは相手がロベルトなので王族は初婚同士に限ると規定をされている事からピアスを贈られても困惑するだけ。
ドン引きなのは「見て?お揃い」とレティシアが自分の耳たぶを見せようと髪を耳の後ろに引っかけた時に輝いていたのはケースに入ったピアスと全く同じ石のついたピアスだった。
王族しか持たない色、つまりは。
――そういう事、よね?――
コーディリアがそう思うのは自然な流れ。
ロベルトと会うたびに「レティシアとの関係」を強調されれば釘を刺されている気持ちになる。
ロベルトは熱のこもった目でコーディリアを見つめて来るけれど、コーディリアは正直な気持ちとして会うたびに心が「すん」と冷えて行った。
「いいじゃない。ね?いたっていいわよね?」
「私はどちらでも」
「ほら、良いって言ってるじゃないの。お茶はね、人数が多ければ多いほど楽しいのよ」
コーディリアとロベルトだけの茶会に何故かレティシアも参加をするようになった。
しかも四角いテーブルで1:2で向かい合わせ。
並んで腰かけているのはロベルトとレティシアだ。
ふと周囲の従者を見るとそっと顔を逸らせたり、俯いたり。
誰もこの状況を「おかしい」と言ってくれる者は居ない。
――ふむ。つまりは ”そういうこと” ってこと?――
コーディリアが添え物状態であることに異を唱えるものがいないのだからコーディリアが自分の事を「お邪魔虫」と捉えても不思議はない。
ロベルトに乳母は必要なかったけれど、王妃の側付きとしてレティシアの母親が王宮に上がっている。レティシアは母親と共に登城しロベルトの元を頻繁に訪れ、遂にはコーディリアとの時間にまで割り入ってくるようになった。
従者たちはレティシアの参加を良くは考えていないようだったが、それまでがそれまで。ロベルトは余りにも長い時間レティシアと行動を共にしてきたので、市井に出る時などに注意をすればロベルトに「口を出すな」と言われてきたことも相まって誰も注意が出来なかった。
第2王子が「ボロム子爵令嬢には帰って貰え」と言ったのもロベルトには逆効果。兄には強い劣等感のあるロベルトは素直に忠告を受けることが出来なかったのである。
レティシアの参加を拒まない上に、慣れもあってか愛称呼び。
ロベルトが自身の間違いにも気が付くことが無かったのもコーディリアの心を遠ざけた。
「次は散策に行こう。山百合が見頃だそうだ」
「じゃぁ次は動きやすい恰好で来るわね」
「レティに言ってるんじゃない。リアを誘ってるんだ」
「みんなで行った方が楽しいわ。今までもそうだったじゃない。最近、集まりに来ないって皆ボヤいてたわよ?」
「来なくてもあいつらはあいつらで楽しんでるさ」
「それがねぇ。あのダーツバー!営業が少し変わっちゃったの。隣がワンスロー終えるまで投げちゃダメとか。へんなハウスルール出来ちゃって。だって、ほら!隣のチームと競い合ったりするのも醍醐味じゃない?」
「店がそういうルールにしたんだろ。あの店は自由過ぎたしな」
「そこが良かったのよ。だから遊べたのに。ねぇ、偶には行かない?」
次の予定を告げられる場面でコーディリアは返事をするチャンスを失っただけでなく、レティシアとロベルトしか解らない会話を始めてしまうので、コーディリアは段々と必要以上の答えを返すことも無くなった。
山百合を見る散策もロベルトが迎えに来たと思えばレティシアも馬車に同乗していて、コーディリアが乗りこめばコーディリアの向かいにロベルトとレティシア。
観劇に行けば第3王子という立場からBOX席なので「席に余裕あるでしょ?」当たり前のようにレティシアもやってくる。
出先で馬車から降りる時は先にロベルトが下りて次にレティシアが下りる。
コーディリアが下車しようとすると手を貸すロベルトをレティシアが「早く、早く」と引っ張るのでコーディリアは結局御者に手を貸してもらって下車をする羽目になる。
傍から見ればコーディリアは女性の付き人にしか見えないし、夜会などはエスコートされて入場はしてもロベルトは先に入場していたレティシアに掴まり1時間以上コーディリアは壁の華。
コーディリアが「私っている意味あるのかな?」と考えてしまうのも仕方がない。
そしてコーディリアの誕生日にロベルトは宝飾品を贈ってくれたのだが…。
「ほらぁ!やっぱり似合ってる!絶対にリアに似合うと思ったのよ。見て?お揃いっ」
「おい。バラすなよ。レティはなんでそんなに自分の手柄にしたがるんだよ」
「欲張りなんですぅ~だ」
「なんだそれ。アハハ」
コーディリアはケースに入ったピアスを見て「これをどうしろと?」悩んでしまう。
なんせピアス穴は空けていないのでピアスを貰っても身に付けることは出来ないし、ロベルトが贈り物に迷って誰かに相談は結構だが隠して欲しいと思うのだ。
特にレティシアは王女でもないし侍女やメイド、女官でもない。
――これ、モヤるわぁ――
コーディリアとしてはいい気はしない。
かと言って隠されても気分の良いものではない。
この流れでロベルトが違和感を覚えていない事が違和感にしか感じない。
マージカル王国ではピアスは単に宝飾品と言う意味があるだけではなく、身に付けることで「関係を持ちました」という事を周囲に知らせる意味もある。
貞操観念が無い訳ではないが、婚約をしていれば関係を持っていても咎められる事はないので未婚であっても婚約者から贈られたピアスをしている令嬢もいるが、コーディリアは相手がロベルトなので王族は初婚同士に限ると規定をされている事からピアスを贈られても困惑するだけ。
ドン引きなのは「見て?お揃い」とレティシアが自分の耳たぶを見せようと髪を耳の後ろに引っかけた時に輝いていたのはケースに入ったピアスと全く同じ石のついたピアスだった。
王族しか持たない色、つまりは。
――そういう事、よね?――
コーディリアがそう思うのは自然な流れ。
ロベルトと会うたびに「レティシアとの関係」を強調されれば釘を刺されている気持ちになる。
ロベルトは熱のこもった目でコーディリアを見つめて来るけれど、コーディリアは正直な気持ちとして会うたびに心が「すん」と冷えて行った。
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