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第36話 口入屋のジョン
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「うーん。受信は出来るけど聞き取れないなぁ。軍用無線だからだろうけど」
レックスの家には船と更新するために無線機がある。
比較的簡単に離れた場所でも連絡が取りあえるので港町では多くの家が設置をしていた。
電話も普及はしているのだが、権利が高額であることや電話線を敷設していないといけないので軍関係の施設を中心としてその周囲だけに限られていて、電話の権利を購入しても配線されていなければ使えない。
港町に住む人に限らず山間部に住む者も連絡手段は昔ながらの手紙と無線だった。
レックスの家の近所でも自国の成果は気になるようで、各々が受信した内容を持ち寄ってあぁだこぅだと好き勝手に話をして盛り上がっている。
「今ある情報だと、王都は落ちたみたいだ。信憑性は70%かな」
「心配よね」
レックスの妻がアイリーンにココアを差し出した。
「ありがとう。私が心配しても仕方ないんだけど」
「そんな事ないわよ」
レックスの妻も吐く言葉がありきたり。しかしそれしかアイリーンに掛ける言葉がなかった。
メレディスは狩りをするための更新で役所に出向いている。1人でいるよりも誰かといた方が気が紛れると思ってレックスの家にアイリーンを留守番させたが、時折ほぼ雑音の中に人の声の混じる音が無線機から聞こえてくるとアイリーンはその度に耳を澄ませた。
「おーい。レックス。いるかぁ」
「どうしたんだ。ジョン」
「いやぁ参った、参った」
ジョンは口入屋の仕事を生業としているのだが、占領下に置く海の向こうの国で自国が領土とする地に港湾を作ったり、道を整備したりの監督が出来る人間を国から用意して欲しいと頼まれているのだが、誰も行きたがらない。
水を飲もうにも井戸からくみ上げる生活なんて経験者の方が少ないし、電気もない夜があった時代は40代以上しか経験をした事がないのだ。
そんなところに少々賃金を奮発しても行ってくれる人がいないと頭を抱えていた。
「その他にさぁ。通訳っての?言葉が判る人間を探してくれって無茶振りもイイところだよ」
「通訳?現地で?」
「いや、現地にもいずれは必要になるだろうけど今はほぼ片言だろ?まるっきり通じない訳じゃないけど商用言語とか、条約を締結する時の言語ってのは特殊でな。言い回しでどうとでも取れる言葉も判ってないといけないからさぁ。ただのネイティブじゃダメなんだよ」
レックスはちらっとアイリーンを見た。
目が合ったアイリーンは「ん?」とジョンの言葉よりも無線機の方に集中していたので何の話をしているのか聞いてもいなかったので首を傾げた。
「誰かいねぇかなぁ。懸賞金稼ぎでそっち方面、いねぇ?」
「どうかなぁ、いるっちゃいるけど、いないっちゃいない…ただのネイティブじゃダメなんだろ?」
「そぉぉお~なんですよ。レックスさん!」
お道化てはいるが、期待も込めてジョンはレックスに顔をヌゥッと近づけたが、メレディスを抜きにしてアイリーンはどうだろうと言う事も出来ずレックスはその場をはぐらかした。
船を使って海上でのイケナイ取引をぶち壊し、憲兵や海上警備隊に引き渡している懸賞金稼ぎ達は、他国で拿捕される事もある。
強制的に船など没収される事もあるので、駆け引きをするため拿捕される可能性のある国の代弁士などとは年間契約をしたりしているし、レーノルト大陸でもはずれにあるごく一部の国とは盛んに交易している国もあるかんけいで言語に精通している懸賞金稼ぎも結構いるのだ。
ただ、その国と、今回メレディスやレックスの母国が攻め入ったアイリーンの母国は別の国。
ジョンには「探しておくよ」と声を掛けたレックスは、1時間ほどしてアイリーンを迎えに来たメレディスに「どうだろうか」と問うてみた。
メレディスは1言で結果を返した。
「断る」
予想はしていたのでレックスはそれ以上この話題を口にする事はしなかった。
レックスの家には船と更新するために無線機がある。
比較的簡単に離れた場所でも連絡が取りあえるので港町では多くの家が設置をしていた。
電話も普及はしているのだが、権利が高額であることや電話線を敷設していないといけないので軍関係の施設を中心としてその周囲だけに限られていて、電話の権利を購入しても配線されていなければ使えない。
港町に住む人に限らず山間部に住む者も連絡手段は昔ながらの手紙と無線だった。
レックスの家の近所でも自国の成果は気になるようで、各々が受信した内容を持ち寄ってあぁだこぅだと好き勝手に話をして盛り上がっている。
「今ある情報だと、王都は落ちたみたいだ。信憑性は70%かな」
「心配よね」
レックスの妻がアイリーンにココアを差し出した。
「ありがとう。私が心配しても仕方ないんだけど」
「そんな事ないわよ」
レックスの妻も吐く言葉がありきたり。しかしそれしかアイリーンに掛ける言葉がなかった。
メレディスは狩りをするための更新で役所に出向いている。1人でいるよりも誰かといた方が気が紛れると思ってレックスの家にアイリーンを留守番させたが、時折ほぼ雑音の中に人の声の混じる音が無線機から聞こえてくるとアイリーンはその度に耳を澄ませた。
「おーい。レックス。いるかぁ」
「どうしたんだ。ジョン」
「いやぁ参った、参った」
ジョンは口入屋の仕事を生業としているのだが、占領下に置く海の向こうの国で自国が領土とする地に港湾を作ったり、道を整備したりの監督が出来る人間を国から用意して欲しいと頼まれているのだが、誰も行きたがらない。
水を飲もうにも井戸からくみ上げる生活なんて経験者の方が少ないし、電気もない夜があった時代は40代以上しか経験をした事がないのだ。
そんなところに少々賃金を奮発しても行ってくれる人がいないと頭を抱えていた。
「その他にさぁ。通訳っての?言葉が判る人間を探してくれって無茶振りもイイところだよ」
「通訳?現地で?」
「いや、現地にもいずれは必要になるだろうけど今はほぼ片言だろ?まるっきり通じない訳じゃないけど商用言語とか、条約を締結する時の言語ってのは特殊でな。言い回しでどうとでも取れる言葉も判ってないといけないからさぁ。ただのネイティブじゃダメなんだよ」
レックスはちらっとアイリーンを見た。
目が合ったアイリーンは「ん?」とジョンの言葉よりも無線機の方に集中していたので何の話をしているのか聞いてもいなかったので首を傾げた。
「誰かいねぇかなぁ。懸賞金稼ぎでそっち方面、いねぇ?」
「どうかなぁ、いるっちゃいるけど、いないっちゃいない…ただのネイティブじゃダメなんだろ?」
「そぉぉお~なんですよ。レックスさん!」
お道化てはいるが、期待も込めてジョンはレックスに顔をヌゥッと近づけたが、メレディスを抜きにしてアイリーンはどうだろうと言う事も出来ずレックスはその場をはぐらかした。
船を使って海上でのイケナイ取引をぶち壊し、憲兵や海上警備隊に引き渡している懸賞金稼ぎ達は、他国で拿捕される事もある。
強制的に船など没収される事もあるので、駆け引きをするため拿捕される可能性のある国の代弁士などとは年間契約をしたりしているし、レーノルト大陸でもはずれにあるごく一部の国とは盛んに交易している国もあるかんけいで言語に精通している懸賞金稼ぎも結構いるのだ。
ただ、その国と、今回メレディスやレックスの母国が攻め入ったアイリーンの母国は別の国。
ジョンには「探しておくよ」と声を掛けたレックスは、1時間ほどしてアイリーンを迎えに来たメレディスに「どうだろうか」と問うてみた。
メレディスは1言で結果を返した。
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