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第40話 分けてあげない
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離宮での生活は楽ではなかった。
寝る場所は確保できたが、着ている服の着替えはないし食料だってない。
唯一井戸の水は自由に飲んでいいと言われたけれど、汲み上げてみれば色々と浮いていて一度煮沸しないととても飲めそうにない。
気にしなければ飲めるし、水はこれしかないとなれば飲むしかない。
浮いていたり、沈んでいる物体は見なかった事にして世話をする者もいない離宮の庭で食べられそうな野菜っぽい実や、木の実を拾って来て食べる。
王太子たちは何を食べているのだろうと窓からそっと覗いた事があったが自分たちよりは豪華な食事をしていた。王太子妃の実家が食料を支援していると聞いたので、分けてもらう事はできなかった。
「ねぇ。お腹空いたっ」
「その辺の草、取って来いよ」
「またなの?侯爵家当主なのに草食べるってどうなの?」
「嫌なら出て行けよ」
「嫌よ。行くとこ…ないもの」
お互い毎日空腹を少しの草で紛らわせているけれど、空腹であると言う事は人を獣にする。
理性が働かなくなってその時思ったまま、感じたままに行動をしてしまうのだ。
庭に実っているスモモであったり、ナスビ、トマトを見つけると貪るように口に入れる。付き纏うシルフィーが「私も頂戴!」と食べかけを奪いに来るのでドウェインは思い切り殴りつけて1人で食べつくす。
出航の日まで3週間を切った時、シルフィーを殴るとスカートのポケットから硬貨が1枚転がった。ドウェインがポケットに手を無理やり入れると札も何枚か出て来た。
「なんだこれは!!」
「いいじゃない!私のお金っ!」
「なんで金を持ってるんだ!」
「どうだっていいでしょう?昨日も何も分けてくれなかった癖に。ドウェインが分けてくれないんだから私も分けてあげない」
そう言えば昨日、監視をしている兵士からジャガイモの葉を教えてもらい、抜くと小ぶりなジャガイモがゴロゴロと出て来たので煮て食べた。
シルフィーが分けてくれと言ったが、全部を食べても腹5分目にもならない量だったので分けずにいたら、シルフィーは明け方まで帰ってこなかった。
「お前、昨夜何処に行ってたんだ」
「どこだっていいじゃない」
何時になく強気な態度のシルフィーに腹も立ったが、ふと思い出した。
「お前、妊娠してるんじゃなかったのか?」
「え?あ~あれ?嘘に決まってるでしょ?それにドウェインが今だ!って思わないと子供は出来ないんでしょ?あれ?祈祷師に払うお金もないから今、シちゃうとデキちゃうかも?」
今までなら「する?」と迫ってきたのにシルフィーは井戸に行って汲み上げた水で手足を洗い始めた。その時からだった。シルフィーがふらりと出て行くと明け方に帰ってくるようになったのだ。
同時に監視の兵士はドウェインを見てニヤニヤと嫌な笑みを向けるようになった。
気にしないようにしていたのだが、出航の前日。
王太子から着替えだと衣類を渡された。
暫く湯も浴びていなかったが、湯殿を貸してくれると言うので体に張り付いた汚れを洗い流し、髭も剃った。
シルフィーも連れて行っていいと言うので、シルフィーがどうするかを聞こうと部屋で待ったが真夜中になってもシルフィーは戻って来ず、やっと戻ってきたのは出航する船に向けてトラックが出発する1時間前だった。
「何処に行ってたんだ」
「どこだっていいでしょ?眠いから寝るわ」
フラフラとおぼつかない足取りで寝台に倒れ込むシルフィーからあり得ない香りがした。
「‥‥この香り…シルフィー!お前、酒を飲んだのか?」
「なにぃ?頭痛いんだから大きな声、出さないでよ」
「私が問うているんだ。答えろ!」
眠いと言って横になっているシルフィーの腕を掴んで起こしたのだが、はだけた足に見覚えのある傷があった。バッとスカートを捲るとシルフィーはニヤッと笑った。
「残念だけどドウェインとはシテあげない。だってお金くれないでしょ?」
「お前っ!!体を売っているのか!!」
「いいでしょ?それで夜にご飯食べさせてくれるんだもの。何回かお小遣いも貰ったのよ?」
「貴様、私の妻だと言う自覚があるのか?!体を売るなんて娼婦じゃないか!」
「都合の良い時だけ妻、妻、言わないでよ!認めないんでしょ?アンタの妻はアイリーンだ~け。なんでしょ!」
小馬鹿にしたように指でツンツンとドウェインの胸と股間を突いたシルフィーにドウェインは頭に血が上った。
「そんなに縛り上げて欲しいのなら縛ってやる!こいっ!」
シルフィーの衣類を引き裂いて庭に連れて行くと薪などを一纏めに縛っておく荒縄でシルフィーを縛り上げ、猿轡を噛ませ、木の幹に括りつけた。
「気が済むまでそうしていればいい」
「うぅぅー!!」
ドウェインはシルフィーをそのままにトラックに乗り込んだ。
★~★
陽が高く昇っても、夕焼けが終わって空が暗くなってもシルフィーの元にドウェインはやってこない。すぐ前は2人が使ってい良いと貸してもらった部屋だが、明かりが点くことも無い。
――嘘でしょ?私、何時までこうしてなきゃいけないの?――
縛られた時は酒も入っていて眠気もあったので、縛られたまま寝てしまった。
じりじりと照り付ける太陽の熱に目が覚めたが、巡回の兵士が愉快そうに眺めるだけで縄を解いてくれる気配もない。
虫が体を何匹も這いまわっているけれど、動くことも出来ず誰かが気が付いてくれればと唸ってみるが猿轡が邪魔をして大きな声が出せずにいた。
――誰か、助けてよ!――
願いが通じたのか。月が空に高く上った頃、ガサっと音がしてシルフィーが顔を上げると目の前に人が立っていた。
寝る場所は確保できたが、着ている服の着替えはないし食料だってない。
唯一井戸の水は自由に飲んでいいと言われたけれど、汲み上げてみれば色々と浮いていて一度煮沸しないととても飲めそうにない。
気にしなければ飲めるし、水はこれしかないとなれば飲むしかない。
浮いていたり、沈んでいる物体は見なかった事にして世話をする者もいない離宮の庭で食べられそうな野菜っぽい実や、木の実を拾って来て食べる。
王太子たちは何を食べているのだろうと窓からそっと覗いた事があったが自分たちよりは豪華な食事をしていた。王太子妃の実家が食料を支援していると聞いたので、分けてもらう事はできなかった。
「ねぇ。お腹空いたっ」
「その辺の草、取って来いよ」
「またなの?侯爵家当主なのに草食べるってどうなの?」
「嫌なら出て行けよ」
「嫌よ。行くとこ…ないもの」
お互い毎日空腹を少しの草で紛らわせているけれど、空腹であると言う事は人を獣にする。
理性が働かなくなってその時思ったまま、感じたままに行動をしてしまうのだ。
庭に実っているスモモであったり、ナスビ、トマトを見つけると貪るように口に入れる。付き纏うシルフィーが「私も頂戴!」と食べかけを奪いに来るのでドウェインは思い切り殴りつけて1人で食べつくす。
出航の日まで3週間を切った時、シルフィーを殴るとスカートのポケットから硬貨が1枚転がった。ドウェインがポケットに手を無理やり入れると札も何枚か出て来た。
「なんだこれは!!」
「いいじゃない!私のお金っ!」
「なんで金を持ってるんだ!」
「どうだっていいでしょう?昨日も何も分けてくれなかった癖に。ドウェインが分けてくれないんだから私も分けてあげない」
そう言えば昨日、監視をしている兵士からジャガイモの葉を教えてもらい、抜くと小ぶりなジャガイモがゴロゴロと出て来たので煮て食べた。
シルフィーが分けてくれと言ったが、全部を食べても腹5分目にもならない量だったので分けずにいたら、シルフィーは明け方まで帰ってこなかった。
「お前、昨夜何処に行ってたんだ」
「どこだっていいじゃない」
何時になく強気な態度のシルフィーに腹も立ったが、ふと思い出した。
「お前、妊娠してるんじゃなかったのか?」
「え?あ~あれ?嘘に決まってるでしょ?それにドウェインが今だ!って思わないと子供は出来ないんでしょ?あれ?祈祷師に払うお金もないから今、シちゃうとデキちゃうかも?」
今までなら「する?」と迫ってきたのにシルフィーは井戸に行って汲み上げた水で手足を洗い始めた。その時からだった。シルフィーがふらりと出て行くと明け方に帰ってくるようになったのだ。
同時に監視の兵士はドウェインを見てニヤニヤと嫌な笑みを向けるようになった。
気にしないようにしていたのだが、出航の前日。
王太子から着替えだと衣類を渡された。
暫く湯も浴びていなかったが、湯殿を貸してくれると言うので体に張り付いた汚れを洗い流し、髭も剃った。
シルフィーも連れて行っていいと言うので、シルフィーがどうするかを聞こうと部屋で待ったが真夜中になってもシルフィーは戻って来ず、やっと戻ってきたのは出航する船に向けてトラックが出発する1時間前だった。
「何処に行ってたんだ」
「どこだっていいでしょ?眠いから寝るわ」
フラフラとおぼつかない足取りで寝台に倒れ込むシルフィーからあり得ない香りがした。
「‥‥この香り…シルフィー!お前、酒を飲んだのか?」
「なにぃ?頭痛いんだから大きな声、出さないでよ」
「私が問うているんだ。答えろ!」
眠いと言って横になっているシルフィーの腕を掴んで起こしたのだが、はだけた足に見覚えのある傷があった。バッとスカートを捲るとシルフィーはニヤッと笑った。
「残念だけどドウェインとはシテあげない。だってお金くれないでしょ?」
「お前っ!!体を売っているのか!!」
「いいでしょ?それで夜にご飯食べさせてくれるんだもの。何回かお小遣いも貰ったのよ?」
「貴様、私の妻だと言う自覚があるのか?!体を売るなんて娼婦じゃないか!」
「都合の良い時だけ妻、妻、言わないでよ!認めないんでしょ?アンタの妻はアイリーンだ~け。なんでしょ!」
小馬鹿にしたように指でツンツンとドウェインの胸と股間を突いたシルフィーにドウェインは頭に血が上った。
「そんなに縛り上げて欲しいのなら縛ってやる!こいっ!」
シルフィーの衣類を引き裂いて庭に連れて行くと薪などを一纏めに縛っておく荒縄でシルフィーを縛り上げ、猿轡を噛ませ、木の幹に括りつけた。
「気が済むまでそうしていればいい」
「うぅぅー!!」
ドウェインはシルフィーをそのままにトラックに乗り込んだ。
★~★
陽が高く昇っても、夕焼けが終わって空が暗くなってもシルフィーの元にドウェインはやってこない。すぐ前は2人が使ってい良いと貸してもらった部屋だが、明かりが点くことも無い。
――嘘でしょ?私、何時までこうしてなきゃいけないの?――
縛られた時は酒も入っていて眠気もあったので、縛られたまま寝てしまった。
じりじりと照り付ける太陽の熱に目が覚めたが、巡回の兵士が愉快そうに眺めるだけで縄を解いてくれる気配もない。
虫が体を何匹も這いまわっているけれど、動くことも出来ず誰かが気が付いてくれればと唸ってみるが猿轡が邪魔をして大きな声が出せずにいた。
――誰か、助けてよ!――
願いが通じたのか。月が空に高く上った頃、ガサっと音がしてシルフィーが顔を上げると目の前に人が立っていた。
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