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第41話 告げられた事実
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生まれて初めて乗船する軍艦はまるで陸にいるかのように揺れる事も無い。
大波を超えると ”エアーポケットに落ちる感じ” と船員に説明をされたがエアーポケットの経験もないし初めて聞く言葉なので想像も出来なかった。
「こちらが船にいる間、利用して頂く船室です」
案内された部屋はタコ部屋のような場所に放り込まれると思ったのに離宮であてがわれた部屋よりも立派だった。
テーブルの上には固定具があって、テーブルの上に食器などを置いた時に横滑りさせないものだと説明を受けた。
気になったのは開かない窓の枠が棚になっていて、置かれていた物体。
「これは、なんです?」
「ラジオですよ。ここは…どうでしょうか。貸してみてください。電波拾えるかも知れません」
「ラジオ?電波?」
王太子と声を揃えて驚いていると、ザーザーと聞こえる音の中に僅かに人の声がした気がした。さらに船員がネジのような突起を弄ると…。
「☆#&%9―――」
何を言っているかは聞き取れなかったが、ハッキリと人の声と判る音が聞こえた。
「こ、声?人の声ですよね?」
「えぇ。ラジオですからね。国に近くなればもっとはっきり聞こえますよ」
「その箱に小人が入っているのではなく?!」
「ハハハ。入っていませんよ。音を電波に乗せているんです。ラジオは受信機ですから電波を拾えば聞こえるんです」
――サッパリ解らない。人が入っているんじゃないのか?――
船員からラジオを受け取り、振ってみたり目を凝らして中を見てみるが王太子もドウェインも理解が追い付かなかった。
「こんな摩訶不思議な道具を使いこなす国を相手には何をしても勝てそうにないな」
「そうですね」
「それはそうと…」
王太子は船員に出航したあとで、櫓を漕いで4,5時間の地点に来たら教えて欲しいこと、その時に甲板に出たい事を伝えた。
「何をするんです」
「弔いです。花も持ってきたので」
「献花ですか…船長に聞いてきます。もしかすると花は無理かも知れません。花束とか投げる習慣のある国もあるんですけど、結局ゴミなので海洋投棄はわが国では禁止されているんです」
船員が2人を部屋に残し出て行くとドウェインは王太子に問うた。
王太子が渓谷であったり、事故のあった街道に献花をする事はあったけれど櫓を漕いで4、5時間となると陸地の見える場所ではないし、漁に出た漁師が命を落としたのなら合同慰霊祭があるのでそちらに献花をしていたはず。
「献花って…どなたかお知り合いが?」
「知り合いになるかな。ただ…こんな事態になった以上申し訳ないと思ってな」
「はぁ。でも花なんて持ってきてましたか?」
「妃に聞いてな。好きだった花を持ってきた。海に献花すると言っても切り花ではないからダメかも知れないな」
「献花なのに切り花ではないんですか」
「小さくてね」
王太子はそう言うけれど、王太子もドウェインも荷物は少ない。この部屋の中にあるのだが花らしきものは見える範囲になかった。
船が出航すると小窓から景色が流れていくので動いているのだなと判る。あとは音だ。ドッドッドとトラックのエンジン音にも似ている大きな音が足元から響いて来た。
コンコンコン。
扉がノックされて先ほどの船員が顔を出した。
「船長から許可が下りました。但し花は包んでいる紙などがあれば外してください。花だけでお願いします。櫓で4、5時間でしたらあっという間で、サブリーナ島の手前になるので間もなくです」
「ありがとう。助かるよ」
王太子は船員に礼を言うと荷物に近づき、紐で縛った封を解くと蓋を開けた。
「オルゴール…ですか?」
「いや、娘の宝石箱だ。入れ物が無くてな。時期ではないから探すのが大変だった」
両手の手のひらサイズの宝石箱なので切り花であるならコスモスやマーガレットの花の部分だけが入っている大きさだ。既に手折っているのでもう萎びているだろうと思いつつドウェインは王太子の後ろをついて甲板に出た。
相当のスピードで船は走っているので、髪が風に棚引く。
「こちらへ。ここからなら海に花を投げ入れやすいと思います」
船員の声に王太子は大事に抱えた宝石箱の蓋を開けた。
「ほんの少し。土が付いているんだが構わないだろうか」
「そうですね。その程度なら…一応私は見なかった事にします」
「助かる。ありがとう」
中を覗き込んだ船員と入れ替わりに王太子の隣に並んだドウェインは宝石箱の中を見て息が止まった。
「殿下。その花は…」
「ワスレナグサ。彼女が大好きだった花だ」
「彼女…って…」
王太子は宝石箱から指先で掬うようにワスレナグサを取り出すと海に投げ入れた。
静かに目を閉じ、黙とうを捧げるとドウェインを見た。
「君の妻だったアイリーン・ブランジネ侯爵夫人だ」
「ど、どうして…何故なんです?!殿下!教えてください!」
「部屋に戻ろう。君の家にいた家令から手紙も預かっている。彼女が君宛に書いた手紙だ」
王太子は先に部屋に戻ったが、ドウェインは王太子の背中と花を投げ入れた海を交互に見て王太子の姿が中に消えると慌てて追いかけて行った。
大波を超えると ”エアーポケットに落ちる感じ” と船員に説明をされたがエアーポケットの経験もないし初めて聞く言葉なので想像も出来なかった。
「こちらが船にいる間、利用して頂く船室です」
案内された部屋はタコ部屋のような場所に放り込まれると思ったのに離宮であてがわれた部屋よりも立派だった。
テーブルの上には固定具があって、テーブルの上に食器などを置いた時に横滑りさせないものだと説明を受けた。
気になったのは開かない窓の枠が棚になっていて、置かれていた物体。
「これは、なんです?」
「ラジオですよ。ここは…どうでしょうか。貸してみてください。電波拾えるかも知れません」
「ラジオ?電波?」
王太子と声を揃えて驚いていると、ザーザーと聞こえる音の中に僅かに人の声がした気がした。さらに船員がネジのような突起を弄ると…。
「☆#&%9―――」
何を言っているかは聞き取れなかったが、ハッキリと人の声と判る音が聞こえた。
「こ、声?人の声ですよね?」
「えぇ。ラジオですからね。国に近くなればもっとはっきり聞こえますよ」
「その箱に小人が入っているのではなく?!」
「ハハハ。入っていませんよ。音を電波に乗せているんです。ラジオは受信機ですから電波を拾えば聞こえるんです」
――サッパリ解らない。人が入っているんじゃないのか?――
船員からラジオを受け取り、振ってみたり目を凝らして中を見てみるが王太子もドウェインも理解が追い付かなかった。
「こんな摩訶不思議な道具を使いこなす国を相手には何をしても勝てそうにないな」
「そうですね」
「それはそうと…」
王太子は船員に出航したあとで、櫓を漕いで4,5時間の地点に来たら教えて欲しいこと、その時に甲板に出たい事を伝えた。
「何をするんです」
「弔いです。花も持ってきたので」
「献花ですか…船長に聞いてきます。もしかすると花は無理かも知れません。花束とか投げる習慣のある国もあるんですけど、結局ゴミなので海洋投棄はわが国では禁止されているんです」
船員が2人を部屋に残し出て行くとドウェインは王太子に問うた。
王太子が渓谷であったり、事故のあった街道に献花をする事はあったけれど櫓を漕いで4、5時間となると陸地の見える場所ではないし、漁に出た漁師が命を落としたのなら合同慰霊祭があるのでそちらに献花をしていたはず。
「献花って…どなたかお知り合いが?」
「知り合いになるかな。ただ…こんな事態になった以上申し訳ないと思ってな」
「はぁ。でも花なんて持ってきてましたか?」
「妃に聞いてな。好きだった花を持ってきた。海に献花すると言っても切り花ではないからダメかも知れないな」
「献花なのに切り花ではないんですか」
「小さくてね」
王太子はそう言うけれど、王太子もドウェインも荷物は少ない。この部屋の中にあるのだが花らしきものは見える範囲になかった。
船が出航すると小窓から景色が流れていくので動いているのだなと判る。あとは音だ。ドッドッドとトラックのエンジン音にも似ている大きな音が足元から響いて来た。
コンコンコン。
扉がノックされて先ほどの船員が顔を出した。
「船長から許可が下りました。但し花は包んでいる紙などがあれば外してください。花だけでお願いします。櫓で4、5時間でしたらあっという間で、サブリーナ島の手前になるので間もなくです」
「ありがとう。助かるよ」
王太子は船員に礼を言うと荷物に近づき、紐で縛った封を解くと蓋を開けた。
「オルゴール…ですか?」
「いや、娘の宝石箱だ。入れ物が無くてな。時期ではないから探すのが大変だった」
両手の手のひらサイズの宝石箱なので切り花であるならコスモスやマーガレットの花の部分だけが入っている大きさだ。既に手折っているのでもう萎びているだろうと思いつつドウェインは王太子の後ろをついて甲板に出た。
相当のスピードで船は走っているので、髪が風に棚引く。
「こちらへ。ここからなら海に花を投げ入れやすいと思います」
船員の声に王太子は大事に抱えた宝石箱の蓋を開けた。
「ほんの少し。土が付いているんだが構わないだろうか」
「そうですね。その程度なら…一応私は見なかった事にします」
「助かる。ありがとう」
中を覗き込んだ船員と入れ替わりに王太子の隣に並んだドウェインは宝石箱の中を見て息が止まった。
「殿下。その花は…」
「ワスレナグサ。彼女が大好きだった花だ」
「彼女…って…」
王太子は宝石箱から指先で掬うようにワスレナグサを取り出すと海に投げ入れた。
静かに目を閉じ、黙とうを捧げるとドウェインを見た。
「君の妻だったアイリーン・ブランジネ侯爵夫人だ」
「ど、どうして…何故なんです?!殿下!教えてください!」
「部屋に戻ろう。君の家にいた家令から手紙も預かっている。彼女が君宛に書いた手紙だ」
王太子は先に部屋に戻ったが、ドウェインは王太子の背中と花を投げ入れた海を交互に見て王太子の姿が中に消えると慌てて追いかけて行った。
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