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選択(最終話)
「お兄様、人払いを」
セドリックから目線を外したエンジェリーナはアレフェットに告げる。
だが、2人きりにするのはまだ危険だと思い渋る。しかしエンジェリーナははっきりとアレフェットにもう一度告げた。
「ゲラン侯爵。人払いを」
そこに妹はもういなかった。目の前にいるのはこの国の第三王子妃だった。
背を伸ばし、一つ礼をすると使用人に窓を閉めて退出するように指示を出す。自身も扉に向かい歩いてフレデリックに手を差し出す。
ふとエンジェリーナに目を向けると、瞼を閉じ、小さく手と唇が震えているのが判る。
最後の使用人が部屋から出る。アレフェットは未だ動けない親友の肩を叩くと軽く押して部屋から出す。
おそらくアレフェットが考えた最善の策と同じことを考えているのであろう。
扉を閉める前に再度小さく礼をする。扉を閉じてその場に立ちすくむ。
サロンに2人きりになったエンジェリーナはセドリックをソファではなく、その奥にあるテーブル席へ誘う。
セドリックはエンジェリーナの後ろに立ち、椅子を引き、腰を下ろす直前で椅子を押す。
向かいの席に着席をするとしばらく何も喋らずただ、庭の景色を見るエンジェリーナを見つめた。
「エンジェリーナ」
名を呼ばれ、セドリックを見て小さく「はい」と返事をする。
その表情を見て、「兄妹だな」とふいに思った。ただアレフェットには感じなかったものがあった。
その瞳の奥にあったのは「無」であった。
「本当に申し訳ない事をした。許してもらえるとは思っていない」
「えぇ。許すつもりはありません」
「それでもいい。だが離縁は…」
「わたくしは王子妃です。離縁は致しません」
セドリックは離縁はしないでほしいと縋ってでも懇願するつもりだった。思わぬ言葉に呆けてしまったのかと頬を抓る。しかし目の前には愛しいエンジェリーナが座っている。
「お聞かせくださいませ」
「なんだ?何でも答えよう」
「彼女らはどうなされました?御子はもうお生まれになったのでは?」
回答に窮する質問をしてくるエンジェリーナにセドリックは本当の事を話す。
愛人とは契約だった事、どうして契約をしたのか。4人いた愛人のうち3人には金品を払った事。そして残りの一人は粛清した事。全て憶測を交えず自分のした事を包み隠さず話をした。
粛清の内容に倒れるのではないかと思ったが、予想を裏切り最期までしっかりとエンジェリーナは話を聞いてくれた。
だが、少し腹が張ったようで膨らんだ腹を優しく撫でるエンジェリーナに目を奪われる。
「大丈夫か?酷い話を聞かせてしまった」
「大丈夫ですわ。セドリック様もお聞きになりたい事があるのでは?」
「あぁ。その‥‥聞く前に…」
席を立ち頭を床に擦りつけて謝ろうと思ったセドリックだったが、「お座りになって」と土下座は許してもらえなかった。
「わたくしが体を繋げたのはセドリック様お一人です」
「すまない‥‥酷い事をしたと思っている」
「えぇ。屈辱的で‥‥到底許す事は出来ません」
「やはり…そうか…だが離縁は…しないでくれるのだろう?」
「王子妃である以上、離縁はしないと言ったはずです」
「ありがとう。これからはエンジェリーナに尽くすことを誓う」
「必要御座いません。今まで通りお過ごしくださいませ」
ぴしゃりと言い放つエンジェリーナだったが、言葉をつづけた。
「と、言いたいところですがセドリック様、取引を致しましょう」
「取引?わたしはエンジェリーナの頼みなら取引など無くても聞くが?」
「いいえ。この取引、飲んでくださるのならわたくしは王子妃としてあなたの側で静かに過ごしましょう。ですが、飲めないという時は…この場で処刑して頂きとうございます」
一遍の迷いもなく、目も逸らさないエンジェリーナを見てセドリックの心が訴えかける。
「聞いてはいけない」だが、同じくらいその願いを聞きたいと自分がいる。
「わかった。聞こう。それでそばに居てくれるのならいくつでも取引をしよう」
「1つで御座います」
「たった1つでいいのか?」
「はい。生涯をかけたお願いですので」
「わかった。なんだ」
「離縁をしない代わりにフォンテ伯爵家、此度の件に関係なし…と」
セドリックはその願いに身を挺してフレデリックを守ろうとするエンジェリーナの強さを知った。
この先、護衛にはつくことはセドリックが拒否できるだろうが、関係ないとされた者を処分する事は絶対に出来ない。
襲撃から王子妃を守ったという功績はあっても、その後半年の間、連絡を取る事もせず王子妃を囲ったというのは例えエンジェリーナが否定をしても半年という空白の期間はどうしようもないのである。
その間、離れていたとなれば護衛の意味がない。どちらにしても処罰の対象となる。勿論家も連座となり子爵か男爵に落とされるだろう。
関係ないとすれば、文字通り関係がないのである。
エンジェリーナの絶対的な自信は間違いなく腹の子がセドリックの子であると確信があるからこそなのだろう。
王家の子供は特徴を必ず引き継いで生まれてくる。
だが、疑問もあった。フレデリックは嫡男である。爵位を継ぐとなれば婚姻も致し方なし。それを認められるというのだろうか。
「エンジェリーナ。好き勝手しておいてと思うかも知れないが、咎めなしとなると…彼は妻を娶るがそれでも良いのか?」
「構いません。それが当主の務めならば致し方ございません」
「ならば猶の事、彼が他の女を…その・・」
「抱いて精を放たねば子は出来ません」
「構わないと言うのか?エンジェリーナ。正気なのか?」
薄っすらと口元に笑みを浮かべ、目はうっとりとどこか遠くを見つめる。
目の前の愛しい女はその愛をフレデリックに捧げるのだと知っても手放す考えを持てない愚かで惨めな自分が情けなく思えた。
☆~☆~☆~☆
数か月後、エンジェリーナは女の子を出産する。
間違いなく、第三王子セドリックの子供だった。目元はエンジェリーナに似ているが髪の色も瞳の色もそっくりな我が子を第三王子は殊更に溺愛をした。
☆~☆~☆~☆
愛するエンジェリーナを常に側から離さないセドリック。遠征も近場なら連れて行くという執着ぶりである。あまり買い物などが好きではないという王子妃を連れて良く出かけているのは森林への散策である。
小さな姫を侍女に預け夫婦2人で良く森の中を散歩する。
夜会で妻の視線を気にするのはセドリックの新たな癖である。
毎回ではないが、ふいに慈愛に満ちた表情をするのである。その表情が見たくてセドリックは夜会のたびにエンジェリーナを連れ出す。
仲睦まじい夫婦と民衆は2人を見守った。だがセドリックは知ってしまった。
その優しい眼差しになるのは‥‥1人の男性と目が合った時だけなのだ。
男の目は慈悲に縋り、許しを乞うようなまなざしである。
愛するエンジェリーナはそれを全て包むかのように見つめる。
そこにセドリックの存在はないのである。それでもエンジェリーナを手放せなかった。
人形のように、声も出さず、表情も変えないエンジェリーナの中に大量の精を出した直ぐ後に、避妊薬を目の前で飲み干されてもセドリックはエンジェリーナを離すことが出来ない。
セドリックは愛がないと知りながらもその器だけでもと縋ったのだ。
自分にそっくりな娘は何度侍女たちに教えられても、セドリックの事は殿下としか呼ばない。
「殿下ぁおかえりさいましぇ~」
「シャルローゼ。お父様だぞ~」
「違うもん。殿下は殿下だもん…あっお母様ぁ」
「あら、セドリック様、どうなさいました?」
「いや、なんでもない」
「さぁ、シャルローゼ。語学の先生がお見えよ」
「はぁい。お母様ぁ」
「なぁに?可愛いシャルローゼ」
「お母様のお腹いい匂い。お日様みたいであったかい」
「まぁ、甘えん坊さんね」
40歳の時に兄の王太子が即位をすると公爵家を興し当主となったセドリックの隣には顔立ちが妻によく似た娘しかいなかった。心なしか顔色の悪いセドリック。
エンジェリーナは1枚の用紙を残し、少しの従者と侍女を連れて風光明媚な田舎に1人籠ってしまった。
毎日野や川に出かけて拾ってきた素材で編んでは干し、編んでは干しとスローライフを楽しむ。
離縁こそしないものの、おしどり夫婦の突然の別居は誰もが驚いた。
「エンジェリーナ。離縁はしないと言ったではないか」
「そのような約束はしておりません」
「約束したではないか!戻ってきてくれ!何でも好きなものは買う。女も作ってはいないだろう?」
「セドリック様、わたくしは今まで通りお過ごしくださいと申しましたわ。買い物も愛人様もあなたのお好きなようになさればよいのです。わたくしが口出しを致しまして?」
「ならば!なおの事だ何故今になって離縁を言い出すのだ。約束が違うではないか!」
「おや、大変に異なことを申されますわねぇ。約束は守りましたわ」
エンジェリーナはセドリックに言った。
「わたくしは王子妃としてあなたの側で静かにしておりましたでしょう?王子妃でなくなった今、お側にいる必要性を感じませんわ」
離縁届の欄に未記入で残るのはセドリックの名前だけだった。
白い欄にセドリックはどうしてもインクを落とすことは出来なかった。
アレフェットは妹に聞いた。「幸せなのか」と。
エンジェリーナは微笑んで答えた。「とても幸せよ」と。
アレフェットは親友のフレデリックに聞いた。「それで幸せなのか」と。
フレデリックは、少しはにかんで言った。「見ているだけで幸せだ」と。
アレフェットはセドリックに問いかけた。「好きではなかったのですか」と
セドリックの答えを遮ってシャルローゼが答えた。「大好きよ!決まってるじゃない!」
頬に沢山クッキーを詰め込んだ娘を抱きしめてセドリックは泣いた。
Fin
セドリックから目線を外したエンジェリーナはアレフェットに告げる。
だが、2人きりにするのはまだ危険だと思い渋る。しかしエンジェリーナははっきりとアレフェットにもう一度告げた。
「ゲラン侯爵。人払いを」
そこに妹はもういなかった。目の前にいるのはこの国の第三王子妃だった。
背を伸ばし、一つ礼をすると使用人に窓を閉めて退出するように指示を出す。自身も扉に向かい歩いてフレデリックに手を差し出す。
ふとエンジェリーナに目を向けると、瞼を閉じ、小さく手と唇が震えているのが判る。
最後の使用人が部屋から出る。アレフェットは未だ動けない親友の肩を叩くと軽く押して部屋から出す。
おそらくアレフェットが考えた最善の策と同じことを考えているのであろう。
扉を閉める前に再度小さく礼をする。扉を閉じてその場に立ちすくむ。
サロンに2人きりになったエンジェリーナはセドリックをソファではなく、その奥にあるテーブル席へ誘う。
セドリックはエンジェリーナの後ろに立ち、椅子を引き、腰を下ろす直前で椅子を押す。
向かいの席に着席をするとしばらく何も喋らずただ、庭の景色を見るエンジェリーナを見つめた。
「エンジェリーナ」
名を呼ばれ、セドリックを見て小さく「はい」と返事をする。
その表情を見て、「兄妹だな」とふいに思った。ただアレフェットには感じなかったものがあった。
その瞳の奥にあったのは「無」であった。
「本当に申し訳ない事をした。許してもらえるとは思っていない」
「えぇ。許すつもりはありません」
「それでもいい。だが離縁は…」
「わたくしは王子妃です。離縁は致しません」
セドリックは離縁はしないでほしいと縋ってでも懇願するつもりだった。思わぬ言葉に呆けてしまったのかと頬を抓る。しかし目の前には愛しいエンジェリーナが座っている。
「お聞かせくださいませ」
「なんだ?何でも答えよう」
「彼女らはどうなされました?御子はもうお生まれになったのでは?」
回答に窮する質問をしてくるエンジェリーナにセドリックは本当の事を話す。
愛人とは契約だった事、どうして契約をしたのか。4人いた愛人のうち3人には金品を払った事。そして残りの一人は粛清した事。全て憶測を交えず自分のした事を包み隠さず話をした。
粛清の内容に倒れるのではないかと思ったが、予想を裏切り最期までしっかりとエンジェリーナは話を聞いてくれた。
だが、少し腹が張ったようで膨らんだ腹を優しく撫でるエンジェリーナに目を奪われる。
「大丈夫か?酷い話を聞かせてしまった」
「大丈夫ですわ。セドリック様もお聞きになりたい事があるのでは?」
「あぁ。その‥‥聞く前に…」
席を立ち頭を床に擦りつけて謝ろうと思ったセドリックだったが、「お座りになって」と土下座は許してもらえなかった。
「わたくしが体を繋げたのはセドリック様お一人です」
「すまない‥‥酷い事をしたと思っている」
「えぇ。屈辱的で‥‥到底許す事は出来ません」
「やはり…そうか…だが離縁は…しないでくれるのだろう?」
「王子妃である以上、離縁はしないと言ったはずです」
「ありがとう。これからはエンジェリーナに尽くすことを誓う」
「必要御座いません。今まで通りお過ごしくださいませ」
ぴしゃりと言い放つエンジェリーナだったが、言葉をつづけた。
「と、言いたいところですがセドリック様、取引を致しましょう」
「取引?わたしはエンジェリーナの頼みなら取引など無くても聞くが?」
「いいえ。この取引、飲んでくださるのならわたくしは王子妃としてあなたの側で静かに過ごしましょう。ですが、飲めないという時は…この場で処刑して頂きとうございます」
一遍の迷いもなく、目も逸らさないエンジェリーナを見てセドリックの心が訴えかける。
「聞いてはいけない」だが、同じくらいその願いを聞きたいと自分がいる。
「わかった。聞こう。それでそばに居てくれるのならいくつでも取引をしよう」
「1つで御座います」
「たった1つでいいのか?」
「はい。生涯をかけたお願いですので」
「わかった。なんだ」
「離縁をしない代わりにフォンテ伯爵家、此度の件に関係なし…と」
セドリックはその願いに身を挺してフレデリックを守ろうとするエンジェリーナの強さを知った。
この先、護衛にはつくことはセドリックが拒否できるだろうが、関係ないとされた者を処分する事は絶対に出来ない。
襲撃から王子妃を守ったという功績はあっても、その後半年の間、連絡を取る事もせず王子妃を囲ったというのは例えエンジェリーナが否定をしても半年という空白の期間はどうしようもないのである。
その間、離れていたとなれば護衛の意味がない。どちらにしても処罰の対象となる。勿論家も連座となり子爵か男爵に落とされるだろう。
関係ないとすれば、文字通り関係がないのである。
エンジェリーナの絶対的な自信は間違いなく腹の子がセドリックの子であると確信があるからこそなのだろう。
王家の子供は特徴を必ず引き継いで生まれてくる。
だが、疑問もあった。フレデリックは嫡男である。爵位を継ぐとなれば婚姻も致し方なし。それを認められるというのだろうか。
「エンジェリーナ。好き勝手しておいてと思うかも知れないが、咎めなしとなると…彼は妻を娶るがそれでも良いのか?」
「構いません。それが当主の務めならば致し方ございません」
「ならば猶の事、彼が他の女を…その・・」
「抱いて精を放たねば子は出来ません」
「構わないと言うのか?エンジェリーナ。正気なのか?」
薄っすらと口元に笑みを浮かべ、目はうっとりとどこか遠くを見つめる。
目の前の愛しい女はその愛をフレデリックに捧げるのだと知っても手放す考えを持てない愚かで惨めな自分が情けなく思えた。
☆~☆~☆~☆
数か月後、エンジェリーナは女の子を出産する。
間違いなく、第三王子セドリックの子供だった。目元はエンジェリーナに似ているが髪の色も瞳の色もそっくりな我が子を第三王子は殊更に溺愛をした。
☆~☆~☆~☆
愛するエンジェリーナを常に側から離さないセドリック。遠征も近場なら連れて行くという執着ぶりである。あまり買い物などが好きではないという王子妃を連れて良く出かけているのは森林への散策である。
小さな姫を侍女に預け夫婦2人で良く森の中を散歩する。
夜会で妻の視線を気にするのはセドリックの新たな癖である。
毎回ではないが、ふいに慈愛に満ちた表情をするのである。その表情が見たくてセドリックは夜会のたびにエンジェリーナを連れ出す。
仲睦まじい夫婦と民衆は2人を見守った。だがセドリックは知ってしまった。
その優しい眼差しになるのは‥‥1人の男性と目が合った時だけなのだ。
男の目は慈悲に縋り、許しを乞うようなまなざしである。
愛するエンジェリーナはそれを全て包むかのように見つめる。
そこにセドリックの存在はないのである。それでもエンジェリーナを手放せなかった。
人形のように、声も出さず、表情も変えないエンジェリーナの中に大量の精を出した直ぐ後に、避妊薬を目の前で飲み干されてもセドリックはエンジェリーナを離すことが出来ない。
セドリックは愛がないと知りながらもその器だけでもと縋ったのだ。
自分にそっくりな娘は何度侍女たちに教えられても、セドリックの事は殿下としか呼ばない。
「殿下ぁおかえりさいましぇ~」
「シャルローゼ。お父様だぞ~」
「違うもん。殿下は殿下だもん…あっお母様ぁ」
「あら、セドリック様、どうなさいました?」
「いや、なんでもない」
「さぁ、シャルローゼ。語学の先生がお見えよ」
「はぁい。お母様ぁ」
「なぁに?可愛いシャルローゼ」
「お母様のお腹いい匂い。お日様みたいであったかい」
「まぁ、甘えん坊さんね」
40歳の時に兄の王太子が即位をすると公爵家を興し当主となったセドリックの隣には顔立ちが妻によく似た娘しかいなかった。心なしか顔色の悪いセドリック。
エンジェリーナは1枚の用紙を残し、少しの従者と侍女を連れて風光明媚な田舎に1人籠ってしまった。
毎日野や川に出かけて拾ってきた素材で編んでは干し、編んでは干しとスローライフを楽しむ。
離縁こそしないものの、おしどり夫婦の突然の別居は誰もが驚いた。
「エンジェリーナ。離縁はしないと言ったではないか」
「そのような約束はしておりません」
「約束したではないか!戻ってきてくれ!何でも好きなものは買う。女も作ってはいないだろう?」
「セドリック様、わたくしは今まで通りお過ごしくださいと申しましたわ。買い物も愛人様もあなたのお好きなようになさればよいのです。わたくしが口出しを致しまして?」
「ならば!なおの事だ何故今になって離縁を言い出すのだ。約束が違うではないか!」
「おや、大変に異なことを申されますわねぇ。約束は守りましたわ」
エンジェリーナはセドリックに言った。
「わたくしは王子妃としてあなたの側で静かにしておりましたでしょう?王子妃でなくなった今、お側にいる必要性を感じませんわ」
離縁届の欄に未記入で残るのはセドリックの名前だけだった。
白い欄にセドリックはどうしてもインクを落とすことは出来なかった。
アレフェットは妹に聞いた。「幸せなのか」と。
エンジェリーナは微笑んで答えた。「とても幸せよ」と。
アレフェットは親友のフレデリックに聞いた。「それで幸せなのか」と。
フレデリックは、少しはにかんで言った。「見ているだけで幸せだ」と。
アレフェットはセドリックに問いかけた。「好きではなかったのですか」と
セドリックの答えを遮ってシャルローゼが答えた。「大好きよ!決まってるじゃない!」
頬に沢山クッキーを詰め込んだ娘を抱きしめてセドリックは泣いた。
Fin
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王子と言う立場は一応死ぬまでちやほやはされるんですけど、一定の年齢になると次の世代に重要な役割は移っていくので穀潰しのような存在になっちゃう(笑)
今でいう熟年離婚ですかねぇ。熟年と言うには年齢がまだ若いんですけども王子妃と呼ばれる仕事が終われば、アンタの隣にいるのも終わりだよッ!と線引きされてしまうのです(笑)
好きってだけで突っ走ってしまったセドリックは…毒杯であっけなくってよりも死ぬまで寂しさっていう絶望の方が良いかなと(*^_^*)
ラストまでお付き合いいただきありがとうございました。<(_ _)>
( ノД`)…はぁ。
あのまま二人で渓谷で見つからないように静かに暮らしましたとさ。ってなれば良かったのに。さすがに2周目でも(T-T)しちゃったわ😢
どうしてこうも王子と名の付く人はどこかに闇を抱えているのかしらねー。
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チョイス伯爵さんとこのローゼが殿下を見た日にはキモー‼️!Σ( ̄□ ̄;)って罵られそうよね。
コメントありがとうございます。<(_ _)>
エンジェリーナもあの渓谷でほぼ自給自足で不便以外何もないけれど、あの時が一番幸せだったかもですね。短い期間なので生きていられたかも知れませんが、父親もいないしセドリックもいないし…。
もっと遠くの国だったら市井に塗れて見つからなかったかも知れませんがセドリックはそれでも探しそう(笑)
ローゼに見られたらもう誰も何も言えなくなりますね(笑)
「ほぅ…では〇月〇日。お相手は…」って全てを暴露された挙句、「翌日はトイレでお1人様」とか妄想の内容まで暴露されたらもうお外に出られない?!
2周目もラストまでお付き合いいただきありがとうございました。<(_ _)>
とっても大人なお話で、愛だの恋だのじゃないヒロインの覚悟がお見事でした(*’ω’ノノ゙☆パチパチ
娘から殿下呼びセドリックm9(^Д^)プギャー
愛人と散々致してたฅ(ー̀กー́ )クチャイクチャイ汚物な分際の上、愛人御すの遅すぎでその上レイパーじゃフレデリックには及びませんわ(ヾノ・∀・`)
そりゃ熟年?離婚もやむなしですね( ˇωˇ )
ヒロインは心殺して加害者レイパーに長々付き合ったげでホントにすごい。以降は本当に心から求める人と穏やかに過ごして欲しいです(*´ω`*)
コメントありがとうございます<(_ _)>
エンジェリーナが「王子妃」となる様に育てられていたというところで、土壇場の切り替えと言いますか決断に踏みきれたかなと思います。話を作っていてこれが「王妃」なら自害という選択肢が出て、貴族の妻ならダメ元でまた逃亡する(罪に対して目をつぶれとは言えなくなるので)。
最後は現実だけど虚無の世界で向けられる愛(セドリック)を時限式とした事で耐えられたかな‥と。
これが死ぬまで!生涯!墓も一緒!だと…アハハ。作者が無理です(笑)
なので、「王子妃」である間だけセドリックの妻、と言うか第三王子妃と言う立場を受け入れる‥ですかね。
だけど人形じゃないので人間、女性としての部分でフレドリックとのほんの数秒、視線を合わせるだけの逢瀬で心の健康を保つ?感じでしょうか(笑)
手は届かないけれど心を通わせたフレドリック。
対して触れられるし愛も囁けるけど心を向けられる事がないセドリック。
子供に父と呼ばれず殿下と呼ばれ、父と言う対象がフレドリックだと判っていても器を手にしている分、何も言えないジレンマ。
まぁ、セドリックは愛する人に知られれば瞬殺でTHE ENDな事もしてましたし…自業自得ですかねぇ。
年を取ってからのヤモメは辛い(笑)いや、それまでも心がないエンジェリーナですからヤモメと大して変わらないとこもありますが、目の前にいるのと居ないのではやっぱり違いますしね(笑)
望んだ人に看取られない老後…気の長いセドリックへのざまぁでもあります(笑)
ラストまでお付き合いいただきありがとうございました<(_ _)>