公爵夫妻は今日も〇〇

cyaru

文字の大きさ
12 / 16

第6話♠  言い訳が見つからない

しおりを挟む
世の生物で、「妻」という生き物は人類の謎を全て持ち合わせているUMAユーマだと私に教えてくれたのは王太子殿下だ。

夫という役割も王族だからか9歳にして取得した王太子殿下。
婚約は生前6カ月というから王族はやはり住む世界が違う。

公爵家ですら生まれた後に婚約をするが、王太子殿下は王妃殿下の腹に宿った直ぐ後に婚約。現王太子妃は殿下より5歳年上の「年上のお姉さん」だが同性だったらどうするつもりだったのだろう。

男か女か。確率は2分の1・・・フッ。笑わせる。
だとすればシリアコはどうするのだ。男の体をしていても心は乙女。エディットの兄、ベルトラン殿の彼女として今日も隣で頬を染めていると言うのに。

いや、今はそんなのんびりとした草原でお昼寝的な考えをしている場合ではない。
エディットに禁断の扉が見つかってしまった。

鍵がないので開けらないという苦しい言い訳をしてみるが、言葉にしていると段々と頭がさえてくる。

――新築3年目だ・・・年数でウソがバレた?――


『妃の前で嘘を吐くのは無理だ。バレるまでの時間は即だ。もっても秒』
『それは妃殿下が生まれた時から殿下の事をご存じだからでしょう?』
『いや、妻という生き物は高性能な探知機も搭載している。気が付けば全てを掌握している。隠し事など出来ないと心しておけ』

今更に王太子殿下の言葉が胸に突き刺さる。
本当に即でバレたうえ、鍵など妻の前には吹けば飛ぶような駒。

嘘を吐く私にエディットは小指を立てる。

――私にその小指を吸ってくれというのか?ここで?!――

吸うのは問題ないが、ここで良いんだろうかと躊躇する私にサッと手をあげ、小指だけを立てて「チッチッチ」困った。エディットの心が読めない。

夫の嘘は妻に即バレなのに、夫は妻の小指の意味すら解けないとは!
理由を聞いて納得だ。その仕草は「否定」を意味する。

つまり私の嘘などとっくにお見通しよ!という訳だ。

――夫にはスケルトン機能が搭載されるということなのか――

奥深い結婚。知らぬ間に妻と夫には未知なる力が宿ると知った。

「待て!待ってくれ。その先は‥‥アァァーッ!!」

夫の抵抗など虚しいものだ。
なんとエディットは使用人に命じて扉そのものを取り外してしまったのだ。

――何重にも付けた鍵の意味を教えてくれ――

丁番すらなくなった扉は開くのに「キィィ」と音もしない。
無駄な努力、安物買いの銭失いとはまさにこの事だった。

開かれた扉。そこは私のエディットに言えない秘密が満載。
器具が大きくなればなるほど、世間的には変態度が爆上がりするがそれは賊用であり夫婦では使用しない。判ってくれるはずだ。

問題は私が長年、地道に集めた品だ。

が、使用人がカーテンを開けた順序にまだ私は活路を見出した。

光を浴びる拘束具。侵入してきた賊に誰に頼まれたかと白状させるため、大の字に体を壁に固定する枷が4カ所。

「これは‥‥」
「違うんだよ!これはッ!」

――何と言えばいい・・・拘束具なんて言えばエディットが怖がってしまう――

「何故壁にオブジェを?」
「オブジェ?」


何と言う事だ。純真無垢なエディットは拘束具などという野蛮なものは知らないのだろう。
これを見てオブジェと問えるのは世界広し、銀河が果てしないと言えどエディットだけだ。


そう思ったのもつかの間。
別のカーテンが開かれ、時間帯もあったのだろう。窓から入って来た光は鏡に反射し眩しい光で部屋を包む。

もう言い逃れは出来ない。賊とは言え拘束した者を辱めるための鏡。
適した言い訳が見つからない。手汗で部屋に池が出来そうだったが…。

「素晴らしいわ!ラウルッ」
「え?素晴らしい?・・・違うんだ。エディットこれはッ!」
「解ります。光の反射そして影を利用した芸術なのですね」
「芸術?!」
「えぇ。時々美術館に参りますが角度によって顔を変える造形美と申しましょうか。ラウルは女性ではなく芸術に傾倒されていたのですね。てっきり不貞‥‥」

――芸術?!これを見て芸術?!――

驚いたのだが、途切れたエディットの言葉の方が気になる。

――不貞?どうしてそんな事を?!――

しかし、天上の神も目の前の女神エディットも私に猶予は与えてくれない。
言葉が途切れたエディットの視線の先には・・・

――三角木馬?!――

どうしよう…尻を割るためと言えば誤魔化せるか?いいや。尻は殆どの者が最初から2つに割れている。敢えて割る必要などないのだ。

尖った座面に腰を下ろせば一部のガチな変態を除き大抵の者は断末魔のような悲鳴をあげる。私もどれほどの痛みなのか試そうとは思ったが、限界まで体が沈み込んだとて、つま先も床に届かないとなると恐怖を感じ未体験。

まぁ、私が恐怖を感じるくらいだから賊には丁度いいのだが‥。


何と説明をするか考えてしまったのが良くなかった。
何を思ったか、エディットは部屋を見渡し、禁断の小箱の蓋を開けてしまった。

――ダメだ!それは絵姿が!!――

プロから素人まで兎に角絵師にエディットを描かせた絵姿。
底に行けば行くほど私の汚い欲望にまみれた空想を絵にしてもらっている。

余りにも赤裸々で思い出すだけでも誤爆が激しくズボンごと闇に葬ろうと思ったのだが、思春期手前の男児が始めての「春画」を何故か捨てられないのと同じで結局捨てられず・・・底に封印したのだ。

不味い!それ以上捲っては!!
心で強く念じたのが通じたのかエディットの手が止まった。

「まさか・・・私・・・」
「すまないっ!出来心などと言い訳は出来ないが説明させてくれっ」
「説明には及びません。私、指名手配されていましたの?(うるる)」
「指名手配?!そんな事はされていない!」

やはり心の美しいエディット。私と違って卑猥な事に使うのではないと思ったようだが「指名手配?」

私としては毎秒エディットを心で指名手配して、帰宅すれば「捕まえた♡」と思ったりもするのであながち間違いではないが・・・。

今は自分の事などどうでもいい!エディットの目がうるる&さららのように潤む。
除湿機能の「さらら」と加湿機能の「うるる」ダイ〇ンの傑作だ。

エディットの目がうるるとした。
涙が零れ堕ちる前に私がなんとかせねば!

慌てて駆け寄ったのが不味かった。手が小箱に当たってしまいさらに禁断の秘密が暴かれる。

コツコツと!集めたエディットの抜け毛。
結婚前は1本~2本~と数えて147本だったが、今は203本。昨夜抱きしめるついでに2本拾ったので205本。

流石にその数になると「束」になる。

毛先でコショコショと時折自分を弄んでいるなんてどうやって誤魔化せばいいんだ!!

秘密を吐露するか、癒しのコショコショを諦めるか。
私は人生の岐路に立った。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

勇者様がお望みなのはどうやら王女様ではないようです

ララ
恋愛
大好きな幼馴染で恋人のアレン。 彼は5年ほど前に神託によって勇者に選ばれた。 先日、ようやく魔王討伐を終えて帰ってきた。 帰還を祝うパーティーで見た彼は以前よりもさらにかっこよく、魅力的になっていた。 ずっと待ってた。 帰ってくるって言った言葉を信じて。 あの日のプロポーズを信じて。 でも帰ってきた彼からはなんの連絡もない。 それどころか街中勇者と王女の密やかな恋の話で大盛り上がり。 なんで‥‥どうして?

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

婚約破棄の前日に

豆狸
恋愛
──お帰りください、側近の操り人形殿下。 私はもう、お人形遊びは卒業したのです。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

あなたを忘れる魔法があれば

美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。 ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。 私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――? これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような?? R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

[完結]「私が婚約者だったはずなのに」愛する人が別の人と婚約するとしたら〜恋する二人を切り裂く政略結婚の行方は〜

h.h
恋愛
王子グレンの婚約者候補であったはずのルーラ。互いに想いあう二人だったが、政略結婚によりグレンは隣国の王女と結婚することになる。そしてルーラもまた別の人と婚約することに……。「将来僕のお嫁さんになって」そんな約束を記憶の奥にしまいこんで、二人は国のために自らの心を犠牲にしようとしていた。ある日、隣国の王女に関する重大な秘密を知ってしまったルーラは、一人真実を解明するために動き出す。「国のためと言いながら、本当はグレン様を取られたくなだけなのかもしれないの」「国のためと言いながら、彼女を俺のものにしたくて抗っているみたいだ」 二人は再び手を取り合うことができるのか……。 全23話で完結(すでに完結済みで投稿しています)

竜王の花嫁は番じゃない。

豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」 シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。 ──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。

処理中です...