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第15話 貴方なぁら、どうするぅ?
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「ロイス様」
「なんだろうか」
「ロイス様は私の父がラーリ伯爵家を食い物にしようとしている事はご存じですの?」
「はっ?なんだそれは。初耳だぞ?」
「ご存じない?本当にご存じない?」
「し、知らない。父からそんな話は聞い…ハッ!だからか!!」
「ほぅ。思い当たることがある。そういう事ですわね?」
「あぁ。残したのは負債だけ。ん?夫妻じゃないぞ?負債だ」
「はい、次。そういうの飛ばしていいので」
「うん。おかしいとは思ったんだ。結婚だと言われたのは式の10日前だ。で、家督とか財産とかそういう事を告げられたのは式の当日だったんだ。自分だけは安全圏に置いて…全てを押し付けるつもりだったんだな」
父親に謀られた事が悔しいのか。
それとも今になって気が付いた自分に腹立つのか。ロイスは悔し気に顔を歪めた。
「では、押し付けて頂きましょう」
「え?でも負債しかないんだぞ?」
「大丈夫。その負債を跳ね返す夫妻がここにいるじゃありませんか」
「それさっき‥」
――言うな!その先はみなまで言うでない!――
何もないと言う事は失うものすらない。
ついでに負債だって倒れてしまえば爵位返上でご破算になる。
――腐れ父に何にもくれてやるものですか!――
シルフィは「いける!」ちょっとしか根拠のない自信が沸き上がった。
「ロイス様、この土地と屋敷はロイス様のものなのですね?」
「そ、そうだが…」
「一石二鳥ですわ。空き部屋が埋まりますわ」
「どうすると言うんだ?」
「工房の人間をここに呼びます。空き部屋で品物を作る作業をして頂くのです」
「工房のっ?!そんな事をしたらアシェル男爵が何と言うか!」
「大丈夫です。現在籍がある者は退職後に呼び寄せます。先ず来て頂くのは既に退職した者です。幸いに住む場所もなく教会に家族で身を寄せている者もいますので、ご夫人方にはメイドなどをして頂きましょう。使用人問題はこれで解決!」
「待て。金はどうする?雇えば賃金が発生するんだ。そんな金は…」
「あ~るじゃありませんか。ほら」
シルフィが「ほら」と指さしたのは壁や天井。そして窓の外の庭だった。
「まさか…調度品やら植木を売ると言うのか?」
「えぇ。邪魔ですし手入れもしないのならあるだけ無駄。この際スッキリと片付けましょう。きっと新しく奥様を迎え入れる事になった時は改装するにも処分費が安く済みますよ。さぁ!貴方ならどうする?貴方なぁら、どぉするぅ~?」
茶化して問いかけるシルフィだったが ”新しい奥様” その点に於いてロイスは「違う!」強く否定をした。
ロイスも父親から無理強いをされた結婚だが、それでも貴族の端くれ。貴族の結婚が自由な恋愛に基づくものだなんて思ってはいない。
確かにグレイスに楽な暮らしをさせてはやれない。そんな思いもあったので別れを告げたが、父親から結婚を勝手に決められたのを告げられた時、ホッとしたのだ。
どんなに好き合っていても結ばれない関係だってある。
何時かは別れなければならなかったし、そうでないのなら一生を日陰の身で過ごせと愛人に抱えるしかなかった。
残酷な事実を告げる必要がなくなってホッとしたのも事実。
だからグレイスとよりを戻すつもりは全くなかった。
「誤解があるようだから解いておく。グレイスとの関係が戻る事はない。確かに世間では妻とは別の女性を抱える男もいる。容認はしないが存在することを否定はしない。私は器用な人間ではないし、人の顔色を伺う事が多いんだ。だから言い方も柔くなってしまう事もある」
「あら?妻の座とか、結構な言葉でしたけど?」
「それはっ!!申し訳ないと思ってる。言ってはいけない言葉だった。でも人間は咄嗟の時には本心が出るからあの時の私は…最低だな。今はそんな事は思っていない。昨日の今日でと笑われても仕方がないが」
「別にいいですよ。気にしてませんので」
「君は優しいんだな。誓って妻の他に女性を抱える事はしない。約束しよう」
「そんなお金もありませんしね。女性を囲うとなると1日で数か月分の食費が飛ぶと覚えておいてくださいね」
「肝に銘じよう。それに…このままでは何もできないのは判っているんだ。君の言うようにやってみよう。なぁに、命まで取られるわけじゃないんだから家の中が空っぽになったって構やしないさ」
「では、早速買取を手配しますわね。営業で回った中から誠実に買い取ってくれる商会を呼びます。それから庭木は取り除いたあとで畑にします」
「畑に?自給自足か…それもいいな」
「馬鹿仰い!商品を育てるんです。口に入るのは商品を売った後です。さて、忙しくなります。ロイス様はご友人などはいらっしゃるの?」
「当たり前だ!友達の10人や20人」
「まぁ良かった!では先触れを書いてください。販促をかけなくては!」
「まて…すまない。誇張した」
「何をです?」
「友達の数‥多分片手よりは多いが両手で余る」
そうは言ったが、ロイス、実は貴族の友人たちからは「グレイスは止めておけ」と言われたのに聞く耳を持たず、1人、2人と疎遠になり、今では片手で余る人数しか友達は居なかった。
「なんだろうか」
「ロイス様は私の父がラーリ伯爵家を食い物にしようとしている事はご存じですの?」
「はっ?なんだそれは。初耳だぞ?」
「ご存じない?本当にご存じない?」
「し、知らない。父からそんな話は聞い…ハッ!だからか!!」
「ほぅ。思い当たることがある。そういう事ですわね?」
「あぁ。残したのは負債だけ。ん?夫妻じゃないぞ?負債だ」
「はい、次。そういうの飛ばしていいので」
「うん。おかしいとは思ったんだ。結婚だと言われたのは式の10日前だ。で、家督とか財産とかそういう事を告げられたのは式の当日だったんだ。自分だけは安全圏に置いて…全てを押し付けるつもりだったんだな」
父親に謀られた事が悔しいのか。
それとも今になって気が付いた自分に腹立つのか。ロイスは悔し気に顔を歪めた。
「では、押し付けて頂きましょう」
「え?でも負債しかないんだぞ?」
「大丈夫。その負債を跳ね返す夫妻がここにいるじゃありませんか」
「それさっき‥」
――言うな!その先はみなまで言うでない!――
何もないと言う事は失うものすらない。
ついでに負債だって倒れてしまえば爵位返上でご破算になる。
――腐れ父に何にもくれてやるものですか!――
シルフィは「いける!」ちょっとしか根拠のない自信が沸き上がった。
「ロイス様、この土地と屋敷はロイス様のものなのですね?」
「そ、そうだが…」
「一石二鳥ですわ。空き部屋が埋まりますわ」
「どうすると言うんだ?」
「工房の人間をここに呼びます。空き部屋で品物を作る作業をして頂くのです」
「工房のっ?!そんな事をしたらアシェル男爵が何と言うか!」
「大丈夫です。現在籍がある者は退職後に呼び寄せます。先ず来て頂くのは既に退職した者です。幸いに住む場所もなく教会に家族で身を寄せている者もいますので、ご夫人方にはメイドなどをして頂きましょう。使用人問題はこれで解決!」
「待て。金はどうする?雇えば賃金が発生するんだ。そんな金は…」
「あ~るじゃありませんか。ほら」
シルフィが「ほら」と指さしたのは壁や天井。そして窓の外の庭だった。
「まさか…調度品やら植木を売ると言うのか?」
「えぇ。邪魔ですし手入れもしないのならあるだけ無駄。この際スッキリと片付けましょう。きっと新しく奥様を迎え入れる事になった時は改装するにも処分費が安く済みますよ。さぁ!貴方ならどうする?貴方なぁら、どぉするぅ~?」
茶化して問いかけるシルフィだったが ”新しい奥様” その点に於いてロイスは「違う!」強く否定をした。
ロイスも父親から無理強いをされた結婚だが、それでも貴族の端くれ。貴族の結婚が自由な恋愛に基づくものだなんて思ってはいない。
確かにグレイスに楽な暮らしをさせてはやれない。そんな思いもあったので別れを告げたが、父親から結婚を勝手に決められたのを告げられた時、ホッとしたのだ。
どんなに好き合っていても結ばれない関係だってある。
何時かは別れなければならなかったし、そうでないのなら一生を日陰の身で過ごせと愛人に抱えるしかなかった。
残酷な事実を告げる必要がなくなってホッとしたのも事実。
だからグレイスとよりを戻すつもりは全くなかった。
「誤解があるようだから解いておく。グレイスとの関係が戻る事はない。確かに世間では妻とは別の女性を抱える男もいる。容認はしないが存在することを否定はしない。私は器用な人間ではないし、人の顔色を伺う事が多いんだ。だから言い方も柔くなってしまう事もある」
「あら?妻の座とか、結構な言葉でしたけど?」
「それはっ!!申し訳ないと思ってる。言ってはいけない言葉だった。でも人間は咄嗟の時には本心が出るからあの時の私は…最低だな。今はそんな事は思っていない。昨日の今日でと笑われても仕方がないが」
「別にいいですよ。気にしてませんので」
「君は優しいんだな。誓って妻の他に女性を抱える事はしない。約束しよう」
「そんなお金もありませんしね。女性を囲うとなると1日で数か月分の食費が飛ぶと覚えておいてくださいね」
「肝に銘じよう。それに…このままでは何もできないのは判っているんだ。君の言うようにやってみよう。なぁに、命まで取られるわけじゃないんだから家の中が空っぽになったって構やしないさ」
「では、早速買取を手配しますわね。営業で回った中から誠実に買い取ってくれる商会を呼びます。それから庭木は取り除いたあとで畑にします」
「畑に?自給自足か…それもいいな」
「馬鹿仰い!商品を育てるんです。口に入るのは商品を売った後です。さて、忙しくなります。ロイス様はご友人などはいらっしゃるの?」
「当たり前だ!友達の10人や20人」
「まぁ良かった!では先触れを書いてください。販促をかけなくては!」
「まて…すまない。誇張した」
「何をです?」
「友達の数‥多分片手よりは多いが両手で余る」
そうは言ったが、ロイス、実は貴族の友人たちからは「グレイスは止めておけ」と言われたのに聞く耳を持たず、1人、2人と疎遠になり、今では片手で余る人数しか友達は居なかった。
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