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第16話 休みは必要?不必要?
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翌朝、ロイスはワンプレートではあったけれど自分用の食事が用意されている事が嬉しかった。
「ありがたい事だ。シルフィさん。ありがとう。頂きます」
「ロイス様、食事の前の感謝は私ではなく神に捧げるものです」
「いいや。今まで1日4食。当たり前だと思っていたんだ。食べられると言う事は作ってくれた人がいる。感謝を述べて当然だ」
「4食っ?!そんなに食べていたんですか?」
「まぁ…多い日は、だけどな。グレイスとデートをして帰ってくると自分の分があったから」
さり気なくそこにグレイスをいうワードをぶっ込んでくる結婚3日目の夫。
残念なことにシルフィは歌劇俳優などに憧れた事はあったが、異性とお付き合いをした経験はないので相手に分かりやすく伝えるには変に誤魔化さない事が望ましいのかも知れない。と思いながら豪快にキュウリを齧った。
「今日はどうするんだ?」
「教会に行ってきます。教会に身を寄せている者がいますので誘ってみようと思うんです」
「では、私は何をしていればいいんだろうか」
――え?まさかの指示待ち人間?――
と、思うが仕方がない。ロイスは現在21歳なのだが騎士団などで働いた経験もないし、弟妹はかなり幼少期に親族の家に養子に出されているので顔も見たことがなく、兄弟妹の間でオヤツの配分を巡って争奪戦をした事もない。
多くのおやつを配分してもらうためのずる賢い駆け引きもした事がないのだ。
だから親に対して「お駄賃多めのお使い」なども経験がない。
全てラーリ伯爵が「やっとけ」と回してきた物を処理するだけ。
ロイスは執務だと言い切るがシルフィに言わせれば検算であったり校正だ。
――そりゃ暇な時間が出来るから外に遊びに行っちゃうよね――
だが、昨日の井戸の件を思い出してもロイスに何かを任せて良い結果になるような気が全くしない。余計に手間になるんじゃないかと心配になってしまう。
何かできる事はないか。そう考えたシルフィはロイスにシフト表を作ってもらう事にした。
座っての作業ならそんなに散らかす事もないだろうと思ったのだ。
「知っているだけで教会に身を寄せている者は7人です。彼らの家族には赤子と高齢者は除きますが働ける者はメイドなどの仕事をしてもらうので10人ほど。4勤1休でシフト表を作って欲しいんです」
「4勤1休?使用人に休みを与えるのか?最初から?」
「そうですよ。出来れば工房で働く者と休みの日を一緒にしたいので割り振りをお願いします」
「そんなのは休みたいと申請をしてきた時に休ませればいいんじゃないのか?少なくとも父上に付いていた使用人には決まった休みはなかったし、誰も文句を言わずに働いていたぞ?」
「ラーリ伯爵が雇った人は!ですよね。彼らは私がスカウトしてくるんです。他人のやり方を真似る必要はないと思います」
シルフィは働き方改革なんて大層な事をしたいわけではない。
ただ、物心ついた時から工房に出入りをして母親が職人たちと一緒に錬金術で製品を作っているのを見て思ったのだ。
――お母様と昼間も一緒にいたい――
でも、病に倒れるまでシルフィの母には休みが無かった。職人も同じ。
給金は1か月分で支払われるが休日などは全く考慮されていなかった。
なのに病気などで休めば金額を31や30で割り、1日分を容赦なく差し引く。それが業務中の負傷で休まねばならない時もだ。
そして注文が殺到し徹夜作業になっても残業などと言う考え方はなく、1日は1日。最低10時間。それが24時間勤務になっても1日のカウントだったのだ。
アシェル男爵が強欲だったのではなく、ロイスも休みたい時に休ませればいいと言ったように、そんな雇用が当たり前。シルフィはこの機会なのだから休みが元々組み込まれている働き方を導入しようと考えた。
「いろんな仕事があると思うんだけど、基本を午前9時から18時まで。その途中で10時から30分、12時から13時まで、15時から30分は休憩を取り入れようと思ってるの」
「働く時間なんかほぼないじゃないか。ボランティアじゃないんだぞ?」
「えぇ。でも労働者はオートマタでもないの」
「オートマタ…あぁ魔石で動くと言う人形従者か。疲れ知らずだとは聞くが…」
「そうね。オートマタは疲れを知らないけれど魔石の効力が切れれば動かなくなるわ。人間だってちゃんと休まないと倒れてしまうし、集中する時間を作るためにはちゃんと休む時間も必要よ。それに…子供には親が休みの日に一緒にいるって時間は大事だと思うの」
「そうか。解ったよ。では休みを入れてのシフト表を作るとしよう」
「よろしくお願いしますわね」
「ありがたい事だ。シルフィさん。ありがとう。頂きます」
「ロイス様、食事の前の感謝は私ではなく神に捧げるものです」
「いいや。今まで1日4食。当たり前だと思っていたんだ。食べられると言う事は作ってくれた人がいる。感謝を述べて当然だ」
「4食っ?!そんなに食べていたんですか?」
「まぁ…多い日は、だけどな。グレイスとデートをして帰ってくると自分の分があったから」
さり気なくそこにグレイスをいうワードをぶっ込んでくる結婚3日目の夫。
残念なことにシルフィは歌劇俳優などに憧れた事はあったが、異性とお付き合いをした経験はないので相手に分かりやすく伝えるには変に誤魔化さない事が望ましいのかも知れない。と思いながら豪快にキュウリを齧った。
「今日はどうするんだ?」
「教会に行ってきます。教会に身を寄せている者がいますので誘ってみようと思うんです」
「では、私は何をしていればいいんだろうか」
――え?まさかの指示待ち人間?――
と、思うが仕方がない。ロイスは現在21歳なのだが騎士団などで働いた経験もないし、弟妹はかなり幼少期に親族の家に養子に出されているので顔も見たことがなく、兄弟妹の間でオヤツの配分を巡って争奪戦をした事もない。
多くのおやつを配分してもらうためのずる賢い駆け引きもした事がないのだ。
だから親に対して「お駄賃多めのお使い」なども経験がない。
全てラーリ伯爵が「やっとけ」と回してきた物を処理するだけ。
ロイスは執務だと言い切るがシルフィに言わせれば検算であったり校正だ。
――そりゃ暇な時間が出来るから外に遊びに行っちゃうよね――
だが、昨日の井戸の件を思い出してもロイスに何かを任せて良い結果になるような気が全くしない。余計に手間になるんじゃないかと心配になってしまう。
何かできる事はないか。そう考えたシルフィはロイスにシフト表を作ってもらう事にした。
座っての作業ならそんなに散らかす事もないだろうと思ったのだ。
「知っているだけで教会に身を寄せている者は7人です。彼らの家族には赤子と高齢者は除きますが働ける者はメイドなどの仕事をしてもらうので10人ほど。4勤1休でシフト表を作って欲しいんです」
「4勤1休?使用人に休みを与えるのか?最初から?」
「そうですよ。出来れば工房で働く者と休みの日を一緒にしたいので割り振りをお願いします」
「そんなのは休みたいと申請をしてきた時に休ませればいいんじゃないのか?少なくとも父上に付いていた使用人には決まった休みはなかったし、誰も文句を言わずに働いていたぞ?」
「ラーリ伯爵が雇った人は!ですよね。彼らは私がスカウトしてくるんです。他人のやり方を真似る必要はないと思います」
シルフィは働き方改革なんて大層な事をしたいわけではない。
ただ、物心ついた時から工房に出入りをして母親が職人たちと一緒に錬金術で製品を作っているのを見て思ったのだ。
――お母様と昼間も一緒にいたい――
でも、病に倒れるまでシルフィの母には休みが無かった。職人も同じ。
給金は1か月分で支払われるが休日などは全く考慮されていなかった。
なのに病気などで休めば金額を31や30で割り、1日分を容赦なく差し引く。それが業務中の負傷で休まねばならない時もだ。
そして注文が殺到し徹夜作業になっても残業などと言う考え方はなく、1日は1日。最低10時間。それが24時間勤務になっても1日のカウントだったのだ。
アシェル男爵が強欲だったのではなく、ロイスも休みたい時に休ませればいいと言ったように、そんな雇用が当たり前。シルフィはこの機会なのだから休みが元々組み込まれている働き方を導入しようと考えた。
「いろんな仕事があると思うんだけど、基本を午前9時から18時まで。その途中で10時から30分、12時から13時まで、15時から30分は休憩を取り入れようと思ってるの」
「働く時間なんかほぼないじゃないか。ボランティアじゃないんだぞ?」
「えぇ。でも労働者はオートマタでもないの」
「オートマタ…あぁ魔石で動くと言う人形従者か。疲れ知らずだとは聞くが…」
「そうね。オートマタは疲れを知らないけれど魔石の効力が切れれば動かなくなるわ。人間だってちゃんと休まないと倒れてしまうし、集中する時間を作るためにはちゃんと休む時間も必要よ。それに…子供には親が休みの日に一緒にいるって時間は大事だと思うの」
「そうか。解ったよ。では休みを入れてのシフト表を作るとしよう」
「よろしくお願いしますわね」
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