17 / 36
第17話 用を済ませて帰宅してみれば
しおりを挟む
教会に出向くと懐かしい顔があった。
「シルフィさん!シルフィさんじゃないですか」
「バナードさん!お元気そうでよかったわ。コーリさんも元気?」
「元気、元気。今は礼拝堂の掃除をしてるはずだよ。今日はどうしたんだい?礼拝の日?」
「ううん。皆をスカウトしに来たの。衣食住付きで月額15万が今は限界なんだけど来てくれるかしら」
「上等だよ。行く。行く。何すればいいんだ?」
「ちゃんと皆に聞かないと!勝手に決めちゃだめでしょう」
「行くって言うと思うよ。神父様にもそろそろここを出てくれって言われてるんだけど皆、仕事がなくてさ。日雇いの仕事も早い者勝ちだからさっぱりだよ。ここに世話になって半年だが一番稼いだブドルックで5万だよ。半年で5万。うっかり病気にもなれねぇよ」
一旦職を失ってしまうと紹介状があっても職人となるとなかなか雇っては貰えない。
同業者の工房になるので、本当に前の工房をやめたのかなど警戒をされてしまうのだ。
その上、新しい工房のやり方について行けず、熟練であればあるほどプライドをへし折られる事もある。
シルフィが来ていると誰かが触れ回ったのかあっという間にシルフィの回りに工房を辞めて行った者たちとその家族が集まってきた。
彼らはシルフィの母が亡くなった後、アシェル男爵のやり方に反発をして辞めた者たち。
アッタケーナは冬場には携帯も出来るし重宝されるのだが、低温火傷の危険もあるし発火する魔石をきちんと配合しなければ熱湯並みの熱さになる。
布で包んではいるけれどしっかりと縫製しなければ過熱状態の魔石が零れて大やけどをするのにアシェル男爵は利益重視でそれまで3重に縫製していたのを1度にし、布も安くて薄い布に買えた。
魔石もきちんと選別されたものではなく、安価な混合品にしたので彼らは怒ったのだ。
シルフィは彼らにラーリ伯爵家の場所を教え、その足で買い取り店に向かった。
残っている家具などはあまり価値がないモノなのか、それとも壁いっぱいの大きな絵画などなので持って行くのに輸送費がかかるから先代が置いて行ったのか。
鑑定もしてもらう必要があったのである。
勿論、全てを売るつもりで買い取り店に行くとシルフィがロイスと結婚したことを知っている店主もいて「結婚祝い価格にしてあげるよ」と言ってくれた。
「壁紙も売りたいんだけど、タバコのヤニが凄いの」
「へぇ。タバコの‥ん?ちょっと待ちなよ?それはどのくらい汚れてるんだい?」
「もうベットベト。ヌルってするのよ」
「それ、もしかすると金になるかもよ?」
「まっさかぁ。あんなのが売れるだなんて世も末よ」
「それが欲しいって商会があるんだよ」
そんなものを?驚いたが欲しがっているのは商会。アシェル男爵家のように錬金術を使った製品を扱っている商会だが、掃除や食器洗いなどの洗剤を扱っているのだと言う。
「タバコのヤニがすっきりと落ちる洗剤を作っているそうなんだが、ヤニが酷ければ酷いほど欲しいって言っててさ。連絡してみるから、そうだな。明後日あたりにまた来られるかい?」
「来るわ!結構広いんだけど家具を置いてた部分は壁紙も白いから…そうね。直接屋敷に見に来てもらった方がいいかも。そのまま持って帰ってくれるならべりべり壁紙を剝がしちゃっても構わないわ」
「それは相手も助かるな。二度手間にならなくて済む。じゃぁ直接屋敷に行くように伝えておくよ。うちも今は荷馬車の予定が詰まってるから…明後日になるけど買い取りに行くよ」
「ありがとう。助かるわ。良い値で買い取ってくれるのを期待してるわ」
やはり朝から笑顔でスタートをすると良い事が続くなぁ。
シルフィは軽い足取りでラーリ伯爵家に戻ってきたのだが玄関を入っても使用人がいる訳でもない。屋敷にはロイスだけかと思っていたのだが…。
サロンからは聞き覚えのある声がシルフィの耳に聞こえて来た。
「また来てるの?まぁ‥好きにすればいいけど。シフト表さえ作ってくれていれば問題ないわ」
そう思いながらラーリ伯爵家の間取りを思い浮かべた。
「玄関挟んで東側に移って貰おうかな」
ロイスの部屋を移って貰い、西側は工房にするのならグレイスが来ていても気にならないし、なんならどこかに外食に行ってもらえれば食事も1人分少なくて済むのでは?と考えた。
「シルフィさん!シルフィさんじゃないですか」
「バナードさん!お元気そうでよかったわ。コーリさんも元気?」
「元気、元気。今は礼拝堂の掃除をしてるはずだよ。今日はどうしたんだい?礼拝の日?」
「ううん。皆をスカウトしに来たの。衣食住付きで月額15万が今は限界なんだけど来てくれるかしら」
「上等だよ。行く。行く。何すればいいんだ?」
「ちゃんと皆に聞かないと!勝手に決めちゃだめでしょう」
「行くって言うと思うよ。神父様にもそろそろここを出てくれって言われてるんだけど皆、仕事がなくてさ。日雇いの仕事も早い者勝ちだからさっぱりだよ。ここに世話になって半年だが一番稼いだブドルックで5万だよ。半年で5万。うっかり病気にもなれねぇよ」
一旦職を失ってしまうと紹介状があっても職人となるとなかなか雇っては貰えない。
同業者の工房になるので、本当に前の工房をやめたのかなど警戒をされてしまうのだ。
その上、新しい工房のやり方について行けず、熟練であればあるほどプライドをへし折られる事もある。
シルフィが来ていると誰かが触れ回ったのかあっという間にシルフィの回りに工房を辞めて行った者たちとその家族が集まってきた。
彼らはシルフィの母が亡くなった後、アシェル男爵のやり方に反発をして辞めた者たち。
アッタケーナは冬場には携帯も出来るし重宝されるのだが、低温火傷の危険もあるし発火する魔石をきちんと配合しなければ熱湯並みの熱さになる。
布で包んではいるけれどしっかりと縫製しなければ過熱状態の魔石が零れて大やけどをするのにアシェル男爵は利益重視でそれまで3重に縫製していたのを1度にし、布も安くて薄い布に買えた。
魔石もきちんと選別されたものではなく、安価な混合品にしたので彼らは怒ったのだ。
シルフィは彼らにラーリ伯爵家の場所を教え、その足で買い取り店に向かった。
残っている家具などはあまり価値がないモノなのか、それとも壁いっぱいの大きな絵画などなので持って行くのに輸送費がかかるから先代が置いて行ったのか。
鑑定もしてもらう必要があったのである。
勿論、全てを売るつもりで買い取り店に行くとシルフィがロイスと結婚したことを知っている店主もいて「結婚祝い価格にしてあげるよ」と言ってくれた。
「壁紙も売りたいんだけど、タバコのヤニが凄いの」
「へぇ。タバコの‥ん?ちょっと待ちなよ?それはどのくらい汚れてるんだい?」
「もうベットベト。ヌルってするのよ」
「それ、もしかすると金になるかもよ?」
「まっさかぁ。あんなのが売れるだなんて世も末よ」
「それが欲しいって商会があるんだよ」
そんなものを?驚いたが欲しがっているのは商会。アシェル男爵家のように錬金術を使った製品を扱っている商会だが、掃除や食器洗いなどの洗剤を扱っているのだと言う。
「タバコのヤニがすっきりと落ちる洗剤を作っているそうなんだが、ヤニが酷ければ酷いほど欲しいって言っててさ。連絡してみるから、そうだな。明後日あたりにまた来られるかい?」
「来るわ!結構広いんだけど家具を置いてた部分は壁紙も白いから…そうね。直接屋敷に見に来てもらった方がいいかも。そのまま持って帰ってくれるならべりべり壁紙を剝がしちゃっても構わないわ」
「それは相手も助かるな。二度手間にならなくて済む。じゃぁ直接屋敷に行くように伝えておくよ。うちも今は荷馬車の予定が詰まってるから…明後日になるけど買い取りに行くよ」
「ありがとう。助かるわ。良い値で買い取ってくれるのを期待してるわ」
やはり朝から笑顔でスタートをすると良い事が続くなぁ。
シルフィは軽い足取りでラーリ伯爵家に戻ってきたのだが玄関を入っても使用人がいる訳でもない。屋敷にはロイスだけかと思っていたのだが…。
サロンからは聞き覚えのある声がシルフィの耳に聞こえて来た。
「また来てるの?まぁ‥好きにすればいいけど。シフト表さえ作ってくれていれば問題ないわ」
そう思いながらラーリ伯爵家の間取りを思い浮かべた。
「玄関挟んで東側に移って貰おうかな」
ロイスの部屋を移って貰い、西側は工房にするのならグレイスが来ていても気にならないし、なんならどこかに外食に行ってもらえれば食事も1人分少なくて済むのでは?と考えた。
596
あなたにおすすめの小説
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
運命の恋は一度だけ
豆狸
恋愛
王宮から招かれているのです。
マルクス殿下の十歳の誕生パーティへ行かないわけにはいきません。
けれど行きたいとは思えませんでした。行ったら、なにか恐ろしいことが起こりそうな気がするのです。今すぐにではなく、もっと未来、時間を経た後に……
この誓いを違えぬと
豆狸
恋愛
「先ほどの誓いを取り消します。女神様に嘘はつけませんもの。私は愛せません。女神様に誓って、この命ある限りジェイク様を愛することはありません」
──私は、絶対にこの誓いを違えることはありません。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
※7/18大公の過去を追加しました。長くて暗くて救いがありませんが、よろしければお読みください。
なろう様でも公開中です。
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
働きませんわ。それでも王妃になります
鷹 綾
恋愛
「私は働きませんわ」
そう宣言して、王太子から婚約破棄された公爵令嬢エルフィーナ。
社交もしない。慈善もしない。政務にも口を出さない。
“怠け者令嬢”と陰で囁かれる彼女を、王太子アレクシスは「王妃に相応しくない」と切り捨てた。
――だが彼は知らなかった。
彼女が動かないからこそ、王家は自力で立つことを覚えたのだということを。
エルフィーナは何もしない。
ただ保証を更新せず、支援を継続せず、静かに席を外すだけ。
その結果――
王家は自らの足で立つことを強いられ、王太子は“誰の力にも頼らない王”へと変わっていく。
やがて外圧が王国を揺らしたとき、彼は気づく。
支配でも依存でもなく、並んで立てる存在が誰だったのかを。
「君と並びたい」
差し出されたのは、甘い救済ではない。
対等という選択。
それでも彼女の答えは変わらない。
「私は働きませんわ」
働かない。
支配しない。
けれど、逃げもしない。
これは――
働かないまま王妃になる、公爵令嬢の静かなざまあ恋愛譚。
優雅で、合理的で、そしてどこまでも強い。
“何もしない”という最強の選択が、王国を変えていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる