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第12話 あれは何だ?それはレンタル奥様
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「何なんだ?あの女はっ!何なんだよっ」
私室に戻ったレンダールは今まで生きてきて感じたことのない胸の動悸を感じていた。5歳、いや6歳だったか。それは初めて国王の前で挨拶をするために両親に連れられて扉の前に立った時の緊張感にも似ていた。
「私は緊張しているのか?あんな女に?」
腰を下ろす場を寝台に取り、両手の手で額を支えるようにして俯き、顔を上げて額を支えていた手で髪を手櫛で梳くように後ろに流し、いつもの癖だ。片足を浮かせて足を組むと「ぱちん!」と叩かれてしまった方の膝が下になった。
もう片方の足の重みを感じ、レンダールは組んだ足を解いた。
「腰痛の原因って、なんだよそれ。フハハ…ハハハッ」
スティルから「決まりましたよ!」と久しく見たことのない笑みで報告をされて4日前には両親から手紙も届いた。
スティルからは簡単なリサの経歴の書かれた書類も受け取っていた。
『リサ・イクル。子爵家の娘か』
『はい。とっても可愛くて笑顔がキュートな女性ですよ』
『関係ない。ごっこ遊びに付き合う気はないからな』
『またそんな。ですがここにいらっしゃる日はちゃんと出迎えるんですよ?それくらいはしてください。いいですね?』
毎日スティルに顔を会わせるたびに「3日後ですよ」「2日後ですよ」「いよいよ明日です!」言われてきたが結局玄関で出迎える意味を感じず放っておいた。
しかし、一言言ってやらないと気が済まず、リサが今後使用する部屋で待っていた。
レンダールの中では「解りました」と大人しく頭を下げるだろう。
そう思っていたのに。
ここ数日を思い出してみれば…。
屋敷の改装は随分前に住んでいたけれど、ここ10日程は使用人たちが何度も出入りをして色々な調度品を運び込み、部屋の使用者がいないのに庭の花を摘んできて花瓶に挿していた。
『こんな感じでいいかなぁ』
『昨日のピンクもよかったけどオレンジの花もいいわね』
『部屋に入って来た時に目に入るかな?』
『だったら隣の出窓の方が目に入りやすいんじゃない?』
――馬鹿か。こいつら――
ラーズとストロはまだ使用者のいない部屋を飾りつけていた。
それも部屋に入った時、朝起きた時、ホッと一息ついた時など勝手なシミュレーションで花を飾ったり、僅かにテーブルを移動させたり。
厨房に行けば料理人が試作料理を作っていた。
賄使用人たちで味付けの濃淡や盛り付けの見た目を真剣に談義し、すっかり冷めてしまった料理を賄いで試食していた。
『まだ10代の奥様だからもうちょっと味は濃いのが好きかも』
『パプリカは色目は良いんだけど好きかなぁ』
『ピーマンみたいなのは嫌いって人多いよね』
『肉はもうちょっと火を入れても良いんじゃないか?』
自分だけが仲間外れになっている気もしたレンダールは、ばふっと寝台に腰かけた姿勢から勢いのままに背中を寝台に横たえた。
「王女のような女だったらどうするんだよ」
レンダールは「はぁー」溜息を吐き出すと体勢を変えてごろっと反転。
「女なんか大っ嫌いだぁぁー!もう放っておいてくれよ!」
顔を掛布に埋めて叫んだけれど、胸の動悸は収まらない。
バシバシと寝台を叩き、レンダールはリサの言葉を思い出した。
「なのにっ!!レンタル奥様ってなんなんだよーっ!!」
ごろごろと寝台を転がっているとお昼寝タイム。
つかの間の惰眠を貪り目が覚め「喉が渇いたな」と水差しに手をやると水差しは空だった。
仕方なく呼び鈴を…と思ったのだがスティルも呆れていた顔を思い出し、自分で水を貰うために厨房に行こうと水差しを手に向かった先。
――なんだ?この楽しそうな声は――
廊下を歩き、最後の角を曲がれば先にあるのは厨房。
この時間は夕食の仕込みをするのに料理長が食材の下拵えを急げと声を張り上げている筈なのに笑い声が聞こえてくる。
そっと角から顔を覗かせるが、見えるのはまだ廊下。
声は廊下の途中にある開け放たれた厨房の扉の向こう側から聞こえていた。
「なかなか美味いっすね」
「このポリポリ感と塩気が癖になりそうだ」
「でしょう?これにね?フフフ。胡椒を振ると…さぁ召し上がれ!」
「フォォォ!!何だこれは!(ぼりぼり)手が止まらねぇ!」
更に進んで扉の向こうをレンダールが覗くとジャガイモを薄くスライスし油でコンガリ揚げて塩コショウを振りかけた芋チップをオヤツ代わりに食べている使用人たちがいた。
その中央に居たのは、レンタル奥様のリサだった。
私室に戻ったレンダールは今まで生きてきて感じたことのない胸の動悸を感じていた。5歳、いや6歳だったか。それは初めて国王の前で挨拶をするために両親に連れられて扉の前に立った時の緊張感にも似ていた。
「私は緊張しているのか?あんな女に?」
腰を下ろす場を寝台に取り、両手の手で額を支えるようにして俯き、顔を上げて額を支えていた手で髪を手櫛で梳くように後ろに流し、いつもの癖だ。片足を浮かせて足を組むと「ぱちん!」と叩かれてしまった方の膝が下になった。
もう片方の足の重みを感じ、レンダールは組んだ足を解いた。
「腰痛の原因って、なんだよそれ。フハハ…ハハハッ」
スティルから「決まりましたよ!」と久しく見たことのない笑みで報告をされて4日前には両親から手紙も届いた。
スティルからは簡単なリサの経歴の書かれた書類も受け取っていた。
『リサ・イクル。子爵家の娘か』
『はい。とっても可愛くて笑顔がキュートな女性ですよ』
『関係ない。ごっこ遊びに付き合う気はないからな』
『またそんな。ですがここにいらっしゃる日はちゃんと出迎えるんですよ?それくらいはしてください。いいですね?』
毎日スティルに顔を会わせるたびに「3日後ですよ」「2日後ですよ」「いよいよ明日です!」言われてきたが結局玄関で出迎える意味を感じず放っておいた。
しかし、一言言ってやらないと気が済まず、リサが今後使用する部屋で待っていた。
レンダールの中では「解りました」と大人しく頭を下げるだろう。
そう思っていたのに。
ここ数日を思い出してみれば…。
屋敷の改装は随分前に住んでいたけれど、ここ10日程は使用人たちが何度も出入りをして色々な調度品を運び込み、部屋の使用者がいないのに庭の花を摘んできて花瓶に挿していた。
『こんな感じでいいかなぁ』
『昨日のピンクもよかったけどオレンジの花もいいわね』
『部屋に入って来た時に目に入るかな?』
『だったら隣の出窓の方が目に入りやすいんじゃない?』
――馬鹿か。こいつら――
ラーズとストロはまだ使用者のいない部屋を飾りつけていた。
それも部屋に入った時、朝起きた時、ホッと一息ついた時など勝手なシミュレーションで花を飾ったり、僅かにテーブルを移動させたり。
厨房に行けば料理人が試作料理を作っていた。
賄使用人たちで味付けの濃淡や盛り付けの見た目を真剣に談義し、すっかり冷めてしまった料理を賄いで試食していた。
『まだ10代の奥様だからもうちょっと味は濃いのが好きかも』
『パプリカは色目は良いんだけど好きかなぁ』
『ピーマンみたいなのは嫌いって人多いよね』
『肉はもうちょっと火を入れても良いんじゃないか?』
自分だけが仲間外れになっている気もしたレンダールは、ばふっと寝台に腰かけた姿勢から勢いのままに背中を寝台に横たえた。
「王女のような女だったらどうするんだよ」
レンダールは「はぁー」溜息を吐き出すと体勢を変えてごろっと反転。
「女なんか大っ嫌いだぁぁー!もう放っておいてくれよ!」
顔を掛布に埋めて叫んだけれど、胸の動悸は収まらない。
バシバシと寝台を叩き、レンダールはリサの言葉を思い出した。
「なのにっ!!レンタル奥様ってなんなんだよーっ!!」
ごろごろと寝台を転がっているとお昼寝タイム。
つかの間の惰眠を貪り目が覚め「喉が渇いたな」と水差しに手をやると水差しは空だった。
仕方なく呼び鈴を…と思ったのだがスティルも呆れていた顔を思い出し、自分で水を貰うために厨房に行こうと水差しを手に向かった先。
――なんだ?この楽しそうな声は――
廊下を歩き、最後の角を曲がれば先にあるのは厨房。
この時間は夕食の仕込みをするのに料理長が食材の下拵えを急げと声を張り上げている筈なのに笑い声が聞こえてくる。
そっと角から顔を覗かせるが、見えるのはまだ廊下。
声は廊下の途中にある開け放たれた厨房の扉の向こう側から聞こえていた。
「なかなか美味いっすね」
「このポリポリ感と塩気が癖になりそうだ」
「でしょう?これにね?フフフ。胡椒を振ると…さぁ召し上がれ!」
「フォォォ!!何だこれは!(ぼりぼり)手が止まらねぇ!」
更に進んで扉の向こうをレンダールが覗くとジャガイモを薄くスライスし油でコンガリ揚げて塩コショウを振りかけた芋チップをオヤツ代わりに食べている使用人たちがいた。
その中央に居たのは、レンタル奥様のリサだった。
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