侯爵様、契約妻ではなくレンタル奥様です

cyaru

文字の大きさ
17 / 47

第17話  飛び出すな・馬車は・急にはトマレナイ

しおりを挟む
平身低頭でスティルに謝罪をされ、講義は一旦中止となってしまった。

「新しい講師を今度はきっちりと選定致します。先代様からも申し訳ないとこちらを預かって参りました」

「なんです?これ」

「先代夫人様がこちらで心を癒してくださいと選ばれた人形で御座います」


そう言って箱を開けると確かに人形が入っていた。
名工が作ったビスクドールなのだが、正直…趣味ではない。

「女の子イコール人形って事なのかなぁ」

10代に突入する前なら「お人形さんだ!」と喜んだかも知れないけれど今はちっとも嬉しくない。

「よくできてるな~とは思うんだけどな」

リサはビスクドールを手に取ると色んな角度から眺めてみるが、やはり嬉しくはなかった。



全員解雇となってしまったが、講師たちを選んだのは先代夫妻。
伝手を使い「娘に教えてもらったが、姪などにも是非頼みたい」と言っていたので選んだそうだが、リサは思う。きっと貴族の子女相手ならきちんと対応するのだろうと。

リサも子爵令嬢ではあるけれど、講師を呼んでまでのレベルではないので講師たちにしてみれば平民と変わりない。

講師の中には身分が平民である者もいたけれど、出自は伯爵家などでも継ぐ家もなく講師を生業としていただけ。子爵家風情がと腹立たしくも感じたのだろう。

「判らなくもないのよね。今まで格下だと思ってたのに格上って許せないって思う人はいるもの」

「そのような者を知らなかったとは言え、誠に申し訳――」

「スティル様、謝罪をするのは禁止ですよ(えへっ)」

「リサ様。そうでしたね。もうし‥」

「また言ってますよ?そんな事よりも時間も出来ましたし、少し実家に戻りたいんですけどいいでしょうか?」

「ご実家に?人は派遣しておりますが…」

「そちらの心配はしていないんですけど、父が寂しがってないかな?と思いまして」

「で、ですが…そのぅ…旦那様が何と仰るか」

「関係ないですよ」


スティルは言えなかった。
レンダールが口止めをしたのもあるが、先代夫妻が講師を選んだのは本当だが、講師達を解雇したのはレンダールでビスクドールをリサに贈ったのもレンダールであることを。

少し渋り気味のスティルから許可も得てリサは久しぶりに実家のイクル子爵家に戻るために馬車に乗りこんだのだったが、侯爵家を出て人通りの多い街中に差し掛かろうとかという時、突然馬車が止まった。


「リサ様、申し訳ございません」

「何があったの?子供が泣いてるみたいだけど」

「道の真ん中で遊んでいたようです」

「まさか!轢いてしまったの?!」

「いえ、轢いてはいないんですけど」


御者の声が途切れても子供の泣き声が途切れることはない。
侯爵家の馬車なので、こんな場所で外に出るのは危険だと解ってはいたが轢いていないにしても怪我をしたのかも知れないと思うとリサは放ってはおけなかった。

「ドアを開けて」

「いけません。リサ様。危険です」

「大丈夫。こう見えて私、何かあった事がないの」

「リサ様、今まで何もなくても、今回はあるかも知れません」

「大丈夫だってば。それに周囲にこれだけ人もいるし攫われそうになっても私、逃げ足に自信はあるの。スズメバチの巣を壊して襲われた事もあるけど逃げ切ったのよ」

「スズメバチから?!」

「えぇ。水路に飛び込んで今度は溺れそうになったけど」

――それはそれで別の問題があるのでは?――

御者は思ったが、周囲には子供の泣き声に人が集まってきてしまった。
家紋も付いている馬車なので、平民の子であれば見捨てて立ち去っても面と向かって悪く言うものはいないが、評判は悪くなる。

仕方なく扉を開けるとリサはステップも用意する前に「てぇい!」馬車から飛び降りてしまった。

「ごめんね。大丈夫?」

リサは子供に駆け寄ったのだが、子供は馬車を指さし泣き止んではくれなかった。

「轢かれてはないようだけど…跳ねられちゃったのかな」

子供の体は土で汚れてはいるが、何処もケガはしていないようだった。
ずっと指さしているので、リサが馬車を振り返ってみると…。

「ハッ?!大変!!人を轢いてるじゃない!!」

リサの叫び声に御者は「まさか?!」と馬車の下を覗き込んだ。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

契約妻に「愛さない」と言い放った冷酷騎士、一分後に彼女の健気さが性癖に刺さって理性が崩壊した件

水月
恋愛
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件の旦那様視点短編となります。 「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。

さようなら、私の王子様

雨野六月(旧アカウント)
恋愛
「ビアンカ・アデライド、お前との婚約を破棄する!」 王太子リチャードの言葉に対し、侯爵令嬢ビアンカが抱いたのは怒りでも哀しみでもなく、「ついにこの時が来たか」という感慨だった。ビアンカにしてみれば、いずれこうなることは避けられない運命だったから。 これは二度の婚約破棄を経験した令嬢が、真実の愛を見つけるまでのお話。

あなたを愛する心は珠の中

れもんぴーる
恋愛
侯爵令嬢のアリエルは仲の良い婚約者セドリックと、両親と幸せに暮らしていたが、父の事故死をきっかけに次々と不幸に見舞われる。 母は行方不明、侯爵家は叔父が継承し、セドリックまで留学生と仲良くし、学院の中でも四面楚歌。 アリエルの味方は侍従兼護衛のクロウだけになってしまった。 傷ついた心を癒すために、神秘の国ドラゴナ神国に行くが、そこでアリエルはシャルルという王族に出会い、衝撃の事実を知る。 ドラゴナ神国王家の一族と判明したアリエルだったが、ある事件がきっかけでアリエルのセドリックを想う気持ちは、珠の中に封じ込められた。 記憶を失ったアリエルに縋りつくセドリックだが、アリエルは婚約解消を望む。 アリエルを襲った様々な不幸は偶然なのか?アリエルを大切に思うシャルルとクロウが動き出す。 アリエルは珠に封じられた恋心を忘れたまま新しい恋に向かうのか。それとも恋心を取り戻すのか。 *なろう様、カクヨム様にも投稿を予定しております

居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。 父親は怒り、修道院に入れようとする。 そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。 学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。 ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。

『めでたしめでたし』の、その後で

ゆきな
恋愛
シャロン・ブーケ伯爵令嬢は社交界デビューの際、ブレント王子に見初められた。 手にキスをされ、一晩中彼とダンスを楽しんだシャロンは、すっかり有頂天だった。 まるで、おとぎ話のお姫様になったような気分だったのである。 しかし、踊り疲れた彼女がブレント王子に導かれるままにやって来たのは、彼の寝室だった。 ブレント王子はお気に入りの娘を見つけるとベッドに誘い込み、飽きたら多額の持参金をもたせて、適当な男の元へと嫁がせることを繰り返していたのだ。 そんなこととは知らなかったシャロンは恐怖のあまり固まってしまったものの、なんとか彼の手を振り切って逃げ帰ってくる。 しかし彼女を迎えた継母と異母妹の態度は冷たかった。 継母はブレント王子の悪癖を知りつつ、持参金目当てにシャロンを王子の元へと送り出していたのである。 それなのに何故逃げ帰ってきたのかと、継母はシャロンを責めた上、役立たずと罵って、その日から彼女を使用人同然にこき使うようになった。 シャロンはそんな苦境の中でも挫けることなく、耐えていた。 そんなある日、ようやくシャロンを愛してくれる青年、スタンリー・クーパー伯爵と出会う。 彼女はスタンリーを心の支えに、辛い毎日を懸命に生きたが、異母妹はシャロンの幸せを許さなかった。 彼女は、どうにかして2人の仲を引き裂こうと企んでいた。 2人の間の障害はそればかりではなかった。 なんとブレント王子は、いまだにシャロンを諦めていなかったのだ。 彼女の身も心も手に入れたい欲求にかられたブレント王子は、彼女を力づくで自分のものにしようと企んでいたのである。

戦場から帰らぬ夫は、隣国の姫君に恋文を送っていました

Mag_Mel
恋愛
しばらく床に臥せていたエルマが久方ぶりに参加した祝宴で、隣国の姫君ルーシアは戦地にいるはずの夫ジェイミーの名を口にした。 「彼から恋文をもらっていますの」。 二年もの間、自分には便りひとつ届かなかったのに? 真実を確かめるため、エルマは姫君の茶会へと足を運ぶ。 そこで待っていたのは「身を引いて欲しい」と別れを迫る、ルーシアの取り巻きたちだった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

王太子様お願いです。今はただの毒草オタク、過去の私は忘れて下さい

シンさん
恋愛
ミリオン侯爵の娘エリザベスには秘密がある。それは本当の侯爵令嬢ではないという事。 お花や薬草を売って生活していた、貧困階級の私を子供のいない侯爵が養子に迎えてくれた。 ずっと毒草と共に目立たず生きていくはずが、王太子の婚約者候補に…。 雑草メンタルの毒草オタク侯爵令嬢と 王太子の恋愛ストーリー ☆ストーリーに必要な部分で、残酷に感じる方もいるかと思います。ご注意下さい。 ☆毒草名は作者が勝手につけたものです。 表紙 Bee様に描いていただきました

おさななじみの次期公爵に「あなたを愛するつもりはない」と言われるままにしたら挙動不審です

ワイちゃん
恋愛
伯爵令嬢セリアは、侯爵に嫁いだ姉にマウントをとられる日々。会えなくなった幼馴染とのあたたかい日々を心に過ごしていた。ある日、婚活のための夜会に参加し、得意のピアノを披露すると、幼馴染と再会し、次の日には公爵の幼馴染に求婚されることに。しかし、幼馴染には「あなたを愛するつもりはない」と言われ、相手の提示するルーティーンをただただこなす日々が始まり……?

処理中です...