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第17話 飛び出すな・馬車は・急にはトマレナイ
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平身低頭でスティルに謝罪をされ、講義は一旦中止となってしまった。
「新しい講師を今度はきっちりと選定致します。先代様からも申し訳ないとこちらを預かって参りました」
「なんです?これ」
「先代夫人様がこちらで心を癒してくださいと選ばれた人形で御座います」
そう言って箱を開けると確かに人形が入っていた。
名工が作ったビスクドールなのだが、正直…趣味ではない。
「女の子イコール人形って事なのかなぁ」
10代に突入する前なら「お人形さんだ!」と喜んだかも知れないけれど今はちっとも嬉しくない。
「よくできてるな~とは思うんだけどな」
リサはビスクドールを手に取ると色んな角度から眺めてみるが、やはり嬉しくはなかった。
全員解雇となってしまったが、講師たちを選んだのは先代夫妻。
伝手を使い「娘に教えてもらったが、姪などにも是非頼みたい」と言っていたので選んだそうだが、リサは思う。きっと貴族の子女相手ならきちんと対応するのだろうと。
リサも子爵令嬢ではあるけれど、講師を呼んでまでのレベルではないので講師たちにしてみれば平民と変わりない。
講師の中には身分が平民である者もいたけれど、出自は伯爵家などでも継ぐ家もなく講師を生業としていただけ。子爵家風情がと腹立たしくも感じたのだろう。
「判らなくもないのよね。今まで格下だと思ってたのに格上って許せないって思う人はいるもの」
「そのような者を知らなかったとは言え、誠に申し訳――」
「スティル様、謝罪をするのは禁止ですよ(えへっ)」
「リサ様。そうでしたね。もうし‥」
「また言ってますよ?そんな事よりも時間も出来ましたし、少し実家に戻りたいんですけどいいでしょうか?」
「ご実家に?人は派遣しておりますが…」
「そちらの心配はしていないんですけど、父が寂しがってないかな?と思いまして」
「で、ですが…そのぅ…旦那様が何と仰るか」
「関係ないですよ」
スティルは言えなかった。
レンダールが口止めをしたのもあるが、先代夫妻が講師を選んだのは本当だが、講師達を解雇したのはレンダールでビスクドールをリサに贈ったのもレンダールであることを。
少し渋り気味のスティルから許可も得てリサは久しぶりに実家のイクル子爵家に戻るために馬車に乗りこんだのだったが、侯爵家を出て人通りの多い街中に差し掛かろうとかという時、突然馬車が止まった。
「リサ様、申し訳ございません」
「何があったの?子供が泣いてるみたいだけど」
「道の真ん中で遊んでいたようです」
「まさか!轢いてしまったの?!」
「いえ、轢いてはいないんですけど」
御者の声が途切れても子供の泣き声が途切れることはない。
侯爵家の馬車なので、こんな場所で外に出るのは危険だと解ってはいたが轢いていないにしても怪我をしたのかも知れないと思うとリサは放ってはおけなかった。
「ドアを開けて」
「いけません。リサ様。危険です」
「大丈夫。こう見えて私、何かあった事がないの」
「リサ様、今まで何もなくても、今回はあるかも知れません」
「大丈夫だってば。それに周囲にこれだけ人もいるし攫われそうになっても私、逃げ足に自信はあるの。スズメバチの巣を壊して襲われた事もあるけど逃げ切ったのよ」
「スズメバチから?!」
「えぇ。水路に飛び込んで今度は溺れそうになったけど」
――それはそれで別の問題があるのでは?――
御者は思ったが、周囲には子供の泣き声に人が集まってきてしまった。
家紋も付いている馬車なので、平民の子であれば見捨てて立ち去っても面と向かって悪く言うものはいないが、評判は悪くなる。
仕方なく扉を開けるとリサはステップも用意する前に「てぇい!」馬車から飛び降りてしまった。
「ごめんね。大丈夫?」
リサは子供に駆け寄ったのだが、子供は馬車を指さし泣き止んではくれなかった。
「轢かれてはないようだけど…跳ねられちゃったのかな」
子供の体は土で汚れてはいるが、何処もケガはしていないようだった。
ずっと指さしているので、リサが馬車を振り返ってみると…。
「ハッ?!大変!!人を轢いてるじゃない!!」
リサの叫び声に御者は「まさか?!」と馬車の下を覗き込んだ。
「新しい講師を今度はきっちりと選定致します。先代様からも申し訳ないとこちらを預かって参りました」
「なんです?これ」
「先代夫人様がこちらで心を癒してくださいと選ばれた人形で御座います」
そう言って箱を開けると確かに人形が入っていた。
名工が作ったビスクドールなのだが、正直…趣味ではない。
「女の子イコール人形って事なのかなぁ」
10代に突入する前なら「お人形さんだ!」と喜んだかも知れないけれど今はちっとも嬉しくない。
「よくできてるな~とは思うんだけどな」
リサはビスクドールを手に取ると色んな角度から眺めてみるが、やはり嬉しくはなかった。
全員解雇となってしまったが、講師たちを選んだのは先代夫妻。
伝手を使い「娘に教えてもらったが、姪などにも是非頼みたい」と言っていたので選んだそうだが、リサは思う。きっと貴族の子女相手ならきちんと対応するのだろうと。
リサも子爵令嬢ではあるけれど、講師を呼んでまでのレベルではないので講師たちにしてみれば平民と変わりない。
講師の中には身分が平民である者もいたけれど、出自は伯爵家などでも継ぐ家もなく講師を生業としていただけ。子爵家風情がと腹立たしくも感じたのだろう。
「判らなくもないのよね。今まで格下だと思ってたのに格上って許せないって思う人はいるもの」
「そのような者を知らなかったとは言え、誠に申し訳――」
「スティル様、謝罪をするのは禁止ですよ(えへっ)」
「リサ様。そうでしたね。もうし‥」
「また言ってますよ?そんな事よりも時間も出来ましたし、少し実家に戻りたいんですけどいいでしょうか?」
「ご実家に?人は派遣しておりますが…」
「そちらの心配はしていないんですけど、父が寂しがってないかな?と思いまして」
「で、ですが…そのぅ…旦那様が何と仰るか」
「関係ないですよ」
スティルは言えなかった。
レンダールが口止めをしたのもあるが、先代夫妻が講師を選んだのは本当だが、講師達を解雇したのはレンダールでビスクドールをリサに贈ったのもレンダールであることを。
少し渋り気味のスティルから許可も得てリサは久しぶりに実家のイクル子爵家に戻るために馬車に乗りこんだのだったが、侯爵家を出て人通りの多い街中に差し掛かろうとかという時、突然馬車が止まった。
「リサ様、申し訳ございません」
「何があったの?子供が泣いてるみたいだけど」
「道の真ん中で遊んでいたようです」
「まさか!轢いてしまったの?!」
「いえ、轢いてはいないんですけど」
御者の声が途切れても子供の泣き声が途切れることはない。
侯爵家の馬車なので、こんな場所で外に出るのは危険だと解ってはいたが轢いていないにしても怪我をしたのかも知れないと思うとリサは放ってはおけなかった。
「ドアを開けて」
「いけません。リサ様。危険です」
「大丈夫。こう見えて私、何かあった事がないの」
「リサ様、今まで何もなくても、今回はあるかも知れません」
「大丈夫だってば。それに周囲にこれだけ人もいるし攫われそうになっても私、逃げ足に自信はあるの。スズメバチの巣を壊して襲われた事もあるけど逃げ切ったのよ」
「スズメバチから?!」
「えぇ。水路に飛び込んで今度は溺れそうになったけど」
――それはそれで別の問題があるのでは?――
御者は思ったが、周囲には子供の泣き声に人が集まってきてしまった。
家紋も付いている馬車なので、平民の子であれば見捨てて立ち去っても面と向かって悪く言うものはいないが、評判は悪くなる。
仕方なく扉を開けるとリサはステップも用意する前に「てぇい!」馬車から飛び降りてしまった。
「ごめんね。大丈夫?」
リサは子供に駆け寄ったのだが、子供は馬車を指さし泣き止んではくれなかった。
「轢かれてはないようだけど…跳ねられちゃったのかな」
子供の体は土で汚れてはいるが、何処もケガはしていないようだった。
ずっと指さしているので、リサが馬車を振り返ってみると…。
「ハッ?!大変!!人を轢いてるじゃない!!」
リサの叫び声に御者は「まさか?!」と馬車の下を覗き込んだ。
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