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第27話 羽根付きならもっと安心
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「そうですか。侯爵様はお出かけになられたんですね」
「はい。折角リサ様が来てくださいましたのに」
スティルが申し訳なさそうに「ほんと、さっき、入れ違いでしたよ」というけれどシャカシャカと歩いて30分。馬車の速度も早歩きとほぼ同じなのでショーに呼び止められなくても会えたかどうか。
会えたとしても正門近くまで来た馬車で他家の馬車とあればリサも気がつかずすれ違っていただろう。
「特に何がと言う事はないんですけど、今日は5か所を回ってみたのでお礼と2か所については先にお願いをしておこうとかと思ったんです。また出直しますね」
「左様でございましたか」
「はい。では」
そのまま帰ろうとするリサをスティルはうっかり見送りそうになったが慌てて呼び止めた。
「リサ様!まさか歩いて帰られようと?」
「そうですけど?」
「御冗談を!!直ぐ馬車の用意を致します。それまでお茶でも楽しまれてください」
――危ない。危ない。歩きで帰したら旦那様に何と言われるか――
そう思いつつも従者に馬車の用意を指示しながらスティルは「まさかね」とリサを見る。
視線に気がつくとリサもスティルが何を聞きたいのか表情から読み取れた。
「そ、そこまで従業員と一緒だったのよ?本当よ?」
「(じぃぃー)」
「本当だってば」
「誰かと一緒。それは横において。移動手段は馬車?」
「それは‥‥でもほら、2本の足があるじゃない?歩くのは健康にも良いっていうし、慣れテルシ…」
「リサ様。明日以降は馬車を向かわせますので、移動は馬車。宜しいですね?」
「そこまでしなくてもって言うか…歩く方が小回りが利くって言うか」
「宜しいですね?」
「はぃ」
――危っなぁ…ショーに捕まってたなんて言ったら大変な事になってたわ――
えへへ。リサは笑って誤魔化したがスティルは「他にも何かありそうですね」と鋭い。
レンダールもスティルの血圧を気にしていたし、スティルには気を遣う部分もあるように見えていたので実は侯爵家を牛耳っているのはスティルなのでは??リサは冷や汗を流し、再度えへへ。誤魔化したのだった。
★~★
翌日もリサはリストにある場所に向かうべく従業員2人に声を掛けた。
「いいんだけどさ、俺らが乗っていいのか?」
「そうそう。作業着だからさ。汚しちまうよ?」
「良いんじゃないの?」
気安く言ってみたのは侯爵家には荷馬車もあるので作業内容を考えたら屋根のないに馬車だろうと考えたからなのだが、やってきたのは大きくて豪奢な馬車。
停車している馬車の扉を開けて待ってくれているのはリンゴン。
そしてリンゴンを含め15人の護衛騎士もセットになっていた。
――いやいや、王族でもここまでしないよ?知らんけど――
王族の移動中など見たことはないけれど、気分的一般人のリサには護衛15人はやり過ぎじゃないかと思えてならない。
リンゴンがゆっくり近寄ってきてそっと教えてくれた。
「出る時にスティルさんは俺の他に2人の護衛を命じたんですけど、旦那様が増やしたんです」
「侯爵様が?!」
「はい。それとリストにある場所にも私兵をそれぞれ20人増やして対応してます。何かありました?」
「ないっ。ないない。なーんにもないけど?」
「ないはずがないです。俺の他の2人。実は第1騎士団の人間です」
「ほへっ?!」
「私兵でも腕の経つ奴から順番にリサ様の向かう場所に配置してますし、なんでもあの2人。旦那様が朝の2時半に王太子殿下を叩き起こして ”人を寄越せ” と言ったとか言わなかったとかで朝5時に騎士団から派遣されてきたんですよ」
――侯爵様、ご乱心?今度こそキノコ拾い食い?――
そう思うものの、リンゴンが言うには「慣れるな危険」だと言う。
1回目が無事に終わり、こんなものかと気を抜いてしまうので襲われやすいのだと。
「2日目ですからね。正面、側面漏らさずしっかり、ロング陣形でがっちりガードですよ!」
リサは思う。
――女の子の日@夜 と間違ってない?――
「はい。折角リサ様が来てくださいましたのに」
スティルが申し訳なさそうに「ほんと、さっき、入れ違いでしたよ」というけれどシャカシャカと歩いて30分。馬車の速度も早歩きとほぼ同じなのでショーに呼び止められなくても会えたかどうか。
会えたとしても正門近くまで来た馬車で他家の馬車とあればリサも気がつかずすれ違っていただろう。
「特に何がと言う事はないんですけど、今日は5か所を回ってみたのでお礼と2か所については先にお願いをしておこうとかと思ったんです。また出直しますね」
「左様でございましたか」
「はい。では」
そのまま帰ろうとするリサをスティルはうっかり見送りそうになったが慌てて呼び止めた。
「リサ様!まさか歩いて帰られようと?」
「そうですけど?」
「御冗談を!!直ぐ馬車の用意を致します。それまでお茶でも楽しまれてください」
――危ない。危ない。歩きで帰したら旦那様に何と言われるか――
そう思いつつも従者に馬車の用意を指示しながらスティルは「まさかね」とリサを見る。
視線に気がつくとリサもスティルが何を聞きたいのか表情から読み取れた。
「そ、そこまで従業員と一緒だったのよ?本当よ?」
「(じぃぃー)」
「本当だってば」
「誰かと一緒。それは横において。移動手段は馬車?」
「それは‥‥でもほら、2本の足があるじゃない?歩くのは健康にも良いっていうし、慣れテルシ…」
「リサ様。明日以降は馬車を向かわせますので、移動は馬車。宜しいですね?」
「そこまでしなくてもって言うか…歩く方が小回りが利くって言うか」
「宜しいですね?」
「はぃ」
――危っなぁ…ショーに捕まってたなんて言ったら大変な事になってたわ――
えへへ。リサは笑って誤魔化したがスティルは「他にも何かありそうですね」と鋭い。
レンダールもスティルの血圧を気にしていたし、スティルには気を遣う部分もあるように見えていたので実は侯爵家を牛耳っているのはスティルなのでは??リサは冷や汗を流し、再度えへへ。誤魔化したのだった。
★~★
翌日もリサはリストにある場所に向かうべく従業員2人に声を掛けた。
「いいんだけどさ、俺らが乗っていいのか?」
「そうそう。作業着だからさ。汚しちまうよ?」
「良いんじゃないの?」
気安く言ってみたのは侯爵家には荷馬車もあるので作業内容を考えたら屋根のないに馬車だろうと考えたからなのだが、やってきたのは大きくて豪奢な馬車。
停車している馬車の扉を開けて待ってくれているのはリンゴン。
そしてリンゴンを含め15人の護衛騎士もセットになっていた。
――いやいや、王族でもここまでしないよ?知らんけど――
王族の移動中など見たことはないけれど、気分的一般人のリサには護衛15人はやり過ぎじゃないかと思えてならない。
リンゴンがゆっくり近寄ってきてそっと教えてくれた。
「出る時にスティルさんは俺の他に2人の護衛を命じたんですけど、旦那様が増やしたんです」
「侯爵様が?!」
「はい。それとリストにある場所にも私兵をそれぞれ20人増やして対応してます。何かありました?」
「ないっ。ないない。なーんにもないけど?」
「ないはずがないです。俺の他の2人。実は第1騎士団の人間です」
「ほへっ?!」
「私兵でも腕の経つ奴から順番にリサ様の向かう場所に配置してますし、なんでもあの2人。旦那様が朝の2時半に王太子殿下を叩き起こして ”人を寄越せ” と言ったとか言わなかったとかで朝5時に騎士団から派遣されてきたんですよ」
――侯爵様、ご乱心?今度こそキノコ拾い食い?――
そう思うものの、リンゴンが言うには「慣れるな危険」だと言う。
1回目が無事に終わり、こんなものかと気を抜いてしまうので襲われやすいのだと。
「2日目ですからね。正面、側面漏らさずしっかり、ロング陣形でがっちりガードですよ!」
リサは思う。
――女の子の日@夜 と間違ってない?――
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