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第28話 3と3の倍数?いいえ1の倍数です
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「何してんの。部屋が臭いと何度も言ってるでしょう?手を抜くんじゃないわよ」
今日もモナ伯爵夫人はイリーナの姿を見つけるとわざわざ近寄ってきて文句を言う。
「ホント、使えないわね。リサはもっと丁寧な仕事をしてたわよ?」
「すみません」
「謝ればいいってものじゃないのよ?コレだから特技が開脚の男爵娘は嫌なのよ」
イリーナは言い返す事が出来なかった。
実は1週間ほどモナ伯爵夫人に来いと言われても行かずに、両親には行った振りをしていた。
直接伯爵夫人が家にやってきて捲し立て、結婚式までの残り半年。奇数がつく日はモナ伯爵家に両親によって連れていかれる事になってしまった。
「奇数って!月終わりと月初めの31日と1日も?」
「当たり前でしょう?1と31。偶数に見えて?」
「み、見えません」
「馬鹿は馬鹿なりに数字は読めるのね。でも奇数よ。10~19も奇数はあるのよ、お判りね?」
「そんな!って事は9日から19日までって事ですか?」
「そうよ。10の位に1があるでしょう?いいのよ?偶数と言わず1の倍数にしてあげても」
――冗談じゃないわ。毎日になるじゃないの!――
イリーナは送迎は両親によってモナ伯爵家に確実に送り届けられ、伯爵家ではこき使われる事になってしまった。
「早くしなさい。竈の灰も片付けてなかったわよ?」
「で、でも、オムツ交換したばかりなんですっ」
「そう言うのは手早く済ませるのよ。後生大事に使用済みオムツ抱えてないで。今日やる事、終わってなかったら日付が変わってもやって貰うわよ。貴女の不手際なんだから帰れなくても文句は言わない事ね」
「ぐっ…はい」
イリーナは2人分のオムツの入った桶を伯爵夫人に放り投げてやりたい気持ちを抑え、廃棄庫にむかった。
★~★
モナ伯爵家としては婚約破棄とはなったけれど、ダメージは最小限に抑えたつもりだった。
イリーナは男爵家の出で、家にも大した金もなく力に至ってはないに等しい。
しかし、無償でこき使える使用人が増えたと思えば安いもの。
なのにこの状況は何だろうか。
1カ月も経たないうちに取引先は取引停止を言ってくるし、頭を下げても今までの10分の1まで取引の量を減らし、半年を目途に以後の取引は見合わせると言ってきた。
慰謝料は払ったのに。
相場よりかなり安い慰謝料ではあったけれどイクル子爵家がそれでいいと言ったので終わったはずなのに。
こんな事になるんだったら水面下でイクル子爵家にもっと上乗せをした慰謝料を払って時間はかかるが婚約は破棄ではなく解消にしておくんだったと嘆いたが後の祭り。
婚約破棄から2か月も経っていないのにモナ伯爵家は窮地に陥ってしまった。
先代の介護も介護商会に依頼をしても断られてしまうし、24時間ではなく12時間、8時間、6時間と交渉はしたが、代金は滞る事も無くきっちり払っているのに今週からは2日に1度、それも2時間のみになった。
先代伯爵夫妻は現役時代に老後の事を考えてかなり割増の積立金を払っていたので国からの年金額が破格に多いのだが、取引がなくなり収入が途絶えてしまうと年金を当てにするしかない。
「なぜこんなことに?」
調べてはみたが、婚約破棄でここまでペナルティを払った家はなくモナ伯爵夫妻は首を傾げた。
誰かが裏で糸を引いている、そんな気もするがされる覚えがない。
イクル子爵家にそんな芸当が出来る訳もなくモナ伯爵夫妻の疑問は大きくなるばかりだった。
今日もモナ伯爵夫人はイリーナの姿を見つけるとわざわざ近寄ってきて文句を言う。
「ホント、使えないわね。リサはもっと丁寧な仕事をしてたわよ?」
「すみません」
「謝ればいいってものじゃないのよ?コレだから特技が開脚の男爵娘は嫌なのよ」
イリーナは言い返す事が出来なかった。
実は1週間ほどモナ伯爵夫人に来いと言われても行かずに、両親には行った振りをしていた。
直接伯爵夫人が家にやってきて捲し立て、結婚式までの残り半年。奇数がつく日はモナ伯爵家に両親によって連れていかれる事になってしまった。
「奇数って!月終わりと月初めの31日と1日も?」
「当たり前でしょう?1と31。偶数に見えて?」
「み、見えません」
「馬鹿は馬鹿なりに数字は読めるのね。でも奇数よ。10~19も奇数はあるのよ、お判りね?」
「そんな!って事は9日から19日までって事ですか?」
「そうよ。10の位に1があるでしょう?いいのよ?偶数と言わず1の倍数にしてあげても」
――冗談じゃないわ。毎日になるじゃないの!――
イリーナは送迎は両親によってモナ伯爵家に確実に送り届けられ、伯爵家ではこき使われる事になってしまった。
「早くしなさい。竈の灰も片付けてなかったわよ?」
「で、でも、オムツ交換したばかりなんですっ」
「そう言うのは手早く済ませるのよ。後生大事に使用済みオムツ抱えてないで。今日やる事、終わってなかったら日付が変わってもやって貰うわよ。貴女の不手際なんだから帰れなくても文句は言わない事ね」
「ぐっ…はい」
イリーナは2人分のオムツの入った桶を伯爵夫人に放り投げてやりたい気持ちを抑え、廃棄庫にむかった。
★~★
モナ伯爵家としては婚約破棄とはなったけれど、ダメージは最小限に抑えたつもりだった。
イリーナは男爵家の出で、家にも大した金もなく力に至ってはないに等しい。
しかし、無償でこき使える使用人が増えたと思えば安いもの。
なのにこの状況は何だろうか。
1カ月も経たないうちに取引先は取引停止を言ってくるし、頭を下げても今までの10分の1まで取引の量を減らし、半年を目途に以後の取引は見合わせると言ってきた。
慰謝料は払ったのに。
相場よりかなり安い慰謝料ではあったけれどイクル子爵家がそれでいいと言ったので終わったはずなのに。
こんな事になるんだったら水面下でイクル子爵家にもっと上乗せをした慰謝料を払って時間はかかるが婚約は破棄ではなく解消にしておくんだったと嘆いたが後の祭り。
婚約破棄から2か月も経っていないのにモナ伯爵家は窮地に陥ってしまった。
先代の介護も介護商会に依頼をしても断られてしまうし、24時間ではなく12時間、8時間、6時間と交渉はしたが、代金は滞る事も無くきっちり払っているのに今週からは2日に1度、それも2時間のみになった。
先代伯爵夫妻は現役時代に老後の事を考えてかなり割増の積立金を払っていたので国からの年金額が破格に多いのだが、取引がなくなり収入が途絶えてしまうと年金を当てにするしかない。
「なぜこんなことに?」
調べてはみたが、婚約破棄でここまでペナルティを払った家はなくモナ伯爵夫妻は首を傾げた。
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