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△水魔法の効能
『こっちには牛糞を、ここは馬糞を。こちらは鶏糞を混ぜてくださいませ』
『奥様、こっちはどうします?』
『このあぜからこちら側は牛糞と鶏糞などを混ぜてみましょう。何と何を混ぜたかを判るような立札があるといいわね。この辺りにグサっと立てておくとか』
『やっときますよ!大工仕事が得意なんです』
屋敷から少し離れたところ。と言っても徒歩で30分ほどの場所にある領主用の畑に来ている俺とツリピオニー。
働いている男達は、まだ少し奥に建てた宿舎に住まう本来は他国の人間だ。
捕虜となった者達だが、協定が結ばれると国境近くまでは荷馬車に乗せて送り届ける。彼らの中にはそのまま国に戻らない者もいる。戦意や悪意がないと自己申告にはなるが申し出る事により俺は出来るだけ受け入れるようにしている。
そして数日後、今度は国から正規の出国手続きをした上でこの辺境に来る者がいる。
一旦捕虜となると家族からも冷遇されて、軍にも戻れず行き場を失った者達だ。
領民の中には怪訝な目で見る者もいるし、受け入れてくれる者もいるが彼らには仕事がない。
生き難い世の中だ。ツリピオニーの提案でそんな彼らを農夫として雇い入れファームを始めたのだ。
一部の農家では既に同時進行でツリピオニーの提案する栽培計画を実行している者もいる。
成功するかどうか判らない事に、ただ信頼だけでその年の収入源となる野菜から方向転換をしてくれた者達には頭が下がる思いだが、出来るだけ早く軌道に乗せるためにここで実験栽培を大規模に行っている。
雪融け水を引き込み、先ずは土壌を作っているのだ。
『ここには何を植えるんだ?』
『先ずは人参と大根、カボチャにジャガイモ。そして…フフフ♡ここは瓜類です』
『瓜類?』
『えぇ。カボチャも瓜の仲間ですが、ここはスイカ、メロン、キュウリ、トウガンにズッキーニ。それからヒョウタンも植えるのです。今年の夏はスイカ‥‥少しお休みが出来たら帰って来られるかなぁ‥って…思って…』
『ピオニー…(ぎゅっ)』
後ろからギュッとツリピオニーを抱きしめると回した腕に手を乗せてくる。
爪には既に土が入っているけれど、俺の為に頑張ってくれているその手が愛おしくて堪らない。
『冬の間は雪が積もるのに、ここの土はフカフカなんですよ?これは仮説なんですけど魔獣の糞が影響してると思うんです。魔獣の糞は魔力のある魔獣から排出されるのでミミズなんかが越冬する時にその周りに集まるんです。そこまでは今までの研究で判ってるんですけど、全部の魔獣の糞じゃないんですよね。違いが何なのか…判れば土が痩せるのも防げると思うんですよ。そうなれば連作も出来るんです』
座るのも【よいしょ】と声を掛けて座るようになったツリピオニー。
今までの討伐中は出っ放しだったが、実際は2週間に2,3日は交代で領地に帰る事が出来る。俺は今まで屋敷に戻っても両親はもう儚くなっているし、フレイドが仕切ってくれているから戻らなくても問題はなかったが、今年からは違う。突然帰ったら驚くだろうか。その頃にはもっとお腹が大きくなっているんだろうか。
向かい合って畝に苗を入れていく穴をあけていく。まだ土しか見えないこの畝が緑で覆われる日が来るのだ。
頬にも土が付いたツリピオニーの少し俯いて作業する顔を見ていると叱られてしまった。
『ヴィル。そんなに見られると顔に穴があきます。穴を開けるのは畝ですよ!』
『仰せのままに。我が妻』
『口じゃなくて手を動かして下さいまし!今日は畝を5つは穴開けますわよ』
『いっ5つ??無理だろ』
『無理だと思う前に手を動かす!やってみなければ無理かどうか判らないでしょう』
沢蟹のようにしゃがんで横歩きしながら穴をあけていると遠くで俺を呼ぶ声がした。
ツリピオニーとその方向を向くと、フレイドが俺を呼びながら畝をハードルに見立てているのか飛び越えてくる。麦わら帽子で押さえていたタオルの端で汗を拭きながら立ち上がる。
『どうしたんだ?出立の準備になにか不備があったか?』
『それが!大至急お屋敷にお戻りください。カスタード国の王子が来られています』
<< えぇぇっ? >>
驚きすぎて穴あけをしていた道具で指を少し切ってしまった。
ツリピオニーには気付かれていないが‥‥参ったな。泥だらけだ。
『フレイドさん、急いで簡易シャワーの用意をしてくださいまし。御屋敷に戻りますわ』
畝をあと2つ残してツリピオニーは俺に手を出せという。
水魔法で手を洗うのだ。ツリピオニーの出す水魔法の水はとても柔らかい。
軟水だとか硬水だとかの硬度ではなく、肌に触れた時の感触が柔いのだ。
『はい、手を洗ってくださいね。ちゃんと手首も!親指クルクルしてませんよ』
ツリピオニーは手洗いに五月蠅いのだ。手のひらでもう片方の指をニャン手にして爪を洗うのもしっかり見届けられてしまうのだ。指と指の間も洗い残しがあるとやり直しになってしまう。
『土の中にはまだその生態の判らない微生物も多いのです。乾いた時に呼吸器に影響する事もありますからしっかり手洗いをしてくださいね』
そういう事なのだ。そして俺はふと気が付いた。
――あれ?傷がない?――
粒になった水魔法が霧のようになって散霧するとポケットに入れたハンカチに水気を吸い取らせる。やはり先程穴あけの道具で切った部分が痕もなく消えていた。痛みもない。
『早くしないとお待たせしてしまいますわ』
ツリピオニー自身も手洗いをすると、俺の手を引いて帰ろうという。
屋敷までの道すがら俺はツリピオニーに聞いた。思ったのだ。綺麗に消えてしまった傷跡にもしかしたらツリピオニーのあの傷も消えるのではないかと。
『消えませんよ?』
事も無げに言うツリピオニー。試した事があるのだという。
まだ塞がっていない負ったばかりの傷は浅いものなら回復する事はツリピオニーも知っていた。そりゃ自分の魔法なのだから知っているよな。
『試したんですけど、人の細胞組織は止血や瘡蓋など修復作用を始めるでしょう?そうなってしまうと効果がないみたいです。促進することは出来るみたいですけど、それでもそんなに早くなるわけでもないですし。やはりない方がいいですよね…』
――違うんだ!――
俺はツリピオニーの傷の事なんか何も思わない。
だが、寂しそうな顔をさせてしまったのは俺自身の不用意な一言だ。
『ピオニー。気を悪くしたならごめん。傷が無かったらとかじゃないんだ。さっきフレイドが来た時に少し手を切ってしまって手洗いしているとその傷が消えたんだ。だから…その…本当に傷があるからとかそう言うんじゃなくて』
『判ってます』
『ごめん…すまなかった』
『謝ってはダメです。判っているんです。だって…初めての時、ヴィルはこの傷に何度も何度もキスをしてくれたでしょう?なかったら良かったのにと思った事は数えきれないほどありますが、ヴィルはそんな事を考える暇もないくらい愛してくださるし‥‥それにこの傷が出来たからヴィルに出会えたのかも知れません。なら感謝しようと』
『ピオニー‥‥好きだよ。大好きだ。誰よりも愛してるよ』
『うふふ♡知ってます。でもわたくしのほうがもっとヴィルの事、好きです』
『そんな!俺の方が多い。それは間違いない』
『いいえ!わたくしのほうが多いんですっ!』
何とでも言ってくれ。判っている。周りから見ればただのバカップルだという事を。
さて、客人だがカスタード国の王子。こんな田舎にと思うが話は【水利権】だろう。
30億を出すと返事はあったが、何かあったのだろうか。
俺は簡易シャワーで汗を流すと失礼にならない服装に身を包み、王子の待つ部屋に向かった。
『奥様、こっちはどうします?』
『このあぜからこちら側は牛糞と鶏糞などを混ぜてみましょう。何と何を混ぜたかを判るような立札があるといいわね。この辺りにグサっと立てておくとか』
『やっときますよ!大工仕事が得意なんです』
屋敷から少し離れたところ。と言っても徒歩で30分ほどの場所にある領主用の畑に来ている俺とツリピオニー。
働いている男達は、まだ少し奥に建てた宿舎に住まう本来は他国の人間だ。
捕虜となった者達だが、協定が結ばれると国境近くまでは荷馬車に乗せて送り届ける。彼らの中にはそのまま国に戻らない者もいる。戦意や悪意がないと自己申告にはなるが申し出る事により俺は出来るだけ受け入れるようにしている。
そして数日後、今度は国から正規の出国手続きをした上でこの辺境に来る者がいる。
一旦捕虜となると家族からも冷遇されて、軍にも戻れず行き場を失った者達だ。
領民の中には怪訝な目で見る者もいるし、受け入れてくれる者もいるが彼らには仕事がない。
生き難い世の中だ。ツリピオニーの提案でそんな彼らを農夫として雇い入れファームを始めたのだ。
一部の農家では既に同時進行でツリピオニーの提案する栽培計画を実行している者もいる。
成功するかどうか判らない事に、ただ信頼だけでその年の収入源となる野菜から方向転換をしてくれた者達には頭が下がる思いだが、出来るだけ早く軌道に乗せるためにここで実験栽培を大規模に行っている。
雪融け水を引き込み、先ずは土壌を作っているのだ。
『ここには何を植えるんだ?』
『先ずは人参と大根、カボチャにジャガイモ。そして…フフフ♡ここは瓜類です』
『瓜類?』
『えぇ。カボチャも瓜の仲間ですが、ここはスイカ、メロン、キュウリ、トウガンにズッキーニ。それからヒョウタンも植えるのです。今年の夏はスイカ‥‥少しお休みが出来たら帰って来られるかなぁ‥って…思って…』
『ピオニー…(ぎゅっ)』
後ろからギュッとツリピオニーを抱きしめると回した腕に手を乗せてくる。
爪には既に土が入っているけれど、俺の為に頑張ってくれているその手が愛おしくて堪らない。
『冬の間は雪が積もるのに、ここの土はフカフカなんですよ?これは仮説なんですけど魔獣の糞が影響してると思うんです。魔獣の糞は魔力のある魔獣から排出されるのでミミズなんかが越冬する時にその周りに集まるんです。そこまでは今までの研究で判ってるんですけど、全部の魔獣の糞じゃないんですよね。違いが何なのか…判れば土が痩せるのも防げると思うんですよ。そうなれば連作も出来るんです』
座るのも【よいしょ】と声を掛けて座るようになったツリピオニー。
今までの討伐中は出っ放しだったが、実際は2週間に2,3日は交代で領地に帰る事が出来る。俺は今まで屋敷に戻っても両親はもう儚くなっているし、フレイドが仕切ってくれているから戻らなくても問題はなかったが、今年からは違う。突然帰ったら驚くだろうか。その頃にはもっとお腹が大きくなっているんだろうか。
向かい合って畝に苗を入れていく穴をあけていく。まだ土しか見えないこの畝が緑で覆われる日が来るのだ。
頬にも土が付いたツリピオニーの少し俯いて作業する顔を見ていると叱られてしまった。
『ヴィル。そんなに見られると顔に穴があきます。穴を開けるのは畝ですよ!』
『仰せのままに。我が妻』
『口じゃなくて手を動かして下さいまし!今日は畝を5つは穴開けますわよ』
『いっ5つ??無理だろ』
『無理だと思う前に手を動かす!やってみなければ無理かどうか判らないでしょう』
沢蟹のようにしゃがんで横歩きしながら穴をあけていると遠くで俺を呼ぶ声がした。
ツリピオニーとその方向を向くと、フレイドが俺を呼びながら畝をハードルに見立てているのか飛び越えてくる。麦わら帽子で押さえていたタオルの端で汗を拭きながら立ち上がる。
『どうしたんだ?出立の準備になにか不備があったか?』
『それが!大至急お屋敷にお戻りください。カスタード国の王子が来られています』
<< えぇぇっ? >>
驚きすぎて穴あけをしていた道具で指を少し切ってしまった。
ツリピオニーには気付かれていないが‥‥参ったな。泥だらけだ。
『フレイドさん、急いで簡易シャワーの用意をしてくださいまし。御屋敷に戻りますわ』
畝をあと2つ残してツリピオニーは俺に手を出せという。
水魔法で手を洗うのだ。ツリピオニーの出す水魔法の水はとても柔らかい。
軟水だとか硬水だとかの硬度ではなく、肌に触れた時の感触が柔いのだ。
『はい、手を洗ってくださいね。ちゃんと手首も!親指クルクルしてませんよ』
ツリピオニーは手洗いに五月蠅いのだ。手のひらでもう片方の指をニャン手にして爪を洗うのもしっかり見届けられてしまうのだ。指と指の間も洗い残しがあるとやり直しになってしまう。
『土の中にはまだその生態の判らない微生物も多いのです。乾いた時に呼吸器に影響する事もありますからしっかり手洗いをしてくださいね』
そういう事なのだ。そして俺はふと気が付いた。
――あれ?傷がない?――
粒になった水魔法が霧のようになって散霧するとポケットに入れたハンカチに水気を吸い取らせる。やはり先程穴あけの道具で切った部分が痕もなく消えていた。痛みもない。
『早くしないとお待たせしてしまいますわ』
ツリピオニー自身も手洗いをすると、俺の手を引いて帰ろうという。
屋敷までの道すがら俺はツリピオニーに聞いた。思ったのだ。綺麗に消えてしまった傷跡にもしかしたらツリピオニーのあの傷も消えるのではないかと。
『消えませんよ?』
事も無げに言うツリピオニー。試した事があるのだという。
まだ塞がっていない負ったばかりの傷は浅いものなら回復する事はツリピオニーも知っていた。そりゃ自分の魔法なのだから知っているよな。
『試したんですけど、人の細胞組織は止血や瘡蓋など修復作用を始めるでしょう?そうなってしまうと効果がないみたいです。促進することは出来るみたいですけど、それでもそんなに早くなるわけでもないですし。やはりない方がいいですよね…』
――違うんだ!――
俺はツリピオニーの傷の事なんか何も思わない。
だが、寂しそうな顔をさせてしまったのは俺自身の不用意な一言だ。
『ピオニー。気を悪くしたならごめん。傷が無かったらとかじゃないんだ。さっきフレイドが来た時に少し手を切ってしまって手洗いしているとその傷が消えたんだ。だから…その…本当に傷があるからとかそう言うんじゃなくて』
『判ってます』
『ごめん…すまなかった』
『謝ってはダメです。判っているんです。だって…初めての時、ヴィルはこの傷に何度も何度もキスをしてくれたでしょう?なかったら良かったのにと思った事は数えきれないほどありますが、ヴィルはそんな事を考える暇もないくらい愛してくださるし‥‥それにこの傷が出来たからヴィルに出会えたのかも知れません。なら感謝しようと』
『ピオニー‥‥好きだよ。大好きだ。誰よりも愛してるよ』
『うふふ♡知ってます。でもわたくしのほうがもっとヴィルの事、好きです』
『そんな!俺の方が多い。それは間違いない』
『いいえ!わたくしのほうが多いんですっ!』
何とでも言ってくれ。判っている。周りから見ればただのバカップルだという事を。
さて、客人だがカスタード国の王子。こんな田舎にと思うが話は【水利権】だろう。
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