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△ひれ伏す殿下
1人ソファに腰を下ろし、侍女の出した茶には手もつけない。後ろには屈強な護衛の騎士が2人。何かあれば身を挺して主を守るというオーラが駄々洩れである。
『お待たせを致しました。当主のヴィルト・シュヴァインです。遠いところを大変だったでしょう』
『いや、突然に押しかける事になり申し訳ない。隣国カスタードのパルス・イート・カスタードだ』
なんてこった。水利権に付いてだろうとは思ったがパルス殿下は王太子殿下じゃないか。カヌレ国の第一王子と同じ年齢だが、出来は雲泥の差。パルス殿下ほどの兄がいればルフトベル殿下も大きく飛躍できただろうに。
そして後ろの護衛から手渡されるとテーブルの上に箱を2つ置いた。
ひとつは細長い箱。おそらく水利権の取り決めについての書簡が入っているのだろう。
しかしその隣の箱はなんだ?箱と言うよりもトランク‥‥アタッシュケースか?
まさか…世に言う飛び道具というやつか?
パルス殿下に対する情報は少ない。キレる男だという噂はあるが定かではない。
信仰に厚く週に1度の礼拝は欠かさないという。その上、熟女が好きという噂もある殿下だ。
『こちらはですね――』 (カチリ)
『待ってください!殿下…デザート・イーグルなんてっ!私にはまだっ!』
『は?私はどっちかというとレヴィ派だからベレッタM92…ソードカトラスのほうが好きなんだが』
『おや、熟女ヨランダではないと?…まさかシスター繋がりのエダ?!』
『コホン、殿下、領主殿。読者が付いていけない会話はどうかと思います』
そうだった。まだトランクは開かれていない。留め金を外しただけだ。
だが殿下の意外な一面が知れた気がする。ロシアン・マフィアとの繋がりがない事を祈りたい。
『コホン。こちらはですね、もう4年…5年になりますか。領主殿の奥方が学園に入学する際に祝いとして贈ろうと思いつつ、隣国の侵攻があり今になってしまい渡すのが遅れました。ヴァージョンアップした最新のものにしております。結婚祝いとして今回持って参りました。是非ご夫婦でお使い頂きたい』
『殿下は妻の事をご存じなのですか?』
『我がカスタード国でファータ伯爵令嬢いや、今はシュヴァイン辺境伯夫人だな。知らない者などおらぬはずだ。婚約を解消したという話を聞き、畏れ多くも名乗りを上げたかったが侵攻を鎮圧するのに時間がかかってしまった。だが神である彼女が選んだ男だ。父上も水利権に付いては自己資金から毎年5億を別途形状せよと仰せになり、30億となったのだが‥‥その…』
歯切れが悪いな?まさか‥‥30億は無理だったとか?
それにしても神呼ばわり??いったいツリピオニーはカスタード国で何をしたんだ?
国王が私財から毎年5億をポンと出すなんて普通じゃあり得ないだろう!
一国の王族が当時伯爵令嬢に畏れ多いってどういう事なんだ?
まさかと思うがお義父殿は大魔王だったとかどっかの皇帝陛下だったとか?
で、そのトランクだ。侵攻を僅か1年で鎮圧。相当な武力行使があったという事か。
大きさからしてまさかと思うが組み立て式のロケットランチャーなのか?
いやそれならもっと大きな箱でないと入らないだろう。
だが、顔見知りならばツリピオニーがいたほうが良いんじゃないか?
『殿下、それを開ける前に妻を呼んで参りましょう』
『えぇぇっ!!いや、そんな…待ってくれ…私は今、おかしなところはないか?失礼に当たるような服装ではないか?髪型はどうだ。枝毛もなくキューティクルの輪は出ているだろうか!?かっ鏡を出せ!失礼な顔をしていないか?あーあー!!只今発声のテスト中。あーあー!!発声のテスト中』
殿下が壊れた?いや、後ろの護衛も真っ青になっているんだがツリピオニーは一体どういう扱いなんだ?
俺はフレイドにツリピオニーを呼んでくるように頼むと、途端に殿下と護衛は動きを止めた。後ろにいる護衛は直立不動で呼吸をしているだろうか?殿下は背を伸ばし手は軽く握って膝の上。膝は拳一つ分開いて、顎を引き、瞬きすらしていないんだが大丈夫か?
こんこん (ビクゥゥゥーッ@殿下&護衛)
『お呼びと伺いました。ツリピオニーで御座います』
ズサササー!!
なんと見事なスライディング土下座なんだ。
いや、待て。どうしてカスタード国の王太子がツリピオニーにひれ伏してるんだ?
『我がカスタード国の輝かしい朝日の如き光と癒し。偉大なるファータ…も、申し訳ございませんっ!!シュヴァイン辺境伯夫人ツリピオニー様には益々の――』
『パルス殿下じゃないですか!どうしたの?またお腹が痛いの?』
目にも止まらない速さで君の前に滑り込んで土下座したんだよ?
その口上はなに?どうしてカスタード国王以上の言葉をかけられてるんだ?
その上、ツリピオニー!パルス殿下に対して滅茶苦茶フレンドリー対応?!
『ヴィル様、パルス殿下を客間にお通ししても?殿下ってお腹弱いんですよ』
『客間は構わないが‥‥』
『いえいえいえいえ!滅相も御座いませんっ。そんなお手間を取らせるなど一族郎党腹を掻っ切ってお詫びをしてもまだ足りません!!私如きに触れるなどお手が汚れはしませんでしたか?』
『もう!はいはい。顔を上げてください。国王陛下はお元気ですの?うわっ!護衛の方もどうして?顔をあげてくださいまし』
『父はぁ!父はそれはもう元気でピンピンしておりまして、他の者からもくれぐれにと申し使っておりますっ!』
ツリピオニー、ホントに一体何をしたんだ?
討伐に出るまでに俺は冷や汗の出しすぎで干乾びるんじゃないだろうか?
『お待たせを致しました。当主のヴィルト・シュヴァインです。遠いところを大変だったでしょう』
『いや、突然に押しかける事になり申し訳ない。隣国カスタードのパルス・イート・カスタードだ』
なんてこった。水利権に付いてだろうとは思ったがパルス殿下は王太子殿下じゃないか。カヌレ国の第一王子と同じ年齢だが、出来は雲泥の差。パルス殿下ほどの兄がいればルフトベル殿下も大きく飛躍できただろうに。
そして後ろの護衛から手渡されるとテーブルの上に箱を2つ置いた。
ひとつは細長い箱。おそらく水利権の取り決めについての書簡が入っているのだろう。
しかしその隣の箱はなんだ?箱と言うよりもトランク‥‥アタッシュケースか?
まさか…世に言う飛び道具というやつか?
パルス殿下に対する情報は少ない。キレる男だという噂はあるが定かではない。
信仰に厚く週に1度の礼拝は欠かさないという。その上、熟女が好きという噂もある殿下だ。
『こちらはですね――』 (カチリ)
『待ってください!殿下…デザート・イーグルなんてっ!私にはまだっ!』
『は?私はどっちかというとレヴィ派だからベレッタM92…ソードカトラスのほうが好きなんだが』
『おや、熟女ヨランダではないと?…まさかシスター繋がりのエダ?!』
『コホン、殿下、領主殿。読者が付いていけない会話はどうかと思います』
そうだった。まだトランクは開かれていない。留め金を外しただけだ。
だが殿下の意外な一面が知れた気がする。ロシアン・マフィアとの繋がりがない事を祈りたい。
『コホン。こちらはですね、もう4年…5年になりますか。領主殿の奥方が学園に入学する際に祝いとして贈ろうと思いつつ、隣国の侵攻があり今になってしまい渡すのが遅れました。ヴァージョンアップした最新のものにしております。結婚祝いとして今回持って参りました。是非ご夫婦でお使い頂きたい』
『殿下は妻の事をご存じなのですか?』
『我がカスタード国でファータ伯爵令嬢いや、今はシュヴァイン辺境伯夫人だな。知らない者などおらぬはずだ。婚約を解消したという話を聞き、畏れ多くも名乗りを上げたかったが侵攻を鎮圧するのに時間がかかってしまった。だが神である彼女が選んだ男だ。父上も水利権に付いては自己資金から毎年5億を別途形状せよと仰せになり、30億となったのだが‥‥その…』
歯切れが悪いな?まさか‥‥30億は無理だったとか?
それにしても神呼ばわり??いったいツリピオニーはカスタード国で何をしたんだ?
国王が私財から毎年5億をポンと出すなんて普通じゃあり得ないだろう!
一国の王族が当時伯爵令嬢に畏れ多いってどういう事なんだ?
まさかと思うがお義父殿は大魔王だったとかどっかの皇帝陛下だったとか?
で、そのトランクだ。侵攻を僅か1年で鎮圧。相当な武力行使があったという事か。
大きさからしてまさかと思うが組み立て式のロケットランチャーなのか?
いやそれならもっと大きな箱でないと入らないだろう。
だが、顔見知りならばツリピオニーがいたほうが良いんじゃないか?
『殿下、それを開ける前に妻を呼んで参りましょう』
『えぇぇっ!!いや、そんな…待ってくれ…私は今、おかしなところはないか?失礼に当たるような服装ではないか?髪型はどうだ。枝毛もなくキューティクルの輪は出ているだろうか!?かっ鏡を出せ!失礼な顔をしていないか?あーあー!!只今発声のテスト中。あーあー!!発声のテスト中』
殿下が壊れた?いや、後ろの護衛も真っ青になっているんだがツリピオニーは一体どういう扱いなんだ?
俺はフレイドにツリピオニーを呼んでくるように頼むと、途端に殿下と護衛は動きを止めた。後ろにいる護衛は直立不動で呼吸をしているだろうか?殿下は背を伸ばし手は軽く握って膝の上。膝は拳一つ分開いて、顎を引き、瞬きすらしていないんだが大丈夫か?
こんこん (ビクゥゥゥーッ@殿下&護衛)
『お呼びと伺いました。ツリピオニーで御座います』
ズサササー!!
なんと見事なスライディング土下座なんだ。
いや、待て。どうしてカスタード国の王太子がツリピオニーにひれ伏してるんだ?
『我がカスタード国の輝かしい朝日の如き光と癒し。偉大なるファータ…も、申し訳ございませんっ!!シュヴァイン辺境伯夫人ツリピオニー様には益々の――』
『パルス殿下じゃないですか!どうしたの?またお腹が痛いの?』
目にも止まらない速さで君の前に滑り込んで土下座したんだよ?
その口上はなに?どうしてカスタード国王以上の言葉をかけられてるんだ?
その上、ツリピオニー!パルス殿下に対して滅茶苦茶フレンドリー対応?!
『ヴィル様、パルス殿下を客間にお通ししても?殿下ってお腹弱いんですよ』
『客間は構わないが‥‥』
『いえいえいえいえ!滅相も御座いませんっ。そんなお手間を取らせるなど一族郎党腹を掻っ切ってお詫びをしてもまだ足りません!!私如きに触れるなどお手が汚れはしませんでしたか?』
『もう!はいはい。顔を上げてください。国王陛下はお元気ですの?うわっ!護衛の方もどうして?顔をあげてくださいまし』
『父はぁ!父はそれはもう元気でピンピンしておりまして、他の者からもくれぐれにと申し使っておりますっ!』
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