チョイス伯爵家のお嬢さま

cyaru

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拗らせた彼の執事は有能なのか

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バタバタバタと慌てて廊下を走る足音がしますよ。

コンコンコン!!

お付きの執事ジェームスが扉を開けると飛び込んでくる文官。
ちょっと顔色が悪いです。

「殿下!王太子殿下!大変です」
「どうしたの。そんなに慌てて。血糖値があがるよ~」
「血糖値どころか、血圧爆上がりですというか、爆下がりです」
「どっちなんだい?忙しい血圧だね。乱高下する血圧は危険だよ♪」
「そ、それが、これを!これを見てください!」

差し出された書類を手に取ると、目が【クワッ】っと開いてます。
瞳孔開いてるよ?文字が見にくいんじゃない?

「こ、これはどういう事だ?」
「どういうもこういうも…お断りとか辞退とか…その類ですね」
「どうしてなんだろう?」

書類は差出人はチョイス伯爵。王家からの姪への婚約打診についての辞退の申し出ですね。
えーっと・・・理由としては‥‥

【申し出は大変ありがたくは思っているけど無理!!どうしてかって言うと、個人の非常にデリケートな問題があるから詳細は言えない】

と丁寧に書かれております。
まぁ‥‥王太子殿下が年増ばっかと営んでるから姪が嫌だって言ってるとは書けませんしね。

「うぅむ…なんだろう。何かあったのかな」
「さぁ、伯爵家ですから上位の爵位にある貴族の対抗策を案じられたのでは?」
「侯爵と公爵からの嫌がらせ‥‥あるかな?」
「それはあるでしょう。チョットミセチャウ嬢とて高位貴族の令嬢ですから。媚薬まで持ち込んできているのですよ。娘は断られて格下の伯爵家となると良い気分ではないでしょうしね。それは他の侯爵家、公爵家も同じかと」

「だけどやっと見つけたんだけどなぁ。僕の苦労も知って欲しいな」
「おそらく他家は殿下が思う以上に苦労をしていると思いますが」
「だって、僕が当人なんだよ?好きでもない女性と結婚はできないよ」
「用心をされたほうが宜しいですよ」
「用心?どんな?」
「伯爵家に打診をし、返事が来た。この時からお妃選びは本格始動です。各家は仕掛けてくると思いますよ。他のご令嬢に内定してもお披露目までに既成事実をつくれば正妃の座は確実ですからね。閨の講義の講師にも十分に注意をしてください。閉経した彼女たちは妊娠はしないでしょうが体内のお種をかき出し、ご令嬢に種付けするという事も考えられます。過去にそういう事例もありますからね」

「えっ?僕が抱いてないのに?」
「えぇ。各家が欲しいのは申し訳ないのですが殿下ではありません。未来の王となる殿下の種です」
「うわぁ‥‥本当に萎える。萎えるわぁ…」
「事実で御座いますよ。例えるなら王妃の座を狙う貴族はメスカマキリ。王家はオスカマキリ。種さえ手に入れれば食われてしまいますからね。あと本当に萎えないでくださいね。大本命のローゼ様をお妃にしても勃たないとなれば即座に側室を娶らされますよ」
「グゥゥゥ~最低だなぁ」
「それが嫌だから早々に婚約者を決めるのですよ。婚約者なら閨を共にすればそのまま王宮に住まわせて管理ができますから」

「だけどね。ジェームス‥‥」

おぉお。夢見る少年のようになっている王太子殿下。
目を閉じて、かの人を思い浮かべていますよ

「僕はあの日、僕の目の前で髪を切ったローゼ嬢の事を忘れられなかったんだ」
「えぇ。名前を知ったのは最近ですが5年以上拗らせていますしね」

「僕は彼女、いやローゼ嬢以外はもう考えられないんだ」
「いえ、もう!ではなく、5年以上ローゼ様以外は考えてませんよね」

「彼女は言ったんだ。【髪は伸びるけど、生地は破れると大変だから】ってね」
「まんまの事実ですが、髪が伸びるというか抜けるだけの御仁もおられますよ」

「なんて美しい心なんだろう。まるでマリア様だったよ」
「間違ってもお名前は間違えないように。女性の名前を間違えると命がありません」

「これは僕が直接言って、話をするしかないよね」
「えぇ。ですが婚約うんぬんより、ケガについての謝罪が先ですよ。いいですね」

「先ぶれの書簡に花を添えて送った方がいいかなぁ」
「丸3日はかかりますから、日持ちする花をお選びくださいね」

「よし、決めた!手紙を書くよ!」
「その前に陛下にそのお気持ちを伝えておかないと、他のご令嬢を抱えた貴族に陛下が折れたら終わりですよ」

うーん。いちいち正論なジェームス。
お付きになるだけはありますね
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