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第13話 誠心誠意の謝罪。らしい
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「どうぞ。お入りください」
どちらかと言えば近い将来オランドの野郎の持ち物になる家ですし、借りてるだけの私が「どうぞ」と言うのもおかしな話ですが、玄関前でダンゴムシのまま「すまなかった!」を連呼されるので仕方なく家の中に招き入れたのです。
「入ってもいいのか?」
「えぇ。どうぞ。お茶を淹れますね。そうですねぇ…」
じぃぃっとオランドの野郎の顔を見ると目の下にクマがあるので寝不足もあるのかと思い庭師さんが剪定で枝を落としたのを頂いたので桑の葉茶を淹れる事にします。
この2か月でいろいろな野草茶を作ったのです。流石は5つある侯爵家の中でもNO.2なブンディル侯爵家の庭で御座います。
「茶請けがありませんが、どうぞ。桑の葉茶です」
「ありがとう。頂くよ。他の茶と何か違うのか?」
「よく眠れるそうです。最近流行っている珈琲とか以前から嗜まれている紅茶は眠気を妨げる成分がありますが桑の葉茶や麦茶はないんです。温かい茶で飲むとよく眠れるそうですよ」
「そうか。そこまで私の事を気遣ってくれて…ありがとう」
――全然気遣ってないです。眠くなって早く帰って欲しいくらいよ――
ですが「美味しい」と飲んでくれると嬉しいものです。
つい私も笑顔になってしまったのがいけなかったのでしょうか。
「実は…アーシャ。君の言うことは正しかった。私は何も知らなかった。小麦は粉で育つ訳じゃない事も種類がある事も。チーズだってミルクから作るんだって事も、その過程にいくつも工程がある事も。これから全てを見直そうと思う。このお茶だって単に葉っぱに湯を注げばいいものじゃない事も知った。本当にすまなかった」
解って頂けたならそれでいいんです。
知らないなら知ればいいだけですものね。
「それでですね、先ほどの話の続きなんですけども、働きに行きたいのです。ブンディル侯爵家の名前は出さないように姓は名乗りませんし、夜遅くになる事もないようにしま――」
「ダメだと言っただろう?どうしてそんなに金が必要なんだ?」
――そりゃ私にも生活ってものがありますし――
オランドの野郎が言いたいことも判るのです。一応完全形ではありませんが対外的には次期当主の妻ですし、そんな身分の女性が市井で働くと言うのは恥ずかしいのでしょう。
伯爵家クラスでしたら経理などで働いている当主夫人もいらっしゃいますけど公爵家、侯爵家となれば家のために社交をしたりが仕事ですしね。
ですが、何を言っても「だめ」の一点張り。
なので聞いてみることにしたのです。
「どうして働きに出てはいけないのです?」
「どうしてって…侯爵夫人になるんだぞ?」
――おや?なれませんよね?初夜してませんし――
そうなのです。使用人たちも初夜を済ませていない夫人は夫人として認めてくれないのです。確かにやり直しではありませんけども、ムニャムニャな行為をすれば認めては貰えますけども、私としてはもういいかなと思っているので離縁さえして頂ければいいのですが、このまま離縁ですと生活できませんので、この宙ぶらりんな状態でなんとか2,3か月食べて行けるだけでもお金を貯めたいのです。
そうなると、ここで「侯爵夫人になりません!」とバッチバチに突っ張ってしまうのも困りもの。
何を置いても「お金は大事だよ」なのです。
働きに出ることをどうやって了承させようかなと考えているとオランドの野郎が言うのです。
「初夜の事は悪かった。その後の態度も全面的に私が悪い。抱いてやるなんて傲慢以外の何物でもない。君は歩み寄ろう、寄り添おうとしてくれてたんだよな」
――いいえ?――
おかしいわね。初夜のあの格好の事で「ウェルカム」だと思っているのなら大間違いです。あれはブンディル侯爵家の決まりなのだそうで、私の意向では御座いません。
いつの間に私は「寄り添う妻」になっていたのかしら。
「頼むから本宅に戻ってくれないか?ここに住まう事になった原因を作ったのは私だと解っている。この通りだ!申し訳ない。お願いだから戻って来てくれ」
「私、ここ、結構気に入ってるんですよ。確かにお屋敷は寝台もふかふかですし、食事は美味しいでしょうし、至れり尽くせりだと思うんです。でも、私は…寝台は固い方が寝心地は良いですし、食事も好きな時に好きなだけ食べたり食べなかったり…自由のある今の方が良いんです。侯爵夫人としての仕事はしていませんし…」
「判った。夫人の仕事なんてしなくていい。君は君の好きなことをすればいい。これからは誠心誠意!君に尽くすし、君の全てを認める」
――まさかの誠意大将軍――
ピクリと私のこめかみが反応致します。
――好きなことをすればいい??――
と、言うことは本宅に戻って働きに出ても良いってことよね?
一応、きちんと言質は取っておかないと!
「本宅に戻れば、好きなことをしていいんですね?」
「構わない。但し外に働きに行くのは別問題だ」
――だったら好きなことをすればいいにならないでしょうに。ちぇっ――
「どうしてそんなに外に働きに行きたいんだ?もしかして…以前の婚約者と?」
「ないです。ないです。婚約破棄になる前から滅多に会いませんでしたし」
「会いたいのか?」
――え?何?何なの?どうしてそんなウルウルした目で縋るように見るの?――
オランドの野郎は何故か俯いて肩が小さく揺れているんだけど、もしかして笑いを堪えてるのかな?と思ったら違った!!
――泣いてるし!!――
ごめんなさい。涙は女の武器とかいろいろ言うけど、メソって泣く男の人って本気でキモいって思ってしまう私って感情の何かが欠落してるのかしら。
「ぐすっ…すまない…君が他の男に心を寄せているかと思うと‥」
「寄せてませんって!」
「なら私にだけか?」
――それもないけどね――
目が細くなって遠くを見てしまうわ。
一体何がしたいのか私には良く判らないのです。
そもそもで目の前の男が初夜スルーしてなかったら私だってあの夜はそれなりに腹も括ってたし覚悟もあったから侯爵夫人頑張ろう!って思えたんだけど、今はそんな決意表明もしたくないし。
離縁後の生活と本の弁償代。この2つが大事なの。
「どうしても働きに行きたいと言うのなら私も行く」
「ハァァーッ?!」
「それが飲めないのなら屋敷から一歩も外には出さない。本気だ」
こうなったら仕方ありません。
本宅に戻らなくて良くて働きに行けるのなら多少の事は目を潰らないと全てが自分にとって都合よく行くわけでもないのですから。
「解りました。では一緒に働きましょう」
「え?…そっち?」
――そっちって…選択肢あった??――
どちらかと言えば近い将来オランドの野郎の持ち物になる家ですし、借りてるだけの私が「どうぞ」と言うのもおかしな話ですが、玄関前でダンゴムシのまま「すまなかった!」を連呼されるので仕方なく家の中に招き入れたのです。
「入ってもいいのか?」
「えぇ。どうぞ。お茶を淹れますね。そうですねぇ…」
じぃぃっとオランドの野郎の顔を見ると目の下にクマがあるので寝不足もあるのかと思い庭師さんが剪定で枝を落としたのを頂いたので桑の葉茶を淹れる事にします。
この2か月でいろいろな野草茶を作ったのです。流石は5つある侯爵家の中でもNO.2なブンディル侯爵家の庭で御座います。
「茶請けがありませんが、どうぞ。桑の葉茶です」
「ありがとう。頂くよ。他の茶と何か違うのか?」
「よく眠れるそうです。最近流行っている珈琲とか以前から嗜まれている紅茶は眠気を妨げる成分がありますが桑の葉茶や麦茶はないんです。温かい茶で飲むとよく眠れるそうですよ」
「そうか。そこまで私の事を気遣ってくれて…ありがとう」
――全然気遣ってないです。眠くなって早く帰って欲しいくらいよ――
ですが「美味しい」と飲んでくれると嬉しいものです。
つい私も笑顔になってしまったのがいけなかったのでしょうか。
「実は…アーシャ。君の言うことは正しかった。私は何も知らなかった。小麦は粉で育つ訳じゃない事も種類がある事も。チーズだってミルクから作るんだって事も、その過程にいくつも工程がある事も。これから全てを見直そうと思う。このお茶だって単に葉っぱに湯を注げばいいものじゃない事も知った。本当にすまなかった」
解って頂けたならそれでいいんです。
知らないなら知ればいいだけですものね。
「それでですね、先ほどの話の続きなんですけども、働きに行きたいのです。ブンディル侯爵家の名前は出さないように姓は名乗りませんし、夜遅くになる事もないようにしま――」
「ダメだと言っただろう?どうしてそんなに金が必要なんだ?」
――そりゃ私にも生活ってものがありますし――
オランドの野郎が言いたいことも判るのです。一応完全形ではありませんが対外的には次期当主の妻ですし、そんな身分の女性が市井で働くと言うのは恥ずかしいのでしょう。
伯爵家クラスでしたら経理などで働いている当主夫人もいらっしゃいますけど公爵家、侯爵家となれば家のために社交をしたりが仕事ですしね。
ですが、何を言っても「だめ」の一点張り。
なので聞いてみることにしたのです。
「どうして働きに出てはいけないのです?」
「どうしてって…侯爵夫人になるんだぞ?」
――おや?なれませんよね?初夜してませんし――
そうなのです。使用人たちも初夜を済ませていない夫人は夫人として認めてくれないのです。確かにやり直しではありませんけども、ムニャムニャな行為をすれば認めては貰えますけども、私としてはもういいかなと思っているので離縁さえして頂ければいいのですが、このまま離縁ですと生活できませんので、この宙ぶらりんな状態でなんとか2,3か月食べて行けるだけでもお金を貯めたいのです。
そうなると、ここで「侯爵夫人になりません!」とバッチバチに突っ張ってしまうのも困りもの。
何を置いても「お金は大事だよ」なのです。
働きに出ることをどうやって了承させようかなと考えているとオランドの野郎が言うのです。
「初夜の事は悪かった。その後の態度も全面的に私が悪い。抱いてやるなんて傲慢以外の何物でもない。君は歩み寄ろう、寄り添おうとしてくれてたんだよな」
――いいえ?――
おかしいわね。初夜のあの格好の事で「ウェルカム」だと思っているのなら大間違いです。あれはブンディル侯爵家の決まりなのだそうで、私の意向では御座いません。
いつの間に私は「寄り添う妻」になっていたのかしら。
「頼むから本宅に戻ってくれないか?ここに住まう事になった原因を作ったのは私だと解っている。この通りだ!申し訳ない。お願いだから戻って来てくれ」
「私、ここ、結構気に入ってるんですよ。確かにお屋敷は寝台もふかふかですし、食事は美味しいでしょうし、至れり尽くせりだと思うんです。でも、私は…寝台は固い方が寝心地は良いですし、食事も好きな時に好きなだけ食べたり食べなかったり…自由のある今の方が良いんです。侯爵夫人としての仕事はしていませんし…」
「判った。夫人の仕事なんてしなくていい。君は君の好きなことをすればいい。これからは誠心誠意!君に尽くすし、君の全てを認める」
――まさかの誠意大将軍――
ピクリと私のこめかみが反応致します。
――好きなことをすればいい??――
と、言うことは本宅に戻って働きに出ても良いってことよね?
一応、きちんと言質は取っておかないと!
「本宅に戻れば、好きなことをしていいんですね?」
「構わない。但し外に働きに行くのは別問題だ」
――だったら好きなことをすればいいにならないでしょうに。ちぇっ――
「どうしてそんなに外に働きに行きたいんだ?もしかして…以前の婚約者と?」
「ないです。ないです。婚約破棄になる前から滅多に会いませんでしたし」
「会いたいのか?」
――え?何?何なの?どうしてそんなウルウルした目で縋るように見るの?――
オランドの野郎は何故か俯いて肩が小さく揺れているんだけど、もしかして笑いを堪えてるのかな?と思ったら違った!!
――泣いてるし!!――
ごめんなさい。涙は女の武器とかいろいろ言うけど、メソって泣く男の人って本気でキモいって思ってしまう私って感情の何かが欠落してるのかしら。
「ぐすっ…すまない…君が他の男に心を寄せているかと思うと‥」
「寄せてませんって!」
「なら私にだけか?」
――それもないけどね――
目が細くなって遠くを見てしまうわ。
一体何がしたいのか私には良く判らないのです。
そもそもで目の前の男が初夜スルーしてなかったら私だってあの夜はそれなりに腹も括ってたし覚悟もあったから侯爵夫人頑張ろう!って思えたんだけど、今はそんな決意表明もしたくないし。
離縁後の生活と本の弁償代。この2つが大事なの。
「どうしても働きに行きたいと言うのなら私も行く」
「ハァァーッ?!」
「それが飲めないのなら屋敷から一歩も外には出さない。本気だ」
こうなったら仕方ありません。
本宅に戻らなくて良くて働きに行けるのなら多少の事は目を潰らないと全てが自分にとって都合よく行くわけでもないのですから。
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