わたしの王子様

cyaru

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前世で染みついたモノ

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クリスティナは屋敷内にある図書資料庫でいろいろな本を読みふけっておりますか。
しかし、大きくハズレてはいないものの詰めが甘いのが本当のクリスティナなのです。

「ふぅ~。なるほどね。えーっと下巻はどれかしら」

ブ厚いこの国の成り立ちが書かれた本の上巻を読み終わり要点をメモにまとめていきます。
一息入れるためにベスの入れてくれたオレンジティーを口に含むと父の執事であるロクサーヌがじっとメモを見ている事に気が付きます。

「なっ。何?変な事書いてた??」
「いえ、お嬢様?これをどこで?」
「え?どこって?何を?」

トントンとメモの一部を指で示すロクサーヌですがクリスティナは何が気になるのか判らないようです。

「え~っと12代国王のハルキンは領土拡大の名目で侵攻してきたガシュテル民族をローゼ渓谷で打ち破り、その立役者となったイスタル将軍に騎士伯を与えたのが現在の騎士伯の起源である……なにかおかしい所があるの?」

「えぇ。お嬢様。どこでこれを覚えられたのです?」
「何処って…この本に書いてあったけど」
「内容は間違っておりませんよ。お嬢様の年齢でこれを覚えているとなれば秀才の域になるでしょう」
「エ”?ゾウ”ナ”ノ”??」

(マズイ、何かをやらかしてるんだわ!!)

「で、でも、書き写しただけだから」
「そうですか?それでもなかなかのものです。家庭教師のランクも検討せねばなりません」
「な、なんで?今まで通りでいいじゃない」
「そうですねぇ。この【領土拡大】【侵攻】【渓谷】この3つのスペルですがこれは10歳若しくは11歳頃に習うスペルなのです。間違いなく、また書き直した形跡もなく、かなりサラサラと書かれていますよね。おそらくその言葉の意味もご理解されておられるのではないですか?」

(ゲッ!確かに。8歳だとこのスペルはまだ習ってないはずだったわ!)

8歳と言う年齢ですが中身は学園も卒業している18歳。
思い出したくなくても王子の婚約者に恥じないようにとかなり無茶苦茶な教育をされた前世では学園での成績もトップ5以内。特に考えなしにやってしまいました。

「それにね、お嬢様が読まれている本。先日から拝見しておりますが学園生でもなかなか手に取って読もうとする学園生は少ないのではないでしょうかね。もはや神童と呼ばれてもおかしくない域かと」

NOぉぉぉぉぉぉ!!やっちまった!やっちまったわ!
そりゃね、前世では本は図書室で沢山読みましたよ?読みましたよ!!
でもね!あぁ!!でもダメだわ!この年齢から読むべきじゃなかった!!不覚ぅぅぅぅ!!

バタリとテーブルに額を打ちつけるクリスティナ。

「お願い、ロクサーヌ。誰にも言わないで」
「何故でございます?旦那様も奥様もお喜びになりますよ」
「いや、喜ばない。違う!喜ばせない!!だから言っちゃダメ」
「わたくしが黙っていてもいつかは判ると思いますよ」

ロクサーヌにズバリと指摘をされてしまったクリスティナですがそれ以降も色々とクリスティナ的には大失敗をしてしまいます。

所作の先生には【優雅すぎるカーテシー】を褒めちぎられ
食事マナーの先生には【美しすぎる食事】を絶賛され
ダンスの先生には【もはや芸術の域】と拍手喝采を浴びる始末。

失敗をしようにも鞭や物差しで容赦なくぶたれた前世が災いし、体が動いてしまう。

「まぁ!その年齢でこんなに綺麗にお茶を飲むなんて!」

っと気晴らしにお母様と行った平均年齢55歳という【乙女が詩を朗読する会】ではご婦人方に賞賛されてしまいます。

マズい。このままではかなり目立った存在になってしまう!!
目立つとどうなるか。
嫌でもわかります。【11歳より前に婚約者に選抜されてしまう】のですね。

前世は7歳~14歳の学園入学前のご令嬢方がどんぐりの背比べ状態だったので王妃様がお茶会を開いたのです。
そこへポっと頭一つどころかドカーンと抜きんでたご令嬢が!!
しかも第一王子と同年齢!!となれば選ばれてしまう確率がドッカーンっと爆上がりです。

「こうなったら、奥義を使うしかないわ!」

しかしクリスティナここでも惜しい!本当に詰めが甘いです。

「お父様!わたくししばらく領に行きたいですわ!」
「いいよ~ヨハンに連れて行ってもらうといいよ~帰りは遅くならないようにね」

ハッ!!失念していたわ!!

我が家の領は馬車で2時間で行けるって事に!!
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