わたしの王子様

cyaru

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恋に落ちる音

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何も知らない伯爵夫妻に兄2人がごり押しのようにお願いと言う決定事項を伝えると、待っていたケイティの家の馬車に乗りこんで出立していくクリスティナ。

ケイティの家の馬車は長距離の悪路用に作られていますし、武家の家系でもあるケイティの家では夜間も走り続けられるよう馬も訓練をされています。

「すごいです」
「うーん…でも良し悪しよ?24時間いつでもって事だし、天候なんかも関係ないような討伐には否応なく駆りだされてるから」
「ですがケイティお義姉さまのお兄様はうちのお兄様とは違いますよねぇ」

そう、ケイティの兄はまぁ30代手前ですのでもう奥さんがおりますけれどなかなかのイケメンさんです。
目が合っただけで失神するご令嬢も多く、夜会では取り合いになった令嬢が取っ組み合いになってのバトルを繰り広げたとかモテモテの武勇伝は尽きないのです。

ですが、貴女だけだ!っと求愛したのは‥‥まぁ所謂、世間で地味子と呼ばれるようなご令嬢。
求愛されたご令嬢は【何かの罰ゲームだろう】と慈悲の心で手を取ったらガチだったと言う。
今では結婚5年目なのに4人の女の子に現在妊娠中というこの先何人産まれるかが騎士の中で話題になっています。

早馬でも片道3日という日程ですが夜中も走るので3日目にはもうかなり領地に近い位置まで来ています。

「明日が茶会ね。大丈夫。呼び出されたって絶対に間に合わないわ」

そう言われるとなんだかホっとします。物理的に間に合わないものには逆立ちしても参加は出来ません。
安心するとお腹が空いてきますね。

「この先の街で一休みしましょう。飴細工が特産の街なの。屋台を回ってみる?」
「はいっ。楽しみです」

1時間程で街に着き、馬車から降りると空が凄く高い位置に見えるような街です。
山間なので空気も澄んでいて深呼吸を思わずしてしまいますね。

「屋台が出ているわ。行ってみましょう」

ケイティに連れられてその場で加工してくれる飴細工。何時間でも見ていられそうです。

「どうだい?何か練ってやろうか?」
「そうね。‥‥わたくしはハト!ハトを作って」
「お嬢さんは何にする鷲とかどうだ?」
「鷲‥‥」

思わずビクっとするクリスティナですが、ケイティは第一王子の御紋が鷲だった事を思い出すと

「おじさん、この子には花は出来るかしら」
「おぉ!おじさんでも花も出来るぜ。サービスだ」

そう言ってマーガレットの花を飴で作っていく露天商。

「いつもなら2色しか使わないんだが‥‥こうやって…よっと」

白、黄色、そして茎の緑。3色で作られた飴細工。

「うわぁ。可愛い。ありがとう」
「いいって事よ。楽しんでいきなよ!」

そう言ってケイティと広場で飴を食べようと、噴水のそばに歩いて行くと…

「だから!放っておいてくれって言ってるだろう!」

揉めている風の男性2人。一人の男性がもう一人の男性の腕を掴みますが振り払います。
その振り払った手が‥‥パンっ!!「あっ!!」

クリスティナが持っていたマーガレットの飴細工に当たり、飴細工は飛んで行ってしまいます。
飛んで行った先には水溜まり‥‥バチャっと落ちてしまいました。

「あなた方!何をするの!」

思わずケイティが声を荒げますが、手を振り払われた方の男性は何故かケイティを抱きしめます。

「なっ!なんですの!」
「俺だよ!久しぶりだなぁ!ケイティ!!」
「って…その声はエドワード??」
「あぁ!久しぶりだなぁ!どうしたんだ?離婚した?」
「はぁ?まだ結婚してないわよ!失礼ね!って、弁償しなさいよ!」
「弁償?」
「そうよ!折角作ってもらったのに!!」

っと、ケイティとエドワードがクリスティナと手を振り払った男性の方を見ると…

そこには飴が飛ばされた方向をみてガッカリするクリスティナとピキーンっと動けなくなり視線がクリスティナにガッチリ固定されている男性の姿が。

「おい、シンザン!何突っ立てる。早く謝れ」

しかしシンザンと呼ばれた男性はピクリとも動きません。

「どうしたの…ってシンザンじゃない!」

しかしケイティの声にもピクリとも反応しません。

「しかし‥‥大きくなったわってなりすぎよ!」

それもそのはず。シンザンと呼ばれた男性は身長が2メートルはあると思うほど背も高い上に、クリスティナの2人の兄が呼ばれているグリズリーなどが子供か?と思うほど更にグリズリー度の高いガッチリ系です。

「お義姉さま…ごめんなさい。飴、飛んで行っちゃった」

クリスティナの声にどこからか音が聞こえます

パシューン

ハっとケイティとエドワードがシンザンを見ると胸を押さえて膝をつきます。
突然しゃがみ込んだ大男にクリスティナもビックリ。慌てて駆け寄ります。

「だ、大丈夫ですか?」

ふっと顔をあげるシンザンは絵の具で塗ったのかと思うほど顔が真っ赤です。

「お、お義姉さまっ大変。この方熱があるのだわ。顔が真っ赤よ。大丈夫??」

クリスティナはそっとシンザンの額に手を当てるとまたどこからか音が聞こえます。

プシューーーー

そのまま後ろにひっくり返ってしまいます。

「だっ、大丈夫ですか?お義姉さまっどうしよう!倒れられてしまいました!!」

心配なクリスティナをよそに、シンザンのおおよそを察したエドワードとケイティは大笑いしてしまいました。
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