わたしの王子様

cyaru

文字の大きさ
15 / 33

大きなペンフレンド

しおりを挟む
巨大な成長しすぎたグリズリーのようなシンザン。
これでも15歳だそうです。

「10歳くらいからグングン背が伸びてな。朝起きたらパジャマの袖が取れなかった事もあるんだ」
「まぁ、そんなに?」
「だから今はだいぶん良くなったけど2年前なんか成長痛っていうのか、関節が痛いって唸ってたよ」
「というか、あんた達兄弟って大きくなりすぎよ」
「そりゃすまんな。だがどうしようもないからな」

確かに体重はドカンと増えたらダイエットなども出来ますが、伸びていく身長を止めるのは難しいですね。

シンザンは噴水のわきにあるベンチに寝かせようと思いましたが余りの巨漢ですのですべてが規格外。
体も半分は飛び出してますし、足も地面に膝を折らねばなりません。
座らせようとしましたが、そのままベンチが後ろにひっくり返りそうになったので仕方なく木陰のある芝生で寝かせています。

クリスティナは帽子を脱いでゆっくりと風をシンザンに送っていますね。

「うぅぅっ…」
「起きたか?ホントに困ったやつだな」
「えっ?えぇぇぇっ?ケイ姉ちゃん??」
「あんた、起きたんだから飴買ってきなさいよ」
「飴?なんで?」
「何でって…あんたがわたくしの可愛いクリスティナの飴をダメにしたでしょう!」

えっ?っとクリスティナの方を向くシンザン。
クリスティナと目が合うと、また真っ赤になって下を向きます。

「大丈夫ですか?」

近寄ろうとするクリスティナを手で制して止めています。

「でも、顔が真っ赤…お医者様に行った方がいいわ」

その様子を見てエドワードは腹を抱えて大笑いしています。

「クリスティナ。この子はシンザンって言うの。あっちで馬鹿笑いしてるのはシンザンの兄でエドワード。わたくしの母方の従兄弟なの」

「そうでしたか。こんにちはシンザン様、クリスティナと言います」

ブッ‥‥

今度はシンザン、鼻を押さえていますが、指の間から鼻血がボトボトと落ちます。

「たっ大変!シンザン様、これをお使いくださいまし」

慌ててポケットから差し出すハンカチにフルフルと首をふるシンザンですが、クリスティナに鼻を押さえている手に手を添えられるとまた固まってしまいます。

「やっと不肖の弟にも春が来たって感じ?」
「やっとかぁ…いやでもわかりやすいって凄いわねぇ」
「なんかさ、パシューンって音聞こえなかった?」
「聞こえた、聞こえた。わたくし空耳かと思ったけどあれって」
「きっとそうだ(よ)!」
<<恋に落ちる音!!>>

その後は遠慮の塊になったシンザンですが、顔の赤さと鼻血でなんとクリスティナの膝枕で横なる事に。
心臓が止まるんじゃないですかね。

☆~☆~☆~☆

「あれ?お嬢ちゃん、今度は彼氏とかい?」
「いっいいえ…この方はお義姉様の…」
「悪いか?手ぇだすなよ」
「えっ??」
「オヤジ、さっき作った飴、もう一回作ってくれよ」
「高くつくぜぇ‥‥口止め料込みで300万だ」
「アホか、300ベリルだろ!ほら!千ベリル!」
「い、いいんですわ。わたくし出します」
「ほいっ。今度は葉っぱ付だぜ。ほいよ。おつりの700万ベリルだ」

シンザンは真っ赤になりながらもクリスティナの手を握り歩き出します。

「あ、あの。シンザン様、ありがとうございます」
「いいんだ。わ、悪かったな。手は何ともないか?」
「手?」

ふと飴を持っている手と繋がれた手を見るクリスティナ。
思わず、男性と手を繋いでいるという事に、ボンっと顔が赤くなってしまいます。

「あの…手が…」
「やっぱり痛かったか?医者に行くか?」
「いえ、その‥‥男性と手を繋ぐのはお父様とお兄様以外は初めて・・・で・・・」
「えっ?‥‥ってうわっ!ご、ごめん!違うんだ、その…手が当たって…怪我でもしてないかと」
「大丈夫ですわ。飴はダメでしたけど…」
「そっか…だ、大丈夫だったら…いいんだ」

☆~☆~☆~☆

「そうか‥‥王立女学院にいくのか。お嬢様なんだな」
「ちっ違いますわ」
「あのさ‥‥えーっと…あの…」
「なんですの?」
「ケっケイ姉ちゃん、元気かな?」
「えぇ…だってそこで座っておられますよ?」
「だっだよな。アハハ」

パっと放した手でしたが、人混みから抜けるのに無意識なのかまた手を取るシンザン。
そのまま芝生に戻ってきましたが、テンパっているのかつないだ手を離していませんね。

「シンザン様はどこに行かれますの?学園?」
「俺?俺は‥‥学園には行かないよ。次男だからな。16になったら傭兵団に入って辺境を守るんだ」
「そうですの…」
「どうした?やっぱ変?」
「いえ、辺境の守りは重要ですし、凄いと思いますわ」
「あのさ‥‥俺、字は下手なんだけど手紙書いていいかな」
「えぇ勿論!わたくしもお返事書きますわ」

ちょっとだけ甘酸っぱいですねぇ。
この後は、また夜通し走りケイティの領に着いた後、3日過ごしてとんぼ返りです。

だけど、屋敷に帰って4日後ケイティが手紙を持ってきましたよ。
うっかり者のシンザン。住所が判らずケイティに送ったようですね。
内容が気になるのは父、兄2人。

ですが、妻と婚約者にガッチリガードされたクリスティナの嬉しそうな様子にモヤモヤしながらも温かく見守ります。

しおりを挟む
感想 82

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...