わたしの王子様

cyaru

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デビュタント

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11歳でお茶会をスルー出来たクリスティナ。

しかし12歳のデビュタントは家族もピリピリしております。
どうやらお茶会では数名のご令嬢が婚約者候補になったようですが、王子妃教育について行けず次々に脱落したようです。

前世は第一王子の執着もあってか、クリスティナが耐えてましたので第二王子の婚約者は比較的ユルイ教育でしたが今回はそうでもないようです。

目前に迫ったデビュタントは第一王子と同じ年齢のご令嬢ばかり33名がデビュタントです。
本当は全土ならもっといるのですが、王都周辺なのでその数になったようですよ。
クリスティナと同様に王立女学院に進んだご令嬢は9人です。クリスティナもですが9人のうち5人は婚約者がおりません。
ですがクリスティナと同じ理由ではなく、11歳のお茶会では決まらないだろうと読んだ親が王立女学院でより高度な淑女教育を身につけさせて王子の婚約者にと目論んだ結果です。

11歳のお茶会で決まってしまえば王子妃の可能性は低くなりますが、決まらなかったとなると女学院に進む令嬢の数はグンと減るのでお妃になる確率は上がるのです。
ま、とどのつまり、王子がいるからと学園を選ばす4年早く入学が決まる女学院に入学させた家は現状、勝ち組と呼ばれております。

王家も女学院へ通学している9名についてはかなり調べているようですよ。
さて、クリスティナをどう切り抜けさせるか。家族会議です。


「先ずは、通常初めてのダンスは父親と踊りますが今回はヨハン!貴方です」
「えっ?儂じゃないの?燕尾服新調したのに」
「だって父さんじゃ咄嗟の判断が出来ないだろう?長いものに巻かれろだからさ」
「そうよ。今回はわたくしも我慢するのです」

どうやら通常、両親と共に入場するのですが今回は名代としてヨハンと、エヴェリーナが行くようです。

ちなみにヨハンとエヴェリーナ。ついに結婚しております。
前世はクリスティナが18歳の時も婚約者のままでしたが運命を変えられるかもと半年前に結婚。
次兄のジルドも来年ケイティと結婚をします。

クリスティナが11歳のお茶会に行かなかった事と、王立女学院に既に通っている事が良かったのか妨害も入らず歯車がズレたのかも知れませんね。

「お茶会での婚約者候補は既に王子妃教育で全員脱落してるわ。今は王子、フリー。危険よ」
「そうだな。入場とダンスは俺たちがいるとして問題は王族への挨拶だな」
「それなんだけどね、脱落してる、してない関係なく33名は絶対にするじゃない?」
「そうね。ここは逃げられないわ」
「先頭だと全員いる可能性が高いわ。かといって最期は覚えられやすい」
「だから、17,18番目あたりが良いと思うのよ」
「そうね。王子は最初から全員ではないものね。途中で抜けるわ」
「抜けるのを見計らうのよ。侍従がそっと声掛けをしたら5人目くらいで消えるはず」

あれやこれやと兄夫婦(もうすぐも含)は談合をしております。
王子が最後までいた場合に並ぶ列や、どうやってヨハンが見えにくく立つかなども立ち位置まで検討していますよ。

☆~☆~☆~☆

そしてやって来たデヴュタントの日。

クリスティナに運があるのか、今年のドレスの流行は二の腕のあたりと腰がボンっとなったドレス。
必要以上にモリモリにしたドレスでエヴェリーナがやってきます。

「どう?腕のあたりでクリスティナの顔が隠れるでしょう」
「ホントだ。見えないぞ」
「同化するような感じで、この部分は白っぽい生地にしたの」

横から見ると二の腕の膨らみでクリスティナの顔は隠れていて、デビュタント特有の白いドレスはエヴェリーナの膨らみ始めたドレス部分にベージュ、クリーム色の生地を使った事で、クリスティナがドレスの一部にしか見えません。

「で、俺はこっち側で王子のいる方向の手にエヴェリーナのショールを持っておくと」
「そうよ、出来るだけ腕を下げないように敢えて長めのショールにしたわ。床に付かないようにね」

会場に入ると、可愛い真っ白なドレスに身を包んだご令嬢と、エヴェリーナのように最新のデザインを取り入れた夫人たちがワイワイとしています。

「クリスティナ様っ!」
「まぁアレイナ様っ」

どうやら王立女学院のお友達のようです。グリーンの髪に白いリボンがキュートです。

「あら、クリスティナ様、髪飾りは御座いませんの?」
「えぇ。わたくしの薄いオレンジですと良いのがなくて」
「でもこの背中のリボンが可愛いですわ。あっこの生地!」
「流石ですわアレイナ様」
「シルクですわよね…うわぁホントになめらかな生地ですわ」

和気藹々とした歓談の中、ダンスの音楽が流れ始めます。
ちょっとヨハンは警戒をしていますね。
と、いうのも第一王子はご令嬢たちと同じ年齢。ちょっと遅れればパートナーを言い出す可能性もあります。

「行くぞ。クリスティナ」
「頑張って。出来るだけ左隅のほうで踊るのよ」
「ヨシ。任せろ」

王族の座る席からは少し見えにくくなるホールの左側。
そこで出来るだけ王族の方にクリスティナの背を向けて、顔はヨハンが見えるように踊ります。
ターンなどは素早くクルっと!サッと回って背中を向けます。

ダンスが終わると1つ関門クリアです。
2曲目、3曲目を踊るのは婚約者も申請を出して来ているご令嬢たち。
ここで踊らなくても婚約者がいませんという事ではありません。
なので踊っているのは5組ほどです。

ダンスが終わると緩やかな音楽になり、令嬢たちが付き添いの両親たちと並び始めます。
壇上には陛下と王妃様、そして2人の王子が並んでいます。
王子狙いのご令嬢たちは間違いなく王子がいる最初を狙って並びます。

クリスティナは時間稼ぎと思われないよう、エヴェリーナがドレスのリボンや皺を直すフリをして様子を見ています。

「変だな…王子が引けないぞ」
「そうね。おかしいわ」

ふと見るともう10組ほどは挨拶が終わっているようです。
並んでいる様子を見て、ヨハンはクリスティナの手をギュッと握ります。

「大丈夫だ。兄様が守ってやる。行くぞ」
「そうよ。わたくしもクリスティナの盾になるわ。頑張りましょう」
「はい、お兄様、お義姉様」

そして列に並ぶクリスティナだった
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