わたしの王子様

cyaru

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尾行されるクリスティナ

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数日経ったある日、雨が降っていますね。

「ロゼリア様。ごきげんよう」
「クリスティナお姉様、少しよろしいでしょうか」
「えぇ。ロゼリア様、どうなさいまして」
「これを受け取って頂きたいのです」
「まぁ美味しそうですわ。どなたが?」
「わたくしが‥‥お姉様に食べて頂きたくて」

どうやら後輩の生徒からお姉様と慕われているクリスティナ。手作りお菓子を貰ったようです。
頬をポっと赤くして‥‥だから!百合設定はないんだってば!!
ですがまぁ、後輩に慕われるのは良い事です。
ですが、あれ??なんか変です。クリスティナの袖を掴んでヒソヒソ話です。

「お姉様、お気を付けくださいませ」
「どうしたのです?」
「先日からお姉様の馬車が出た後、後を追う馬車があるのです」
「な、なんですって!」
「しっ!お声が大きゅう御座います。気が付いたのは5日前でございます」
「そんな前から…ありがとう。助かるわ」
「家紋などで判断していると思いますので十分にご注意を。クッキーの包みの中に特徴を書いております」
「判りました。ありがとうロゼリア様」
「いいえ。わたくしの愛するお姉様のためですもの」

んーっと‥‥ロゼリアちゃんちょーーーっと道が外れてる??
ですが、馬車に乗りこむと執事のロクサーヌとお菓子の包みを開け、入っていた紙を広げます。

「お嬢様、この特徴は‥‥」
「そうね。間違いないと思うわ」
「ヨハン様とジルド様には報告いたします」
「心配かけたくないんだけど仕方ないわね」

ガタゴトと動き出す馬車。校門を抜けて少し行くと紙に書かれていた特徴のある馬車が後ろについています。
知らない時は何も思いませんが、知ってしまって実際に見ると緊張しますね。

「大丈夫でございますか」
「えぇ‥‥大丈夫。大丈夫よ」
「明日からは護衛を同乗させましょうか」
「いいえ…もう卒業まで少しだもの。単位はとってあるから休むわ」
「承知いたしました」

大通りを抜けて貴族街に入りますが、つかず離れずの距離でついてくる馬車が不気味です。
屋敷の門が開かれ、クリスティナの馬車が屋敷に入っていくと確かめるようにスピードを落とし過ぎ去っていく馬車。

ゾクゾクする寒気がクリスティナを襲いますが、玄関前に1台の馬車と、それとは別に真っ黒くて大きな馬が一頭います。

「シンザン様が来られているようですね」

ロクサーヌの声にぱっと顔をあげますが、婚約者のところに挨拶に行った帰りだと思うと胸が痛くなります。
ドアが開き、ゆっくりと降りて使用人にカバンを預けていると、兄ヨハンの笑い声が聞こえます。

「お嬢様、お帰りになられたらすぐに来るようにと」
「お兄様が?」
「えぇ。サロンに皆さまお揃いで待っておられます」
「制服でいいかしら」
「えぇ。勿論ですよ」

制服のままでサロンに向かうクリスティナですが、扉は開いたままのはずなのに黒い塊?があります。
黒い塊は背後のクリスティナに気が付くと振り向きます。

「おぉ!ようやくお姫様のお戻りだ」

それはケイティの従兄弟であるエドワードでしたよ。

「エドワード様、お久しぶりで御座います」

制服のスカートの裾をチョコンと抓んでカーテシーをします。

「おわっ。本物のお姫様になったなぁ。こんなに小さかったのに」
「嫌ですわ。だってまだ11歳でしたもの」
「7年も経つと女は変わるなぁ‥‥・なぁシンザン」

エドワードが体を寄せた先には、3人掛けのソファにどっしりと腰を掛けるシンザンがいます。
ますます大きくなってない?ホントにグリズリーじゃないの??

ガバっと立ち上がるとシンザンがクリスティナのほうに歩いてきます。
あの日のように手を掴むと思ったら、突然横抱きでクリスティナを抱っこしてしまいます。

「えっ?えっ!何を!何をされるのです!」

そして兄の向かいのソファにストンと座らされます。
すぐさまドカンっと隣に腰掛けるシンザン。

「ホント…お前嫌われるよ?見てみろ。ビックリしてるじゃないか」

途端にクリスティナとシンザン以外が笑い始めるサロン。

「あの、お兄様?いったい…」

驚くクリスティナに長兄のヨハンはにっこりと笑います。

「喜べ。クリスティナ。輿入れ先が決まった」
「えっ?な、なんって??」
「だから、嫁入り先が決まったと言ったんだ」
「そんな!お父様は?お父様は良いと言ったのですか?」
「当たり前だろう?それに決定するのは俺だけどね」

真っ青になってしまうクリスティナ。今どんな顔をして隣のシンザンを見て良いかわかりません。
本当に久しぶりに会ったのに、いきなり自分の婚約が決まったなんて…最悪だわ!っと血の気が戻りません。

「鈍感だなぁ。旦那が泣くぞ?」
「えっと‥‥どなたと??」
「隣にいるじゃないか。デカ過ぎて見えないか??」
 
ゆっくりと隣を見ると、かなり大人びたシンザンが微笑んでますね。
ふぅ~っと気絶してしまったクリスティナでした。

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