わたしの王子様

cyaru

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狂気の瞳

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「ねぇ殿下、そろそろわたくしの父に会ってくださいませんの」

放課後の生徒会室の奥にある王族専用の休憩室では、素っ裸の男女がベッドの上にいますね。
明らかに事後ですけれども、咎める者がいないというのは不幸とも言います。

「何故会わねばならんのだ」
「だって…もうこうやって何度も。お考えくださっているのでしょう?」
「何をだ」
「もう…わたくしの口から言わねばなりませんの」
「言わねば判らぬだろう」

上半身を起こし、着替えを始めようとする男の背に纏わりつくようにする女。
絡めてきた手を払いのけるようにして下着を身につける。

「殿下、次はまた来週ですの?」
「いや、いい」
「良いって‥‥連絡をくださいますの?」

はぁっと一つため息を吐くと男は振り向いて女の頬を張った。

パンッ

「で、殿下…なにを…」
「チッ、何だその目は。面白くもない」

張られた頬に手を当てて、女はビックリしたような顔をするが、男はその目が気に入らない。

「用済みだ。出ていけ」
「で、殿下、それはどういう…」
「聞こえなかったか?用済みと言ったんだ」
「用済みって…わたくしは殿下に純潔も捧げましたのに」
「突っ込んだら血が出た。それだけだ」
「ですがっ!殿下がわた‥‥アグッ…」

男は女の顎を力任せに掴む。

「何度も言わせるな。砕くぞ」

顎を掴まれて声が出せない女はコクコクと頷くと顎から手が離される。
女は自分の着替えを無造作にかき集めると棚の影で身につけ始める。
一通り着替えると逃げるように部屋から出て行った。

「面白くない。媚びる女ばかりだ」

そう言いながら机の引き出しを開けると箱を取り出す。
蓋を開けるとそこにはクリスティナのリボンやペン、ノートが入ってた。
愛おしそうにリボンに口づけをする。

☆~☆~☆~☆

薄暗い個室のあるレストランにひとりでやって来た第一王子。
既に相手は来ているようで個室には人影がありますね

「待たせた」
「いいのよ。今日はどうする?」
「持ってきたか」
「はいはい。これでしょう?でもそろそろ終わりよ。卒業に近いから返却しないといけないわ」

そう言って出されたのはクリスティナのハンカチと栞。

「ペン並みに苦労したわよ。誰にも見られないように盗らないといけないから」
「すまないな」
「こんなものどうするのよ」
「お前には関係がない。考えるな」
「判ったわ…ねぇもう行きましょうよ」
「フン、昼は女学院で講師、夜は娼婦だな」
「いやね。殿下だけよ。でもいいの?」
「何が」
「年は離れてるし…はやく王子宮に入れてよ。講師なんかやってられない」

どうやら女学院の講師の1人とそういう関係のようですね。
講師も18歳の男の子つかまえて何やってんだが。
ついたばかりで品物を手に入れた第一王子は席を立ちます。

「えっ?どうしたの?」
「終わりだ」
「なっ、なにが終わりなの?」
「もうお前に用がないと言ったんだ」
「そっそんな‥‥いいわ。だったらばらしてやるから!」
「どうぞ。王子に手を出した女講師、しかも学院からの窃盗犯と言えるのならな」

翌朝、王都を流れる川のほとりに新卒で採用された王立女学院の講師の遺体が発見されます。
震える文字で【生徒の私物を盗んで売りました】と懺悔する遺書があり、調べると実際クリスティナだけでなく数人の私物がなくなっており、古物商で一部が発見された事から自殺として処理をされます。

王宮にある王子の執務室では珍しく王子の機嫌が良いとお付きの従者がホっとしていますよ。
何度もチェルシー家に申し入れた婚約ですがその度に家がゴタゴタしていると返事を保留され、挙句に学園に入学すると婚約者は決定しないと国王にくぎを刺された第一王子は荒れてました。

ま、勉学や剣術などすべきことは求められたもの以上の結果をだしたので文句は言われませんが、色々な家のご令嬢を食いまくっているというのは国王の悩みの種でしたので、王子を窘めます。
その度に従者に当たり散らす王子でしたが、今日はすごく機嫌がよいので従者は嬉しそうです。

執務室では、1枚のハンカチの匂いを嗅ぎ、頬にあてるレイザード第一王子。

「今度はマーガレットなんだね‥‥鷲を刺繍したくなるようにしてあげるよ」

怖い呟きが聞こえます。
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