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シンザンが婚約?!
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「ごきげんようデロア様」
「ごきげんようクリスティナ様」
女学院の下校時、各家の馬車が指定場所で待っていますね。
登下校は必ず馬車を利用する事(乗合馬車は禁止)が決められている王立女学院です。
すっかり白髪が目立つようになったロクサーヌが馬車の扉を開けています。
「ありがとう。ロクサーヌ」
18歳になりすっかりお姉さんになったクリスティナ。
ですがまだ油断は出来ません。
デビュタントが終わり、王家の使者が婚約の話を持ってくるのは想定の範囲内。
長兄のヨハンと次兄のジルドは何日も話し合い、どうやってまず時間を稼ぐかを対策しました。
その結果、ヨハンは父に引退をしてもらい若い伯爵となったのです。
嫡子で長男とはいえ20歳になったばかりのヨハンに爵位を譲るのは異例中の異例。
けれどビシっと言えるヨハンかジルドでないと何があるかわかりません。
王宮からの使者にヨハンは爵位を継いだばかりで、まだ未熟だからとお断りを致しました。
王家だけでなく、婚約者となる貴族の家もそれなりに立ち回らないといけませんので爵位を継いだばかりだからと2年ほどはどの家も猶予を設けられているのを利用したのです。
ですが、それでも2年しかありません。
次に決まっていたジルドの結婚式を遅らせました。
ただ、遅らせただけでは重箱の隅をつつかれますので、ジルドが騎士団の副長を賜り同じ伯爵家の敷地内で結婚式を行い、同時に分家としての登録をするのです。
これでまだお家がゴタゴタ状態であると王家に申し入れをまだ受け入れられないと出来る時間を稼いだのです。
これでクリスティナが15歳まで時間を稼ぐ事が出来ました。
15歳になると第一王子は王立学園に入学をします。
ヨハンは王子が入学をしたと号外を手にした時、少しホっとしました。
学園生である間は王家は婚約者が決まっていない場合、選定はしますが決定をしないのです。
その上、王立女学院では15歳からは高等部になります。
届け出のない男性と話をしているのを見られるだけで単位を落とされるのです。
ですから女学院に通う令嬢は夜会すら出てくる事はありません。
ま、見られなければ大丈夫というのも当然ありますけどね。
クリスティナが届けているのは、父、兄2人、執事のロクサーヌ、そしてシンザンのみ。
シンザンはどうするか家族で話をしましたが、文通をしているので何か言われた時にと加えられました。
ちなみに、医師や給仕、御者などは含まれませんし、仕事として認められる場合は男性との会話とはされませんよ。
「お嬢様、ケイティ様から伝言が御座います」
「なにかしら」
「来週シンザン様がおいでになると言付かりました」
「えっ、本当?」
「えぇ。確か婚約者様へのご挨拶に王都に来られるのでケイティ様の元にもお寄りになるそうです」
「シンザン様が‥‥婚約?」
「そのようですよ」
甘酸っぱい雰囲気はありましたがそれだけです。
文通ももう6年以上していますが、好きとかそんな事は書いていません。
シンザンの手紙にはいつも、今日はこんな討伐をしたとか、この村はコレが美味しかったなど日記の延長線のようなものです。
字が下手だと言っていましたが、線の太いまるでシンザンの見た目のような字で味のある字でした。
忙しいのと、討伐は辺境のなかのさらに山奥なので1か月に1通届くかどうかでしたがクリスティナは届くたびに直ぐに返事を書いておりましたよ。
そして何度も何度も読み返しています。
ですが考えてみればシンザンも22歳。結婚をしていてもおかしくない年齢です。
クリスティナは胸にチクリと痛みを感じながらも、走る馬車の窓からの風景に意識を向けました。
「ごきげんようクリスティナ様」
女学院の下校時、各家の馬車が指定場所で待っていますね。
登下校は必ず馬車を利用する事(乗合馬車は禁止)が決められている王立女学院です。
すっかり白髪が目立つようになったロクサーヌが馬車の扉を開けています。
「ありがとう。ロクサーヌ」
18歳になりすっかりお姉さんになったクリスティナ。
ですがまだ油断は出来ません。
デビュタントが終わり、王家の使者が婚約の話を持ってくるのは想定の範囲内。
長兄のヨハンと次兄のジルドは何日も話し合い、どうやってまず時間を稼ぐかを対策しました。
その結果、ヨハンは父に引退をしてもらい若い伯爵となったのです。
嫡子で長男とはいえ20歳になったばかりのヨハンに爵位を譲るのは異例中の異例。
けれどビシっと言えるヨハンかジルドでないと何があるかわかりません。
王宮からの使者にヨハンは爵位を継いだばかりで、まだ未熟だからとお断りを致しました。
王家だけでなく、婚約者となる貴族の家もそれなりに立ち回らないといけませんので爵位を継いだばかりだからと2年ほどはどの家も猶予を設けられているのを利用したのです。
ですが、それでも2年しかありません。
次に決まっていたジルドの結婚式を遅らせました。
ただ、遅らせただけでは重箱の隅をつつかれますので、ジルドが騎士団の副長を賜り同じ伯爵家の敷地内で結婚式を行い、同時に分家としての登録をするのです。
これでまだお家がゴタゴタ状態であると王家に申し入れをまだ受け入れられないと出来る時間を稼いだのです。
これでクリスティナが15歳まで時間を稼ぐ事が出来ました。
15歳になると第一王子は王立学園に入学をします。
ヨハンは王子が入学をしたと号外を手にした時、少しホっとしました。
学園生である間は王家は婚約者が決まっていない場合、選定はしますが決定をしないのです。
その上、王立女学院では15歳からは高等部になります。
届け出のない男性と話をしているのを見られるだけで単位を落とされるのです。
ですから女学院に通う令嬢は夜会すら出てくる事はありません。
ま、見られなければ大丈夫というのも当然ありますけどね。
クリスティナが届けているのは、父、兄2人、執事のロクサーヌ、そしてシンザンのみ。
シンザンはどうするか家族で話をしましたが、文通をしているので何か言われた時にと加えられました。
ちなみに、医師や給仕、御者などは含まれませんし、仕事として認められる場合は男性との会話とはされませんよ。
「お嬢様、ケイティ様から伝言が御座います」
「なにかしら」
「来週シンザン様がおいでになると言付かりました」
「えっ、本当?」
「えぇ。確か婚約者様へのご挨拶に王都に来られるのでケイティ様の元にもお寄りになるそうです」
「シンザン様が‥‥婚約?」
「そのようですよ」
甘酸っぱい雰囲気はありましたがそれだけです。
文通ももう6年以上していますが、好きとかそんな事は書いていません。
シンザンの手紙にはいつも、今日はこんな討伐をしたとか、この村はコレが美味しかったなど日記の延長線のようなものです。
字が下手だと言っていましたが、線の太いまるでシンザンの見た目のような字で味のある字でした。
忙しいのと、討伐は辺境のなかのさらに山奥なので1か月に1通届くかどうかでしたがクリスティナは届くたびに直ぐに返事を書いておりましたよ。
そして何度も何度も読み返しています。
ですが考えてみればシンザンも22歳。結婚をしていてもおかしくない年齢です。
クリスティナは胸にチクリと痛みを感じながらも、走る馬車の窓からの風景に意識を向けました。
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