わたしの王子様

cyaru

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狂気に蝕まれた王子

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突然玄関から出て来なくなった馬車。
いつもの通りで待ち伏せをしていた第一王子レイザードは予定の時間になっても通らない馬車に体を震わせて【悦んで】いますよ。

ポケットからハンカチを取りだし、唇に当てながら

「あぁ、やっと気が付いてくれたんだね。どんな顔をして怯えているのかな…君の瞳に涙が溢れているんだろうか…あぁ見たい…怯える君がこの目で見たい」

全身が振るえるほどの悦びに第一王子レイザードの制服のズボンにシミが出来る。
ジッパーを下ろしヌルりとした液体を指に取ると、ハンカチに施されたマーガレットの刺繍に擦り付ける。

「美味しいかい‥‥美味しいだろう‥‥フフフ‥‥フフフ…」

第一王子の馬車がクリスティナの登下校を付け回すようになって実は2か月。
きっかけはあの女講師だった。何度目かの逢瀬に向かう途中、変装している第一王子に気が付く民はいない。
通りを横切ろうと走ってくる馬車を待った。

通りすぎていく馬車には愛しくて恋焦がれているクリスティナの横顔があった。
ドクンと大きく心臓が飛び跳ねた。
人通りの多い商店街は馬車のスピードは落ちる。だがそれでだけでなく、視界にクリスティナを捕らえた時からレイザードの時間はスローモーションになった。

視界から切れようとした時、クリスティナが髪を耳にかけようと、白く細い手をあげたのが見えた。
遠い記憶の中で窓辺に立ち、庭師にキスをしようとしたあの細くて白い指。
さらに心臓がドクンと大きく波打った。

思わずその場に両腕を自身に回してしゃがみこんだ。

【欲しい…欲しい‥‥今すぐ…全てを…そして苦悶に歪んだ顔がみたい!!】

興奮が収まらないまま女講師に会い、そのまま抱いた。
歓喜に声をあげる女講師の口の中にショーツをねじ込み、苦し気な顔をするのをクリスティナに重ねる。

「フグっと‥‥グゥゥゥッ‥‥ウゥゥッ」

呼吸が満足に出来ない女講師をいつもは後ろから責めるレイザードだったが、その日は暴力的にせめた。
1度果てても、衰えない己。
ぐったりする女講師をいつものように、犬のような格好をさせてその尻を腫れあがるまで打ち据えた。
真っ赤になり、薄く血が滲む尻を更に打ち据え、くぐもった悲鳴をあげる女講師の中に放つ。
久しぶりに【射精した】と思えるほどの開放感をレイザードは感じた。

しかし何度目かでその開放感、射精感は味わえなくなった。
学園でも令嬢たちの尻を打ち据えながら性交をするが、物足りなさだけがレイザードを覆った。

それを補ったのは女講師がそれまでに盗んできたクリスティナの私物だった。
ペンやリボンを握ったり、咥えたりしての性交はレイザードに興奮をもたらした。

だがそれも長続きはしなかった。

そんなある日、生徒会室に行くと置きっぱなしにしていたクリスティナのペンで自慰をする男爵令嬢がいた。
レイザードは我を忘れてその男爵令嬢を殴った。

懇願し、許しを乞う男爵令嬢に何度も拳を振り下ろした。
数発目の拳を振り上げた時、怯え切った男爵令嬢の目はレイザードに征服感を与えた。
遠い日に感じたクリスティナを心から欲したあの日感じたゾクゾクした感情がレイザードの全身を駆け巡った。

【もっと!もっと!怯えた目で俺を見てくれ!】

気が付くと側近3人に体を拘束されていた。
目の前にもう息をしなくなり、動かなくなった男爵令嬢の屍があった。
側近たちは、身分の低い男爵令嬢を浮浪者が多く住むスラム街のはずれに棄てた。
身持ちの良い評判がなかった男爵令嬢は、遊びすぎた報いだと誰もが噂をした。
レイザードの仕業だと知る者は国王が付けた影、そして側近とレイザード以外はいなかった。

翌日からレイザードは馬車でクリスティナの家を見張った。
ほとんどは馬車の窓をカーテンで閉じていたが稀に見えるクリスティナの横顔を見て震えた。

学園は女学院より早く自由登校になるのを利用してクリスティナの登下校を待ち伏せした。

【早く、俺が見守っている事に気が付け!!】

そう思い、見守ってくれている事に喜ぶ顔を想像した。だが、レイザードの記憶にクリスティナが笑っている顔はなかった。
困っている顔と痛みに耐える顔、怯える顔、そして歪んだあの顔と無表情しかなかった。

次第に、【視られている事への恐怖】で怯える顔を切望するようになった。
それはハンカチを唇に当てる程度で射精してしまうほどレイザードの心を蝕んでいる狂気だった。

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