わたしの王子様

cyaru

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女の園の実態は

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ラブリぃなひと時を過ごしてロデオに乗って帰ってくる2人。

「お帰りなさいませ」

ロクサーヌは踏み台を持っていませんね。降りられないと思ったクリスティナを先に降りたシンザンはフワリと持ち上げます。

「はい。到着ぅぅ」
「あ、ありがとうございます。あの…おろしてくださいまし」
「なんで?」
「何でって‥‥足がまだ…」

そのままクリスティナを抱っこして屋敷に入るシンザン。
生温かい目で兄2人と義姉2人に見られてると思うと恥ずかしさが倍増します。

その日の夕食も調理場はまるで戦場です。皿にどんどん盛りつけられている料理を女中たちもフウフウ言いながらどんどん運びます。

「こりゃ食費でトンデモナイことになるな」
「そうよ。あんたちょっと加減しなさいよ」
「大丈夫、大丈夫。ほとんど自給自足だけど肉なんかは魔獣を取ってるからタダなんだ」
「えっ?魔獣?辺境では魔獣を食すのですか?」
「えぇ。そうですよ。こいつの胃袋満たしてたら討伐もいらないくらいあっという間に減りますけどね」

「あ、ヨハン兄ちゃん、ジルド兄ちゃん、ちゃんと家族計画決めたから」
「あ、あのシンザン様?あれは本気でしたの?」
「当たり前だろう?」
「で?どうなったんだ?」
「(モシャっ)うん、とりあえず(もぐっ)25人にした」
<<えぇぇぇぇっ??>>

呆れ顔のエドワードとケイティお義姉様の横で、見事な食いっぷりのシンザン。
シェフのドルテはにっこにこで満足そうです。
ヨハンもジルドもクリスティナに週3回ほど食料を送らねば・・・っと思っています。
エヴェリーナは大きなお腹を抱えて笑いをこらえるので精一杯。
それを優しく見守る前伯爵夫妻。

食後のサロンは笑い声が途切れる事はありません。

「びっくりしたわよもう!」
「そうだよな。送ってきた手紙がコレだよコレ!」

そういいながらヨハンが出してきたのはシンザンからの手紙。

【クリスティナをもらいに行く】

そしてケイティがゴソゴソと出してきます。

【婚約者のところにいくから寄る】

「これだけよ?信じられない。しかもヨハン様より先に私のところに届くんだもの。いろいろと順番が違うわ」

「違うよ。先にヨハン兄ちゃんに出したんだ。ポッパの村から出して、ケイ姉ちゃんには3日後ススベ市からだしたんだ。俺は順番は間違ってない」

「それでもだ!ヨハンさんに許しも得てなければ婚約者じゃないだろうがっ!!」
「俺の中ではもう嫁さんなんだよ!」
「本当にお前は色々とすっ飛ばすなぁ」

「でもね。聞いて。この子クリスティナに初めて会った時。本当に恋に落ちる音がしたのよ!」
「本当?どんな音?わたくしも聞きたかったわ!」
「それがね、クリスティナの声を聞いた瞬間!!」

<<パシューン!!>>

「まぁ!そうなの?」
「凄いな。擬音かと思ってたけど本当にするもんなんだな」
「そうなのよ。ジル!それでね。この子真っ赤になってクリスティナが大丈夫?って言ったらね」

<<プシュー!!>>

「って音がして気絶してひっくり返ったのよ?」

ワッと盛り上がって使用人も肩をブルブル振るわせて声を出すのを堪えています。
楽しい歓談が終わったあと、クリスティナは湯あみに侍女とともにサロンを後にします。
前伯爵夫妻もサロンを後にしました。
途端に表情が変わる面々。

「ロクサーヌ。話を」
「はい、旦那様」

そう言ってロクサーヌは女学院で渡されたというお菓子と、入っていた紙を広げます。

「その方の情報では気が付いたのは5日前との事でしたが、おそらくは1週間なり10日はつけられていたと思います」
「そのご令嬢、よく気が付きましたのね」
「ロゼリア様は商会もされているティービー子爵家のご令嬢様ですが、お嬢様の親衛隊を結成し、その隊長を務められております」
「し、親衛隊??」
「えぇ。女学院では代々【御姉様】と崇め奉られるご令嬢が出るそうですがお嬢様が高学年になられた時、初等部の女子生徒が決起集会を行いまして固い誓いの元、お嬢様を神とも聖女とも崇められております」

<<女学院、恐~い!!>>

「おそらく、お嬢様の馬車をつけているという報告が親衛隊内でなされ、確定するまで内定をされていたと思われます」

「なんか、本物のお嬢様学校かと思っていたけど諜報員の養成してるかと思うな」
「いえ、あながち間違いでは御座いません。実際そのような活動をされているご夫人は多くおられます」

<<マジか!!>>

「それでその馬車でございますが、ほぼ間違いなく第一王子の馬車で御座います」

「仕掛けてくると思うか?」
「判らんな。だが王家からの婚約の申し入れを流し、学園に入って3年だ。用心に越したことはない」
「ヨハン兄さん、シンザンとの婚約の届けは?」
「明日出す予定だ」
「学園も女学院も卒業式まであと2週間だ。卒業式が終わったその足で可能性がある。その前に婚約の届けを出したほうがいい」

「芽は摘んだつもりだったのに…しつこい王子ね」
「もしかすると王子もクリスティナと同じように覚えているのかも知れない」

カチャリと長い剣を持ち換えたシンザンがギっと睨みます。

「そいつはブった斬ってもいいやつか?」
「マズいだろう。腐って狂っていてもこの国の第一王子だ。女遊びは派手だったようだが、学園での成績も剣術も飛びぬけて良いという話だ。このままいけば王座を賜るだろう」

うーむと考える面々。次兄のジルドが苦渋の表情で口を開きます。

「既成事実を作るか」
「そんな!ジル!クリスは‥‥多分嫌悪感や恐怖心を持っている筈よ。可哀そうよ」
「だが、シンザンと結婚すれば通る道だ。何より王家は処女性を求める。処女でなくなれば…」
「だめよ!ヨハンも言ってやって。女にとって生涯に一度だけの大事な事なのに!」
「うーむ。ジルドの意見はおそらく一番効果的だとは思う。だが…」
「そうだ。話を聞く限りその王子なら妃としてではなく妾として取り込むのではないか?」

カチャっと剣を握り、シンザンが立ち上がります。

「そんなヤツの為にティナの‥‥初めてを利用はしない。俺が守るだけだ」

そう言ってシンザンはサロンを出ていきました。
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