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第07話 葉っぱ石
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赤字だからと何もしなかったら貸付は膨らんでいくだけ。
事業を清算する方法もあるけれど、清算した後何をするかとなれば離縁まで半年を切っている事から何かを始めようとしても時期的に遅くなる。
腹は立っても利用できるものは利用するのが今は大事なのでブレン伯爵夫人であると言う肩書は使わせてもらわねばならない。
マリエンさんとティナさん、ハンナさんと向かったのは教会。
なんの役にも立たないかも知れないけれど、困った時の神頼みってあるじゃない?
神頼みと言ってもダメで元々。教会は身分に関係なく色々な人が来るからわざわざアポイントメントを取らなくても有益な関係を築ける人と会えるかもしれないっていう転んでもただじゃ起きない私なりの神頼み方法だ。
「奥様、こっちです」
案内をされたのはマリエンさんたちと同じく、教会に併設された孤児たちが暮らす区画。
教会が教えてくれるのは最低限の挨拶と掃除や洗濯の一般的なやりかた。
一定の年齢になれば孤児たちは斡旋協会の指定した家で奉公をする事になる。
部屋に案内をされるとマリエンさんやティナさん、ハンナさんの回りに人が集まってきた。
「人気者なのね」
「違いますよ。奥様に教えて頂いた文字とか数字を月に1回の休みを使って教えに来るんです。交代で休みを取るので子供たちにしてみると月に3回ですけど」
交代でやってくる3人に子供たちは宿題を済ませたとばかりに文字や計算を練習した成果を見せに来る。
紙が高価なので壁や床にかき込んだり、庭の土に「こんなに書けるようになった」と書いてみせたりする。
上は18歳、下は乳飲み子。沢山の子供たちがいるがマリエンさんたちのように貴族の家に奉公に出ることが出来るのはごく一部。
王都にある孤児院を併設した教会はここだけではないし、民間が行っている孤児の収容施設もある。
受け入れてくれる貴族や商人の数は少ない。
王都だけでも奉公にくる子を受け入れてくれる枠は30に満たないけれど、孤児の数は1万を超える。
全国になれば地方ほど受け入れ枠が少なくなるので倍率は天文学的数字になってしまう。
「がっつり儲けられたらみんな雇ってあげられるのにな」
そう思いながら暖炉の火を絶やさないように枯れ木や落ち葉を放り込んでいる子どもが目に入った。
(え?何してるの?)
つい駆け寄って話しかけてしまった。
「ねぇ、君たち、今、火の中に何を放り込んだの?」
「何って…葉っぱ石だよ」
「葉っぱ石?」
「これだよ」
見せてくれたのは教会の庭に生えている草をぐるぐるに巻き付けた炭。
礼拝者が寒くないように暖炉に火を入れているが、孤児たちはその温もりで手や体を温めることは許されていない。
早朝に灰を掃除する時に燃え残った炭を集めているのだそうだが…。
「炭を焚火の中に入れちゃうと燃えるんだけど直ぐに燃え尽きるからこうやって草で巻いて時間稼ぎしてるんだよ」
「時間稼ぎ…でも、消えてしまうんじゃない?」
朝露で湿った草を巻いているから火が消えてしまうかと思いきや。
「消えるよ。だから放り込む直前まで火であぶって乾かすんだよ。そしたらちょっとは長く温まれるんだ」
「炭が無い時は石を巻くんだよ。石が熱くなって火が消えても寝る頃には石を袋に入れて抱いて寝ると温かいんだ」
なるほど。子供たちは最初は炭を放り込んで直ぐに燃え尽きてしまう事からどうやって長く温まるかを学習していったと考えられる。
(生きるための知恵って凄いわね)
火で炙る事で湿り気が薄くなった葉っぱ石を手に取るとハンナがしていた紙の折りたたみが葉っぱ石に使えそうな気がした。
ハンナは包装紙などを折り畳んでしまう癖があるのだ。
「これって…落ち穂で巻いたらどうなるかしら」
「落ち穂だと直ぐに燃えちゃうよ。落ち穂が手に入った時はギューって固めて使うと炭の代わりになるんだよ。お姉ちゃん知らないの?」
「え・・・」
落ち穂を固める?炭の代わりになる?
「それって…落ち穂を炭に?そんな事が出来るの?」
「出来るよ。固めるのが大変だけど」
「どうやって固めるの?」
「前は器具があったけど壊れたから固められないよ」
「器具‥‥」
壊れてしまった器具はもう教会にはないそうだけど、ティナが「今も使ってる人を知っている」というので連れて行ってもらう事にしたのだった。
事業を清算する方法もあるけれど、清算した後何をするかとなれば離縁まで半年を切っている事から何かを始めようとしても時期的に遅くなる。
腹は立っても利用できるものは利用するのが今は大事なのでブレン伯爵夫人であると言う肩書は使わせてもらわねばならない。
マリエンさんとティナさん、ハンナさんと向かったのは教会。
なんの役にも立たないかも知れないけれど、困った時の神頼みってあるじゃない?
神頼みと言ってもダメで元々。教会は身分に関係なく色々な人が来るからわざわざアポイントメントを取らなくても有益な関係を築ける人と会えるかもしれないっていう転んでもただじゃ起きない私なりの神頼み方法だ。
「奥様、こっちです」
案内をされたのはマリエンさんたちと同じく、教会に併設された孤児たちが暮らす区画。
教会が教えてくれるのは最低限の挨拶と掃除や洗濯の一般的なやりかた。
一定の年齢になれば孤児たちは斡旋協会の指定した家で奉公をする事になる。
部屋に案内をされるとマリエンさんやティナさん、ハンナさんの回りに人が集まってきた。
「人気者なのね」
「違いますよ。奥様に教えて頂いた文字とか数字を月に1回の休みを使って教えに来るんです。交代で休みを取るので子供たちにしてみると月に3回ですけど」
交代でやってくる3人に子供たちは宿題を済ませたとばかりに文字や計算を練習した成果を見せに来る。
紙が高価なので壁や床にかき込んだり、庭の土に「こんなに書けるようになった」と書いてみせたりする。
上は18歳、下は乳飲み子。沢山の子供たちがいるがマリエンさんたちのように貴族の家に奉公に出ることが出来るのはごく一部。
王都にある孤児院を併設した教会はここだけではないし、民間が行っている孤児の収容施設もある。
受け入れてくれる貴族や商人の数は少ない。
王都だけでも奉公にくる子を受け入れてくれる枠は30に満たないけれど、孤児の数は1万を超える。
全国になれば地方ほど受け入れ枠が少なくなるので倍率は天文学的数字になってしまう。
「がっつり儲けられたらみんな雇ってあげられるのにな」
そう思いながら暖炉の火を絶やさないように枯れ木や落ち葉を放り込んでいる子どもが目に入った。
(え?何してるの?)
つい駆け寄って話しかけてしまった。
「ねぇ、君たち、今、火の中に何を放り込んだの?」
「何って…葉っぱ石だよ」
「葉っぱ石?」
「これだよ」
見せてくれたのは教会の庭に生えている草をぐるぐるに巻き付けた炭。
礼拝者が寒くないように暖炉に火を入れているが、孤児たちはその温もりで手や体を温めることは許されていない。
早朝に灰を掃除する時に燃え残った炭を集めているのだそうだが…。
「炭を焚火の中に入れちゃうと燃えるんだけど直ぐに燃え尽きるからこうやって草で巻いて時間稼ぎしてるんだよ」
「時間稼ぎ…でも、消えてしまうんじゃない?」
朝露で湿った草を巻いているから火が消えてしまうかと思いきや。
「消えるよ。だから放り込む直前まで火であぶって乾かすんだよ。そしたらちょっとは長く温まれるんだ」
「炭が無い時は石を巻くんだよ。石が熱くなって火が消えても寝る頃には石を袋に入れて抱いて寝ると温かいんだ」
なるほど。子供たちは最初は炭を放り込んで直ぐに燃え尽きてしまう事からどうやって長く温まるかを学習していったと考えられる。
(生きるための知恵って凄いわね)
火で炙る事で湿り気が薄くなった葉っぱ石を手に取るとハンナがしていた紙の折りたたみが葉っぱ石に使えそうな気がした。
ハンナは包装紙などを折り畳んでしまう癖があるのだ。
「これって…落ち穂で巻いたらどうなるかしら」
「落ち穂だと直ぐに燃えちゃうよ。落ち穂が手に入った時はギューって固めて使うと炭の代わりになるんだよ。お姉ちゃん知らないの?」
「え・・・」
落ち穂を固める?炭の代わりになる?
「それって…落ち穂を炭に?そんな事が出来るの?」
「出来るよ。固めるのが大変だけど」
「どうやって固めるの?」
「前は器具があったけど壊れたから固められないよ」
「器具‥‥」
壊れてしまった器具はもう教会にはないそうだけど、ティナが「今も使ってる人を知っている」というので連れて行ってもらう事にしたのだった。
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