愛なんて要りません

cyaru

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第06話  ケチにも程度ってものがある

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私はふと気になった。

落ち穂事業で赤字の補填分を貸し付けられているくらいだ。
マリエンさんを筆頭にあと2人のメイド(ティアとハンナ)は私専属で他の事はしなくていいと言われているようだけど、彼女たちの給金って伯爵家が支払っているのなら離縁時に3人の給金を纏めて請求されてしまうんじゃないかと。

実家は繊維業を生業としていたけれど、父親は警備隊長の役を仰せつかっていたので事業を切り盛りしていたのは母親と番頭。

母が実家の繊維事業を引き継いだのは父の稼ぎでは食べて行けなかったから。

そんな母も兄が17歳、私が13歳の時に神に召されたが、父が仕事を辞められたかと言えば否。
経営と警備隊長という1人2役を熟すこなすには荷が重くて結局は兄が番頭と切り盛りをし始めた。

父も警備隊長を辞する事は本気で考えてくれたけれど、休みなんて月に1度あればいい方で、それすら何か事件や事故が起きれば呼び出しをされる。それでいて薄給なので万年人員不足。成り手がいなかった。

警備隊長ともなれば部下を統率できる者でないと務まらず、結局父は周りから「この街がどうなってもいいのか」と責任論を押し付けられて職を続けるしかなかった。

(あぁいうのは、死なない限り辞められないのよ)

兄と何度、その言葉を言い合った事だろう。
幼い日から父と遊んだ記憶はないし、思い出すとすれば雨や雪の降る夜中に外套を被って帰ってきた父の姿くらい。


そこまで働きに見合わない給金とは思わないけれど、妻に貸付をするくらいだから少ない給料だろうなと思い、事業がもしも!もしもうまく言ったら特別な手当てを出してあげよう。そう思ってマリエンさんたちに私は問うた。

「ねぇ、マリエンさんたちは毎月幾ら貰ってるの?」
「幾らって言うと…お給金の事ですか?」
「そう。あっと、言い難かったらざっくりの金額で良いの」
「ざっくりと言われましても…」

(何?この空気…)

マリエンさんはティア、ハンナと顔を見合わせた。

ティアは言った。
「あのぅ。私たちは孤児の就職斡旋で教会から来ているので伯爵家からお給金は貰ってないんです。協会からは月に2万ルル貰ってます」

そしてハンナが続けた。
「食費は斡旋協会から支払われている筈なんですけど食事は奥様の食事を分けて貰っているので」

とどめにマリエンさんが困り顔で言う。
「額は少ないですけど旦那様には協会からも幾らか支給されているはずなんですけど」

「なんですってぇ?じゃぁ、3人は無償奉仕?」
「そういう訳でも無くて奥様には手に職はあった方が良いと裁縫も刺繍も教えてもらいましたし、私が50まで数えられるようになったのも字が読めるのも奥様に教えてもらったからで――」
「そうじゃなーい!ないない。ないわぁ…本気で言ってるのよね?」

<勿論です。奥様に嘘は吐きません>

うわぁ。頭が痛い。

つまり、つまりよ?彼女たち3人分の生活費は協会から伯爵家に支払われているけれど、彼女たちは伯爵家からなんの恩恵も受けていないってことよ。

更には協会は孤児たちが独り立ちしても生計を立てられるようにこうやって金を使って貴族の家に見習い奉公に出して今後も裕福な商人などにお手伝いさんとして雇って貰ったり、場合によっては経理などの仕事に就けたりとしている斡旋を伯爵家は…使い方間違ってない?!

マリエンさんが3人の中では一番の古株だけど、斡旋は3年間。
マリエンさんと入れ違いで出て行った子もいるってことよ。


なのに…

「ティアはアルファベットが書けるようになったんだよね」
「うん。ハンナも裁縫が出来るようになったよね」
「当たりかハズレかで言えば、奥様の専属になった事で大当たりです」

なんて良い人たちなの。涙が出そう。
中身が15歳の私からすれば3人とも”年上のお姉さん”だけど、これが母性愛かしら。

抱きしめたくなっちゃう。

だけど、ブレン伯爵めぇ!!守銭奴とかケチとか聞くけど、程度ってものがあるでしょうに。

「判った。あと半年で貸し付けを返してガツンと儲けるわよ。4人で山分けよ!」

<???>

何故そこで「おぉぉ!」ってノッて来ずに首を傾げるのよ。
そう思ったけど、3人の言葉で現実の厳しさを知ったのよ。

「でも、奥様。事業…ずっと赤字なんですよね?」
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