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VOL.12 先ずは原因を知る
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「ダメです。俺、もう…うぅぅ~なんでダメなんだろう。俺がダメな奴だから?ねぇ神父様ぁ」
クーヘンはグスグスと神父に自分の悪いところを教えてくれと言うが、そんなの神父にだって判る筈がない。
解っているのはクーヘンの作る菓子は売り物にするレベルではないということ。
素人でもここまで不味く作れる者はそうそういない。
「俺、もう菓子作りやめます。向いてなかったんです。菓子を作りたいって熱意だけじゃ意味なかったんです」
「クーヘンさん。やめる事と向いてない事は別ですよ?」
「神父様、いいんです。開業した借金もあるし材料費なんかも出せないし。これ以上菓子じゃなく借金が膨らむ前に廃業します」
クーヘンはパン屋で奉公している時、年に一度だけ「飾りパン」を作る日があり、翌日売れ残った飾りパンを嬉しそうに買っていく貧しい子供を見て、安くて美味しい菓子を作ろうと思ったという。
飾りパンを作る日は神が世に生まれた生誕祭の日。
裕福な者や貴族たちは七面鳥を焼いたり、特別なワインを開けたりでお祝いをする。日頃から贅沢な料理が並ぶ食卓もいつも以上に華やかになる。
一般の庶民はそこまでは出来ないので、パン協会がその日だけは少しお値段はするがパンに生クリームやバタークリームでドライレーズン、時に新鮮なフルーツで彩を付けた飾りパンを売り出すので買ってお祝いをする。
生クリームを使った飾りパンはバタークリームよりも高価。
売値も高価だが、材料費だっていつもの倍近くなるので、売れ残らないようにパン屋は飾りパンを作る。
人気でお洒落なパン屋は「今年の新作」として売り出すので、普通のパン屋では売れ残りが出る。
新鮮なフルーツも翌日には鮮度が落ちているし廃棄するよりはと売れ残りは半値以下で売られる。1日遅れの生誕祭を貧しい者たちが祝うのだ。
毎日菓子を食べられる人間はごく一部の限られた者だけ。
クーヘンは皆が気が向いた時に菓子が安く買えて食べられればいいなと考えて菓子店をオープンした。
店舗には金が掛けられないので、誰も住まなくなって半世紀。壊れかけの修繕費の方が新築するより高くつきそうな家を買った。
内装をこつこつと自分で直し、道路に面した部分が店舗。調理場を挟んで奥が住居である。
「クーヘンさん。廃業だなんて言わないで一時パンを焼くことに専念してみては?」
「いいんです。今更パンを焼くなんて…廃業でいいです。店は畳みます。ぐすっ。菓子は…俺の人生だったのに‥」
――あ~どうしよう。イライラする。更年期にはまだ早いのに!――
オリビアは「男なら泣くな」とは思わない。性別関係なく嬉しい時は飛び上がって喜びたいし、悲しい時や悔しい時は声を出して大泣きしたって構わないと思っている。
許せないのは完全に吹っ切れて諦めや見切りをつけた訳ではなく、未練があるのに「廃業する」「店を畳む」とグスグスするクーヘンの態度だった。
こういうのはとことんまでやり切って、それでもダメならまだ諦めもつくと言うもの。
中途半端が一番いけない。
ズルズルと後を引くし周囲だって何時までも愚痴を聞かされ辟易する。
未練たらたらのクーヘン。オリビアは我慢できなかった。
「だったら諦めてはダメ!諦めるのはまだ早いわ!」
話に加わるつもりも、お節介をするつもりもなかったのにオリビアはつい声を出してしまった。
「ふぇっ?諦めるなって…でも」
「でもじゃない!作りたいんでしょう?皆が美味しいって食べてくれるお菓子を作りたいんでしょう?」
「作りたいよ。でも…全然売れないんだ」
「どうして売れないか!ちゃんと考えたの?」
「どうして売れないかなんて、簡単だよ。誰も買わないからだよ」
「客のせいにしてはダメ!買わないには買わない理由がある。そこを突き詰めたのかと聞いてるの」
「突き詰めてどうなるんだよ。他人の心が判る訳じゃないのに」
「あ~もう!ウジウジ、グスグス駄々を捏ねる暇があったら生地でも捏ねたらどうなのよ!」
「菓子作りを何も解らない癖に!」
「解らないわよ!食べた事はあっても作った事はないもの。でもね、まだ続けたいのに神父様に愚痴る暇があったらなぜ売れないか、最初に戻って考えろって言ってるの!考えて判らないなら生地を捏ねろって事よ!」
「知った風に言うな!ならアンタがやってみればいい!どれだけ難しいか!知りもしない癖に」
「やってやるわよ!満足いく菓子になるまで作ってやるわよ!店に連れて行きなさい!」
「あぁ、いいとも!やらせてやるよ。出来ませんでしたなんて泣き言言うなよ!」
売り言葉に買い言葉。
苦笑いをする神父だったが、オリビアは口を挟んでしまった事でやったこともない菓子作りをする羽目になってしまったのだった。
クーヘンはグスグスと神父に自分の悪いところを教えてくれと言うが、そんなの神父にだって判る筈がない。
解っているのはクーヘンの作る菓子は売り物にするレベルではないということ。
素人でもここまで不味く作れる者はそうそういない。
「俺、もう菓子作りやめます。向いてなかったんです。菓子を作りたいって熱意だけじゃ意味なかったんです」
「クーヘンさん。やめる事と向いてない事は別ですよ?」
「神父様、いいんです。開業した借金もあるし材料費なんかも出せないし。これ以上菓子じゃなく借金が膨らむ前に廃業します」
クーヘンはパン屋で奉公している時、年に一度だけ「飾りパン」を作る日があり、翌日売れ残った飾りパンを嬉しそうに買っていく貧しい子供を見て、安くて美味しい菓子を作ろうと思ったという。
飾りパンを作る日は神が世に生まれた生誕祭の日。
裕福な者や貴族たちは七面鳥を焼いたり、特別なワインを開けたりでお祝いをする。日頃から贅沢な料理が並ぶ食卓もいつも以上に華やかになる。
一般の庶民はそこまでは出来ないので、パン協会がその日だけは少しお値段はするがパンに生クリームやバタークリームでドライレーズン、時に新鮮なフルーツで彩を付けた飾りパンを売り出すので買ってお祝いをする。
生クリームを使った飾りパンはバタークリームよりも高価。
売値も高価だが、材料費だっていつもの倍近くなるので、売れ残らないようにパン屋は飾りパンを作る。
人気でお洒落なパン屋は「今年の新作」として売り出すので、普通のパン屋では売れ残りが出る。
新鮮なフルーツも翌日には鮮度が落ちているし廃棄するよりはと売れ残りは半値以下で売られる。1日遅れの生誕祭を貧しい者たちが祝うのだ。
毎日菓子を食べられる人間はごく一部の限られた者だけ。
クーヘンは皆が気が向いた時に菓子が安く買えて食べられればいいなと考えて菓子店をオープンした。
店舗には金が掛けられないので、誰も住まなくなって半世紀。壊れかけの修繕費の方が新築するより高くつきそうな家を買った。
内装をこつこつと自分で直し、道路に面した部分が店舗。調理場を挟んで奥が住居である。
「クーヘンさん。廃業だなんて言わないで一時パンを焼くことに専念してみては?」
「いいんです。今更パンを焼くなんて…廃業でいいです。店は畳みます。ぐすっ。菓子は…俺の人生だったのに‥」
――あ~どうしよう。イライラする。更年期にはまだ早いのに!――
オリビアは「男なら泣くな」とは思わない。性別関係なく嬉しい時は飛び上がって喜びたいし、悲しい時や悔しい時は声を出して大泣きしたって構わないと思っている。
許せないのは完全に吹っ切れて諦めや見切りをつけた訳ではなく、未練があるのに「廃業する」「店を畳む」とグスグスするクーヘンの態度だった。
こういうのはとことんまでやり切って、それでもダメならまだ諦めもつくと言うもの。
中途半端が一番いけない。
ズルズルと後を引くし周囲だって何時までも愚痴を聞かされ辟易する。
未練たらたらのクーヘン。オリビアは我慢できなかった。
「だったら諦めてはダメ!諦めるのはまだ早いわ!」
話に加わるつもりも、お節介をするつもりもなかったのにオリビアはつい声を出してしまった。
「ふぇっ?諦めるなって…でも」
「でもじゃない!作りたいんでしょう?皆が美味しいって食べてくれるお菓子を作りたいんでしょう?」
「作りたいよ。でも…全然売れないんだ」
「どうして売れないか!ちゃんと考えたの?」
「どうして売れないかなんて、簡単だよ。誰も買わないからだよ」
「客のせいにしてはダメ!買わないには買わない理由がある。そこを突き詰めたのかと聞いてるの」
「突き詰めてどうなるんだよ。他人の心が判る訳じゃないのに」
「あ~もう!ウジウジ、グスグス駄々を捏ねる暇があったら生地でも捏ねたらどうなのよ!」
「菓子作りを何も解らない癖に!」
「解らないわよ!食べた事はあっても作った事はないもの。でもね、まだ続けたいのに神父様に愚痴る暇があったらなぜ売れないか、最初に戻って考えろって言ってるの!考えて判らないなら生地を捏ねろって事よ!」
「知った風に言うな!ならアンタがやってみればいい!どれだけ難しいか!知りもしない癖に」
「やってやるわよ!満足いく菓子になるまで作ってやるわよ!店に連れて行きなさい!」
「あぁ、いいとも!やらせてやるよ。出来ませんでしたなんて泣き言言うなよ!」
売り言葉に買い言葉。
苦笑いをする神父だったが、オリビアは口を挟んでしまった事でやったこともない菓子作りをする羽目になってしまったのだった。
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