夫に「好きな人が出来たので離縁してくれ」と言われました。

cyaru

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VOL:7  ランスロットの部下

ゴース男爵家のリリア。
とても可愛く、パッと見た目は今時の女の子だった。


『えぇー?出来ませんよぉ。こんなにいっぱい計算なんて無ぅ理ぃ~ぴえぇぇん』


目元に手をやって出ていない涙を拭うリリア。
文官たちは誰もが気の毒そうにリリアのを憐れむ。


『もう無理だ。風呂蓋に回そうぜ』
『それがいい。どうせ風呂蓋は暇だからな』
『いいよなぁ。あぅいうのを給料泥棒って言うんだぜ』
『いいんじゃないか?ピエン嬢を世話させりゃ元も取れるだろ』
『ピエン嬢もなぁ。アレでよく学園卒業出来たよなぁ』
『学園も留年4回目はもう見過ごせなかったんだろ?』
『3学年を各2回。俺なら心折れて2回目の留年で退学するぜ』


ランスロットは同僚や後輩に『風呂蓋』と影で呼ばれていたのだが、残念な事にランスロットは気が付いていなかった。


浴槽に使用する風呂の蓋だが、風呂を使う際は必要がない。
そして蓋がないからと浴槽が使えない訳ではない。
ランスロットは同僚たちから「あっても無くても問題ない奴」「書類を限界まで温めてくれて迷惑で沸騰させてくれる奴」そう言う扱いだった。

デスクの上に書類が山になる事も多々あり、床に落として慌てて踏んでしまい、書き直しにってしまう。

ランスロットは頑張るのだがその気合はいつも斜め上にあり、的を得ていないため失敗する。失敗を挽回しようとしてまた空回りし、デスクに置いたカップをひっくり返し、書類をダメにしてしまう。
二度手間、三度手間に周りが振り回される事も多く、やらかした失敗を全員が取り繕う事も多々あった。

係長には昇進したが、それも後輩がどんどん出世する中「満足させるため」だった。

『こちらでやっておきますので、後で目を通してください』と極力仕事を与えない事が一番の解決策。あとはランスロットが空気を読んで申し訳ないと辞職をし、文官を辞めてくれれば幸い。
それほどまでにランスロットはお荷物となっていたのだ。


そこに更に手間のかかりそうなリリアが配属されてきた。
配属になった理由は簡単で「コネ」である。

ある大臣の妻の妹がゴース男爵の弟と結婚をした。
学園でも「卒業証書を金で買った」と噂のあるリリアの出来は最低だった。

文官たちに茶を淹れるのは女性の仕事と限った事ではないが、リリアは見目の良い者に兎角茶を淹れてその度に盛大に転び、提出間近の書類をダメにしたり、他の部署からの書類を判読不可能な状態にした。

給湯室で洗い物をすれば、欠けるくらいならまだいい方で、粉々になる茶器が続出。洗ったと満面の笑顔で言いながら手にした洗い物には唇の跡や、底に輪を描いた珈琲の残骸。

『纏めたほうが場所を取らないと思ってぇ~』

っと茶葉も珈琲の粉も一緒の缶に入れてしまう。
ミルクなど『腐ってないか見ておきますねぇ~』っと指を突っ込んでペロリ。『薄い気がするなぁ。傷んでないと思うんだけどぉ』とその指をまた突っ込んでペロリ。

そんなミルクを平気で珈琲と共に出し『リリィの愛をふんだんに入れてくださいねっ』っと胸に手を当てて周囲をドン引きさせる。


来客に出す茶菓子も勝手に食べてしまい、注意をすれば『えぇ?皆で食べたほうが美味しいですよぉ?ねっ?』っと誰も同意を求めない返しをしてくる。


一旦雇い入れると相当な理由が無ければ辞めさせる事も出来ず、配送課は部外者に知られては困る「恥部」を2つも抱え込んでしまったのだ。

特にリリアは面倒で、強く言えば泣き出してしまい、その声はフロア中に聞こえてしまう。他の部署にお使いで書類を届けるだけなら出来るだろうと思えば『えぇっ?遠いですよぉ。足が太くなっちゃうじゃないですかぁ』と文句を言い、美丈夫揃いの騎士団への用件は他の者から書類を毟り取って届けるのだが、帰りが遅い。

昼前に頼んだのに、定時ギリギリで戻って『約束しちゃったのでぇ♡てへっ』っと笑顔を残し帰っていく。

大臣のパトロン資金源がゴース男爵家でもあり、配送課は誰もが頭を抱えた。
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