36 / 46
第36話 恐ろしい罰
レオンハルトから「食事に来い」との呼び出しにステファニーは全身がぶるぶると震え、極度の緊張からか過呼吸を起こし、ついでに痙攣まで起こした。
コレッタ伯爵夫妻は静かにステファニーの登城の準備を始めた。
★~★
天地がひっくり返るほど驚いたのは5年前だった。
突然コレッタ伯爵家に兵士を連れてやってきたレオンハルト。当時は国王ですらレオンハルトに意見することはなく実質の統治者の扱いを受けていた。
それほどまでにレオンハルトの行う施策は大当たりばかりで駄々下がりだった国力も上昇傾向になり、為替も主要取引通貨から外される寸前だったが見直しが入り、これまで通りになった。
次期国王はレオンハルト殿下だろう。誰もがそう言ったが直ぐに決まらない理由はレオンハルトが側妃腹だったこと。
自身の出自でどんな功績を挙げたとて認められない。レオンハルトは貴族の庶子にも権利を与えるとして一部の声が大きな者からも絶大な支持を取り付けた。
一番数の多い増税に苦しむ平民も「あわよくば平民の権利も認めてくれるのでは?」と大衆心理も利用し、味方につけた。
それが1夜にしてひっくり返った。
その片棒を、いや主犯級の犯罪をステファニーが行ったとしてレオンハルトが乗り込んできた。
「娘が何をしたと言うのです?」
「国家機密の情報漏洩だ。しかもありもしない事をペラペラと。嘘は時として事実よりも事実らしく広まる。だからデマは規制されているんだ。おかげで事実とはまるで無縁の噂を信じヴァローワ王国に攻め入らねばならなくなった上、王女の行方も不明。とんでもないことをしてくれたものだ」
まるっきり信じられない話ではなかった。
コレッタ伯爵夫妻もステファニーが夫人の実妹の嫁ぎ先、ボルビア侯爵家に頻繁に出向き泊まりこんでいたのは知っていたし、注意はしていたが思うがまま、気分のままに他家の事を最大限に悪く流布していたからである。
それでも「あぁ、また言ってるよ」と聞いた者が聞き流してくれていたが、腐っても母親が元公爵令嬢のステファニーが話し出せば完全無視も出来ない。力の弱い低位貴族にはステファニーの後ろには公爵家が付いているとしか思えなかったからである。
今回は本当にランベル王国軍がヴァローワ王国に向けて兵を出してしまい進軍の真っ最中。
娘可愛さに、いつもの事と放置していたのが最悪の結果になった。
「申し訳ございません。償いの術があるのなら何でも致します」
コレッタ伯爵夫妻の言葉にレオンハルトは傘下に入る事と、資金提供を約束させた。資金力のあるコレッタ伯爵家と言えど毎月家の経費も含めた収入に匹敵する額をレオンハルトの活動資金に提供するのは厳しいものがある。
夫人は「知っていて黙認していた」と罪に問われる事を恐れ、実家の公爵家からも金を融通してもらいレオンハルトに資金提供していた。
潮目が変わったのは2年を過ぎたころに国際議会から提訴をされたことだったが、もう離れられないくらいの共犯となっていた。
レオンハルトはウィルバートが私的にセレニティの捜索をしていることを知っていて、発見しても隠蔽することを考え、ステファニーをウィルバートに張り付かせていた。
が、もう用済みだ。
レオンハルトが考えていた以上にウィルバートは馬鹿な忠臣だったことが証明されたのだからステファニーの役割は終わったとほくそ笑んだ。
★~★
「嫌。嫌よ。お父様、お母様。お願い!殿下のところなんか行きたくない!!ちゃんと言われた通りにしてたのに!!どうして呼び出されるの!!ウィルはまだ帰ってないのに!嫌、嫌、嫌ーッ」
「我儘を言うな。お前のお陰で私たちがどれほど苦労をしているか!呼ばれたら行くんだよ!行くしかないんだ」
「後生です。ファニーは病気だと断ってくださいませ!!」
過呼吸が落ち着いたステファニーは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして両親に縋りついた。
恐ろしくて堪らない。5年前にレオンハルトに呼ばれた日ステファニーは「口の軽さ」を注意された。
そして罰を受けた。
罰は小ぶりの皿に盛られた料理を食べるだけ。たったそれだけだが地獄の恐怖がステファニーを襲った。
レオンハルトは椅子に座って足を組み、泣き叫び助けてくれ、やめてくれと懇願するステファニーを笑ってみているだけ。
ウィルバートが王都に戻っている時はウィルバートの屋敷に行き、捜索の状況などを聞き出すがウィルバートが出かけてしまえば屋敷の部屋に引きこもる。
あれだけ「お喋り」が大好きで生き甲斐だったのに今ではレオンハルトに聞かれた事以外、口から言葉を発することが怖くて仕方がない。
30歳を超えたステファニーだったが、結婚どころではなく友人と会うことも無くなった。
部屋の窓は閉じカーテンも引き、真っ暗な部屋の寝台でシーツに包まり、寝ていても風が窓を撫でるかすかな物音で体が反応して起きてしまう。
蚊が飛んでいるだけでパニックになり部屋の中が嵐が過ぎ去ったくらいにぐちゃぐちゃになった。
コレッタ伯爵夫妻は嫌がって暴れるステファニーを従者に命じて縄で縛りあげるとレオンハルトの元に連れて行くべく、馬車に放り込んだ。
コレッタ伯爵夫妻は静かにステファニーの登城の準備を始めた。
★~★
天地がひっくり返るほど驚いたのは5年前だった。
突然コレッタ伯爵家に兵士を連れてやってきたレオンハルト。当時は国王ですらレオンハルトに意見することはなく実質の統治者の扱いを受けていた。
それほどまでにレオンハルトの行う施策は大当たりばかりで駄々下がりだった国力も上昇傾向になり、為替も主要取引通貨から外される寸前だったが見直しが入り、これまで通りになった。
次期国王はレオンハルト殿下だろう。誰もがそう言ったが直ぐに決まらない理由はレオンハルトが側妃腹だったこと。
自身の出自でどんな功績を挙げたとて認められない。レオンハルトは貴族の庶子にも権利を与えるとして一部の声が大きな者からも絶大な支持を取り付けた。
一番数の多い増税に苦しむ平民も「あわよくば平民の権利も認めてくれるのでは?」と大衆心理も利用し、味方につけた。
それが1夜にしてひっくり返った。
その片棒を、いや主犯級の犯罪をステファニーが行ったとしてレオンハルトが乗り込んできた。
「娘が何をしたと言うのです?」
「国家機密の情報漏洩だ。しかもありもしない事をペラペラと。嘘は時として事実よりも事実らしく広まる。だからデマは規制されているんだ。おかげで事実とはまるで無縁の噂を信じヴァローワ王国に攻め入らねばならなくなった上、王女の行方も不明。とんでもないことをしてくれたものだ」
まるっきり信じられない話ではなかった。
コレッタ伯爵夫妻もステファニーが夫人の実妹の嫁ぎ先、ボルビア侯爵家に頻繁に出向き泊まりこんでいたのは知っていたし、注意はしていたが思うがまま、気分のままに他家の事を最大限に悪く流布していたからである。
それでも「あぁ、また言ってるよ」と聞いた者が聞き流してくれていたが、腐っても母親が元公爵令嬢のステファニーが話し出せば完全無視も出来ない。力の弱い低位貴族にはステファニーの後ろには公爵家が付いているとしか思えなかったからである。
今回は本当にランベル王国軍がヴァローワ王国に向けて兵を出してしまい進軍の真っ最中。
娘可愛さに、いつもの事と放置していたのが最悪の結果になった。
「申し訳ございません。償いの術があるのなら何でも致します」
コレッタ伯爵夫妻の言葉にレオンハルトは傘下に入る事と、資金提供を約束させた。資金力のあるコレッタ伯爵家と言えど毎月家の経費も含めた収入に匹敵する額をレオンハルトの活動資金に提供するのは厳しいものがある。
夫人は「知っていて黙認していた」と罪に問われる事を恐れ、実家の公爵家からも金を融通してもらいレオンハルトに資金提供していた。
潮目が変わったのは2年を過ぎたころに国際議会から提訴をされたことだったが、もう離れられないくらいの共犯となっていた。
レオンハルトはウィルバートが私的にセレニティの捜索をしていることを知っていて、発見しても隠蔽することを考え、ステファニーをウィルバートに張り付かせていた。
が、もう用済みだ。
レオンハルトが考えていた以上にウィルバートは馬鹿な忠臣だったことが証明されたのだからステファニーの役割は終わったとほくそ笑んだ。
★~★
「嫌。嫌よ。お父様、お母様。お願い!殿下のところなんか行きたくない!!ちゃんと言われた通りにしてたのに!!どうして呼び出されるの!!ウィルはまだ帰ってないのに!嫌、嫌、嫌ーッ」
「我儘を言うな。お前のお陰で私たちがどれほど苦労をしているか!呼ばれたら行くんだよ!行くしかないんだ」
「後生です。ファニーは病気だと断ってくださいませ!!」
過呼吸が落ち着いたステファニーは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして両親に縋りついた。
恐ろしくて堪らない。5年前にレオンハルトに呼ばれた日ステファニーは「口の軽さ」を注意された。
そして罰を受けた。
罰は小ぶりの皿に盛られた料理を食べるだけ。たったそれだけだが地獄の恐怖がステファニーを襲った。
レオンハルトは椅子に座って足を組み、泣き叫び助けてくれ、やめてくれと懇願するステファニーを笑ってみているだけ。
ウィルバートが王都に戻っている時はウィルバートの屋敷に行き、捜索の状況などを聞き出すがウィルバートが出かけてしまえば屋敷の部屋に引きこもる。
あれだけ「お喋り」が大好きで生き甲斐だったのに今ではレオンハルトに聞かれた事以外、口から言葉を発することが怖くて仕方がない。
30歳を超えたステファニーだったが、結婚どころではなく友人と会うことも無くなった。
部屋の窓は閉じカーテンも引き、真っ暗な部屋の寝台でシーツに包まり、寝ていても風が窓を撫でるかすかな物音で体が反応して起きてしまう。
蚊が飛んでいるだけでパニックになり部屋の中が嵐が過ぎ去ったくらいにぐちゃぐちゃになった。
コレッタ伯爵夫妻は嫌がって暴れるステファニーを従者に命じて縄で縛りあげるとレオンハルトの元に連れて行くべく、馬車に放り込んだ。
あなたにおすすめの小説
次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛
Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。
全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)
【完結】お荷物王女は婚約解消を願う
miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。
それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。
アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。
今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。
だが、彼女はある日聞いてしまう。
「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。
───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。
それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。
そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。
※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。
※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。
【完結】どうか私を思い出さないで
miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。
一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。
ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。
コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。
「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」
それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。
「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」
【完結】私の婚約者はもう死んだので
miniko
恋愛
「私の事は死んだものと思ってくれ」
結婚式が約一ヵ月後に迫った、ある日の事。
そう書き置きを残して、幼い頃からの婚約者は私の前から姿を消した。
彼の弟の婚約者を連れて・・・・・・。
これは、身勝手な駆け落ちに振り回されて婚姻を結ばざるを得なかった男女が、すれ違いながらも心を繋いでいく物語。
※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしていません。本編より先に読む場合はご注意下さい。
おしどり夫婦の茶番
Rj
恋愛
夫がまた口紅をつけて帰ってきた。お互い初恋の相手でおしどり夫婦として知られるナタリアとブライアン。
おしどり夫婦にも人にはいえない事情がある。
一話完結。『一番でなくとも』に登場したナタリアの話です。未読でも問題なく読んでいただけます。
【完結】愛していないと王子が言った
miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。
「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」
ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。
※合わない場合はそっ閉じお願いします。
※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。
そう言うと思ってた
mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。
※いつものように視点がバラバラします。