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第04話 自慢は湯殿
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「こっちの寝台を使ってね。残りの荷物は勝手に持って行かないように言ってるから」
「ですが、この荷はリヴァイヴァール様のものですよね。ご業務で使われるのでは?」
「いいの、いいの。って・・・ステラさんって言葉使い‥変わってるのね」
「そうでしょうか?変でしょうか?」
「なんていうか・・・貴族みたい。って、ウチも一応貴族なんだけどー」
ビッケは13歳という事もあって、「お姉さんが出来たみたいで嬉しい!」とステラにグイグイと来る。
片付け屋の仕事をしていて、自宅と店舗が一緒になっている事もあって従業員や客と幼い頃から接しているのでビクビクしていても仕方がないとある日気が付いたのだと笑いながら語った。
「ウチはね、こんな仕事をしてるから湯殿だけは自慢できるの」
「先程見せて頂きましたが3つあるのですね」
「そう。1つ目で大まかに汗と汚れを流して、2つ目でしっかり洗う。3つ目はもう寛ぐだけ!足も伸ばせるし・・・(こそっ)父さんには内緒だけど泳げるの」
その理由は簡単。
ゴミ屋敷や廃屋の片付けが仕事でがメイン。
そう言う場には虫がいる。
布があればヒメカツオブシムシやイガ。
紙があればシバンムシやチャタテムシ。
それらは害がない訳ではないが、この虫がいればもっと迷惑な虫が漏れなく付いてくる。
ダニと虱。
こちらは質が悪いので皮膚炎を始めとして色んな病気の元になる上に、あっという間に広がってしまう。
そのまま自宅に帰ってしまうと服や髪についたダニや虱は家族に、そして近所に、最悪町全体に広がってしまう。せめて発生源がトレサリー子爵家、そしてその商会からとならないよう従業員は仕事終わりに全員湯を浴びて帰宅する。
服も支給されているので、1つ目の湯殿に入る前に不潔リネンに来ていた作業服を入れ、3つ目を出た後は清潔リネンに置かれている自分の服を着る。
纏めて熱湯や薬剤で洗うので支給される作業服も均一で清潔な状態が保たれるという訳だ。
そうするのも各家庭で洗うほうが手間が掛かるからである。
片づけの場は決して清潔ではない。何時のものか解らない腐敗した液体が付着する事もあるし、粉の時もある。付着したモノによって使用する洗剤が違うので開発の意味も含めてトレサリー家で洗っているのである。
「えへへ。やってみたかったんだぁ」
ビッケは2着の寝間着を引っ張り出すと寝台の上に広げた。
「双子コーデとかホントは外でしたいんだけど・・・先ずは!家の中から!いいでしょ?だめ?」
良いか悪いは別にしてフードも付いた寝間着はキリン柄。ビッケの机や寝台周りは動物のぬいぐるみなどが沢山置かれていて「可愛いもの好き」なのだという事は解る。
しかしステラはこの手の寝間着は着た事が無い。
「キリンが好きじゃない?じゃぁウサギにする?」
(そういう問題では)と思うが、目をキラキラさせて「お願い♡」と言われてあっさり断るのも気の毒な気がして1晩だけのつもりで了承してしまった。
「やったぁ!湯殿でも一緒に泳ごう!!」
「泳ぎは・・・練習してきませんでしたので上手くできるかは判りませんわ」
「大丈夫よぅ!深さも無いし!教えてあげる!」
そう言われて湯殿に連れられてきてしまったが、ステラは重要な事を忘れていた。
「あの・・・やはり湯殿は1人で・・・」
「え?どうして?広いから2人でも大丈夫だよ?15人まで一緒に湯を浴びる事が出来るよ?」
「実は髪を染めているのです。染料が流れてしまうのでご迷惑になるかと」
「染めてるの?ソマリ草で?こんな綺麗な髪なのに・・・勿体ないなぁ」
「なのでご一緒する訳には――」
「大丈夫、大丈夫!従業員のおばちゃんも白髪染してるから!」
(そういう問題では)と思うが、目をキラキラさせてまたも「お願い♡」と言われてしまうと断るのも気の毒な気がして了承してしまった。
「わぁ!綺麗な銀髪!染めるの勿体ないよ!髪、傷んじゃうでしょう?」
「そうなのですが・・・仕方なく?」
「仕方なくって・・・えっ?!ステラさん、瞳も綺麗っていうかなんでこんなに美人なのにあんな野暮ったいメイクしてるの?メガネもダサダサの瓶底だし」
ソマリ草は水溶性なので洗えば流れ落ちてしまう。
湯殿に入る前と出た後、ステラはまるでビフォーアフター。別人になってしまった。
「見て!父さん!ステラさん、めっちゃ美人さんなんだよ!おっぱ(うぐっ!)」
「ビッケ様、それは禁句、他言無用ですわ」
ステラはビッケの口を塞ぐ。
子爵のハンドレーはステラを見てハッとした。ステラはそっと自分の唇に人差し指をあて「秘密」と呟くとハンドレーはコクコクと何度も頷く。
リヴァイヴァールはポカンと口を開けたまま硬直し、ビッケが「おーい!戻ってこーい!」耳元で叫ぶも微動だにしなかった。
「ですが、この荷はリヴァイヴァール様のものですよね。ご業務で使われるのでは?」
「いいの、いいの。って・・・ステラさんって言葉使い‥変わってるのね」
「そうでしょうか?変でしょうか?」
「なんていうか・・・貴族みたい。って、ウチも一応貴族なんだけどー」
ビッケは13歳という事もあって、「お姉さんが出来たみたいで嬉しい!」とステラにグイグイと来る。
片付け屋の仕事をしていて、自宅と店舗が一緒になっている事もあって従業員や客と幼い頃から接しているのでビクビクしていても仕方がないとある日気が付いたのだと笑いながら語った。
「ウチはね、こんな仕事をしてるから湯殿だけは自慢できるの」
「先程見せて頂きましたが3つあるのですね」
「そう。1つ目で大まかに汗と汚れを流して、2つ目でしっかり洗う。3つ目はもう寛ぐだけ!足も伸ばせるし・・・(こそっ)父さんには内緒だけど泳げるの」
その理由は簡単。
ゴミ屋敷や廃屋の片付けが仕事でがメイン。
そう言う場には虫がいる。
布があればヒメカツオブシムシやイガ。
紙があればシバンムシやチャタテムシ。
それらは害がない訳ではないが、この虫がいればもっと迷惑な虫が漏れなく付いてくる。
ダニと虱。
こちらは質が悪いので皮膚炎を始めとして色んな病気の元になる上に、あっという間に広がってしまう。
そのまま自宅に帰ってしまうと服や髪についたダニや虱は家族に、そして近所に、最悪町全体に広がってしまう。せめて発生源がトレサリー子爵家、そしてその商会からとならないよう従業員は仕事終わりに全員湯を浴びて帰宅する。
服も支給されているので、1つ目の湯殿に入る前に不潔リネンに来ていた作業服を入れ、3つ目を出た後は清潔リネンに置かれている自分の服を着る。
纏めて熱湯や薬剤で洗うので支給される作業服も均一で清潔な状態が保たれるという訳だ。
そうするのも各家庭で洗うほうが手間が掛かるからである。
片づけの場は決して清潔ではない。何時のものか解らない腐敗した液体が付着する事もあるし、粉の時もある。付着したモノによって使用する洗剤が違うので開発の意味も含めてトレサリー家で洗っているのである。
「えへへ。やってみたかったんだぁ」
ビッケは2着の寝間着を引っ張り出すと寝台の上に広げた。
「双子コーデとかホントは外でしたいんだけど・・・先ずは!家の中から!いいでしょ?だめ?」
良いか悪いは別にしてフードも付いた寝間着はキリン柄。ビッケの机や寝台周りは動物のぬいぐるみなどが沢山置かれていて「可愛いもの好き」なのだという事は解る。
しかしステラはこの手の寝間着は着た事が無い。
「キリンが好きじゃない?じゃぁウサギにする?」
(そういう問題では)と思うが、目をキラキラさせて「お願い♡」と言われてあっさり断るのも気の毒な気がして1晩だけのつもりで了承してしまった。
「やったぁ!湯殿でも一緒に泳ごう!!」
「泳ぎは・・・練習してきませんでしたので上手くできるかは判りませんわ」
「大丈夫よぅ!深さも無いし!教えてあげる!」
そう言われて湯殿に連れられてきてしまったが、ステラは重要な事を忘れていた。
「あの・・・やはり湯殿は1人で・・・」
「え?どうして?広いから2人でも大丈夫だよ?15人まで一緒に湯を浴びる事が出来るよ?」
「実は髪を染めているのです。染料が流れてしまうのでご迷惑になるかと」
「染めてるの?ソマリ草で?こんな綺麗な髪なのに・・・勿体ないなぁ」
「なのでご一緒する訳には――」
「大丈夫、大丈夫!従業員のおばちゃんも白髪染してるから!」
(そういう問題では)と思うが、目をキラキラさせてまたも「お願い♡」と言われてしまうと断るのも気の毒な気がして了承してしまった。
「わぁ!綺麗な銀髪!染めるの勿体ないよ!髪、傷んじゃうでしょう?」
「そうなのですが・・・仕方なく?」
「仕方なくって・・・えっ?!ステラさん、瞳も綺麗っていうかなんでこんなに美人なのにあんな野暮ったいメイクしてるの?メガネもダサダサの瓶底だし」
ソマリ草は水溶性なので洗えば流れ落ちてしまう。
湯殿に入る前と出た後、ステラはまるでビフォーアフター。別人になってしまった。
「見て!父さん!ステラさん、めっちゃ美人さんなんだよ!おっぱ(うぐっ!)」
「ビッケ様、それは禁句、他言無用ですわ」
ステラはビッケの口を塞ぐ。
子爵のハンドレーはステラを見てハッとした。ステラはそっと自分の唇に人差し指をあて「秘密」と呟くとハンドレーはコクコクと何度も頷く。
リヴァイヴァールはポカンと口を開けたまま硬直し、ビッケが「おーい!戻ってこーい!」耳元で叫ぶも微動だにしなかった。
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