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VOL:4 最低な元恋人
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帰り道に夕食の食材を買い物する気にもなれず、ただ歩いていると突然腕を掴まれ路地に引っ張り込まれた。声をあげようとしたが、手で口を塞がれてしまった。
「俺だよ!フランっ!!」
フランソワールを路地に引き込んだのはアルベール。アルベールの顔を見た時、フランソワールはアルベールに対し嫌悪と侮蔑と言う感情しか持たなかった。
口を塞ぐ手すら気持ちがわるくて、なんなら汚物、吐瀉物の方が綺麗に思える。
「なんなの。いきなり」
睨みつけるフランソワールをアルベールは抱きしめてきた。
フランソワールはアルベールの胸に手をついて拒否した。
「やめてよ!気持ち悪い!」
「フラン。すまない…クリスの事は遊びのつもりだったんだ」
「遊びって何?そんな質の悪い遊び、聞いた事がないわ!」
「怒るなよ。話を聞いてくれよ!!」
アルベールはフランソワールの両肩を掴んで、頭を胸元に項垂れながらもたれかかってきた。
クリステルが妊娠をしているのは本当の事だが、生まれてみるまでは自分の子供かどうか判らない。アルベールの言葉にフランソワールは正気を疑った。
関係がないからではなく、関係は当然のようにあり回数は両手の数以上。
そんな事をカミングアウトされても気持ち悪さしか感じない。
何より「自分の子供じゃないかも知れない」という根拠はクリステルが処女じゃなかったという、理由にもならない言い訳だった。
都合のいい言葉に怒りしか覚えないが、関わり合いにもなりたくない。
「心配しないで。私達の関係は皆に公表するのはやめようって言ってたし、これからもそうするわ」
「それは違う!酷い勘違いだ。俺はただ狭い部署だし揶揄われるのもフランが嫌だろうと考えただけだ」
「あっそう。でも結果オーライね?良かったじゃない」
「怒るなよ。な?フラン。俺が一番に愛しているのはフランだけだ」
「は?もうすぐ父親にもなるのに何を言ってるの?」
「だから!あれは失敗しただけなんだって。あんな子供相手にしたって面白くも気持ちよくもない。フラン相手の時は失敗はしなかっただろう?それだけ俺はフランの体の事を気遣っていたんだ」
抱きしめようとするアルベールに手を突っ張って拒否を示す。
一歩下がったフランソワールは抱えていたショルダーバッグの紐を肩にかけ直した。
「気遣い?ならその気遣いは今後は全て!クリステルにしてあげて。金輪際私に関わらなくて結構よ」
強い口調で言い放ち、その場から立ち去ろうとするがアルベールは肩を掴んで食い下がった。
「だから怒るなって!今まで通り関係を続けよう?な?」
「どういう意味?」
「ほら、公表しなくたって俺たち仲良くやって来ただろ?週に何回かは会えるしフランだって寂しいだろ?」
ぱちん!!フランソワールの手のひらがジンジン痛む。
アルベールは頬を押さえて、「痛いなぁ」ヘラヘラと笑いを浮かべた。
「寂しくなんかないわ。そうだとしても大きなお世話よ」
「強がるなって。な?俺たち体の相性は抜群だったじゃないか」
「最っ低!」
今度こそアルベールを振り切りフランソワールは路地から飛び出た。
追いかけて来るアルベールを振り切るために女性専用の小物専門店の扉を開けた。
余りにも勢いよく開けたため、中にいた店員も客も全員がフランソワールを見た。
フランソワールはその目に「侮蔑」や「蔑視」が混じっていない事に安堵して、その場にしゃがみ込んでしまった。
店には迷惑だっただろうが、それだけ周りの視線にフランソワールの精神はもう限界を突破していた。
「どうしたの?」
品の良い女性客がフランソワールに話しかけた。
同時に女性店員がドアの向こうに視線を移した。アルベールが店内の様子を伺っている事に気が付くと他の店員に目配せをする。
「お客様、立てますか?こちらへどうぞ」
「も、申し訳…御座いません…ご迷惑を…」
ホッとしたのもあるだろう。フランソワールは足がガクガクして一人では歩けなかった。
「いいんですよ。よく当店を選んで頂きました。さぁこちらへ」
よくある事ではないが、月に1、2回フランソワールのように店に逃げ込む女性がいるのだと店員は言った。女性用の小物ばかりなので男性客が来店する事あっても、女性の同伴程度。
男性が単独でやって来る事は先ずないので、追いかけられたりした女性が飛び込んで来るのだと言う。
「直ぐに出ちゃダメ。様子を伺ってからよ」
店員たちが休憩する部屋で、何も言わずにただフランソワールを休ませてくれた。
その翌日、フランソワールは朝一番に課長のデスクに向かい、胸ポケットに入れた退職願を出した。予想した通り「何もかも放って逃げるのは女の特権だな」と課長はフランソワールに向かって言葉を吐き捨てた。
「石の上にも3年と申しますが倍以上の8年。貴方のモラハラにはうんざりです」
「なっ!なにを!」
「女だから何ですか?あ、貴方ってそこまで蔑む女性から生まれたのではないって事ですか?」
「ぐっ・・・」
日頃から課長の物言いには何か思っている事も多いのだろう。
背後からいつもとは対象を違えた失笑が漏れ聞こえるがそんなものはフランソワールの援護にもならない。
「兎に角!(ばんっ!)退職願の処理を速やかにお願いします」
課長のデスクに置いた退職届を音を立て叩く。
振り向けば同僚が顔を背けるが、フランソワールは目もくれず総務課に向かい、有給が1カ月以上ある事を確認するとその場で有給申請した。
「うーん!気持ちいい!」
手続きを終えてフランソワールは玄関を出たすぐ先で手を大きく上げて背伸びをした。
これからの事に不安がないわけではない。
でも、肩の荷が下りる、足枷が外れるとはこんな気持ちになる事かも知れない。
そう思うと、やっと胸いっぱいに息を吸い込む事が出来た。
「よし!今夜は飲みに行こう!!」
酒は強い方ではないし、一人で酒場いや、食事の場に行くのも何年ぶりだろう。
そこでこの先の未来、フランソワールの人生を大きく変える出会いがあるとはこの時、考えても見なかった。
「俺だよ!フランっ!!」
フランソワールを路地に引き込んだのはアルベール。アルベールの顔を見た時、フランソワールはアルベールに対し嫌悪と侮蔑と言う感情しか持たなかった。
口を塞ぐ手すら気持ちがわるくて、なんなら汚物、吐瀉物の方が綺麗に思える。
「なんなの。いきなり」
睨みつけるフランソワールをアルベールは抱きしめてきた。
フランソワールはアルベールの胸に手をついて拒否した。
「やめてよ!気持ち悪い!」
「フラン。すまない…クリスの事は遊びのつもりだったんだ」
「遊びって何?そんな質の悪い遊び、聞いた事がないわ!」
「怒るなよ。話を聞いてくれよ!!」
アルベールはフランソワールの両肩を掴んで、頭を胸元に項垂れながらもたれかかってきた。
クリステルが妊娠をしているのは本当の事だが、生まれてみるまでは自分の子供かどうか判らない。アルベールの言葉にフランソワールは正気を疑った。
関係がないからではなく、関係は当然のようにあり回数は両手の数以上。
そんな事をカミングアウトされても気持ち悪さしか感じない。
何より「自分の子供じゃないかも知れない」という根拠はクリステルが処女じゃなかったという、理由にもならない言い訳だった。
都合のいい言葉に怒りしか覚えないが、関わり合いにもなりたくない。
「心配しないで。私達の関係は皆に公表するのはやめようって言ってたし、これからもそうするわ」
「それは違う!酷い勘違いだ。俺はただ狭い部署だし揶揄われるのもフランが嫌だろうと考えただけだ」
「あっそう。でも結果オーライね?良かったじゃない」
「怒るなよ。な?フラン。俺が一番に愛しているのはフランだけだ」
「は?もうすぐ父親にもなるのに何を言ってるの?」
「だから!あれは失敗しただけなんだって。あんな子供相手にしたって面白くも気持ちよくもない。フラン相手の時は失敗はしなかっただろう?それだけ俺はフランの体の事を気遣っていたんだ」
抱きしめようとするアルベールに手を突っ張って拒否を示す。
一歩下がったフランソワールは抱えていたショルダーバッグの紐を肩にかけ直した。
「気遣い?ならその気遣いは今後は全て!クリステルにしてあげて。金輪際私に関わらなくて結構よ」
強い口調で言い放ち、その場から立ち去ろうとするがアルベールは肩を掴んで食い下がった。
「だから怒るなって!今まで通り関係を続けよう?な?」
「どういう意味?」
「ほら、公表しなくたって俺たち仲良くやって来ただろ?週に何回かは会えるしフランだって寂しいだろ?」
ぱちん!!フランソワールの手のひらがジンジン痛む。
アルベールは頬を押さえて、「痛いなぁ」ヘラヘラと笑いを浮かべた。
「寂しくなんかないわ。そうだとしても大きなお世話よ」
「強がるなって。な?俺たち体の相性は抜群だったじゃないか」
「最っ低!」
今度こそアルベールを振り切りフランソワールは路地から飛び出た。
追いかけて来るアルベールを振り切るために女性専用の小物専門店の扉を開けた。
余りにも勢いよく開けたため、中にいた店員も客も全員がフランソワールを見た。
フランソワールはその目に「侮蔑」や「蔑視」が混じっていない事に安堵して、その場にしゃがみ込んでしまった。
店には迷惑だっただろうが、それだけ周りの視線にフランソワールの精神はもう限界を突破していた。
「どうしたの?」
品の良い女性客がフランソワールに話しかけた。
同時に女性店員がドアの向こうに視線を移した。アルベールが店内の様子を伺っている事に気が付くと他の店員に目配せをする。
「お客様、立てますか?こちらへどうぞ」
「も、申し訳…御座いません…ご迷惑を…」
ホッとしたのもあるだろう。フランソワールは足がガクガクして一人では歩けなかった。
「いいんですよ。よく当店を選んで頂きました。さぁこちらへ」
よくある事ではないが、月に1、2回フランソワールのように店に逃げ込む女性がいるのだと店員は言った。女性用の小物ばかりなので男性客が来店する事あっても、女性の同伴程度。
男性が単独でやって来る事は先ずないので、追いかけられたりした女性が飛び込んで来るのだと言う。
「直ぐに出ちゃダメ。様子を伺ってからよ」
店員たちが休憩する部屋で、何も言わずにただフランソワールを休ませてくれた。
その翌日、フランソワールは朝一番に課長のデスクに向かい、胸ポケットに入れた退職願を出した。予想した通り「何もかも放って逃げるのは女の特権だな」と課長はフランソワールに向かって言葉を吐き捨てた。
「石の上にも3年と申しますが倍以上の8年。貴方のモラハラにはうんざりです」
「なっ!なにを!」
「女だから何ですか?あ、貴方ってそこまで蔑む女性から生まれたのではないって事ですか?」
「ぐっ・・・」
日頃から課長の物言いには何か思っている事も多いのだろう。
背後からいつもとは対象を違えた失笑が漏れ聞こえるがそんなものはフランソワールの援護にもならない。
「兎に角!(ばんっ!)退職願の処理を速やかにお願いします」
課長のデスクに置いた退職届を音を立て叩く。
振り向けば同僚が顔を背けるが、フランソワールは目もくれず総務課に向かい、有給が1カ月以上ある事を確認するとその場で有給申請した。
「うーん!気持ちいい!」
手続きを終えてフランソワールは玄関を出たすぐ先で手を大きく上げて背伸びをした。
これからの事に不安がないわけではない。
でも、肩の荷が下りる、足枷が外れるとはこんな気持ちになる事かも知れない。
そう思うと、やっと胸いっぱいに息を吸い込む事が出来た。
「よし!今夜は飲みに行こう!!」
酒は強い方ではないし、一人で酒場いや、食事の場に行くのも何年ぶりだろう。
そこでこの先の未来、フランソワールの人生を大きく変える出会いがあるとはこの時、考えても見なかった。
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