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VOL:9 大騒ぎの人事課
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フランソワールが課長に退職願を叩きつけてたった2日。
そう、たった2日しか経っていないのに人事課は大変な騒ぎになっていた。
嫌がらせでフランソワールの両隣は書類を傾けて崩れさせた。その書類の幾つかが机と机の間にストンと落ちた事にも気が付かない。
フランソワールが退職願を出してそのまま総務に行き、戻らない事をいい事にそれまで自身のデスクを占領していた書類の山をフランソワールが使っていたデスクに山積みにした。
問題が起きていなかった頃はフランソワールが同僚に「もうすぐ締め切りじゃない?まだなら手伝いますよ」と声を掛けてくれていたのだが、フランソワールを虐めだしてからはフランソワールが何か言葉を発しても聞こえないふりをして完全にいない者として扱っていた。
そして、期限の来た書類を取りに各所の担当がやってきた。
全く手つかずで依頼された時の「依頼書」のままである案件が7つ。
そのうち2つは今日の会議で審議される内容であり、王宮で働く者達の給与にも関係する書類だった。
「何をしてるんだ。早く渡すんだ」
課長のゲキが飛ぶが、人事課の担当は探すふりしか出来ない。
見つけた所で何もしてないのだから見つかってしまうと不味いのだ。
「早くしてくださいよ。会議が始まってしまう」
「そうだ!その担当はコバルさんですよ!!」
責任をフランソワールに押し付けようとしたが、他の部署から書類を取りに来た担当官に一蹴される。
「担当の変更なんてこっちは聞いてませんよ?」
「あ、あの、多分連絡ミスだったと思うんです」
担当官は呆れた表情で言い放った。
「連絡ミス?それはあり得ないでしょう。今まで何件かコバル女史とは仕事をしましたが、彼女に引継ぎがされていればこちらが問わずとも毎日!最低でも午前と午後に彼女は進捗や疑問点をこちらに直接連絡をくれていましたからね。彼女だったらこっちから今日の会議に使うとこうやって来なくても2、3日前には持って来てくれてすり合わせも終わっていますから」
そして、最初から見えていたのだろう。「デスクの下。探しましたか?」と指をさした。
チラリと人事課の職員がデスクの下に目をやると椅子との隙間に書類が丸見え。
表紙の色がイエローなのでよく目立っていた。
拾い上げた書類をひったくるように手に取った担当官は全く手を付けていないどころか、捲った形跡もない事に書類をバンッ!!デスクに叩きつけた。
体が跳ねた課長が慌ててその場に駆け寄ってきたが担当官は取り付く島もない。
「どういう事か。今更説明をされても会議に間に合いません」
「急いでっ!急いで取り掛かります!会議を2時間、いや1時間でいいので遅らせてくれませんか!」
「会議を遅らせる?御前会議だと判っていての言葉なら相応の覚悟があると見えるな」
「ごっ御前会議?!」
「書類を依頼する時に言っておいたはずだが?まぁ1時間なら他の議題を先に済ませよう。きっかり1時間だ」
担当官は課長にそう言うとその場から去ったのだが、一安心などしていられない。皇帝プリーストが出席する会議に何としても間に合わせねばならない。
人事課の全員がその書類に取り掛かって30分。
時計の秒針のコチコチ音ですら命を削っている音に聞こえる。
「課長!」
「なんだ。この忙しい時に!」
「翻訳が必要です。ポトガル語をジャルマニ語に翻訳です。任せていいですか」
「バカか!俺が読めるはずが無いだろう!」
「読むんじゃなく、書くんです。僕、ポトガル語は読めますけどジャルマニ語は読み書き出来ませんから」
「なら今まで誰がそれをやってたんだ?!誰かがやらないと終わってないだろう!」
「フランソワールさんがやってくれてました。彼女7か国語行けたんで」
慌てて他の課に応援を頼んだのだが、「読み書き出来ても無理」鰾膠もなく断られた。
読めたとしても書けるはずはないものがある。書類とはややこしいもので一般の手紙なら問題ない文字でも「ビジネス用語」となれば話が違う。
商品の取扱説明書ですら他国の用語で書けば1件当たり依頼料は数百万、時に1千万を超える。国の公文書となれば取扱説明書の比ではない。
手詰まりかと思えたその時、人事課に救世主が現れた。
そう、たった2日しか経っていないのに人事課は大変な騒ぎになっていた。
嫌がらせでフランソワールの両隣は書類を傾けて崩れさせた。その書類の幾つかが机と机の間にストンと落ちた事にも気が付かない。
フランソワールが退職願を出してそのまま総務に行き、戻らない事をいい事にそれまで自身のデスクを占領していた書類の山をフランソワールが使っていたデスクに山積みにした。
問題が起きていなかった頃はフランソワールが同僚に「もうすぐ締め切りじゃない?まだなら手伝いますよ」と声を掛けてくれていたのだが、フランソワールを虐めだしてからはフランソワールが何か言葉を発しても聞こえないふりをして完全にいない者として扱っていた。
そして、期限の来た書類を取りに各所の担当がやってきた。
全く手つかずで依頼された時の「依頼書」のままである案件が7つ。
そのうち2つは今日の会議で審議される内容であり、王宮で働く者達の給与にも関係する書類だった。
「何をしてるんだ。早く渡すんだ」
課長のゲキが飛ぶが、人事課の担当は探すふりしか出来ない。
見つけた所で何もしてないのだから見つかってしまうと不味いのだ。
「早くしてくださいよ。会議が始まってしまう」
「そうだ!その担当はコバルさんですよ!!」
責任をフランソワールに押し付けようとしたが、他の部署から書類を取りに来た担当官に一蹴される。
「担当の変更なんてこっちは聞いてませんよ?」
「あ、あの、多分連絡ミスだったと思うんです」
担当官は呆れた表情で言い放った。
「連絡ミス?それはあり得ないでしょう。今まで何件かコバル女史とは仕事をしましたが、彼女に引継ぎがされていればこちらが問わずとも毎日!最低でも午前と午後に彼女は進捗や疑問点をこちらに直接連絡をくれていましたからね。彼女だったらこっちから今日の会議に使うとこうやって来なくても2、3日前には持って来てくれてすり合わせも終わっていますから」
そして、最初から見えていたのだろう。「デスクの下。探しましたか?」と指をさした。
チラリと人事課の職員がデスクの下に目をやると椅子との隙間に書類が丸見え。
表紙の色がイエローなのでよく目立っていた。
拾い上げた書類をひったくるように手に取った担当官は全く手を付けていないどころか、捲った形跡もない事に書類をバンッ!!デスクに叩きつけた。
体が跳ねた課長が慌ててその場に駆け寄ってきたが担当官は取り付く島もない。
「どういう事か。今更説明をされても会議に間に合いません」
「急いでっ!急いで取り掛かります!会議を2時間、いや1時間でいいので遅らせてくれませんか!」
「会議を遅らせる?御前会議だと判っていての言葉なら相応の覚悟があると見えるな」
「ごっ御前会議?!」
「書類を依頼する時に言っておいたはずだが?まぁ1時間なら他の議題を先に済ませよう。きっかり1時間だ」
担当官は課長にそう言うとその場から去ったのだが、一安心などしていられない。皇帝プリーストが出席する会議に何としても間に合わせねばならない。
人事課の全員がその書類に取り掛かって30分。
時計の秒針のコチコチ音ですら命を削っている音に聞こえる。
「課長!」
「なんだ。この忙しい時に!」
「翻訳が必要です。ポトガル語をジャルマニ語に翻訳です。任せていいですか」
「バカか!俺が読めるはずが無いだろう!」
「読むんじゃなく、書くんです。僕、ポトガル語は読めますけどジャルマニ語は読み書き出来ませんから」
「なら今まで誰がそれをやってたんだ?!誰かがやらないと終わってないだろう!」
「フランソワールさんがやってくれてました。彼女7か国語行けたんで」
慌てて他の課に応援を頼んだのだが、「読み書き出来ても無理」鰾膠もなく断られた。
読めたとしても書けるはずはないものがある。書類とはややこしいもので一般の手紙なら問題ない文字でも「ビジネス用語」となれば話が違う。
商品の取扱説明書ですら他国の用語で書けば1件当たり依頼料は数百万、時に1千万を超える。国の公文書となれば取扱説明書の比ではない。
手詰まりかと思えたその時、人事課に救世主が現れた。
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