恋人を寝取られ、仕事も辞めて酔い潰れたら契約結婚する事になりました。

cyaru

文字の大きさ
10 / 21

VOL:10 救世主?

しおりを挟む
「こんにちは~。お菓子の差し入れですぅ♡」


クリステルだった。
妊婦健診に行った帰りに立ち寄ったと言うクリステルは近くにいた女性職員にいつものように「産院で赤ちゃんの心音を聞いたんですよぉ~」っと話し始めた。

が、人事課の全員が世間話をしている場合ではない。

翻訳をして書類をさらに別の国の言語にしなければならない職員はクリステルの元に駆け寄った。クリステルは3日と空けず人事課にやって来ては世間話のついでに「いかに自分がフランソワールの仕事を片付けていたか」を語っていた。


それは聞く者にとって、仕事をしていたのはクリステルで、フランソワールは手柄だけを取って行ったとばかりに。

少なくともこのテの書類は職員が知っているだけで10件以上フランソワールに頼んだ記憶がある。勿論クリステルが配属されてフランソワールがクリステルの指導係になってからの回数。

そつなく仕上げてくれて今まで何の問題も起きなかった。
むしろ「これからも君に頼むよ」とご指名を頂いたほどに。


「クリステルさん。お願いです。これをやってくれませんか。プリースト様が来られるんです。急ぎの中の急ぎなんですよ」


きょとんとするクリステル。同僚は焦った。


「時間あるんでいいですよぉ?でも貸し1つですからね?」


簡単に引き受けてくれた。
その言葉に人事課の一同は「やったぁ!」と雄叫びをあげ、手を叩いて喜んだ。

クリステルが引き受けてくれなかったら職員は課長に飛び掛かる所だった。
何度も課長には言ったのだ。フランソワールが病気で長期休暇となれば大変な事になるので語学に長けたものを採用してくれと。だが、問題なく仕事が片付いていた事もあって課長は人を増やす事はしてくれなかった。


「産休が明けたらいつでも復帰してくれ。クリステル君ならいつでも採用するよ」
「わぁ♡いいんですかぁ?やったぁ!課長大好きですぅ~」


同僚たちはクリステルが育児がひと段落すれば戻って来る事が確定した事に、その間だけなんとか乗り切れるよう試験採用「のみ」の枠を広げればいいだけだと安堵した。

何よりこの場が何とか凌げる!それだけでも無上の喜びだ。

クリステルが最難関の部分を仕上げてくれるのだ。人事課一同は俄然やる気が出て「いざ!」残り時間をフル活用すべくペンを握った。


その時である。

クリステルの言葉に喜んだのはほんの束の間。書類を手渡されたクリステルの言葉にその場にいた者は生きている事に後悔することになった。


「あのぉ…この記号をどうすればいいんですかぁ?えぇっとそのプリン?が来るのを待ってるって事ですかぁ」


まさか、まさか。クリステルは書類に書かれた他国の文字を「記号」と言った?
それよりも恐ろしいのは自国の皇帝の名を知らない?

握ったペンが書類の上にコトンと落ちた。
恐る恐る一人の職員がクリステルに問うた。


「記号じゃないでしょ?いつもやってた仕事ですよね?」


誰もが「そうよ!と言ってくれ」心で手を組んで祈りを捧げた。


「してないですけど?っていうか。こんなの初めて見ましたよぉ」
「初めてって言うか…そもそもで…聞いていいですか?」
「何でも聞いてくださいっ!」
「今の皇帝陛下…知ってますよね?」
「やだぁ♡知ってるに決まってるじゃないですかぁ!あの肖像画の人っ♡名前はえぇーっと…何でしたっけ?えへへ♡」


クリステルが軽く握った手で、自身の頭にこつんと当てて小さく舌を出す。

「何を手伝うんでしたっけ?その前にクッキーでお茶の時間にしません?侍女に並んで買ってきてもらったんですよ~」


紙袋から嬉しそうにクッキーを手に取って、自身の頬に当ててポーズをとるクリステル。全員の気持ちが一致した。

――終わった――
しおりを挟む
感想 103

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

聖女は神の力を借りて病を治しますので、神の教えに背いた病でいまさら泣きついてきても、私は知りませんから!

甘い秋空
恋愛
神の教えに背いた病が広まり始めている中、私は聖女から外され、婚約も破棄されました。 唯一の理解者である王妃の指示によって、幽閉生活に入りましたが、そこには……

転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?

朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!  「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」 王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。 不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。 もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた? 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...