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第11話 やっぱコーデないと
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『で?何の御用?』
『と、遠出が無理なら街に買い物でも行かないか?』
『買い物で御座いますか。そうですねぇ…いいですよ?』
『そ、そうか。じゃぁ当日は迎えに来――』
『現地集合現地解散の自由行動で宜しくお願いいたしますわ』
デリックの頭の中に疑問符が飛ぶ。
現地集合。問題はない。
現地解散。問題はない。
自由行動???
それはデートの意味があるんだろうか。
ちらりとサリアを見れば笑顔なのだが瞳の奥に…。
【かかってこいやぁッ!】
と叫んでいる気がして怖くて問えない。
取り敢えずはデートに誘えたので良いだろうと日時を伝え、作戦を練るために翌日アルサール公爵家にレーナを呼んだ。
「え?ゴスロリ着てたの?あのサリアが?」
「そうなんだ。何だか…斬新って言うか、今まで見た事の無いサリーだった」
それはそうだろう。サリアもゴシックロリータの装いは生まれて初めてなのだから。見たことがあるとしたらかなり偏った妄想をしているのでその手の専門医を紹介される可能性が高い。
それでも見た事の無いサリアを見られてデリックの心は弾んでいた。
困るのはその格好でデートに来てしまう事だ。間違いなく目を引く。
他の男にサリアが見られるのが嫌で夜会などでも社交をしなければならないのは解っていても「顔を売るな」と自分の欲望も交えた説教をしてサリアの行動に制限を付けていたのだ。
「リックが服を贈ればいいんじゃないの?」
「そうか!レーナは賢いな。で?どんな服を贈ればいいんだろう」
「はぁ?そこまで私が面倒見なきゃいけないワケ?」
「女物の服なんか解らないよ」
「仕方ないわね。で?サリアのサイズは?」
「サイズ?!知ってるわけないだろう?仕立て屋にドレスのサイズならあると思うが」
「馬鹿ね。ドレスと街歩きの服は別物よ。仕方ないわ。私のを貸してあげる」
「すまないな。恩に着るよ」
レーナが見繕った服を5着デリックはシリカ伯爵家に届けさせた。
★~★
シリカ伯爵家では届けられた服をテーブルに並べた。そのテーブルを所狭しとサリアとルダ他使用人が取り囲む。
全員が腕組をして悩んだ。
「これは…ない寄りのない」
「寄るも何もないの一択だろ」
「デスヨネー」
サリアとレーナはサイズが違い過ぎる。
先ずは身長だ。サリアは158cmなのだが、レーナは142cm。
次に体形。サリアは筒型だが、レーナは極端にウェストを縛り上げた体形。
さらに座高の高さが同じなので、レーナが着ればひざ丈でもサリアが着ると股下数cm。
「これは見せ下着を穿いとけって事ですかね?」
「それ以前に着ちゃダメだろ。他家の令嬢の服を破損させるのはアウトだし」
「それよりも他の女の服を婚約者に贈る?着せる?趣味って言うか性癖疑うわぁ」
悩んでも仕方がない。着られないものは着て行けないのだから悩む時間が勿体ない。
サリアは5着の内の縫製が簡単そうな1着を手に取ると「これにしましょう」と指示を出した。
「当日にアルサール公爵家に返却しましょう。少なくとも当日着ていないのだから破損、汚損させたと言われることはないわ」
「承知いたしました。では見本をお借りいたしますね」
「ルダ、頼んだわよ」
「アイアイサーで御座いますよ。お嬢様。シリカ伯爵家お針子隊にお任せあれ」
★~★
デートの約束をして2週間。
迎えた当日。
デリックとの待ち合わせ場所にはシリカ伯爵家の馬車…だけでは足りなかったので友人にも声を掛け、21台の馬車で乗りつけた。
3人乗り、4人乗り、7人乗りの馬車からはぞろぞろと同じ格好をした女性たちが街に降り立った。
「なんだ?なんだ?何かあるのか?」
突然同じ格好をした女性たちが現れた事に街を行き交う人も注目する。
なんとその数84人。
「は、はぁぁぁ?!」
レーナから借りた服の1着に似ている服を着た女性をみたデリックは声を掛けようとしたのだが、問題が起きた。
――不味いぞ。どれがサリーなんだ?!――
背格好が極端に違う女性もいるけれど、サリアはスタイルも平々凡々で平均サイズ。
「デリック様。お待たせいたしましたわ。では自由行動に移りましょう」
「サリー!!何処にいるんだ?!どこから声を出している?」
「ここです。ここ。双子コーデが流行っているそうなので84つ子コーデにしてみましたわぁ。協議書項目19。”ちょっとは他人に合わせろ” で御座いますわ」
声はするけれど、全く解らない。
同じ服を着た大勢の女性は珍しいので何か催しでもあるのかと足を止める人や野次馬まで集まってしまいデリックは背伸びをしたり、キョロキョロとするもサリアが見つけられなかった。
そうこうするうちに女性たちは単独、2人、5人、6人などになって街のあちこちに散らばっていく。
――マジか。本気で自由行動?!――
「ちょ、ちょっと待て!待てったら!」
デリックは後姿がサリアに似た同じ服の女性3人組の1人の肩を掴んだ。
「なんです?」
「あ、失礼。間違いました」
デートで、待ち合わせに遅れた訳でもないのにデリックはサリアを探す羽目になったのだった。
『と、遠出が無理なら街に買い物でも行かないか?』
『買い物で御座いますか。そうですねぇ…いいですよ?』
『そ、そうか。じゃぁ当日は迎えに来――』
『現地集合現地解散の自由行動で宜しくお願いいたしますわ』
デリックの頭の中に疑問符が飛ぶ。
現地集合。問題はない。
現地解散。問題はない。
自由行動???
それはデートの意味があるんだろうか。
ちらりとサリアを見れば笑顔なのだが瞳の奥に…。
【かかってこいやぁッ!】
と叫んでいる気がして怖くて問えない。
取り敢えずはデートに誘えたので良いだろうと日時を伝え、作戦を練るために翌日アルサール公爵家にレーナを呼んだ。
「え?ゴスロリ着てたの?あのサリアが?」
「そうなんだ。何だか…斬新って言うか、今まで見た事の無いサリーだった」
それはそうだろう。サリアもゴシックロリータの装いは生まれて初めてなのだから。見たことがあるとしたらかなり偏った妄想をしているのでその手の専門医を紹介される可能性が高い。
それでも見た事の無いサリアを見られてデリックの心は弾んでいた。
困るのはその格好でデートに来てしまう事だ。間違いなく目を引く。
他の男にサリアが見られるのが嫌で夜会などでも社交をしなければならないのは解っていても「顔を売るな」と自分の欲望も交えた説教をしてサリアの行動に制限を付けていたのだ。
「リックが服を贈ればいいんじゃないの?」
「そうか!レーナは賢いな。で?どんな服を贈ればいいんだろう」
「はぁ?そこまで私が面倒見なきゃいけないワケ?」
「女物の服なんか解らないよ」
「仕方ないわね。で?サリアのサイズは?」
「サイズ?!知ってるわけないだろう?仕立て屋にドレスのサイズならあると思うが」
「馬鹿ね。ドレスと街歩きの服は別物よ。仕方ないわ。私のを貸してあげる」
「すまないな。恩に着るよ」
レーナが見繕った服を5着デリックはシリカ伯爵家に届けさせた。
★~★
シリカ伯爵家では届けられた服をテーブルに並べた。そのテーブルを所狭しとサリアとルダ他使用人が取り囲む。
全員が腕組をして悩んだ。
「これは…ない寄りのない」
「寄るも何もないの一択だろ」
「デスヨネー」
サリアとレーナはサイズが違い過ぎる。
先ずは身長だ。サリアは158cmなのだが、レーナは142cm。
次に体形。サリアは筒型だが、レーナは極端にウェストを縛り上げた体形。
さらに座高の高さが同じなので、レーナが着ればひざ丈でもサリアが着ると股下数cm。
「これは見せ下着を穿いとけって事ですかね?」
「それ以前に着ちゃダメだろ。他家の令嬢の服を破損させるのはアウトだし」
「それよりも他の女の服を婚約者に贈る?着せる?趣味って言うか性癖疑うわぁ」
悩んでも仕方がない。着られないものは着て行けないのだから悩む時間が勿体ない。
サリアは5着の内の縫製が簡単そうな1着を手に取ると「これにしましょう」と指示を出した。
「当日にアルサール公爵家に返却しましょう。少なくとも当日着ていないのだから破損、汚損させたと言われることはないわ」
「承知いたしました。では見本をお借りいたしますね」
「ルダ、頼んだわよ」
「アイアイサーで御座いますよ。お嬢様。シリカ伯爵家お針子隊にお任せあれ」
★~★
デートの約束をして2週間。
迎えた当日。
デリックとの待ち合わせ場所にはシリカ伯爵家の馬車…だけでは足りなかったので友人にも声を掛け、21台の馬車で乗りつけた。
3人乗り、4人乗り、7人乗りの馬車からはぞろぞろと同じ格好をした女性たちが街に降り立った。
「なんだ?なんだ?何かあるのか?」
突然同じ格好をした女性たちが現れた事に街を行き交う人も注目する。
なんとその数84人。
「は、はぁぁぁ?!」
レーナから借りた服の1着に似ている服を着た女性をみたデリックは声を掛けようとしたのだが、問題が起きた。
――不味いぞ。どれがサリーなんだ?!――
背格好が極端に違う女性もいるけれど、サリアはスタイルも平々凡々で平均サイズ。
「デリック様。お待たせいたしましたわ。では自由行動に移りましょう」
「サリー!!何処にいるんだ?!どこから声を出している?」
「ここです。ここ。双子コーデが流行っているそうなので84つ子コーデにしてみましたわぁ。協議書項目19。”ちょっとは他人に合わせろ” で御座いますわ」
声はするけれど、全く解らない。
同じ服を着た大勢の女性は珍しいので何か催しでもあるのかと足を止める人や野次馬まで集まってしまいデリックは背伸びをしたり、キョロキョロとするもサリアが見つけられなかった。
そうこうするうちに女性たちは単独、2人、5人、6人などになって街のあちこちに散らばっていく。
――マジか。本気で自由行動?!――
「ちょ、ちょっと待て!待てったら!」
デリックは後姿がサリアに似た同じ服の女性3人組の1人の肩を掴んだ。
「なんです?」
「あ、失礼。間違いました」
デートで、待ち合わせに遅れた訳でもないのにデリックはサリアを探す羽目になったのだった。
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