その愛はどうぞ愛する人に向けてください

cyaru

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第17話   サリアのペンダント

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デリックは謹慎を言い渡されて大人しく過ごしていたのだが、建国祭の日も近づき協議書のある限界な婚約期間と言えど何もしないのはアルサール公爵家の非を問われる。

サリアと当日の予定などを話し合うようにとアルサール公爵に言われ、やっと部屋から出る事が出来た。

デリックが真っ先に向かったのはシリカ伯爵家。
花屋で買えばラッピングなどもしてもらえるだろうが、デリックは公爵家の庭に咲く花を自ら手折り、花束にした。

敢えて買わなかったのは協議書の項目2番目に ”物の価値を知れ” とサリアに言ったことがあった。


サリアが肌身離さず古ぼけたペンダントをしていて、ペンダントトップの小さなオパールは質の良いものでもなく、同じものを新品で買っても15万ケルもあれば手に入る貴族にしてみれば安物だった。

レーナに買ってやった宝飾品は一番安いものでも100万ケルを下らない。
なのでサリアが宝飾品の価値を知らないから後生大事にしていると思い、レーナに買う事で「私にも買ってくれ」そんな言葉を引き出すつもりで叱った事があった。

――サリー。結局欲しいって言わなかったんだよな――

サリアはその時『物の価値は金額に比例しない』とデリックの言葉の意味とは逆の意味の言葉をデリックに告げた。

そこからデリックが導き出したサリアの価値観は金額ではないということ。
間違ってはいないのだが、やはり微妙にズレているのがデリック。

デリックはサリアのペンダントの意味を知らない。
あのペンダントはサリアの母親の形見で、父のシリカ伯爵と婚約をした時にシリカ伯爵が親からもらった小遣いではなく、平民の労働者に混じって荷運びを3カ月した給金で買った物。

25年ほど前の事で、当時の肉体労働者の1カ月の平均給料は3万ケルほど。シリカ伯爵は家の執務に影響しないように夜間の荷運びで稼いだ金で買ったものだった。

ペンダントも当時の価格で10万ケルだっただけ。
その後、結婚しもっと価格の張る宝飾品をシリカ伯爵は妻に贈ったけれど、一番大事にしていたのが安物のペンダントだったのだ。


その事はシリカ伯爵家で夕食を共にした時にデリックにも伝えられていたけれど、その日の食材は海老で、殻を剥くのにシリカ伯爵の惚気話など右から左。覚えていなかった。


「物の価値は知っておいて欲しいけど、贈り物に金がかからないってのは財布の紐をしっかりと握ってるってのもあるんだろうな。庭の花でもサリーは気に入ってくれるはずだ」

公爵夫人自慢のバラを抱えてデリックはシリカ伯爵家にまたもや先触れも無しに突撃していった。
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