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第25話 ビーバー発見
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研磨した粉を固める作業をしていた従業員が慌てふためいてファガスを呼びに来ると、その場にいた全員は工房に走った。
工房では従業員たちががっくりと肩を落としていた。
「どうしたんだ?!」
「旦那様…それが…どうやら上流でビーバーダムを壊したみたいです」
「ビーバーダムを?」
ビーバーは巣をつくる時に川を堰き止めるビーバーダムを造る。
川は堰き止められて水深が深くなり、周囲も湿地帯になってしまう事もあるのだが、大水の時に一時的に水の流れを緩くする働きもある。
しかし、人間が作る砂防ダムの働きをしてくれているうちはいいけれど、中規模以上のビーバーダムが破壊されると土石流となって下流に水が一気に流れて来てしまう。
なので上流域に住んでいる住民が敢えてビーバーダムを壊して川の水量を安定させたりするのだ。
「ビーバーダムを壊したんだろう?今までも何度かあったじゃないか。何が問題なんだ?」
「大ありですよ。これ…見てください」
従業員が見てくださいと麻袋を捲るとそこにはビーバーの死骸があった。
「可哀想に。壊す時に巣にいて鉈でも当たったのかな」
巣をつくると言う事はそこで子育てなどもするので人間の勝手でした事で犠牲になってしまうビーバーも少なくない。
問題なのはビーバーの死骸が見つかった事ではなく、水槽に水を引き込む時に葉っぱなども一緒に引き込まないように桝にした箇所で数日ビーバーがそのままになっていたということ。
桝の水が溢れていた事に気が付かず2日。
葉っぱの他に泥も定期的に掃除はしていたけれど、上流でビーバーダムが壊されて流れて来る水量が多いんだろう、数日で元の水量に戻ると思っていた時に見つけたのがビーバーの死骸だった。
「水槽の水を全部入れ替えないといけないな」
「あとは…殺菌もしておかないと野生の動物は病気を持っている時もありますよ」
「清掃に殺菌か…2カ月は工房が使えなくなるな。取り敢えずビーバーは埋葬してやろう。ホワイトシダーの近くに埋めれば…神の許に行っても食べ物には困らないだろう」
ビーバーはホワイトシダーを好んで食べる。
この国では亡くなった人を埋葬する時も、生前好きだった物を一緒に埋葬する習慣がある。木を切り倒す事は出来ないのでファガスは埋める時に大好物の木の近くを指示した。
ビーバーが運ばれて行くと、数人の従業員が困り顔でファガスとサリアの元にやってきた。
「あのぅ…どうしましょう。死骸があるって知らなかったんで、水、使っちゃってて」
彼らが指さす先には研磨した破片を固めるために色々な薬草などを混ぜたものがあった。処分をしなければならないが、こんな時に限ってかなりの量を作ってしまっていたりもする。
「参ったな…」
ファガスがしゃがみ込んで水に浸ってしまった掃除用の箒を手に取った。
「乾かして持ち手を削れば使えるかな」
っと…消毒用の石石鹸で洗い、干してしまったがこれが1週間後に大発見になる事をこの時誰も予想しなかった。
★~★
ビーバーを埋葬し、サリアは野に咲く花を手折って手向けた。
「ここにある石って、もしかして墓石?」
「そうだ。今回のビーバーもなんだけどウサギとかキツネとか怪我が原因なのか流れて来るんだ。見つけたら埋葬してるんだけど、何もないのは可哀想かなって墓石の代わりに石を置いてるんだ。生きてたら治療して山に返したりしてるけどな。動物の治療費もバカにならなくてさ。でも見捨てるってのが出来なくてさ」
石を運んだり力仕事が多い分、筋肉隆々。俗にいうガタイの良いファガスが動物たちのためにしていると知ってサリアは「優しい人なんだなぁ」とファガスを見つめると…。
「何見てんだよ。恥ずかしいだろ?」
「どうして?恥ずかしい事じゃないわ。誰にでも出来そうだけど実際に身銭を切ってまでって人はいないと思うわ」
「そっちの恥ずかしいじゃないんだが」
「どっちの恥ずかしいなの?」
「・・・・・聞くな」
耳まで真っ赤になってファガスが顔を背けた。
サリアは「褒められるのって恥ずかしい時あるよね」と流したのだが、その様子を後ろで見ていたルダは「疎い」一言を呟いて休憩所に戻って行った。
工房では従業員たちががっくりと肩を落としていた。
「どうしたんだ?!」
「旦那様…それが…どうやら上流でビーバーダムを壊したみたいです」
「ビーバーダムを?」
ビーバーは巣をつくる時に川を堰き止めるビーバーダムを造る。
川は堰き止められて水深が深くなり、周囲も湿地帯になってしまう事もあるのだが、大水の時に一時的に水の流れを緩くする働きもある。
しかし、人間が作る砂防ダムの働きをしてくれているうちはいいけれど、中規模以上のビーバーダムが破壊されると土石流となって下流に水が一気に流れて来てしまう。
なので上流域に住んでいる住民が敢えてビーバーダムを壊して川の水量を安定させたりするのだ。
「ビーバーダムを壊したんだろう?今までも何度かあったじゃないか。何が問題なんだ?」
「大ありですよ。これ…見てください」
従業員が見てくださいと麻袋を捲るとそこにはビーバーの死骸があった。
「可哀想に。壊す時に巣にいて鉈でも当たったのかな」
巣をつくると言う事はそこで子育てなどもするので人間の勝手でした事で犠牲になってしまうビーバーも少なくない。
問題なのはビーバーの死骸が見つかった事ではなく、水槽に水を引き込む時に葉っぱなども一緒に引き込まないように桝にした箇所で数日ビーバーがそのままになっていたということ。
桝の水が溢れていた事に気が付かず2日。
葉っぱの他に泥も定期的に掃除はしていたけれど、上流でビーバーダムが壊されて流れて来る水量が多いんだろう、数日で元の水量に戻ると思っていた時に見つけたのがビーバーの死骸だった。
「水槽の水を全部入れ替えないといけないな」
「あとは…殺菌もしておかないと野生の動物は病気を持っている時もありますよ」
「清掃に殺菌か…2カ月は工房が使えなくなるな。取り敢えずビーバーは埋葬してやろう。ホワイトシダーの近くに埋めれば…神の許に行っても食べ物には困らないだろう」
ビーバーはホワイトシダーを好んで食べる。
この国では亡くなった人を埋葬する時も、生前好きだった物を一緒に埋葬する習慣がある。木を切り倒す事は出来ないのでファガスは埋める時に大好物の木の近くを指示した。
ビーバーが運ばれて行くと、数人の従業員が困り顔でファガスとサリアの元にやってきた。
「あのぅ…どうしましょう。死骸があるって知らなかったんで、水、使っちゃってて」
彼らが指さす先には研磨した破片を固めるために色々な薬草などを混ぜたものがあった。処分をしなければならないが、こんな時に限ってかなりの量を作ってしまっていたりもする。
「参ったな…」
ファガスがしゃがみ込んで水に浸ってしまった掃除用の箒を手に取った。
「乾かして持ち手を削れば使えるかな」
っと…消毒用の石石鹸で洗い、干してしまったがこれが1週間後に大発見になる事をこの時誰も予想しなかった。
★~★
ビーバーを埋葬し、サリアは野に咲く花を手折って手向けた。
「ここにある石って、もしかして墓石?」
「そうだ。今回のビーバーもなんだけどウサギとかキツネとか怪我が原因なのか流れて来るんだ。見つけたら埋葬してるんだけど、何もないのは可哀想かなって墓石の代わりに石を置いてるんだ。生きてたら治療して山に返したりしてるけどな。動物の治療費もバカにならなくてさ。でも見捨てるってのが出来なくてさ」
石を運んだり力仕事が多い分、筋肉隆々。俗にいうガタイの良いファガスが動物たちのためにしていると知ってサリアは「優しい人なんだなぁ」とファガスを見つめると…。
「何見てんだよ。恥ずかしいだろ?」
「どうして?恥ずかしい事じゃないわ。誰にでも出来そうだけど実際に身銭を切ってまでって人はいないと思うわ」
「そっちの恥ずかしいじゃないんだが」
「どっちの恥ずかしいなの?」
「・・・・・聞くな」
耳まで真っ赤になってファガスが顔を背けた。
サリアは「褒められるのって恥ずかしい時あるよね」と流したのだが、その様子を後ろで見ていたルダは「疎い」一言を呟いて休憩所に戻って行った。
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