王弟殿下は終身雇用をご希望ですって?!~溺愛は契約外です~

cyaru

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お父様の再婚

トマフィーは年中恋の季節なのかしら。

シグマはアニーさんと同棲を始めてしまいました。鍋や釜などの鉄を打ちながら一緒に蹄鉄ていてつも打っております。

レセラ様はと言いますと、お腹に赤ちゃんが出来てしまいまして、順番が違う!とお父様と共にパッツェ公爵家に謝罪に向かったのですが、もろ手を挙げて大歓迎を受けてしまい、今では先代公爵夫妻とレセラ様、お兄様は一緒に住んでおります。

わたくしも兄弟が幸せならいいかぁと思っておりましたが、こんどはお父様の様子がおかしいのです。


「お父様?お茶へ入れるお砂糖が‥‥」

「えっ?あぁそうだな。いくつ目だったかな、2個目だったかな」

「いいえ、お砂糖を入れ過ぎてソーサーももう満杯になっておりますが」

「いつの間に?!」


時を同じくして挙動が不審な方がもうお1人。
同じ指示を何度も出してしまったり、お名前を呼ぶと声が上ずってしまわれたり。
それは侍女頭のジゼル様で御座います。


「ジゼル、最近どうしたんだ。ミスが多いぞ」

「クリストファー殿下。申し訳ございません」

「理由は何だ?体調が良くないのか?」

「いえ、体調は万全でございます」

「しばらく休んでみたらどうだ?ずっと休みも取っていないだろう?他の者には休みは定期的に与えているのにジゼル、君は全く休んでいないではないか」

「わ、わたくしはお会いでき・・・いえ、仕事をするのが楽しいのです」

「そう思ってくれるのは有難いが、たまっている休みは消化するように。明日から3週間は休む事、これは決定だ」


そして、ジゼルさんがお休みに入ったのですが、お休みに入ってから2、3日するとお父様の様子がおかしいのです。屋敷の中をうろうろとして何かを探している様子。

「お父様、どうなさったのです?」

「あ、いや…ジゼル女史が最近見えないと思って。体調でも崩したんだろうか」

「ジゼルさんなら暫くお休みだとクリス様が仰ってましたよ」

「なんだって?!まさか…暇をだしたのだろうか」

「暇?」

「違うんだ。彼女は悪くないんだ」

お父様は突然廊下を駆けだし、クリス様の執務室に飛び込んでしまわれたのです。


「殿下!違うのです。ジゼル女史は何も悪くないのです」

「えっ?いや、お義父上、どうされ――」

「辞めさせないでください。出来るだけ会わないようにしますから!」

「はっ?いや、いったいどういう――」

「寡になり20年。妻のような優しさと温かさに私が縋っただけでジゼル女史はあくまでも従者の1人として接してくれていただけで、男女の関係になどなってはおりません。彼女の名誉を守ってください。悪いのは全て私なのです」

「ちょ、ちょっと待ってください。お義父上、話が見えません」

「ですから!私がこの年になって彼女に想いを伝えてしまっただけなんです」

「思いって…」

「息子も一人立ちには程遠いですが手も離れました。娘も殿下に託せば安泰。気が抜けてしまったのです。ジゼル女史は塞ぎがちになった私を励ましてくれただけで、私がそこに愛を感じてしまっただけなんです」


クリス様はお父様を宥めるのに大変で、その間に気を利かせたルディさんがジゼルさんの家に走ってくださいました。


「お父様、ジゼルさん…好きなのですか?」

「ふぇっ?!い、いや…そんな…邪な気持ちは…」

「クリス様情報ですが、ジゼルさんは独身だそうですよ」

「ニョッ?!違うんだ…エルシー…」


煮え切らないお父様ですが、執務室の開いた扉にルディさんが口元に指を一本立てて「しぃぃ」っと合図をされたあと続けて両手の親指と人差し指でハートのマークを作っておられます。その隣にちらりと見えるのはジゼルさん。


「お父様、お母様ももう亡くなって20年です。わたくしは良いと思いますよ。人を好きになるのに年齢は関係ないと思いますし…。あ、ですがそうしたらお父様と一緒に住む事が出来ませんわね」

「エルシー…」

「だって、新婚さんのお邪魔虫はしたくないですもの」

「違うんだよ。そんな…」

「では、お嫌いですの?好きではなくジゼルさんの優しさを利用しましたの?」

「そんな!気持ちを利用なんて!本気だ!だが…こんな年になって」

「ジゼルさん。お父様は本気出そうなのですが、引き受けて頂けます?娘歴もうすぐ24年になりますが、浮気とかするような人ではないのは保障致しますが、こうやって煮え切らない部分もあったりする面倒な父なのですけど」


口元を手で覆ったジゼルさんの背をクリス様とルディさんが軽く押されます。
お兄様もシグマもですけれど、ビシーっとした物言いをしてくれる女性に弱いんですわね。

あ…となればかの日ニレイナ夫人の仰っていた…

「殿方はね、その場で およよ としながらもビシーっとした物言いを【たまに】するご令嬢に落ちやすいのよ」


当たっているかも知れません。ちらりとジゼル様のお胸に目がいってしまいます。

――豊かだわ――

と、なれば王太后様の仰っていた…

「香水は薄め。宝飾品と露出は少な目、それでいて寄せて上げる!わきから見えるお胸のラインに萌えるのよ?」


ジゼルさんは香水は付けられておりませんし、宝飾品もなし、お仕着せですので露出控えめ。

――流石ですわ!ニレイナ夫人!王太后様!――


あら?ですが穴は掘っていなかった気がいたしますが臨機応変なのでしょうか。
スコップを持つと「淑女は土いじりは致しません」と仰っていたジゼルさんですので、穴を掘るのは人によるのでしょう。

「良かったな」

クリス様がわたくしの隣で囁かれますが、大問題がございました。
お顔をじぃぃっと見ておりますと「どうした?」と仰います。

「ルディさんが・・・」

51歳のジゼルさんへの片思いに敗れたルディさん。
お父様を見る目が怖かったです。
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