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第04話 お金は大事だよ
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レストランから戻ると母親のガーモットが玄関前でウロウロとしていた。
「何してるの!侯爵様が待っているのに出かけるなんて」
――昼頃まで書類出来ないって言ってたよね?――
母親のガーモットは常識はないが、外面は非常に良いのだ。
せめて外面の良さの半分、いやそのまた半分でいいから常識的に動いてくれれば…。
言い返すと「10倍返しだ!」とそこだけリスペクトなので面倒この上ない。
軽く流すに限る。
「すみません。もう出立ですか?」
「そうよ。貴女がいないから私が馬車まで貴女の荷物を運ぶことになったじゃないの」
ガーモットが指さす馬車に視線を移し、ルビーはこめかみがヒクつく。
そこには急いで荷造りをしたトランクはなくて麻袋があった。
おそらくトランクを開けて中身を引っ張り出してガーデンバードの餌を入れていた麻袋に移し替えたのだろう。
――トウモロコシ…チクチクするのよね――
トウモロコシを粉砕した餌。叩いてもなかなか取れないのに。
時間があればウルシでガーモットの下着を洗濯してあげたい気分だ。
母親がそんな事をするのにも理由がある。
荷物を先に載せておいてあげようなんてものではない。
以前ルビーは稼いだ金を家に置いていたが少額ならバレないと思ったのか両親が盗んでいく。帳簿の数字と合わないので計算もややこしくなるので、レストランに預ける事にしたのだ。
卵を入れていた籠にルビーの虎の子は入っている。
麻袋に詰めなおしながら金があれば頂いておこうとしたのだろう。
ルビーは荷物を纏める時間もなかったので、母親は「金は部屋のどこかにある」と思っているのかそれ以上の追及をしなかった。
主不在になった部屋は明日にでも壁の板まで剥がされて、過去に亡国となった王様が隠した埋蔵金のように徹底捜索が始まるだろうが、もう帰る事もない部屋なので「ご自由にどうぞ」である。
「ごめんなさい。ありがとうございます。この籠は愛着があるので持って行きます」
「そんな汚い籠…勝手になさい。本当、器量が悪いだけじゃなく要領も悪いなんて。いい?絶対に迷惑をかけるんじゃないわよ?」
――器量も要領も貴女譲りです――
「はい」
ルビーも解っている。
おそらく母親のガーモットがはっきり言葉にしたことはないがルビーを嫌っていることを。
亡き姑によく似ていると以前言われたことがあった。
使用人からは「奥様は大変な思いをしましたので」と聞いたこともあった。
ルビーの水魔法も火魔法もその姑が得意としていた魔法なので、余計にガーモットはルビーを見ると苛立ち姑にされたことを娘にしているんだろうなと思えた。
ルビーは「私なら自分の代で終わりにするけどな」と思うが、負の部分を継承する者は多い。
――でもね?貴女が産んだ子なのよ?――
そんな事を思いつつ、馬車の中に籠を置いて家の中に入ってみると父のイーカイズは指をベロっと舐めて札束を数えていた。
その姿を見てルビーは思った。
アジメストが学問所に行く事になって家計はかなり逼迫していた。
ルビーの稼ぐ卵代があったから毎日食事をすることも出来て、衣類も買えた。
学問所の授業料を前期、後期と払わねばならないが、両親の稼ぎでは毎月アジメストに送る小遣いを出すのが精一杯で12歳で入学し、18歳で卒業の6年間だが、この4年間アジメストの授業料の支払日が来るたびに「貸して」と言われて貸してきたが1ピピも返ってきたことはない。
――今回は貸せと言われることもないわね――
過去に催促はしたが、何故かその度に奇妙な反論をされた。
「可愛い妹が遠く離れた地で1人で学んでいるんだぞ?」
「学問所に行きたいと言ったのはアジメストです。私だって行きたいと言いましたよね?」
「お前はどうでもいい。だがアジメストは違う。姉のお前が応援しなくて誰が応援するというんだ」
「は?私はアジメストを応援するために学問所行を反対されたんですか?」
「お前が学問を学んでどうなるというんだ。ここに残ってアジメストが何の心配もなく学べる環境を作る事が家族の役目だ。家族なら助け合うのが当たり前なんだ」
「そうですか。では前回までの分、入学金も立て替えていますけど、返してくれたら貸します。助け合うというより今のままならただの依存です。共助ではないですよね」
「お前と言う娘は!!授業料を払わなかったらアジメストが困るんだぞ?」
「特待生制度があります。授業料全額免除にプラスして毎月5万ピピが頂ける制度です」
「そんなもの!全体の上位5%に入り続けないといけないじゃないか。どうしてそこまでアジメストが努力をせねばならんのだ。お前が貸してくれたら済む事だ」
無茶苦茶である。
賢くなる努力を頭から否定し、金もないのに学問所に行かせる方がおかしい。
ルビーは「学問所に行きたい」と両親に話をした時、特待生の試験には合格していてあとは家を出るだけだった。学問所に入学しますと手紙送れば学問所から送迎の馬車だってここに来てくれたのだ。
――私ってつくづく…ツイてないんだわ――
アジメストが学問所に行くと決まった時、悪魔に弟子入りが出来るなら喜んで弟子入りを志願したかもしれない。だが残念。ルビーの魔法はちょっとの火魔法と水魔法で怪しさ満点の黒魔法は使えなかった。
両親の悪いところはルビーが金を出すまで領民に嫌がらせをすること。
代官職なので領民も従うしかない。
領民を迷惑をかけるくらいなら貸したほうがマシ。
ルビーは結局金を貸した。
家出をしようと思った事も何度もあるが、ルビーは今18歳。
18歳以下の魔力持ちがいなくなると大規模な捜索が行われてしまう。匿ってもらっていると見つかった時に匿った者も処罰をされるので逃げるに逃げられなかった。
学問所行きを反対されてルビーは稼ぐことに邁進したのだ。
19歳の誕生日が来れば堂々と出て行こう。そんな希望を持って金を貯めた。
「何してるの!侯爵様が待っているのに出かけるなんて」
――昼頃まで書類出来ないって言ってたよね?――
母親のガーモットは常識はないが、外面は非常に良いのだ。
せめて外面の良さの半分、いやそのまた半分でいいから常識的に動いてくれれば…。
言い返すと「10倍返しだ!」とそこだけリスペクトなので面倒この上ない。
軽く流すに限る。
「すみません。もう出立ですか?」
「そうよ。貴女がいないから私が馬車まで貴女の荷物を運ぶことになったじゃないの」
ガーモットが指さす馬車に視線を移し、ルビーはこめかみがヒクつく。
そこには急いで荷造りをしたトランクはなくて麻袋があった。
おそらくトランクを開けて中身を引っ張り出してガーデンバードの餌を入れていた麻袋に移し替えたのだろう。
――トウモロコシ…チクチクするのよね――
トウモロコシを粉砕した餌。叩いてもなかなか取れないのに。
時間があればウルシでガーモットの下着を洗濯してあげたい気分だ。
母親がそんな事をするのにも理由がある。
荷物を先に載せておいてあげようなんてものではない。
以前ルビーは稼いだ金を家に置いていたが少額ならバレないと思ったのか両親が盗んでいく。帳簿の数字と合わないので計算もややこしくなるので、レストランに預ける事にしたのだ。
卵を入れていた籠にルビーの虎の子は入っている。
麻袋に詰めなおしながら金があれば頂いておこうとしたのだろう。
ルビーは荷物を纏める時間もなかったので、母親は「金は部屋のどこかにある」と思っているのかそれ以上の追及をしなかった。
主不在になった部屋は明日にでも壁の板まで剥がされて、過去に亡国となった王様が隠した埋蔵金のように徹底捜索が始まるだろうが、もう帰る事もない部屋なので「ご自由にどうぞ」である。
「ごめんなさい。ありがとうございます。この籠は愛着があるので持って行きます」
「そんな汚い籠…勝手になさい。本当、器量が悪いだけじゃなく要領も悪いなんて。いい?絶対に迷惑をかけるんじゃないわよ?」
――器量も要領も貴女譲りです――
「はい」
ルビーも解っている。
おそらく母親のガーモットがはっきり言葉にしたことはないがルビーを嫌っていることを。
亡き姑によく似ていると以前言われたことがあった。
使用人からは「奥様は大変な思いをしましたので」と聞いたこともあった。
ルビーの水魔法も火魔法もその姑が得意としていた魔法なので、余計にガーモットはルビーを見ると苛立ち姑にされたことを娘にしているんだろうなと思えた。
ルビーは「私なら自分の代で終わりにするけどな」と思うが、負の部分を継承する者は多い。
――でもね?貴女が産んだ子なのよ?――
そんな事を思いつつ、馬車の中に籠を置いて家の中に入ってみると父のイーカイズは指をベロっと舐めて札束を数えていた。
その姿を見てルビーは思った。
アジメストが学問所に行く事になって家計はかなり逼迫していた。
ルビーの稼ぐ卵代があったから毎日食事をすることも出来て、衣類も買えた。
学問所の授業料を前期、後期と払わねばならないが、両親の稼ぎでは毎月アジメストに送る小遣いを出すのが精一杯で12歳で入学し、18歳で卒業の6年間だが、この4年間アジメストの授業料の支払日が来るたびに「貸して」と言われて貸してきたが1ピピも返ってきたことはない。
――今回は貸せと言われることもないわね――
過去に催促はしたが、何故かその度に奇妙な反論をされた。
「可愛い妹が遠く離れた地で1人で学んでいるんだぞ?」
「学問所に行きたいと言ったのはアジメストです。私だって行きたいと言いましたよね?」
「お前はどうでもいい。だがアジメストは違う。姉のお前が応援しなくて誰が応援するというんだ」
「は?私はアジメストを応援するために学問所行を反対されたんですか?」
「お前が学問を学んでどうなるというんだ。ここに残ってアジメストが何の心配もなく学べる環境を作る事が家族の役目だ。家族なら助け合うのが当たり前なんだ」
「そうですか。では前回までの分、入学金も立て替えていますけど、返してくれたら貸します。助け合うというより今のままならただの依存です。共助ではないですよね」
「お前と言う娘は!!授業料を払わなかったらアジメストが困るんだぞ?」
「特待生制度があります。授業料全額免除にプラスして毎月5万ピピが頂ける制度です」
「そんなもの!全体の上位5%に入り続けないといけないじゃないか。どうしてそこまでアジメストが努力をせねばならんのだ。お前が貸してくれたら済む事だ」
無茶苦茶である。
賢くなる努力を頭から否定し、金もないのに学問所に行かせる方がおかしい。
ルビーは「学問所に行きたい」と両親に話をした時、特待生の試験には合格していてあとは家を出るだけだった。学問所に入学しますと手紙送れば学問所から送迎の馬車だってここに来てくれたのだ。
――私ってつくづく…ツイてないんだわ――
アジメストが学問所に行くと決まった時、悪魔に弟子入りが出来るなら喜んで弟子入りを志願したかもしれない。だが残念。ルビーの魔法はちょっとの火魔法と水魔法で怪しさ満点の黒魔法は使えなかった。
両親の悪いところはルビーが金を出すまで領民に嫌がらせをすること。
代官職なので領民も従うしかない。
領民を迷惑をかけるくらいなら貸したほうがマシ。
ルビーは結局金を貸した。
家出をしようと思った事も何度もあるが、ルビーは今18歳。
18歳以下の魔力持ちがいなくなると大規模な捜索が行われてしまう。匿ってもらっていると見つかった時に匿った者も処罰をされるので逃げるに逃げられなかった。
学問所行きを反対されてルビーは稼ぐことに邁進したのだ。
19歳の誕生日が来れば堂々と出て行こう。そんな希望を持って金を貯めた。
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