16 / 22
第16話 知りたくなかった事実
しおりを挟む
「ど、どういうことなの?!」
「どういう事だと知りたいのはこっちだ!騎士としての誇りを穢したとして除籍になったんだぞ?ダリオンが騎士だから取引先もついたのに全部パーだ!どうしてくれる!」
「き、騎士団を除籍ですって!?」
ダリオンの母親は驚くデリスに書面を叩きつけた。
床に散らばった書類を拾い上げるとなんと借用書。
ダリオンは騎士団で給金を担保に金を借りていて、その額はダリオンの年収の11倍。
借用書の中に紛れて積み立てや投資を切り崩した書類もある。
ダリオンの金回りが良かったのは、アリアと付き合い始めて少ない給料をこつこつと堅実な利回りが期待できる事業に投資をしていたからで、投資先を選択した者の欄にはアリアの名前が記載されていた。
「借り入れが出来たのは結婚相手がアリアだからだ。腐っても男爵家の正当な後継者だしな」
金貸しが王宮の職員や文官、官吏などには年収を超えた額を貸し付けることがあるのは確実なところに務めているという信用があるから。
アリアの家の名前は保証人にならなくても同じ意味があったので貸し付けがされていた。
しかし、いざ騎士団の面々が結婚式に来てみれば花嫁が違う。
それだけならアリアと別れたと言えば済む話と思いきや、結婚式の2日前にもアリアの名を持ち出し借り入れをしていたものだから詐欺も嫌疑も掛けられている状態だった。
アリアの家、ハース男爵家に信用があったから貸し付けをしただけで結婚相手がアリアではないのなら無担保状態。
金回りの良い男の金の出所は借金だったなんて。
デリスは2歩、3歩と力なく後ろに体がよろけた。
それでももしかすると見抜かった書類があるのではないか、投資の書類もこんなにあるんだからダリオンの金はどこかに残っているかも?と思ったが時系列に並べてみれば知りたくなかった事実を否が応でも認めざるを得なかった。
デリスと付き合い始めた時、ダリオンの積み立てと投資で得た金は薄給の騎士の貯蓄とは思えない額だったが、毎週からほぼ毎日切り崩し、ついには借り入れ。
「噓でしょ、嘘だと言って!ねぇっ!!」
「デリス、嘘じゃない。騎士団の書類だ。偽造なんかすれば一族郎党首が飛ぶ。どうするんだ。式とお披露目の支払いもあるのに」
「え?結婚式とか披露目の代金って出してくれるんでしょ?」
「馬鹿を言うな!そういうものは自分たちで出すものだ!」
父親に一喝されてデリスは本気で気を飛ばしたくなった。
デリスとしても結婚式はしたかったけれど、「あんた誰?」な人間までやってくる披露目のパーティは3日もする必要があるのか?1日で十分だと両親に文句を言ったのだ。
デリスはさっさと旅行に行ってのんびりしたかったし、当面は市井のアパートメント暮らしだが不便なので出来れば昨夜使った庭の別宅を拠点として親に生活の面倒を見てもらおうと考えていた。
「お父様とお母様が3日やらなきゃだめだとか言ったんじゃない。言い出しっぺが出してよ。アタシは3日もしたくなかったっ!!」
「今更だろう!デリスが ”ダリオンに婿養子なんて肩身の狭い思いはさせたくない” と言ったんじゃないか」
「じゃぁ、言ったときにダメって言ってよ!」
デリスの親は負担を少なくすべく3日目をしようと言ったのはダリオンの両親だと唾を飛ばし、ダリオンの両親が支払うべきだと言い出した。
勿論ダリオンの親も黙ってはいない。
「そっちが2日目をしなければ良かっただけ」と不毛な言い争いが始まった。
お互い全額負担は出来ないと譲らず言い合いは3時間に及んだが、どうしようもない事だけは心のどこかで判っていた。
支払いを踏み倒すとデリスの父親もダリオンの父親も折角授けてもらった準男爵という爵位を失うだけでなく、爵位があるからこそ平民相手に詐欺紛いの行為をしてはならないので懲役刑を食らってしまう。
「仕方がない。結婚式の支払いは私たちがする。デリス。ダリオンの借金は自分たちで何とかするんだ」
「嘘でしょ?そこが落としどころ?ダリオンの借金はダリオンの家が払うべきよ」
「何言ってるの!あの子が貯えを切り崩したのは貴女に色々と買うためよ!あぁこんな事なら積み立ても投資もさせていたアリアにしとけば良かった。アリアなら少なくともダリオンの金が無くなることはなかったのに!」
「なんですってぇ!!このくそババア!無職の借金男なんて離縁よ!離縁!引き取って頂戴ッ」
アリアと比べられたことにデリスはカッとなってダリオンの母に悪態を吐いてしまったが、離縁はすぐに出来るものの借金を背負ったダリオンを引き取ることをダリオンの両親は拒否した。
結果的にこの支払いで両家とも少なからず借金をすることになり、デリスはダリオンの借金を放っておけばアリアの名を使っている事もあって、配偶者も罰せられるためコツコツ貯めたなけなしを吐き出すしかなくなった。
それでも借金はまだ残る。
デリスとダリオンは暗雲の立ち込めた新生活のスタートとなってしまったのだった。
この後、デリスが爆睡するダリオンに桶の水をぶっかけたのは言うまでもない。
「どういう事だと知りたいのはこっちだ!騎士としての誇りを穢したとして除籍になったんだぞ?ダリオンが騎士だから取引先もついたのに全部パーだ!どうしてくれる!」
「き、騎士団を除籍ですって!?」
ダリオンの母親は驚くデリスに書面を叩きつけた。
床に散らばった書類を拾い上げるとなんと借用書。
ダリオンは騎士団で給金を担保に金を借りていて、その額はダリオンの年収の11倍。
借用書の中に紛れて積み立てや投資を切り崩した書類もある。
ダリオンの金回りが良かったのは、アリアと付き合い始めて少ない給料をこつこつと堅実な利回りが期待できる事業に投資をしていたからで、投資先を選択した者の欄にはアリアの名前が記載されていた。
「借り入れが出来たのは結婚相手がアリアだからだ。腐っても男爵家の正当な後継者だしな」
金貸しが王宮の職員や文官、官吏などには年収を超えた額を貸し付けることがあるのは確実なところに務めているという信用があるから。
アリアの家の名前は保証人にならなくても同じ意味があったので貸し付けがされていた。
しかし、いざ騎士団の面々が結婚式に来てみれば花嫁が違う。
それだけならアリアと別れたと言えば済む話と思いきや、結婚式の2日前にもアリアの名を持ち出し借り入れをしていたものだから詐欺も嫌疑も掛けられている状態だった。
アリアの家、ハース男爵家に信用があったから貸し付けをしただけで結婚相手がアリアではないのなら無担保状態。
金回りの良い男の金の出所は借金だったなんて。
デリスは2歩、3歩と力なく後ろに体がよろけた。
それでももしかすると見抜かった書類があるのではないか、投資の書類もこんなにあるんだからダリオンの金はどこかに残っているかも?と思ったが時系列に並べてみれば知りたくなかった事実を否が応でも認めざるを得なかった。
デリスと付き合い始めた時、ダリオンの積み立てと投資で得た金は薄給の騎士の貯蓄とは思えない額だったが、毎週からほぼ毎日切り崩し、ついには借り入れ。
「噓でしょ、嘘だと言って!ねぇっ!!」
「デリス、嘘じゃない。騎士団の書類だ。偽造なんかすれば一族郎党首が飛ぶ。どうするんだ。式とお披露目の支払いもあるのに」
「え?結婚式とか披露目の代金って出してくれるんでしょ?」
「馬鹿を言うな!そういうものは自分たちで出すものだ!」
父親に一喝されてデリスは本気で気を飛ばしたくなった。
デリスとしても結婚式はしたかったけれど、「あんた誰?」な人間までやってくる披露目のパーティは3日もする必要があるのか?1日で十分だと両親に文句を言ったのだ。
デリスはさっさと旅行に行ってのんびりしたかったし、当面は市井のアパートメント暮らしだが不便なので出来れば昨夜使った庭の別宅を拠点として親に生活の面倒を見てもらおうと考えていた。
「お父様とお母様が3日やらなきゃだめだとか言ったんじゃない。言い出しっぺが出してよ。アタシは3日もしたくなかったっ!!」
「今更だろう!デリスが ”ダリオンに婿養子なんて肩身の狭い思いはさせたくない” と言ったんじゃないか」
「じゃぁ、言ったときにダメって言ってよ!」
デリスの親は負担を少なくすべく3日目をしようと言ったのはダリオンの両親だと唾を飛ばし、ダリオンの両親が支払うべきだと言い出した。
勿論ダリオンの親も黙ってはいない。
「そっちが2日目をしなければ良かっただけ」と不毛な言い争いが始まった。
お互い全額負担は出来ないと譲らず言い合いは3時間に及んだが、どうしようもない事だけは心のどこかで判っていた。
支払いを踏み倒すとデリスの父親もダリオンの父親も折角授けてもらった準男爵という爵位を失うだけでなく、爵位があるからこそ平民相手に詐欺紛いの行為をしてはならないので懲役刑を食らってしまう。
「仕方がない。結婚式の支払いは私たちがする。デリス。ダリオンの借金は自分たちで何とかするんだ」
「嘘でしょ?そこが落としどころ?ダリオンの借金はダリオンの家が払うべきよ」
「何言ってるの!あの子が貯えを切り崩したのは貴女に色々と買うためよ!あぁこんな事なら積み立ても投資もさせていたアリアにしとけば良かった。アリアなら少なくともダリオンの金が無くなることはなかったのに!」
「なんですってぇ!!このくそババア!無職の借金男なんて離縁よ!離縁!引き取って頂戴ッ」
アリアと比べられたことにデリスはカッとなってダリオンの母に悪態を吐いてしまったが、離縁はすぐに出来るものの借金を背負ったダリオンを引き取ることをダリオンの両親は拒否した。
結果的にこの支払いで両家とも少なからず借金をすることになり、デリスはダリオンの借金を放っておけばアリアの名を使っている事もあって、配偶者も罰せられるためコツコツ貯めたなけなしを吐き出すしかなくなった。
それでも借金はまだ残る。
デリスとダリオンは暗雲の立ち込めた新生活のスタートとなってしまったのだった。
この後、デリスが爆睡するダリオンに桶の水をぶっかけたのは言うまでもない。
472
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
出て行けと言ったものの、本当に出て行かれるとは思っていなかった旦那様
睡蓮
恋愛
ジーク伯爵は、溺愛する自身の妹レイアと共謀する形で、婚約者であるユフィーナの事を追放することを決めた。ただその理由は、ユフィーナが婚約破棄を素直に受け入れることはないであろうと油断していたためだった。しかしユフィーナは二人の予想を裏切り、婚約破棄を受け入れるそぶりを見せる。予想外の行動をとられたことで焦りの色を隠せない二人は、ユフィーナを呼び戻すべく様々な手段を講じるのであったが…。
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども
神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」
と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。
大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。
文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!
【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。
銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。
しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。
しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる