小切手を拾っただけなのに~それは侯爵子息の溺愛の始まりでした~

cyaru

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第16話  知りたくなかった事実

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「ど、どういうことなの?!」
「どういう事だと知りたいのはこっちだ!騎士としての誇りを穢したとして除籍になったんだぞ?ダリオンが騎士だから取引先もついたのに全部パーだ!どうしてくれる!」
「き、騎士団を除籍ですって!?」

ダリオンの母親は驚くデリスに書面を叩きつけた。
床に散らばった書類を拾い上げるとなんと借用書。

ダリオンは騎士団で給金を担保に金を借りていて、その額はダリオンの年収の11倍。

借用書の中に紛れて積み立てや投資を切り崩した書類もある。
ダリオンの金回りが良かったのは、アリアと付き合い始めて少ない給料をこつこつと堅実な利回りが期待できる事業に投資をしていたからで、投資先を選択した者の欄にはアリアの名前が記載されていた。



「借り入れが出来たのは結婚相手がアリアだからだ。腐っても男爵家の正当な後継者だしな」



金貸しが王宮の職員や文官、官吏などには年収を超えた額を貸し付けることがあるのは確実なところに務めているという信用があるから。

アリアの家の名前は保証人にならなくても同じ意味があったので貸し付けがされていた。

しかし、いざ騎士団の面々が結婚式に来てみれば花嫁が違う。
それだけならアリアと別れたと言えば済む話と思いきや、結婚式の2日前にもアリアの名を持ち出し借り入れをしていたものだから詐欺も嫌疑も掛けられている状態だった。

アリアの家、ハース男爵家に信用があったから貸し付けをしただけで結婚相手がアリアではないのなら無担保状態。

金回りの良い男の金の出所は借金だったなんて。
デリスは2歩、3歩と力なく後ろに体がよろけた。

それでももしかすると見抜かった書類があるのではないか、投資の書類もこんなにあるんだからダリオンの金はどこかに残っているかも?と思ったが時系列に並べてみれば知りたくなかった事実を否が応でも認めざるを得なかった。

デリスと付き合い始めた時、ダリオンの積み立てと投資で得た金は薄給の騎士の貯蓄とは思えない額だったが、毎週からほぼ毎日切り崩し、ついには借り入れ。

「噓でしょ、嘘だと言って!ねぇっ!!」
「デリス、嘘じゃない。騎士団の書類だ。偽造なんかすれば一族郎党首が飛ぶ。どうするんだ。式とお披露目の支払いもあるのに」
「え?結婚式とか披露目の代金って出してくれるんでしょ?」
「馬鹿を言うな!そういうものは自分たちで出すものだ!」

父親に一喝されてデリスは本気で気を飛ばしたくなった。
デリスとしても結婚式はしたかったけれど、「あんた誰?」な人間までやってくる披露目のパーティは3日もする必要があるのか?1日で十分だと両親に文句を言ったのだ。

デリスはさっさと旅行に行ってのんびりしたかったし、当面は市井のアパートメント暮らしだが不便なので出来れば昨夜使った庭の別宅を拠点として親に生活の面倒を見てもらおうと考えていた。

「お父様とお母様が3日やらなきゃだめだとか言ったんじゃない。言い出しっぺが出してよ。アタシは3日もしたくなかったっ!!」
「今更だろう!デリスが ”ダリオンに婿養子なんて肩身の狭い思いはさせたくない” と言ったんじゃないか」
「じゃぁ、言ったときにダメって言ってよ!」

デリスの親は負担を少なくすべく3日目をしようと言ったのはダリオンの両親だと唾を飛ばし、ダリオンの両親が支払うべきだと言い出した。

勿論ダリオンの親も黙ってはいない。
「そっちが2日目をしなければ良かっただけ」と不毛な言い争いが始まった。

お互い全額負担は出来ないと譲らず言い合いは3時間に及んだが、どうしようもない事だけは心のどこかで判っていた。

支払いを踏み倒すとデリスの父親もダリオンの父親も折角授けてもらった準男爵という爵位を失うだけでなく、爵位があるからこそ平民相手に詐欺紛いの行為をしてはならないので懲役刑を食らってしまう。

「仕方がない。結婚式の支払いは私たち両家の親がする。デリス。ダリオンの借金は自分たちで何とかするんだ」
「嘘でしょ?そこが落としどころ?ダリオンの借金はダリオンの家が払うべきよ」
「何言ってるの!あの子が貯えを切り崩したのは貴女に色々と買うためよ!あぁこんな事なら積み立ても投資もさせていたアリアにしとけば良かった。アリアなら少なくともダリオンの金が無くなることはなかったのに!」
「なんですってぇ!!このくそババア!無職の借金男なんて離縁よ!離縁!引き取って頂戴ッ」

アリアと比べられたことにデリスはカッとなってダリオンの母に悪態を吐いてしまったが、離縁はすぐに出来るものの借金を背負ったダリオンを引き取ることをダリオンの両親は拒否した。

結果的にこの支払いで両家とも少なからず借金をすることになり、デリスはダリオンの借金を放っておけばアリアの名を使っている事もあって、配偶者も罰せられるためコツコツ貯めたなけなしを吐き出すしかなくなった。

それでも借金はまだ残る。
デリスとダリオンは暗雲の立ち込めた新生活のスタートとなってしまったのだった。

この後、デリスが爆睡するダリオンに桶の水をぶっかけたのは言うまでもない。
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