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第17話 許容の限界突破
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まだ動き出して数日でも11年の下準備でワイン事業は大成功と言っていいだろう。
なのにどうして困ったことがあって、早急に解決をせねばならないのか。
美味しすぎて飲みすぎる人が続出するのかと思いきや問題は全く別の事だった。
「どんなお悩みなんです?」
「口で言うよりも見て、感じてもらったほうが早いかもしれない。今日は時間あるか?」
「ありますよ?空き時間しかないので」
即答するアリアにエルフィンは「カボチャの干したやつは作らないのか」と言いかけたけれど、言葉を飲み込んだ。
アリアが「お出かけですね!」と嬉しそうな顔をしたので屋敷の中での作業を頼むよりもいいだろうと思いなおしたからである。
「先に言っておくが覚悟はしておいてくれ」
「え?覚悟?そんなに困りごとが?」
「あぁ、以前から問題視はされていたんだが必要悪だと諦めてくれていたところもあってな。ただ…事業化するにあたって何というか…許容の限界を超えたって感じだな」
「限界突破…怖い事言わないでくださいよ」
おぉ怖い怖いとアリアは自分で自分を抱く仕草をするが、お出かけがよほど嬉しいのだろう。顔はニコニコしていた。
「出かけるのがそんなに嬉しいのか?」
「そりゃ嬉しいですよ」
エルフィンの屋敷に住み始めて明日で5日目。
気負うところがあるかと思いきや、アリアは初日で使用人たちと打ち解けた。
アリアは平民と変わらない生活をしてきた子。
好きに過ごしていいと言ったので使用人たちにも「掃除がしたい」「料理がしたい」と言えばさせるようにと伝えていたので禁止事項がない状態。
それまでの仕事は依頼があれば受けていたので、エルフィンの屋敷にいる以上頼みに来る商会もなくアリアはじっとしていることが悪に感じられて用事をわざわざ作っていたりもした。
(どうやって暇をつぶそうと考えることほど無駄な時間はないわ)
貧乏暇なしが染みついたアリアはエルフィンの困りごとで何か手伝えることがあればいいな。気楽に考えていた。
☆~☆
がたがたと馬車に揺られてやってきたのは王都の郊外。
王都の街並みが遠くになり、周りが自然豊かになってきた頃から馬車の中のアリアは異変を感じていた。
「スンスン・・・・スンスン」
向かいに腰掛けるエルフィンは王都郊外にあるワインの貯蔵用に建設した沢山の倉庫の屋根が見えると理由が判っているのでしかめっ面になったが、アリアは締め切った馬車の中にも漂ってくる香りを嗅いでは首を傾げた。
建物までまだ距離があるけれど、エルフィンは御者に声を掛けて馬車を止めさせた。
「着いたんですか?」
「いや。でもここでも説明は出来る。とりあえず馬車を降りようか」
「はぁ?いいですけど」
豪奢な馬車は扉が開けばステップが自動で飛び出してくるが、扉があいた瞬間アリアは鼻を抓んだ。
「何だろう…ここって生ごみの集積所?」
「集積所ではないが…当たらずしも遠からずだ」
手を貸してもらい、馬車の外に出ると庫内の香りがどれだけシャットアウトされていたのかよく判る。
臭気に刺激され涙で潤んだ眼で周囲を見回せば酸っぱさの残る腐敗臭が気温が低いこともあって湯気を立てていた。
「これって」
「ブドウの皮や種。ワインの残骸さ」
「うへぇ・・・・凄いですね。確かにこれは許容の限界突破だわ」
エルフィンが言うにはこの付近に埋めたのは2年前なのでまだ良いほうで、今年のワインを作った残骸を集めて埋めきれなかった場所は息も出来ないし、近づくとゴーグルをしていても涙が止まらないという。
エルフィンが早急に解決しろと言われたのは、大量のワインを作るために収穫し搾った後のブドウの成れの果て。
ゴミも少しなら何とかなるが、さすがにこの量となるとお手上げ。
救いは王都の街に対し、この地域は風下になるので腐敗臭が王都に流れ込まない事だけだった。
アリアはきょろきょろとして少し窪んだ部分につま先をツンツン。土のように見えて土ではなく発酵が腐敗になった場所なのでブヨブヨして地面が波打っていた。
エルフィンは猫の手の手伝いを期待はしていなかったし手詰まり状態なのでこの際、思いつくままの意見が欲しかった。
「酷い有様だろう?これをなんとかしろって無茶もいいところだ」
「無理じゃないですよ」
「何か方法があるのか?」
「あるも何も!どうしてもっと早く言ってくれなかったんです?ここって宝の山っていうか宝の泥??みたいなものですよ」
「宝って。こうなってしまったら肥料にするにも10年はかかるんだぞ?」
「かかりませんよ。発酵と腐敗が現在進行形。湯気は発酵の証です。でも…」
「でもなんだ?」
「時間は少ししかかからないけど、お金と人の手は必要ですね」
エルフィンにはもうお手上げにしか見えない残骸もアリアには画期的な解決策があるという。
アリアは商人のように手を揉み揉みしてエルフィンに問いかけた。
「どうです?マージン1割で引き受けますよ?」
なのにどうして困ったことがあって、早急に解決をせねばならないのか。
美味しすぎて飲みすぎる人が続出するのかと思いきや問題は全く別の事だった。
「どんなお悩みなんです?」
「口で言うよりも見て、感じてもらったほうが早いかもしれない。今日は時間あるか?」
「ありますよ?空き時間しかないので」
即答するアリアにエルフィンは「カボチャの干したやつは作らないのか」と言いかけたけれど、言葉を飲み込んだ。
アリアが「お出かけですね!」と嬉しそうな顔をしたので屋敷の中での作業を頼むよりもいいだろうと思いなおしたからである。
「先に言っておくが覚悟はしておいてくれ」
「え?覚悟?そんなに困りごとが?」
「あぁ、以前から問題視はされていたんだが必要悪だと諦めてくれていたところもあってな。ただ…事業化するにあたって何というか…許容の限界を超えたって感じだな」
「限界突破…怖い事言わないでくださいよ」
おぉ怖い怖いとアリアは自分で自分を抱く仕草をするが、お出かけがよほど嬉しいのだろう。顔はニコニコしていた。
「出かけるのがそんなに嬉しいのか?」
「そりゃ嬉しいですよ」
エルフィンの屋敷に住み始めて明日で5日目。
気負うところがあるかと思いきや、アリアは初日で使用人たちと打ち解けた。
アリアは平民と変わらない生活をしてきた子。
好きに過ごしていいと言ったので使用人たちにも「掃除がしたい」「料理がしたい」と言えばさせるようにと伝えていたので禁止事項がない状態。
それまでの仕事は依頼があれば受けていたので、エルフィンの屋敷にいる以上頼みに来る商会もなくアリアはじっとしていることが悪に感じられて用事をわざわざ作っていたりもした。
(どうやって暇をつぶそうと考えることほど無駄な時間はないわ)
貧乏暇なしが染みついたアリアはエルフィンの困りごとで何か手伝えることがあればいいな。気楽に考えていた。
☆~☆
がたがたと馬車に揺られてやってきたのは王都の郊外。
王都の街並みが遠くになり、周りが自然豊かになってきた頃から馬車の中のアリアは異変を感じていた。
「スンスン・・・・スンスン」
向かいに腰掛けるエルフィンは王都郊外にあるワインの貯蔵用に建設した沢山の倉庫の屋根が見えると理由が判っているのでしかめっ面になったが、アリアは締め切った馬車の中にも漂ってくる香りを嗅いでは首を傾げた。
建物までまだ距離があるけれど、エルフィンは御者に声を掛けて馬車を止めさせた。
「着いたんですか?」
「いや。でもここでも説明は出来る。とりあえず馬車を降りようか」
「はぁ?いいですけど」
豪奢な馬車は扉が開けばステップが自動で飛び出してくるが、扉があいた瞬間アリアは鼻を抓んだ。
「何だろう…ここって生ごみの集積所?」
「集積所ではないが…当たらずしも遠からずだ」
手を貸してもらい、馬車の外に出ると庫内の香りがどれだけシャットアウトされていたのかよく判る。
臭気に刺激され涙で潤んだ眼で周囲を見回せば酸っぱさの残る腐敗臭が気温が低いこともあって湯気を立てていた。
「これって」
「ブドウの皮や種。ワインの残骸さ」
「うへぇ・・・・凄いですね。確かにこれは許容の限界突破だわ」
エルフィンが言うにはこの付近に埋めたのは2年前なのでまだ良いほうで、今年のワインを作った残骸を集めて埋めきれなかった場所は息も出来ないし、近づくとゴーグルをしていても涙が止まらないという。
エルフィンが早急に解決しろと言われたのは、大量のワインを作るために収穫し搾った後のブドウの成れの果て。
ゴミも少しなら何とかなるが、さすがにこの量となるとお手上げ。
救いは王都の街に対し、この地域は風下になるので腐敗臭が王都に流れ込まない事だけだった。
アリアはきょろきょろとして少し窪んだ部分につま先をツンツン。土のように見えて土ではなく発酵が腐敗になった場所なのでブヨブヨして地面が波打っていた。
エルフィンは猫の手の手伝いを期待はしていなかったし手詰まり状態なのでこの際、思いつくままの意見が欲しかった。
「酷い有様だろう?これをなんとかしろって無茶もいいところだ」
「無理じゃないですよ」
「何か方法があるのか?」
「あるも何も!どうしてもっと早く言ってくれなかったんです?ここって宝の山っていうか宝の泥??みたいなものですよ」
「宝って。こうなってしまったら肥料にするにも10年はかかるんだぞ?」
「かかりませんよ。発酵と腐敗が現在進行形。湯気は発酵の証です。でも…」
「でもなんだ?」
「時間は少ししかかからないけど、お金と人の手は必要ですね」
エルフィンにはもうお手上げにしか見えない残骸もアリアには画期的な解決策があるという。
アリアは商人のように手を揉み揉みしてエルフィンに問いかけた。
「どうです?マージン1割で引き受けますよ?」
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